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30話 撤退とその後2
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「ーーえぇ、出来たら側に置きたいわ」
「むぅ……」
とある一室で親子が話し合いをしていた。
「だがなぁヒルダ、その青年がどんな者か知らんのだろう?」
「うっ……」
「たしかにボロボロの体で無理をして助けてくれたのは分かるがなぁ」
そこでヒルダの隣で座って静かにしていたジークが言う。
「でも父さんあの人は意識が無いのに僕達を助けてくれたんだよ?」
「無意識に脅威になる者に襲い掛かっただけかも知れんぞ?」
「だから念のためにルルを付けたんでしょ?」
「本当ならアインも付けたい所だが……」
「心配し過ぎよ父様は」
すると扉をノックする音と共に聞き覚えのある声が聞こえた。
「ルルです、入っても宜しいでしょうか」
「うむ」
「失礼致します……、お客様がお目覚めになられました」
「ほんと!で、どうだった彼!?」
「ヒルダ……」
「姉さん……」
「え、えっと……、普通のお方でしたよ? 」
「普通ぅ?」
「えー、私なんか駄目なこと言っちゃいましたか?」
「あははは……、ルルさんは悪く無いよ。ただ姉さん…、それと僕もちょっと納得は出来ないかなって」
「ほう、何故だ?」
「だって意識が無いからって魔力すっからかんの状態で戦って短剣を掌にぶっ刺して無理矢理止めたんだよ?しかも無表情で」
「ヒルダ言葉遣い………。ふむ、確かに普通では無いな」
「でしょ? あ、それでルル、彼はどうしてる?」
「どうやらお医者様の言うとおり動けないみたいです、今は寝ていられるかと」
「そっかじゃあ明日にでも顔を出しに行こうかしら」
「では、私も行こう」
「父様は来なくていい」
「いやでもなぁ……」
「こ・な・い・で」
「うーん困ったなぁ……」
「ですねぇ……」
そして父親と娘の言い争いは母親が来るまで続き弟とメイドは溜め息を吐くばかりだった。
「ん"ーーー!」
次の日、思わず舌打ちをしたくなる程の清々しい青空と共に体を伸ばす。
「ふんっ!…ふへぇ……久しぶりに体を伸ばすと気持ちいいなぁ……」
あれ?体が動かせる……。メイドさんの言った感じだともうちょっと休まないと駄目っぽい感じだったし……。
「ーーーお客様、入っても宜しいでしょうか?」
「あ、はい」
扉をノックと共に聞いてきたメイドさんに返事をするとメイドさんの他に5名程入ってきた。
「何か用で……多い……」
「……だから言ったのよ私とジークだけで良いって……」
「ユリアその話は昨日で終わっただろう」
「でも彼困ってるじゃない、だから父様達は部屋から出て。後は私とジークに任せて」
「お前なぁ」
「ーーー二人共、お客様の前ですよ」
「「………」」
急に親子喧嘩が始まったと思えば美人な母親に叱られ黙る二人。他の人もそうだけどファンタジーの世界は何でこんなに顔面偏差値が高いのか。
「えっと…?」
「ごめんなさいね?夫と娘が」
「い、いえ別に大丈夫です!」
「なら良かった」
「……ん"ん"! まぁ混乱してるのはよく分かるが質問しても良いか?」
「え、はい…」
「魔力がまだ回復して無いのによく動けるな」
「へ?魔力は一晩寝たら回復しましたよ?」
「は?」
「えー……と、若いから?」
『………』
何で魔力が回復しただけでこんな怪しそうな目で見られなきゃアカンのだ……。
「ではもう1つ…、君はこの街にどうやって来た?街に来てからの記憶はあるか?」
「えっと、街には……」
タクト達の事って言って良いのか?でも魔族と戦ってる勇者だし言っても大丈夫か。
「実はーーー」
「ふむ……」
父様が顎に手を添えて考えている。
正直に言うと私も信じられなかった、彼ーーー、コウタが言うには王国のヘリック王子と勇者達と一緒にいたやら魔族に襲われ皆を逃がしたやら。本当に勇者と王子の知り合い……。
「んん?」
「姉さんどうかした?」
「んーちょっとね……。ねぇ、コウタ?」
「お?」
「ヘリック王子ってデイリース王国のヘリック王子よね?」
「そうだけど?何だよ自分の国のトップだぞ?」
「え……っと、コウタ……?」
「な、なんだよ……」
「ここね帝国」
「帝国?あぁ隣のね。ーーーテイコクぅ?」
「うん、王国のお隣にある帝国」
「……ここが?」
「そう、ここが」
「………いやいや、タクトの奴どんだけずらしてるんだよ……、もう誤差とかそういう範囲じゃ無いぞこれ……」
頭を抱え何かを呟いている、流石に混乱してるのね。と思ったら『いやまず俺が魔法石に傷付けたからイケないんじゃね!?』とか言ってる落ち込んだと思ったら急に元気になって情緒不安定なのかしら?
