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53話 パーティー3

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タクト達が心配の為、急いで会場に戻ろうと城内に入ると酷い状況だった。
侵入者や衛兵の死体がそこら辺にあった、それでも何処かで戦っている音が聞こえる。
付いてきたグリム達も思わず顔を引き釣らせる。

「酷いな……」
「まさか城が襲われるなんて…… 」
「…… 今はみんなの所に急ぐぞ」

周りの光景を見て先程の感触を思い出しそうになった所で後ろにいた兵の一人が倒れる、意識を切り替えながら肩越しに倒れた兵を見ると首を斬られ即死。
周りを警戒しながらグリム達から距離を取る、首筋にヒヤリとした何かを感じその場を離れると次の瞬間首のあった場所を何かが通った。 

「コウタ!?」
「来るな!」
「えぇ、これは私と彼の問題なの。部外者は手を出さないでくれる?」

現れたのはいくつもの短剣を身に付けた女性だった、女性は俺を睨みながら言う。

「久しぶりね、裏路地の時以来ね。奪われたものを返しに貰いに来たわ」
「?」

久しぶり? 裏路地? 俺が奪った?

全く見に覚えが無く彼女の姿を見ると二つ短剣を納めていたであろう空きがあった。

もしかして…… 

思わず上着の中に隠していた短剣を触ってしまう、そんな俺を彼女は目敏く見つけ嫌な笑みを浮かべる。

「やっぱり持ってるじゃない…… 、返して貰うわよ」

あぁ、こいつが裏路地でヒルダ達を襲った…… 、名前はセリエだったか……?

「なら、魔剣は返すから退いてくれないか?」
「はっ……、 ーーー殺して奪い返すに決まってるでしょ!」

セリエが一本の短剣に触れると俺とセリエを囲う様に薄い膜が覆う、 膜の外にいるグリムが驚いたように叫ぶ。

「結界か!」
「結界……?」
「そう、誰にも邪魔をされずに貴方を殺すためにね」

異様な執着を見せるセリエに苛立ちを覚えながらも注視する、さりげなく一本の短剣に触れたのを見た。
嫌な感じがし、後ろに跳ぶと先程居たところに岩の刺が突き出ていた。
串刺しにされていても不思議ではない状況に思わず逃げ腰になりそうになる。

「まさか持ってるもの全部魔剣なのか……?」
「むしろ普通の剣を持ってる意味ある?」

滅茶苦茶な答えに思わず呆然としそうになる、結界の外のグリムに関しては「コイツは何を言ってるんだ…… 」と思わず口にしてしまっている。

その間にもセリエに迫ろうとするも魔剣に触れる度に恐らく強化されているであろう魔法が襲ってくる、足元からの刺を避けながらこちらに放たれた炎の槍を受け流す。
休む暇も無くひたすらに避け、流し体力も魔力も無くなっていく。

「ほらほらぁ! そんなもんじゃ無いでしょ? もっと頑張りなさい」
「こっ、のぉ!」

セリエは一本の魔剣を取り出し剣先を俺に向けた。

「ほら、まだまだあるわよ? 」

魔剣から風を起こす、その風は徐々に強くなって魔剣を中心に渦巻いている。
剣を左に振れば周りを巻き込みながらも風が動く、セリエはそれを確認し俺の顔を見て微笑んできた。

「気味が悪いから微笑まないでくれるか」
「あら、自分ではそれなりに顔は良いと思うけど?」
「性格の悪さが顔に滲んでる」
「ふふ…… 、本当に殺したいわ貴方」

こちらの言葉に少しイラついたのか、歩いて来る。

「近付かなくても殺れるのに何で来るんだよ」
「こっちの方が楽しいでしょ?」
「やっぱりイカれてるよ、お前……」

今までは遠距離からの魔法で近づく暇も無かったが、多少距離があるとはいえ相手から来てくれてしかも遊んでいる。

ーーー攻めるならここしか無い……!

だが、そんなことはセリエも分かっているだろう。魔剣で風を消そうと取り出せば当然警戒するだろう、だとすれば魔剣を使わずにあの風を掻い潜る?
考えながらチラッとセリエの持つ魔剣を見ると、今も剣には風が渦巻き周りを切り裂き、巻き込んで行く。

行けるのか?

だいぶ不安になり念のために魔剣をすぐに取り出せるようにしておく。

「はぁ…… 」
「溜め息を吐くと幸せが逃げるわよ?」
「 お前がいなくなれば逃げていった幸せが帰ってくるかもな」
「あら? じゃあ貴方は永遠に幸せになれないかもね」
「一生付きまとうつもりか……」
「貴方と私、片方が消えない限り縁は切れないわよ?」
「……後で厄払いでもしてもらうか…… 、ん?」

線が見えた。
セリエと今も吹き荒れる魔剣の間に、一本の線が見えたのだ。

セリエが魔剣を振る、風は周りを切り裂きながらこちらへ向かってくる。
受け流す事は出来ない、魔剣で打ち消そうとすれば何かしらの行動に出るだろう、避けるとなれば距離が空き先程と同じ様に反撃する暇も無くなるだろう。

ーーー今しか無い。

「あっ……」
「は……?」

行動して気付いた時には状況は変わっていた、思い浮かんだ対策は頭から抜け先程から視界に入っていた"線"を斬った、風に剣を飛ばされない様に一瞬で切り払う。
"線"を切り払われるのと同時にあれだけ周りを荒らし回った風は消え、風に巻き込まれていた色々な物が周りに放られる。

「「……… 」」

互いの視線がぶつかり動き出す。

「ーーー らあっ!」
「チッ!」

突然風が消え混乱したが、これはチャンスだった。そこまで考え動き出す、それを見て舌打ちをしながらセリエが下がろうとする。

届く、殺れるーーー 

そんな確信を持ちながら、斬ろうとすると目の前に突然大きな壁が現れ防がれた。
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