転生国主興国記

hinomoto

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本章

戦争の始まり

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魔道雷式電子動力箱型運行車輌A101型。
これを通称『電車』と呼ぶ、いや呼ばす辺りはナインであろう。
以外と人気は高く、いわゆる『電車マニア』事『電ツウ』なる造語ができ、Aナンバーシリーズと呼ばれる型にはまっている住人が多い。
残念な事にパンタグラフに擦れる音や、レールの軋む音が無いのが『電車』の醍醐が無いとナインは嘆いていた。
ともかく、電車に乗って『アマゾネスズ』は終着駅のライラックに着いた。
着くまでには、モーニングコールの車内連絡があり、身支度を整える時間もある。
朝食に関しては取り扱っていないので、各自で準備している。
『アマゾネスズ』も朝食は食べた。
喫茶店のサンドイッチである。
レブルは喫茶店のサンドイッチは嫌いである。
足らないマスタードと具材。パンも固かったり柔らかったりと、ナインの作るサンドイッチには程遠いからだ。
と、そこまで言うとムリカもフェルトも同調してしまうので言えないが、我慢して食べたのだ。

駅から町に、町から外に出るまでに何度も兵に制止されたが、『アマゾネスズ』と知ると通してくれる。
実力もあるからと言いたいが、アイの命令でもある。
獣王ムソニーに託した事でもある。ライラック王国の滅亡がアイの望みと知り、レブルと呼応してライラック王国滅亡と諸外国に恐怖と弱体化をするために動いていた。
獣国からライラック王国に五万の軍勢を当てている。即座に対応する部隊だ。
他に南部の本国からの進出も可能にされるらしい。
魔森に新都を望むが、ナイン以外には正当に作れる人はいない。
本国とライラックを車で行ける準備はしているが、アイとナイン抜きでは、新車作りにも難航しているのである。
道に関しては、『出来ていました』である。
勝手に出来ていたのが感想になる。
訳は魔森のせいである。魔森を開拓等は出来ないのは、魔素が含まれた土地で、何処からか魔素を放出しているのが原因という事。開拓しても1日で元に戻るのだが、ナインが開拓した道や土地には魔素は無くなる。
直線距離のフォミラーカーが走るのか?という道が開通している。現在の車では、到着までに片道の最速で八時間とかかってしまう。『電車』ならば、かなりの時短されるのには学者からの発言もあるが、ナインがしてくれないので無理なのだ。ナイン一人の作業は優秀な魔術師が何万人が必要で昼夜問わずの作業で何ヵ月かかるか不明でしかない。
技術も追い付かない今は、必要な物はなにか?を早急に調べる事に時間も人員も取られてしまい、国内の整備に頭を悩まされる現状でもある。

とにかく、『アマゾネスズ』は郊外から現敵国に向かってるのだ。乗り物が手に入れてないので、徒歩になるがレベルのお陰で苦にはならない。
歩く速度も普通の十倍は違う。
違うから、敵に出会うのも早かった。
唐突に発見をしあい、『アマゾネスズ』から先制していた。
敵は五百名の中隊であった。
五百名の内約四百五十名を打ち倒し、残りを打ち洩らしたのだ。
ナインの武具があれば状況も違ったのであろう。
残存兵達が、他の中隊を、大隊をも引き連れてきてしまい、その地が戦争の呼び水になった。

「本当に敵は五人なのか!?」

ライラック王国ランフレット伯爵は馬上から叫んだ。

「は、はい。僅か五人でございます。」

ランフレット伯爵付きの兵長が答える。

「良く考えてみよ!我々の現在の兵力は五千もいて、敵の千倍の戦力で倒せていないのだぞ!」

「分かっておりますが、乱戦故に弓兵も使えない現状なのに、我らが押されている現実なんですよね。」

言葉では分かっているのに、現実を受け入れなられない状態である。
この場から戦場は見えない。
味方が敵を取り囲んでいるのは分かっているのに。
そこから二つの輪に別れて行き、最後には五つの輪に別れた。
数の計算では勝てる予定が、今では死体の数と血の池を作っている。残り千兵も居るのだろうか?
ランフレット伯爵は恐ろしくなり、

「此のままでは、我らは負けてしまう。我は救援を求めるぞ。」

「はっ、伝令を・・・・」
「要らぬ!我、自ら話す!」

「へっ?」

「た、確かレイモンド伯が近くいたな。ランブルト侯にも話すぞ!わ、我に続け!」

「は、はい!我らも伯をお守りするぞ!つ、続け!」

二百の兵が戦場を離れて、残りは『アマゾネスズ』と戦い続けた。
レブルをメインにしてフェルトと二号が追随していた。時点はムリカであったが犬が着いていたので無傷である。アイは向かって来る敵に容赦ない反撃を行っていた。
まさに無敵と思わせる勇猛果敢な戦いであった。
ただ、無傷ではあったが疲れや腹の具合は悪かった。
此が終われば休憩も考えていたが、ランフレット伯爵はレイモンド伯爵を連れて戦場に戻ってきた。
残り百近くになった所でだ。