落ち着いた所に父様が声を掛ける。
「君は何者なんだ?」
「へ?学生です?」
何となくだが彼がどういう人なのか分かった気がする………。
「むぅ……」
とある一室で親子が話し合いをしていた。
「だがなぁヒルダ、その青年がどんな者か知らんのだろう?」
「うっ……」
「たしかにボロボロの体で無理をして助けてくれたのは分かるがなぁ」
そこでヒルダの隣で座って静かにしていたジークが言う。
「でも父さんあの人は意識が無いのに僕達を助けてくれたんだよ?」
「無意識に脅威になる者に襲い掛かっただけかも知れんぞ?」
「だから念のためにルルを付けたんでしょ?」
「本当ならアインも付けたい所だが……」
「心配し過ぎよ父様は」
すると扉をノックする音と共に聞き覚えのある声が聞こえた。
「ルルです、入っても宜しいでしょうか」
「うむ」
「失礼致します……、お客様がお目覚めになられました」
「ほんと!で、どうだった彼!?」
「ヒルダ……」
「姉さん……」
「え、えっと……、普通のお方でしたよ? 」
「普通ぅ?」
「えー、私なんか駄目なこと言っちゃいましたか?」
「あははは……、ルルさんは悪く無いよ。ただ姉さん…、それと僕もちょっと納得は出来ないかなって」
「ほう、何故だ?」
「だって意識が無いからって魔力すっからかんの状態で戦って短剣を掌にぶっ刺して無理矢理止めたんだよ?しかも無表情で」
「ヒルダ言葉遣い………。ふむ、確かに普通では無いな」
「でしょ? あ、それでルル、彼はどうしてる?」
「どうやらお医者様の言うとおり動けないみたいです、今は寝ていられるかと」
「そっかじゃあ明日にでも顔を出しに行こうかしら」
「では、私も行こう」
「父様は来なくていい」
「いやでもなぁ……」
「こ・な・い・で」
「うーん困ったなぁ……」
「ですねぇ……」
そして父親と娘の言い争いは母親が来るまで続き弟とメイドは溜め息を吐くばかりだった。
「ん"ーーー!」
次の日、思わず舌打ちをしたくなる程の清々しい青空と共に体を伸ばす。
「ふんっ!…ふへぇ……久しぶりに体を伸ばすと気持ちいいなぁ……」
あれ?体が動かせる……。メイドさんの言った感じだともうちょっと休まないと駄目っぽい感じだったし……。
「ーーーお客様、入っても宜しいでしょうか?」
「あ、はい」
扉をノックと共に聞いてきたメイドさんに返事をするとメイドさんの他に5名程入ってきた。
「何か用で……多い……」
「……だから言ったのよ私とジークだけで良いって……」
「ユリアその話は昨日で終わっただろう」
「でも彼困ってるじゃない、だから父様達は部屋から出て。後は私とジークに任せて」
「お前なぁ」
「ーーー二人共、お客様の前ですよ」
「「………」」
急に親子喧嘩が始まったと思えば美人な母親に叱られ黙る二人。他の人もそうだけどファンタジーの世界は何でこんなに顔面偏差値が高いのか。
「えっと…?」
「ごめんなさいね?夫と娘が」
「い、いえ別に大丈夫です!」
「なら良かった」
「……ん"ん"! まぁ混乱してるのはよく分かるが質問しても良いか?」
「え、はい…」
「魔力がまだ回復して無いのによく動けるな」
「へ?魔力は一晩寝たら回復しましたよ?」
「は?」
「えー……と、若いから?」
『………』
何で魔力が回復しただけでこんな怪しそうな目で見られなきゃアカンのだ……。
「ではもう1つ…、君はこの街にどうやって来た?街に来てからの記憶はあるか?」
「えっと、街には……」
タクト達の事って言って良いのか?でも魔族と戦ってる勇者だし言っても大丈夫か。
「実はーーー」
「ふむ……」
父様が顎に手を添えて考えている。
正直に言うと私も信じられなかった、彼ーーー、コウタが言うには王国のヘリック王子と勇者達と一緒にいたやら魔族に襲われ皆を逃がしたやら。本当に勇者と王子の知り合い……。
「んん?」
「姉さんどうかした?」
「んーちょっとね……。ねぇ、コウタ?」
「お?」
「ヘリック王子ってデイリース王国のヘリック王子よね?」
「そうだけど?何だよ自分の国のトップだぞ?」
「え……っと、コウタ……?」
「な、なんだよ……」
「ここね帝国」
「帝国?あぁ隣のね。ーーーテイコクぅ?」
「うん、王国のお隣にある帝国」
「……ここが?」
「そう、ここが」
「………いやいや、タクトの奴どんだけずらしてるんだよ……、もう誤差とかそういう範囲じゃ無いぞこれ……」
頭を抱え何かを呟いている、流石に混乱してるのね。と思ったら『いやまず俺が魔法石に傷付けたからイケないんじゃね!?』とか言ってる落ち込んだと思ったら急に元気になって情緒不安定なのかしら?
落ち着いた所に父様が声を掛ける。
「君は何者なんだ?」
「へ?学生です?」
何となくだが彼がどういう人なのか分かった気がする………。
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