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本章
じごく
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“良い策士は戦う前に決着を着ける。”
誰の何の本に書かれたか、読んだ言葉だと思う。
思うが、それには二通りの事を指すのだろう。
一つは策略による食糧を兵馬を使えない様にする事。
もう一つは天災や無謀な行動によって起こる事になる。
今回のいくさ?逝くさ?いや、遠征か。
グリーンシティに向かっての行軍は、まさに後者である。
食糧は最低限で、百万の軍隊と二万の貴族とその家族及び国民達が付き従っていた。
国が攻めてきたと騒ぐ事だが、それだけの人数になると一日で10キロ進むのがやっとである。
砂漠化のお陰で皇国の砂漠地帯が百キロと五十キロの先に緑があるのだが、砂漠を越えるまでに時間が掛かり過ぎるのだ。
進軍したが、残された人々がいた。
孤児や貧乏人、病人と老人である。
盗賊などの犯罪者も砂漠に向かったのだ。
その為に暗く酷いながらも助け合いではあるが、風前の灯火でありながらも、表面的に明るくはあるが、内心は怯えていたのだ。
生きている以上、死は恐ろしいのだ。
二日後。
進軍が始まり、町に残された人しか居なくなって二日で死を悟った人が多い。
それは食糧だけでなくて、生活面で不都合が多くなっているからだ。
町なら家はあるが、着替えがない。
飲み水すらまともに無いのだ。
砂漠が水を吸うからだ。
飲み水が無くなれば死を待つだけとなる。
次の日が恐くなる。
3日目に、あり得ない事が起こった。
旅人が来たのだ。
旅をしたいからであろうが、此処に食事、飲み水がないのだからどうする事もないのだが、旅人は病人から救済に入ったのだ。
旅人は一人だけでは無く、20人は居るだろう。
いや、それ以上かも知れないが、人々を手なずけてしまった。
理由など知らないが、餓える事が無くなるのだ。
彼等がいる場所では。
ーーーーーーーーーー
進軍とは名ばかりの進行は野望に見あった行軍は出来ていない。寧ろ後退しているのだ。
停滞なんて事もない、後退だ。
それは、進軍して四日目。
砂漠地帯で、70キロを過ぎた頃に先頭の兵と魔物が戦い出した。
最初はゴブリンの群れで、五十匹程度の獲物であった。
実はゴブリンを狙うのは人だけは無い。
ワーム系が狙っていたのだろう。
小規模な戦いが勝手に拡大するのは何時もの事になるのだが、その熾烈な戦いに変わってしまうのに時間が掛からなかった。
次から次へと魔物が襲い、それを兵が押し返す。
進行が止まり、攻防一体を続けるのは砂漠である。
百万の軍隊も暑い陽射しの中の戦闘で疲労困憊となる。
それだけではない、疲労は貴族、その家族、着いて来た国民達も同じであった。
それも5日で終るのだから。
被害だけで、撤退できる程なのだ。
生きて新たな土地を得る事だけがこの進軍の意義なのだから、撤退の二文字は無い。進軍だけが生きる希望だから。
だが、そんな妄想は続かなかった。
一人づつ倒れて行った。
多くの人を切り捨てたが、既に貴族及び家族と皇帝一派と兵士だけで、約三万。
水、食糧も既に底になり、まともに動ける兵はいない。
しかし、貴族達と皇帝一派は水を食糧を無造作に食べていたのだ。
そして、それらの物が人の血と肉になるのに時間は掛からなかった。
付き従って来た兵は、血も肉も皇帝の為に捧げた事になる。
悪夢から覚める時が来た。
それは水のような色をしていた。
大きな水溜まりだった。
誰もが我先にと水にありついたと思った。
一人がうめき声を立てると、連鎖のように水を飲んだ人間はうめき声をあげ出した。
無味無臭の水溜まりから百メートル離れた場所から、魔物が現れた。
魔物の名前を分かり易く言うと、ポイズンウォーターリザード。
無味無臭の麻痺毒を作る魔物で、大きさは牛程ある。ランクはCなのだが、一匹なら手を掬う程の量しか出ないので集団で襲うのが特長である。
大きな水溜まりなので、かなりの数が砂に潜んでいたのだ。
弱肉強食。
食い残しも無く、約三万の人が消えたのだ。
皇国はこうして勝手に滅びてしまったのだった。
一人、ルミエッタは手紙を書いていた。
ナインの事をどう伝えたら良いか悩みながら。
一生懸命に考えて、両親に送る手紙を書いていた。
