転生国主興国記

hinomoto

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本章

ラプトプの悩み

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エイ族の近くのカフ村に入った。

まともな食事が欲しくなったので飯屋に入った。料理は海中では難しいから、魔法で泡を固定して調味料を使ったものが主流になっている。特に小麦粉を薄く伸ばした生地を焼いたものに魚と野菜を挟んだものが人気ではある。

しかし、焼くために陸に上がりスパイスを調合は無理がある。その為に、獣国が新たな技術と新たな魔法で何とか実現したのだ。

泡を喉に流すまで消えない魔法と、海底でも調理できる器具は高価だが、新たな旨さを知ることになったのだ。

生地やスパイスは獣国からしかない。

他国には無い物が多いが、商いには出来ない。

何でも神様からの許しがいるとか、迷信深い国である。

だが、お陰で酒も飲めるから助かる。

二杯目を飲みだした頃に、



「ラプトプ様では有りませんか!」



の声に振り向くと、嫌な奴が居た。



「ザワシか。なんだ?」



ザワシは席に着かずそのまま話す。

嫌われているのは分かっているから。



「いえ、シャチ族からお早いお戻りで。」



「ん、あぁ。で?」



少し不機嫌に答えるが、次の話に驚く。



「いや、ヒレ族の村からシャチ族の村に行かれて此処でしょう、流石は歴戦の戦士様ですね!」



「ぶっ!」



何を言っているのだ?

「ヒレ族の村に?」



「はい?」



「何の事だが。」



小声で話すザワシ。



「またまた、サメ族の討伐を頼んだのではありませんか。」



「な、なに!?」



「へっ?」



ザワシに掴み掛かる。



「何だって?!」



「何ですか!」



「サメ族の討伐?誰が竜族に頼んだって?!」



「ラ、ラプトプ様では無いですか。」



「ば、馬鹿な!」



「ラプトプ様、ぐるじい・・・・」



手からザワシを離すと、唖然とする。



「何が起こっているのか・・・・」



理解出来ないとも思っていた。



「げっへっ。ラプトプ様がサメ族の討伐依頼をヒレ族以外竜種に頼まれて受託されましたよ。」



ラプトプは震えていた。



「私が依頼を?」



「そう、ヒレ族から聞きましたよ?」



何で、そんな事に?

悩んでていてもどうしようもなく、慌てて村長の自宅へ向かう。

どうなっている?

駆け出すラプトプには、何が起こっているのか分からなかった。

自分で友を売ったのか?何故、竜をシャチではなくサメ族に当てたのか?理解できない、いや、嘘であってほしいと考えていた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「親分!また邪魔されたようです。」



「今度は何処だ!」



「へぇ、ランドークとベヘランでさぁ。」



「キャンドとレーベルも撤退か。死人は出てないな?」



「それはもちろんでさぁ!」



「よし。しかし、竜が何で動いているのか?」



「分かりませんぜ。」



「考えても分からんな。ラプトプと会わないと。」



ロレンチーニの風体は怖い。親分と呼ばれる事にも馴れたし、怖がられるのも慣れた。

本当は泣きたい。人を傷つけるのは慣れそうにないから、酷い戦いにならないようにお願いしている。

だけど、配下の人も極力被害が少ない方法を見つけたり、試したりしてきた。だけど、体育会系の乗りはついていけない。



「親分、ワシ達はどうします?」



「んー、竜達から逃げる方が良いよね。蓄えあるから船に一時避難しよう。避難先はロンキ島に移動。また何人かは離れてる者に連絡。イワシ族にも口止めかな。」



「へい。分かりました。」



「無理はしないように。」



「親分はエイ族ですから、イワシ族に張れないで下さいよ?」



「う、わ、分かってるよ。それよりも直ぐに取りかかってよ!」



「「へい!」」



強面の顔をしたサメ族は即座に取り掛かったようだ。

サメ族の族長、ロレンチーニ(35才、雄)歴戦の戦士であり海賊の長で最悪最強とも言われているが、実際には違う。

顔は恐ろしいが、心優しく涙脆くて騙され易い面が強い。特に小さい物が好きで深海生物も好きと変わった性質なのだ。

人間の子供等も好きなので、保護した子供はロンキ島に住まわせている。人種側は誘拐としているが、元が奴隷の子供だけを拐っているので実は良い人の部類には成るが、この世界では犯罪だ。

自分の事には怒りもしないが、他人の為なら命も捨てれるロレンチーニ。

鬼のロレンチーニは戦士としての二つ名であるが、本人は気に入っていない。

もちろん厳ついからが原因なのに、他者には理解してもらえないが、ラプトプだけが唯一の理解者であった。

エイ族よりもラプトプからの援助がロレンチーニの心からの頼みであったのだ。



「裏切らないで、ロレンチーニ。」



そう呟いて、ロレンチーニはラプトプを会いに行くのだった。
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