転生国主興国記

hinomoto

文字の大きさ
上 下
221 / 253
本章

旅立ち

しおりを挟む
ライラックの町はてんやわんやになっていた。

病人の山で、病院もてんやわんやです。

元の住人よりも捕虜奴隷ばかりで、原因の究明も観察も行われている。

真相までは掴む事は無いだろうが。

それでも獣国は原因の洗い出しを続ける事になる。規模と被害の比率は一致していない事が大きな事と奇跡が同居しているのだろう。

奴隷の人達は生き残った事に感謝し、その後に移住してくるのだった。



「トイレを知ったら、他の国に行けませんよ。」



「いや、お風呂だよ。あれに毎日浸かる事が出来るなんて。元の国?いやいや、捨てるでしょ。」



此が一度多い答えだが、やはりトイレやお風呂が家に着いていて、水が捻るだけで手に入る事が凄いらしい。

人間は楽を知れば、その楽を手放せないらしい。

ま、国に帰ればそこに慣れるので、どうかと思うが生活、仕事が充実し働くのも充実している。

移動も魔物さえも安定しているのだから考えてしまってもおかしくはない。

絶対とは言わないが。

その後は獣国のムソニー王がしてくれるだろう。



レブルはベッドを空けるべく、退院させられた。



「ムリカ、行くよ。」



レブルとフェルト、二号と犬は旅姿なのに、ムリカはナース服を着ていた。



「うん。レブルさん達も気をつけて下さいね。」



涙を浮かべるムリカにフェルトが、



「ムリカさんも、頑張ってください。」



「うん、頑張る!」



二号は、



「頑張って。私達も頑張る。」



「うん!頑張って!」



と別れを惜しんでいた。

ムリカはあの惨劇と生き残った人々に新たな使命を得た気持ちになってしまったのだ。

悲しみと不安よりも目の前の患者に何が出来るのかの自主的に考えて出た答えに仲間は受け入れたのだ。

別れをどう行うか。それはパーティーの中で決める不文律の様なものでる。



「皆さんも、ナインちゃんを宜しくお願いします。出会えたら私の事もお伝え下さい。お願いします。」



涙を流しながら深く頭を下げる。

二度と会う事がないかも知れない。絶対では無いが絶対に近い程に会える事が無い事を自覚していた。それにこのメンバーを抜けるのだ。それこそ、会う事を止めたのだから。



「分かりました。ムリカさんもお元気で。」



フェルトも深く礼をして、メンバーのもとに戻る。

ムリカは未だにに声をかけてくれないアイを見る。



「アイ様、私の旅は終わりました。此から別の道を進みます。どうかナインちゃんを見つけて、守って下さい。」



深く、深く頭を下げる。

不意に肩を強く掴まれ、起こされるとアイの顔が近くにあった。



「マスターからです。『元気に頑張ってね!応援してるよ!ムリカお姉ちゃん。』」



ムリカは目頭を押さえて泣いていた。

その場からアイも離れてメンバーの元に行き、振り返らずに町を出て行く。



「ナインちゃんは生きていたんだ!」



ムリカはそう呟いて泣いた。

誰の目も憚らず、多いに泣いていた。

その後は分からないが。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





町から離れた一行は、国境まで歩いていた。

残党もいない大地なのにのに何を見つけていた。

レブルは口角を上げて喜んでいた。



「ご主人様が居ればお喜びになる、シチュエーションですねー。」



フェルトの先には、馬車と護衛の馬が大型の魔物に追われていた。

馬車にはたぶん、ご主人様が以前言っていた、お姫様がいて助けるクエストであろうか。

定番の事なのだろう。



「レブル様どうしますか?」



と聞いたが、既にレブルは二号を引き連れて馬車に走っていた。



「やはりご主人様のご母堂様ですね。ご主人様と同じ行動を取られますね。」



心配はしていないが、ため息をつきたくなる。

後始末や交渉事はフェルトが行う事になるのだから。



「アイ様の意地悪。」



本当ならばアイがサポートしてくれるのだが、ナインが消えてから殆ど何もしてくれない。

その負担はフェルトには大きいが、人間がやることなのでそれほどでもない。

でも、アイからの指示があれば面倒な事は回避できただろう。



「言っても変わりませんが、後を追いましょう。」



フェルトの後ろにアイが着いて行く。

此から咲きも変わらないのであろう。

ナインを探し出会うその時まで!





「ひっしゅん!・・・ん?」

しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...