嬉しそうに、時にはハニカミながら、想いも告げない様に書いていたのだ。
自分の手紙でどうなったのかも知らずに。
誰の何の本に書かれたか、読んだ言葉だと思う。
思うが、それには二通りの事を指すのだろう。
一つは策略による食糧を兵馬を使えない様にする事。
もう一つは天災や無謀な行動によって起こる事になる。
今回のいくさ?逝くさ?いや、遠征か。
グリーンシティに向かっての行軍は、まさに後者である。
食糧は最低限で、百万の軍隊と二万の貴族とその家族及び国民達が付き従っていた。
国が攻めてきたと騒ぐ事だが、それだけの人数になると一日で10キロ進むのがやっとである。
砂漠化のお陰で皇国の砂漠地帯が百キロと五十キロの先に緑があるのだが、砂漠を越えるまでに時間が掛かり過ぎるのだ。
進軍したが、残された人々がいた。
孤児や貧乏人、病人と老人である。
盗賊などの犯罪者も砂漠に向かったのだ。
その為に暗く酷いながらも助け合いではあるが、風前の灯火でありながらも、表面的に明るくはあるが、内心は怯えていたのだ。
生きている以上、死は恐ろしいのだ。
二日後。
進軍が始まり、町に残された人しか居なくなって二日で死を悟った人が多い。
それは食糧だけでなくて、生活面で不都合が多くなっているからだ。
町なら家はあるが、着替えがない。
飲み水すらまともに無いのだ。
砂漠が水を吸うからだ。
飲み水が無くなれば死を待つだけとなる。
次の日が恐くなる。
3日目に、あり得ない事が起こった。
旅人が来たのだ。
旅をしたいからであろうが、此処に食事、飲み水がないのだからどうする事もないのだが、旅人は病人から救済に入ったのだ。
旅人は一人だけでは無く、20人は居るだろう。
いや、それ以上かも知れないが、人々を手なずけてしまった。
理由など知らないが、餓える事が無くなるのだ。
彼等がいる場所では。
ーーーーーーーーーー
進軍とは名ばかりの進行は野望に見あった行軍は出来ていない。寧ろ後退しているのだ。
停滞なんて事もない、後退だ。
それは、進軍して四日目。
砂漠地帯で、70キロを過ぎた頃に先頭の兵と魔物が戦い出した。
最初はゴブリンの群れで、五十匹程度の獲物であった。
実はゴブリンを狙うのは人だけは無い。
ワーム系が狙っていたのだろう。
小規模な戦いが勝手に拡大するのは何時もの事になるのだが、その熾烈な戦いに変わってしまうのに時間が掛からなかった。
次から次へと魔物が襲い、それを兵が押し返す。
進行が止まり、攻防一体を続けるのは砂漠である。
百万の軍隊も暑い陽射しの中の戦闘で疲労困憊となる。
それだけではない、疲労は貴族、その家族、着いて来た国民達も同じであった。
それも5日で終るのだから。
被害だけで、撤退できる程なのだ。
生きて新たな土地を得る事だけがこの進軍の意義なのだから、撤退の二文字は無い。進軍だけが生きる希望だから。
だが、そんな妄想は続かなかった。
一人づつ倒れて行った。
多くの人を切り捨てたが、既に貴族及び家族と皇帝一派と兵士だけで、約三万。
水、食糧も既に底になり、まともに動ける兵はいない。
しかし、貴族達と皇帝一派は水を食糧を無造作に食べていたのだ。
そして、それらの物が人の血と肉になるのに時間は掛からなかった。
付き従って来た兵は、血も肉も皇帝の為に捧げた事になる。
悪夢から覚める時が来た。
それは水のような色をしていた。
大きな水溜まりだった。
誰もが我先にと水にありついたと思った。
一人がうめき声を立てると、連鎖のように水を飲んだ人間はうめき声をあげ出した。
無味無臭の水溜まりから百メートル離れた場所から、魔物が現れた。
魔物の名前を分かり易く言うと、ポイズンウォーターリザード。
無味無臭の麻痺毒を作る魔物で、大きさは牛程ある。ランクはCなのだが、一匹なら手を掬う程の量しか出ないので集団で襲うのが特長である。
大きな水溜まりなので、かなりの数が砂に潜んでいたのだ。
弱肉強食。
食い残しも無く、約三万の人が消えたのだ。
皇国はこうして勝手に滅びてしまったのだった。
一人、ルミエッタは手紙を書いていた。
ナインの事をどう伝えたら良いか悩みながら。
一生懸命に考えて、両親に送る手紙を書いていた。
嬉しそうに、時にはハニカミながら、想いも告げない様に書いていたのだ。
自分の手紙でどうなったのかも知らずに。
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