転生国主興国記

hinomoto

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兄と弟

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ロレンチーニの顔色は悪い。

心配や討伐をされたからではない。

ナインとの会話で死にそうな程に白い。

子供に打ちのめられる、泣く子も黙る海賊の当主なのに何故か心が痛い。

戦ってとかではなく、一番痛い処を突かれているからだろう。

海賊の果ては?

果ては滅びだろう。、引き際もなく滅ぶのだから。未来より今の付けがきたのだろう。

悪い事の果ては何も無い。

海人達のことわざだ。

自分の親に云われた事を思いだしたのだ。

何十年振りだろうか、殺された両親が良く言っていた言葉だ。守ってるつもりだった。

何で忘れていたのかな。

自分よりも小さいナインが容赦なく言葉の剣で突き刺してくれる。



「あ、誰か居るよ。」



その声で顔を上げる。

ラプトプの姿なのは間違い無い。

ロレンチーニは鳴き声をあげてしまいながら走っていた。



「ラプトプー!」



その声に反応するようにラプトプも返してきた。



「ロレンチーニー!」



友人いや、親友だから出来るのだろう、二人は涙を流しながら抱き合った。

しばらく二人は名前を呼びあいながら抱き合ったのだ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



[キチー!]



ナインは自分の朧気ながらの過去を振り返った。醜男のおっさんが抱き合った悪友の事を、フラッシュバックのように思いだしたのだ。

自分の姿や形は覚えている。

あの姿でもしていたが、あれは漫画や美男子や細身の男だから許された事なんで、ムサイおっさんが抱き合った姿はキツイ。

改めて誰かを抱き締めるのは止めようと思うナインであった。



[ま、黙っていようかな。]



二人の側を離れて行った。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ロレンチーニ!済まない!」



「謝るなラプトプ、それよりも情報だ。」



「しかし!」



「話をする前に知っている情報を話してくれ。」



「・・・・・わ、分かった。」



それからラプトプは集めた情報をロレンチーニに話していた。

どうもラプトプの振りをしたのが、竜族に話してサメ族の討伐依頼を出したこと、シャチ族が何故かトドのように太っていたこと、龍族の呪いはまだ経過中のことを知っている限りを話した。



「そうか。」



ロレンチーニはそれだけしか返さなかった。



「ロレンチーニ!私は、私は!」



「分かっている。」



ロレンチーニは体を離して力強く肩を確りと掴むと、



「心配ないぞ、弟よ。」



その言葉に熱く心を打たれたように、



「ありがとう、兄さん。」



二人しか分からない、二人の雰囲気の中にいた。

それを眺めながら、飛び入り参加しそうなのを片したナインが見ていた。



[漫画の主人公なら良かったのにねー。]



決して言えない言葉がある。

多少のデリカシーを持っていれば出来る。ナインも出来る、と思う。

過去を知れば、大抵女性にデリカシーが無いとか、私を見てくれていないとかの言葉を思いだしながら、



[男と見て無いとか言ってたくせに。]



で恋などもない。

一度の有頂天も二度、三度会えば飽きた。

付き合うメリットが見いだせなかったよなーと若かった時を思いだしていた。



[あ、ゴミ見っけ。]



音もなく近づいて倒す、そして山に捨てる。

海中でそんな事を出来るのは、ナインしか無理だろう。



「ロレンチーニ。」



「弟よ、俺を捕まえてくれ。」



「何を言ってるんだ!」



「言われたから、分かっている。私の命で一族を救ってくれ。」



「ダメだ!そんな事は、させない!」



「弟よ聞いてくれ。」



「き、聞きたくないよー兄さん。」



厳つい顔をしているのに笑顔をラプトプに向けると、



「このままでは、海賊のサメ族は潰される。それよりも、お前の手で私を討ち取って欲しい。そうすればサメ族は無傷とはいかないが、女子供と一部の男は赦されるだろう。」



「兄さん。」



「弟よ。」



見つめ合う二人。

そして、



[美形キャラなら女共がワーキャー言うところだな。]



不貞な考えをするナイン。



「頼む・・・・・・・げぼっ!」



ロレンチーニの頭に岩が当たる。



「に、兄さん!」



「義理の兄弟に悪いけど、話に交ぜてよ!」



笑顔でナインが言った。

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