「な、卿の言う事が真であるとは。」

「嘘ではなかろう!レイモンド伯!」

「うむ。敵は疲れておる!見事に討ち取れ!」

「「「おぉー!」」」

戦禍に巻き込まれる様に再び、大軍が『アマゾネスズ』に向かっていた。
それを見てから、

「レイモンド伯!私はランブルト侯にも救援に行って来るぞ!」

「行かれるがよい。」

「直ぐに戻る故に持ちこたえられよ!」

こうしてランフレット伯爵により拡大になる。

「ふん、情けない。押せ!!」

レイモンド伯爵は理解していなかった。良いようにやられるランフレット伯爵が無能だと思っており、油断していた。
五千対五。数で勝ててしまう。
十や二十程度の損害も倒せば良いのだから。と考えていた。
それが間違いと気づくのに時間が掛かっていた。
ランフレット伯爵はベテランの用兵家でもある。今回のライラック王国復活のシナリオを描いたのもランフレット伯爵のお陰であるからだ。視察目的で中隊を率いて来ていたのに、クダラナイお遊びに付き合う羽目になるとは、程度の気持ちではあった。
それが、百の兵を散らし、千の犠牲が出てしまい、半数の兵が帰らないと知ると、自分の愚かさと見立て違いが露見したのだ。
既に相手は七千兵も倒した実績がある。
時間も三時間を超えようとしていた。
そしてそれが来た。
獣国の師団部隊約六万兵。
大地に獣国の紋章を掲げて、『アマゾネスズ』の優軍が来た。
約六万対二千。
ランフレット伯爵は逃げた。
勝ち目がない戦に命は掛けられなかった。
だが、それを阻む様にランブルト侯の救援が来たのだ。
数は二万も居るが劣勢である。

「ランブルト侯!」

「レイモンド、生きていたか!」

「この数は・・・・・・」

敵の数を見たランフレット伯爵は、

「ラ、ランブルト様!き、救援を呼んで来ます!失礼!」

と、私兵を引き連れて味方陣営に向かって行った。

「ちっ、レイモンド!どうなっておるのだ?」

この時に冷静に戦況を見つめ直す事が出来たレイモンド伯爵は、

「済みません、ランブルト侯。もはや逃げて戦力を整える必要があります。敵兵は約六万近くの兵が居ると思われます。此では勝てません。」

冷静の判断こそがレイモンド伯爵の真骨頂である。

「うむ。逃げるにも戦力差もある。素直に逃げる事が出来るか?」

ランブルト侯爵はこの窮地の打開策を聞いた。

「ゆっくりと引くしかないでしょう。」

「そうか。分かった。ゆっくりと引くぞ!」

この時、レイモンド伯爵とランブルト侯爵は思い違いをしていた。数が増えた戦いなどは敵も望んではいないだろうと。
この数よりも、五人の為に来た事の重大な使命を知らない。

「魔法隊前へ!敵、中央へ一斉掃射!撃て!」

弓ではなく、魔法である。
レイモンド伯爵は理由が分からなかった。
魔法は詠唱に時間が掛かり過ぎる。魔物戦では有効だが対人では撤退の軍には有効な手でない。
遠距離なら余計に有利に逃走が可能であるからだ。

「速度を上げて、撤退!」

これで余裕で撤退出来ると確信をしていたが、それは無惨に打ちのめられた。着弾したのだ、魔法がだ。
火系でなく、水と土を打ち込まれたのだ。
多少の混乱が起きたが、大きな被害はないと安心をしていたが、二次の攻撃で恐ろしい程の被害が出た。
風と火の魔法で。
先ずは火の魔法が襲う。水は水蒸気になり、土は焼かれた。
そして風が渦となり味方を囲んだ。
レイモンド伯爵は意識が遠退く中で、自身の愚かさに気付いたのだ。勝てる戦いではなかったのだ。タイク帝国を潰したのは実力だったのだ。

敵の戦力は半数は減っていた。ランブルト侯爵は何とか生きていた。

「引け!引くのだ!」

この一言だけで逃げ出そうとしていたが、既にその状態ではなかったのだ。
後方より、ライラック王国は五万の部隊を出していたのだ。
ランフレット伯爵は雄弁を得意としていた。
嘘を真実に変えつつ、私兵を後方の王兵まで走らせていたのだ。
その間には各貴族にも救援を要請。
自身の失敗を隠す為に救援を頼んだのだ。
その理由を知るレイモンド伯爵は討ち死にしていた。
ランブルト侯爵も狂気にやられ逃げ出そうとしている。
ライラック王国側五万に対して獣国側は六万であった。
ランブルト侯爵の兵を糾合して、六万。
互角の戦いだが、後方よりも援軍は来ている。
逃げる理由が無くなれば、勝てると言う無茶な理論を吐きながら対峙していたのだった。
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