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本章
シャチ族
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ヒレ族が急ぎ海賊の討伐隊を出していた。
それは、イワシ族の行商隊ともすれ違った。
名前の通りの種族ながら、巨大な群れは作らないものの巨大なキャラバン隊を組んでの行商だ。これも亡き幻獣が残した事だが、現在でも多種族からの下請けを受けている。
サメ族も目立たなければ何もされないのは良いが、どの種族からも下に見られる種族でもある。
ヒレ族に行商とお届け物を届けるキャラバン隊は、慌てるヒレ族に疑問を抱いていた。
ヒレ族の町に入り、それぞれの仕事をこなしていたが、キャラバン隊の隊長をしていたザワシは門番の所に話をしにいっていた。
挨拶からご機嫌伺いを経て、疑問を投げ掛ける。
「ラルバルト様に一つお尋ねしたい事があるのですが?」
「どうした、ザワシ?」
「はい。此処の近くで数名のヒレ族の方が出られたようですが。」
「ああ、海賊の討伐隊か。本格的に潰すって長が息巻いてるぞ。」
「えっ!さ、流石ですね!凄いですね!」
「むふふ、そうさ、凄いだろ。」
とりあえずザワシはラルバルトをおだてた。
海賊はイワシ族にとってもお得意様になる。良いお得意様ではないが、情報を流さないと身を仲間を守れない。見逃してもらう為の事なのだが、ザワシはそれよりも詳しい情報を得ていた。
エイ族の族長自ら打診してきたと。
ザワシは謎の中にいた。
エイ族の町から来たのに知らないからだ。
情報はそれ以上手には入らなかったが、疑惑はある。
シャチ族に会いに行く予定のエイ族の長が何故、ヒレ族に海賊討伐隊を頼んだのか。
それも先にシャチ族に会いに南西に出たはずで見送ったのに、北東のヒレ族の町に最短で来た我々を追い抜いて会う事が可能か?
余りにも奇想天外な出来事なのだ。
裏を探さないと海賊のシャーク様に言い訳が出来ないから。
流行る気持ちを抑えて、仲間の安全を願っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シャチ族の長デークは陸の武器を見つめていた。
シャチ族の村は食べ物が少ない。
死の海と呼ばれる海域が広がる場所に村があるからだ。
遥か昔は死の海ではなかっだが、幻獣様が出現した場所に選ばれた為に豊かな場所が死の海に変わったのだ。
そしてシャチ族はその選ばれた場所の守護を任されてきた。
それはシャチ族には地獄の歴史であった。
食い物が少なくなり種を守る為に間引きを行った。
死の場所に暮らすので、他種族から嫌われた。
回りからの援助もなく生きてきたのだ。
近くのクジラ族には嫌われ、悪口も虐めもあった。
幻獣にも意見すれば殺された。
簡単に書いたが、その所業は悲惨では終われないのだ。
それが一転したのは十五年前の幻獣が亡くなってからだ。
出現場所に意味もなく住んでいたと思われたシャチ族は竜と肩を並べる程に強くなっていた。
第一次シャチ族とクジラ族を中心にした他種族連合の争いでシャチ族が勝っていたが、水竜の亀族の力を借りて何とか和解した。
和解として行商と貢物を要求をしたのだ。
力が分かると、要求はエスカレートしだした。
結局は三度も繰り返し争いがおき、要求が行われていた。
イワシ族の行商の末に、サメ族からの打診が来たのは去年からになる。それは、海の覇権の分割である。
そして、同じようにエイ族からも書状が届いたのだ。
此方も覇権ではあるが、新たな領地とかの提案であった。
二つともシャチ族には関係がない。ただ長年の怨みがあるクジラ族の滅亡こそがシャチ族の望みなのだから。クジラ族を倒す為に二つの内容の要求がある事を其々に伝えていた。
一枚岩の様にさせない為に、デークは我が身を切り裂きながら耐えていたのだ。
クジラ族の滅亡と多種族の不幸を。
要求の先には海の破滅を見据えていた。
「この武器は良い。」
三股に別れた槍を震い、岩を砕いた。
そして槍を見直す。
「・・・・もう少し硬めでないと曲がるか。」
その槍を捨てて、他の武器を手にする。
「俺に合う武器は無いのか、シャーク。」
「デーク殿はますます強くなられているな。地上でも強い武器を揃えたのにお目に叶うモノが無いとは。」
サメ族の“シャーク”ことロレンチーニは唸っていた。
ロレンチーニが武器を持っていなかったシャチ族に武器を貸し与えていたのだ。恐ろしい行為なのは、過去の戦いでシャチ族は武器も持たずに、素手で戦ってきたと言えば分かるだろう。
『シャチ族に武器を渡す行為は海の為にならない。』
これは第一次の争いで連合が決めた事だ。
其を破ってシャチ族に武器を渡したのだ。
「強い武器こそ我が宿願だからな。」
「ふふ、強い武器ね。次までに仕入れておくよ。」
強い武器が手に入れば、復讐が出来るのだ。
黒い笑みがこぼれる。
「頼んだ、ロレンチーニ。」
「デーク殿に名前で呼ばれるとは、、その期待に答える様に尽力しますぞ!」
「ふふふふ、頼む!あはははは!」
「分かりましたぞ!あはははは!」
