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45話 勇者の片鱗
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「っ!ーーユミもそうだが、流石勇者と言うべきか、強いな……」
「軽く流している人が言っても全然褒められてる気がしませんよ」
タクトはそう言いながら再びアインさんの懐に飛び込もうとする、それをアインさんは上手く立ち回り避ける。
そこからは斬る、防ぐ等を続ける。
「うへぇ……、あんな近くでよく戦えるな……」
「コウタさんでも出来るでしょ」
タクト達がインファイトをしているのを見ながら言葉を漏らすとユミが何を言ってるんだ?、という顔をしながら言った。
「いやいや、無理だから……。反応出来ないって」
「ふーん……」
…自分で聞いてきた癖に素っ気ない返事をされて少しへこんでいると状況が動き出した。
タクトは色んな属性の魔法で牽制しながら接近、そのまま近距離でも魔法を撃ち込みながら剣を振るう。
それに対してアインさんは避けれる物は避け、無理な魔法は切り払う等とどっちも滅茶苦茶な事をしている。
「!、この距離からの魔法を斬るなんてっ、凄いですねっ!」
「まぁ、お前達よりは長い事戦ってるからな」
「なら、これならどうですか!」
そう言った瞬間、タクトの姿が突然アインさんの後ろに現れる。
「ふっ……!」
「転移か!」
アインさんは驚きながらもタクトの奇襲を何とか防ぐ、しかし少し無理をしたのか体勢が少し崩れた。
「そこ!」
「ぐっ……」
タクトはそこを見逃さず突いていき流れが変わり始めた。
先程までは涼しげな表情で打ち合っていたアインさんも少し眉を寄せる、それを見てタクトが更に踏み込もうとする。
「それは駄目」
「ん?」
ユミがタクトを見ながら苦言を漏らす。どういう意味なのだろう?、と思いながら再び戦ってる二人に意識を向けるとアインさんはタクトが踏み込みをカウンターで対応してきた。
タクトとそれに気付き剣を振るがアインさんの方が速くアインさんはその剣で空を斬った。
「な…に……?」
アインさんが思わず声に出す、間違いなくタクトに当たるはずだった剣はあと一歩と言う所を振り抜いていた。
そしてタクトはアインさんの首筋に剣をそっと近付け。
「俺の勝ちですね」
「……あぁ」
最後の展開に思わずみんな茫然とする。
ーーーそれにしても最後のあれは何だったんだろう?、転移という感じでは無かったような……。
転移したにしては違和感が無いと言うか何と言うか。
「ん~、腹減ったなぁ……」
私は目の前で起きた事で頭が一杯だった、タクト君が最後にやった事。あれは転移では無い、転移ならば"そこに移動した"と分かるからだ。
だけど、タクト君のはそういう認識すら出来ず、元々一歩後ろにいた様な感じだった。
ーーーおそらくあれは、時間を戻した。
でも周りも、という訳ではなく自分だけを戻したのだろう。それでもそれなりに魔力を持ってかれた様で少しタクト君の呼吸が乱れている。
時間を弄る時に気付かれない様にみんなの記憶も弄っているのだろう、だから見ている対象が多ければ多い程、使われる魔力も多くなる。もちろん進む、又は戻る時間によっても使用量は変わるだろう。
私はそういう知識や耐性があるから気付けた、……気付いてしまった。
いつか自分の役割を明かしタクト君達の旅に同行する時が来るのだろう。
そんなことを考えながら周りの人達が気付いているか見てみるとコウタがタクト君達の所を見ながら何やら難しそうな顔をしていた。
ーーーまさか気付けた!?、コウタは私の予想だと使徒ではあるけど特別な物は何も無い。女神の干渉を免れたのも理由がある、それでも何かしらに気付けたのはコウタが常人よりも勘という物が優れているのだろう。
彼の戦歴、そして内容を聞く限りとてもじゃないが死んでいてもおかしくない者達ばかりだ。それでも生き残ったのは運が本当に良かったのと、勘が優れていたのだろう。
コウタは難しそうな顔を暫くしたと思ったら急に府抜けた顔になり、何かを呟き、そして。
「ーーーあ~、腹減った」
……分かってる、みんな気付いて無いんだから、それが普通なのは分かってはいる。それでも少し頭を叩きたい気持ちが湧いてしまったのはしょうがないと思う、……そう思いたい。
「…何処かで期待しちゃってるのかな……」
もしかしたら、コウタならーーー。と心の何処かで思ってしまってるのかも知れない、彼は別に特別な人間では無いのは分かっているのに、そんな期待は常人にとっては重荷にしかならないのを知っているのに……。
