転生国主興国記

hinomoto

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本章

おはよう、こんにちは

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村を掛け回されて、最後には族長の処にきた。

本当は、族長が一番重く辛い。

其れよりも身内が先なのは、どの世界でも変わらないものだ。

やれやれと巣に近付くと、



「人の子よ、去るがいい。」



優しさと威厳が混じった声を出す。

その前に誰も言わないが、水中で活動して二時間も過ぎたのに誰も何にも言わない。

困ったものだ。



「はいはい。おじいちゃんは少し意地っ張りですね。血圧も測っておきますね。」



「と、年寄り扱いは!ごほっごほっごほっ。」



まあ、この扱いだから当然な反応だ。

確りとしているのは流石は族長だな。

早速と注射を取り出して、腕ヒレにアルコールを塗る。他の個体にはしていないが、正規のやり方を行う。



「な、何をする!冷たい?スースーする?!」



おじいちゃんはされた事を大袈裟に話してくれる。

ま、元気な証拠だが、老化はまだ受け入れていないな。



「はい、お注射を打ちますねー。」



ちょっと蛇足だが、看護師さんが何かする時の語尾が伸びるのは何故でさかね?



「な、なんじゃ?!」



ぷすっ!



いたずらっ子世に憚るとある。

ナインもご多忙に負けじといたずらっ子である。

おじいちゃんでも水龍だ。大きさは3階の建物と子供の差がある。注射なんかは痛く感じない。



「なっ!痛い!あーー!」



木片が刺されば痛いが、ソゲが刺さればかなり痛い。

注射とて痛みは無いはずでも、痛覚を倍増すれば些細な痛みも強烈な痛みになる。



「はい、じっとして下さいねー。」



ちゅ~。

「は、いっつ~!」



スッ。

「はい、終わりですねー。」



ホッとする水龍の長。

このホッとするのがミソなのだ。一度付いた痛みは消える事は無くなる。いたずらっ子の本領は此処からなのだ。



「次は点滴ですー。」



「なっ!」



見える様に水龍の長の視力を上げてあげれば、長くて太い針が見える。



「いや、そんな物が無くてもわしゃぁ元気だ!」



「はいはい。我が儘を言わないで、かるーく射ちますよー。」



「やだ!や、やめて!」



元気なのか、末期の叫びなのかは別として注射、いやさ点滴を受けてもらおう。



ぷすっ!



「あいー!」



ガクッ。



よしよし、気絶コンボまで行うとはやるではないか。

これで呪いというミッションは終わった。

因みに、魔力で病気の除去や体力の回復も可能だが、売れる時には高く売らないと馬鹿である。

後は起きるのを待つのみだ。







ーーーーーーーーーーーーーーーー





水龍の村を見張る二匹の竜が、我が目を疑っていたのだ。

ヒレ族の族長の子が水龍の村に飛び込んだからだ。



「ランバルト様が飛び込んだな。」



「だな。呪いに遭うんだな。」



「「ど、どうすんだ!」」



呑気に馬鹿話をしてる場合でもなく、一匹が助けようとするが、



「待て、お前が行ってもどうにもなんべ?其れよりも長に報告だ!」



「そ、そだな。呪いを受けるのが増えたらいかんもんな!よし、おらが長に伝えるだ。よかんべ?」



「よか!頼んだで!」



急ぎ一匹は出て行った。もう一匹も心配そうに村を見つめていた。



「頼んだでー。お願いだー。」



祈る様に坊っちゃんの安否を気遣っていたのであった。





ーーーーーーーーーーーーーーーー





水龍の村では殆ど回復がすんでいた。

長年の呪いが解けて、お祭り騒ぎとなる。

叫ぶ程に嬉しく、晴れ晴れとした気分は最高だろう。

別にヤバい薬とかではなく、身体の怠さを取り除いただけだ。

呪いになったが、要は幻獣の血塊が今回の原因なのだ。死んだ直後の血は色々と活用できたのだが、血塊になるとその周りには毒素が流れる。ゆっくりと近くに居る者に呪いの様に作用するのだ。その為に血の呪いと呼ばれるが、ただの欠戎症だ。

普通では起きないが血の詳しくは白血球が高くなりすぎて、血流は流れるが酸素が運ばれない。酸素が運ばれにくい為に頭が重く、判断が鈍い。肉体も重くなる。

これ等を解消すれば即座に元気になる。

長年の不調と肉体の怠さからおさらば出来たのだ。

馬鹿騒ぎするのも当然である。



「はっ!」



長が目を覚ました。

村の馬鹿騒ぎは気になるものの、何とも爽快な目覚めだろう。

身体も若い頃の様に軽い。

大きな声を出したくなる。年は関係ない。



「あ、あー。いいかな。」



見たことがある人間の子が居た。



「ああ、良いとも。気分が良いから一つ大きな声を出してからだが。」



「あー、それも含めて後にしてもらいたい。」



横柄な物言いだが、わしは気分が良いのだ。



「そうか。ふふっ。長くはもたんぞ?」



「ありがとう、水龍の長よ。」



不敬だ。人間の子供が龍の一角である青を冠に抱く水龍の長に対して何て言いぐさだ!それでも、気分が良いから許すが。



「ま、君たちの呪いは解いたから気分は最高だろう。」



「君が解いた?ふふふふっ、人間が?」



「あ、あー。笑うのも我慢。」



「んんんー。ぷぷぷぷぶ。」



「あー。」



「ふふふふふ、ん、んー。ん。」



気分が良いから許してもらいたい。



「先に正体を明かすね。」



子供はウインクを長にすると、魔力が膨れた。

一瞬で長の居る範囲を囲むが、濃度の濃い、濃すぎる魔力に良い気分も消えた。

前の神龍様から聞いていた、知っている魔力であった。

震えと恐ろしさで身体は怯え、汗が出る。



「こんにちは。」



現神龍様だ!



「ああーーーーー!」

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