転生国主興国記

hinomoto

文字の大きさ
上 下
182 / 253
本章

エイトという少年

しおりを挟む
砂漠を警戒していた兵は飽き飽きしていた。
毎日同じ風景を見ているし、軍隊の影も形も見たことがない。その為に飽きてしまい垂れてしまう。
その日も昼前に砂漠を見て昼飯を食べる予定だったので、気だるく見て、びっくりしてしまう。
人が倒れているからだ。
慌てて上官に知らせる。

「申告!人が倒れています!」

「なに!」

「砂漠方面に人が倒れているそうです!」

この時は幸運が重なったのだ。
いつもの意地悪な上官ではなく、人に優しい上官が昼の間、交代していたのだ。

「なんと、騎兵を出して救助に向かえ!」

「はっ!」

迅速に命令は遂行された。
砂漠では何が起こるか分からないが、何も起こらず救助が出来た。
戦闘も起こらず、無事に帰還する。

「救助班を!息があります!」

「こちらへ!」

タスキの様に医師に子供が渡される。

「女の子はどうだ!」

「心拍はある!よし!薬を!」

「飲ませる事ができません!」

「貸せ!」

薬ヒールポーションを含むと口移しで、体内に流し込んだ。

「どうだ!飲んだぞ!」

「良し!息が安定したな。この子を診察室に移動させるぞ!」

子供を抱き抱えて診察室に向かって行った。
残った隊員は自身の事を称えていた。
砦の兵は救った隊員を誉めた。

「良くやったな!しかし、街道を離れていたのに襲われなかったな!」

「はははは!日頃の行いだな!」

「だな!」

「しかし、あの子は何故街道を離れた場所に倒れたのだろう?」

「ま、助かったのだから、良いのではないか。」

「そ、そうだな!」

「でも、良く魔物が出なかったよ。」

「・・・・・・・」

話が止まってしまうほどに考えてしまうようだ。

「おーい、上官から褒美出るってよ。直ぐに取りに行けー。」

「「「はっ!」」」

直ぐに、兵達が其々の部所に戻って行った。

診察室では、男性禁制にて治療が行われていた。
身体の診察と治療する為、汲まなく調べる必要があった。

「まぁ!」

女医からの報告で男の子であることが分かった。
顔も姿も女性なのだが、性器で判別がついたのだ。
ただ、この時に関わった女医と看護婦2名は事あるごとに、この少年を手厚く看護という名の可愛がりを見せた。
トイレは遠慮されたが、着替えや食事、ご飯をかまうのは当たり前で、三人が代わる代わるついていた。
それと少年を助けた騎兵隊の人に、事ある毎に、

「まぁ、お、男で間違いないの?」

と聞かれたのは嫌であったが、基本は優しいので許している。
3日後には元気になり、上官の所に出向いたのである。

「デムスター兵長さん、いますか?」

扉越しだが、可愛らしい声がきこえる。

「入りたまえ。」

自分で入室の許可を出したが、いまだに信じられない位に可愛い少年が入ってくる。
兵長も男だで年も35才で子供も二人いるのに、胸の高鳴りは止まらなかった。

「失礼します。」

入ってくる少年を見ながら、悔やむ思いに駆られる自分を抑えて、

「元気になったようだね、エイトさん。」

と、ニコニコしているのだが、

「あの、年下なので呼び捨てか君を付けて頂けるとありがたいのですが。」

そう言うと、デムスター兵長は顔を赤くして、

「い、いや、うん。そ、そうだな。え、エイト君。」

「はい。」

間髪入れず返事が帰ってくるが、声は女性であり返事した顔にドキューと心をやられてしまう。
デムスター兵長は机にうつ伏してしまう。

「どうされました、デムスター兵長さん?」

「ご、ご心配なく!」

赤い顔や火照りはどうしようもないが、動悸を納める事に集中した。既に汗が湧き出てしまいどうする事も出来ない。

「そうですか。では改めて、この度は倒れていた所を助けて頂き、ありがとうございます。」

丁寧にお辞儀をしてお礼を述べる。
デムスター兵長の心は更に高鳴ってしまう。

「いや、礼など!そんな対した事もしてませんし、とにかく、どうか!どうか!」

何故か不自然な状態で立ち上がり喋る。

「あのー、デムスター兵長さん?」

「な、なんですかな。」

「何で頭を上げて、私を見てくれないのですか?」

「・・・・・・・・」

急に黙るデムスター兵長は口を真一文字につぐんでいた。
恥ずかしさ爆発状態であり、心の葛藤が凄かっただろう。

「えっと、お邪魔でしたね。すみません、下がります。」

失礼しましたと出ていくエイトと、やっと顔を挙げるデムスター兵長。

「ぷはっー!」

汗を流し、一気に疲れたのか椅子に雪崩れ込んでしまう。

「無理だったー。無理無理無理無理無理、普通に扱うこと出来ないよー。」

恐ろしく唸ってしまう。
扉が再びノックされて開いた。

「兵長!どうなされました?!」

入った兵士は兵長の姿に驚いてしまう。

「いや、ほらエイトさんが来たのだよ。」

その言葉にほっとする兵士。

「ご苦労様でしたね、兵長。」

「ありがとう。妻も子供も居るが、こんなに緊張してしまう事はないわ。」

汗に気がつきタオルで拭き取るが、汗は止まらない。

「兵長でも、無理でしたか。」

「無理。どうにも出来ない。エイトさんにお礼を頂いたから汗も動悸も止まらないよ。はははは。」

と、笑顔で返したが、兵士の雰囲気が変わる。
労をねぎらう顔から無表情に、穏和な雰囲気から殺気を纏う。

「デムスター兵長。」

「な、なにかなー。」

「お話しだけでなく、お礼ですか?」

「う、うん。」

「お礼を言われたのですか?」

「ま、まて!違うぞ!」

「はははは、お礼を貰ったんですか!そうですか!ロリコンは殺しましょう!」

「お、お前だって、話し掛けられただけで、鼻血を出してたくせに!」

「はははは!貴方を捕まえたら私の容疑も晴れるでしょう!」

「何を!返り討ちだ!」

男二人のつまらない戦いが起こってしまう。
兵長は知らない。
この兵はエイト親衛隊No.10であることを。

「羨ましい!」

「知らんわ!ボケが!」

争いが起きていた。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪
ファンタジー
勇者パーティに属するルーナ(17)は悩んでいた。 補助魔法が使える前衛としてスカウトされたものの、勇者はドスケベ、取り巻く女の子達は勇者大好きという辟易するパーティだった。 しかも勇者はルーナにモーションをかけるため、パーティ内の女の子からは嫉妬の雨・・・。 そんな中「貴女は役に立たないから出て行け」と一方的に女の子達から追放を言い渡されたルーナはいい笑顔で答えるのだった。 「ホントに!? 今までお世話しました! それじゃあ!」  ルーナの旅は始まったばかり!  第11回ファンタジー大賞エントリーしてました!

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...