「軽く流している人が言っても全然褒められてる気がしませんよ」
タクトはそう言いながら再びアインさんの懐に飛び込もうとする、それをアインさんは上手く立ち回り避ける。
そこからは斬る、防ぐ等を続ける。
「うへぇ……、あんな近くでよく戦えるな……」
「コウタさんでも出来るでしょ」
タクト達がインファイトをしているのを見ながら言葉を漏らすとユミが何を言ってるんだ?、という顔をしながら言った。
「いやいや、無理だから……。反応出来ないって」
「ふーん……」
…自分で聞いてきた癖に素っ気ない返事をされて少しへこんでいると状況が動き出した。
タクトは色んな属性の魔法で牽制しながら接近、そのまま近距離でも魔法を撃ち込みながら剣を振るう。
それに対してアインさんは避けれる物は避け、無理な魔法は切り払う等とどっちも滅茶苦茶な事をしている。
「!、この距離からの魔法を斬るなんてっ、凄いですねっ!」
「まぁ、お前達よりは長い事戦ってるからな」
「なら、これならどうですか!」
そう言った瞬間、タクトの姿が突然アインさんの後ろに現れる。
「ふっ……!」
「転移か!」
アインさんは驚きながらもタクトの奇襲を何とか防ぐ、しかし少し無理をしたのか体勢が少し崩れた。
「そこ!」
「ぐっ……」
タクトはそこを見逃さず突いていき流れが変わり始めた。
先程までは涼しげな表情で打ち合っていたアインさんも少し眉を寄せる、それを見てタクトが更に踏み込もうとする。
「それは駄目」
「ん?」
ユミがタクトを見ながら苦言を漏らす。どういう意味なのだろう?、と思いながら再び戦ってる二人に意識を向けるとアインさんはタクトが踏み込みをカウンターで対応してきた。
タクトとそれに気付き剣を振るがアインさんの方が速くアインさんはその剣で空を斬った。
「な…に……?」
アインさんが思わず声に出す、間違いなくタクトに当たるはずだった剣はあと一歩と言う所を振り抜いていた。
そしてタクトはアインさんの首筋に剣をそっと近付け。
「俺の勝ちですね」
「……あぁ」
最後の展開に思わずみんな茫然とする。
ーーーそれにしても最後のあれは何だったんだろう?、転移という感じでは無かったような……。
転移したにしては違和感が無いと言うか何と言うか。
「ん~、腹減ったなぁ……」
私は目の前で起きた事で頭が一杯だった、タクト君が最後にやった事。あれは転移では無い、転移ならば"そこに移動した"と分かるからだ。
だけど、タクト君のはそういう認識すら出来ず、元々一歩後ろにいた様な感じだった。
ーーーおそらくあれは、時間を戻した。
でも周りも、という訳ではなく自分だけを戻したのだろう。それでもそれなりに魔力を持ってかれた様で少しタクト君の呼吸が乱れている。
時間を弄る時に気付かれない様にみんなの記憶も弄っているのだろう、だから見ている対象が多ければ多い程、使われる魔力も多くなる。もちろん進む、又は戻る時間によっても使用量は変わるだろう。
私はそういう知識や耐性があるから気付けた、……気付いてしまった。
いつか自分の役割を明かしタクト君達の旅に同行する時が来るのだろう。
そんなことを考えながら周りの人達が気付いているか見てみるとコウタがタクト君達の所を見ながら何やら難しそうな顔をしていた。
ーーーまさか気付けた!?、コウタは私の予想だと使徒ではあるけど特別な物は何も無い。女神の干渉を免れたのも理由がある、それでも何かしらに気付けたのはコウタが常人よりも勘という物が優れているのだろう。
彼の戦歴、そして内容を聞く限りとてもじゃないが死んでいてもおかしくない者達ばかりだ。それでも生き残ったのは運が本当に良かったのと、勘が優れていたのだろう。
コウタは難しそうな顔を暫くしたと思ったら急に府抜けた顔になり、何かを呟き、そして。
「ーーーあ~、腹減った」
……分かってる、みんな気付いて無いんだから、それが普通なのは分かってはいる。それでも少し頭を叩きたい気持ちが湧いてしまったのはしょうがないと思う、……そう思いたい。
「…何処かで期待しちゃってるのかな……」
もしかしたら、コウタならーーー。と心の何処かで思ってしまってるのかも知れない、彼は別に特別な人間では無いのは分かっているのに、そんな期待は常人にとっては重荷にしかならないのを知っているのに……。
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