転生国主興国記

hinomoto

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本章

イルミナ神国の滅亡へのプレリュード

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イルミナティ砦では驚きしか無かった。
昨日までは砂漠の大地だったのに、朝になるとその大地が緑で覆われているのだ。
水が溢れる肥沃の大地と言葉通りの姿であったのだ。
そして道があるのだ。此方に向かうのと、向こうに続く道がだ。
考えて分かるモノでは無いが、砦では呆然としていた。

街では歓迎ムードに浸っていた。
懐かしい顔が街に帰って来たのだ。
その顔も名前も帰って来るまで忘れていたのだから、おっちょこちょいな住民である。

「お帰り!ナインちゃん!」

「た、ただいま。」

速攻でアイに心で抗議を行っていたが。
既に記憶の改竄をしているアイには頭がさがる。
それだけなら良いのだが、ベッタリなのは気恥ずかしいモノである。
まぁ、身長差があるのだから恋人にもならないが、子供の内と内心も理解はしているし、作り物も分かってはいるが、耐性がない独り身だった男にはハードルが高いのだ。
風俗には行っていたので、魔法使いでは無いが、素人童貞ではある。
本当に子供で良かったよ。
ナインは赤くなりながらも街を進んだ。
進んで顔を会わせると、住人は思い出してくれる。置き換えられた記憶に。

「ナイン!」

記憶の改竄でイルミナティでもエイトの名前は出ない。
そして、アイが側に居るのが当たり前となっているのだが、何故なのか分からないのに受け入れていた。美人だから怪しむ事も無いのかもしれない。
そして、砦と向かうのだ。
砦からはデムスター兵長が迎えてくれた。

「良くお出でになった、ナイン様とアイ殿。」

「お久し振りです、デムスター兵長。」

優雅に貴族女性が行う礼をしたのだが、アイへの抗議は続いている。
不意にデムスター兵長の顔が曇り、ナインの顔を見ながら、

「済まない、砂漠・・・いや、元砂漠なのか分からないが、使者が来ているのだ。お相手が出来ないのだが、許されよ。」

「デムスター兵長、頼みたい事があります。」

これまた不意にアイが割り込んだ。

「な、何でしょうか、アイ殿?」

「その使者に会わせて頂きたいのです。」

「へっ?」

「そ、それは良い考えですね!」

やけくそに成りながらもナインも同意する。
此には頭を悩まされるが、即座に解決するのだ。
コン、コン。

「兵長、報告があります。」

「し、失礼。」

「なんだ?」と扉を開けて報告を聞くと、デムスター兵長の顔色が変わる。

「ナ、ナイン様、使者が会うそうです。」

「分かりました。」

「お、お待ち下さい!」

慌てて立とうとする二人を止めた。

「使者が此方に来るそうです。此方でお待ち下さい。」

何がどうなれば、こんな事が起こるか分からず、混乱していたのだ。砦自体が。
使者が直ぐにやって来て、

「我が神よ。」

と膝まつくワルキューレ。
アイさんお仕事早いですねーと、血を流したい気持ちのナイン。
その後ろから、ガオン、メアリ夫妻とテトがお辞儀してくる。

「ナイン様、遅くなりました。」

「うん。ご苦労様。」

と和気あいあいと会談をしていた。
デムスター兵長だけでなく、その場にいた砦の兵の混乱振りが酷くなる。
何故、記憶も無くなった少女が元砂漠の使者と知り合いなのかが不思議であった。

「後は此方でやりますので、マスターはグリーンシティにどうぞ。」

「あれは完成したか?」

「ナイン様!凄かったですよ!あれは凄いです!」

テトが笑顔で話しかけてくる。
ナインとっては嬉しい出来事でもある。

「このまま行きますか、マスター?」

「そうだな。」

立ち上がり外に出ていったのだ。ワルキューレを残して。
誰も意識が追い付かないので、判断もつかないまま見送ってしまったのだ。
ワルキューレは手を振りながら見送ったが、見送る必要も無いのに。

砦の門に行くと、車が停まっていた。
ナイン一行は何の躊躇も無く乗り込むのだが、門で警備していた兵にとっては、どう判断をすれば良いか分からずにいたら、車が走り出したのだ。
止める間もなく走り出したのだ。
中では和気藹々な話が続いていた。
他にはイルミナ神国内の70%が宗派替えをしたことを、アイが受け取っていたのだ。
イルミナ教会でしていなかった、地方での無償の奉仕と食料の配布と介護と農村の改革を進めただけである。
死と隣合わせの世界で、無駄な労働をせず、安心安全な食料を確保できるのだから、改宗に時間はいらない。
お金も貰わず、施しも貰わず、何も要求せずに、病人を治し、田畑を改善し、食事を与え、短い教えを広めるだけ。
権力に負ける?
Bランクの魔物を一人で倒せる僧侶が十人で来ているのに?
Bランクは最低でも同ランクの冒険者なら五人以上で三人は怪我をすると言うもの。
それを一人で楽に倒せるなら?
この時点で人々がどちらに着くか分かること。
それ以上の存在も明かしているのだから。
こうして神龍教が展開していったのだ。
ナインが居ない時こそ好機であるのだから。
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