二人の笑いには隔たりがあるのだが、互いの望みに近づける事になる笑いだった。
その先の未来は、当然に違うのだから。
それは、イワシ族の行商隊ともすれ違った。
名前の通りの種族ながら、巨大な群れは作らないものの巨大なキャラバン隊を組んでの行商だ。これも亡き幻獣が残した事だが、現在でも多種族からの下請けを受けている。
サメ族も目立たなければ何もされないのは良いが、どの種族からも下に見られる種族でもある。
ヒレ族に行商とお届け物を届けるキャラバン隊は、慌てるヒレ族に疑問を抱いていた。
ヒレ族の町に入り、それぞれの仕事をこなしていたが、キャラバン隊の隊長をしていたザワシは門番の所に話をしにいっていた。
挨拶からご機嫌伺いを経て、疑問を投げ掛ける。
「ラルバルト様に一つお尋ねしたい事があるのですが?」
「どうした、ザワシ?」
「はい。此処の近くで数名のヒレ族の方が出られたようですが。」
「ああ、海賊の討伐隊か。本格的に潰すって長が息巻いてるぞ。」
「えっ!さ、流石ですね!凄いですね!」
「むふふ、そうさ、凄いだろ。」
とりあえずザワシはラルバルトをおだてた。
海賊はイワシ族にとってもお得意様になる。良いお得意様ではないが、情報を流さないと身を仲間を守れない。見逃してもらう為の事なのだが、ザワシはそれよりも詳しい情報を得ていた。
エイ族の族長自ら打診してきたと。
ザワシは謎の中にいた。
エイ族の町から来たのに知らないからだ。
情報はそれ以上手には入らなかったが、疑惑はある。
シャチ族に会いに行く予定のエイ族の長が何故、ヒレ族に海賊討伐隊を頼んだのか。
それも先にシャチ族に会いに南西に出たはずで見送ったのに、北東のヒレ族の町に最短で来た我々を追い抜いて会う事が可能か?
余りにも奇想天外な出来事なのだ。
裏を探さないと海賊のシャーク様に言い訳が出来ないから。
流行る気持ちを抑えて、仲間の安全を願っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シャチ族の長デークは陸の武器を見つめていた。
シャチ族の村は食べ物が少ない。
死の海と呼ばれる海域が広がる場所に村があるからだ。
遥か昔は死の海ではなかっだが、幻獣様が出現した場所に選ばれた為に豊かな場所が死の海に変わったのだ。
そしてシャチ族はその選ばれた場所の守護を任されてきた。
それはシャチ族には地獄の歴史であった。
食い物が少なくなり種を守る為に間引きを行った。
死の場所に暮らすので、他種族から嫌われた。
回りからの援助もなく生きてきたのだ。
近くのクジラ族には嫌われ、悪口も虐めもあった。
幻獣にも意見すれば殺された。
簡単に書いたが、その所業は悲惨では終われないのだ。
それが一転したのは十五年前の幻獣が亡くなってからだ。
出現場所に意味もなく住んでいたと思われたシャチ族は竜と肩を並べる程に強くなっていた。
第一次シャチ族とクジラ族を中心にした他種族連合の争いでシャチ族が勝っていたが、水竜の亀族の力を借りて何とか和解した。
和解として行商と貢物を要求をしたのだ。
力が分かると、要求はエスカレートしだした。
結局は三度も繰り返し争いがおき、要求が行われていた。
イワシ族の行商の末に、サメ族からの打診が来たのは去年からになる。それは、海の覇権の分割である。
そして、同じようにエイ族からも書状が届いたのだ。
此方も覇権ではあるが、新たな領地とかの提案であった。
二つともシャチ族には関係がない。ただ長年の怨みがあるクジラ族の滅亡こそがシャチ族の望みなのだから。クジラ族を倒す為に二つの内容の要求がある事を其々に伝えていた。
一枚岩の様にさせない為に、デークは我が身を切り裂きながら耐えていたのだ。
クジラ族の滅亡と多種族の不幸を。
要求の先には海の破滅を見据えていた。
「この武器は良い。」
三股に別れた槍を震い、岩を砕いた。
そして槍を見直す。
「・・・・もう少し硬めでないと曲がるか。」
その槍を捨てて、他の武器を手にする。
「俺に合う武器は無いのか、シャーク。」
「デーク殿はますます強くなられているな。地上でも強い武器を揃えたのにお目に叶うモノが無いとは。」
サメ族の“シャーク”ことロレンチーニは唸っていた。
ロレンチーニが武器を持っていなかったシャチ族に武器を貸し与えていたのだ。恐ろしい行為なのは、過去の戦いでシャチ族は武器も持たずに、素手で戦ってきたと言えば分かるだろう。
『シャチ族に武器を渡す行為は海の為にならない。』
これは第一次の争いで連合が決めた事だ。
其を破ってシャチ族に武器を渡したのだ。
「強い武器こそ我が宿願だからな。」
「ふふ、強い武器ね。次までに仕入れておくよ。」
強い武器が手に入れば、復讐が出来るのだ。
黒い笑みがこぼれる。
「頼んだ、ロレンチーニ。」
「デーク殿に名前で呼ばれるとは、、その期待に答える様に尽力しますぞ!」
「ふふふふ、頼む!あはははは!」
「分かりましたぞ!あはははは!」
二人の笑いには隔たりがあるのだが、互いの望みに近づける事になる笑いだった。
その先の未来は、当然に違うのだから。
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