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青年期:法国
神達
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かつて地球は全てを中心に回っていると言っていた人間がいたらしい。
現代科学を知るエルピスではそんな事実などあり得ないと知っているが、魔法が存在するこの世界において天動説も地動説もまるで意味がないことなど語るまでもないだろう。
世界の果てを散歩すればそこには巨大な塩の壁があり、その壁を乗り越えれば滝のような場所から水が滴り落ちて世界を支える亀にぶつかりその下に咲く巨大な花を湿らせている可能性すらある。
神は神でも全能の神でないエルピスは驚くほどに何も知る事ができていない。
そんなことを改めてエルピスが認識できたのは、パーナに教えられたとっておきの場所に来てからだった。
視界を少し外してみればそこに広がるのは満天の星空と光り輝く流れ星、辺り一面は大きな砂漠なのだが星空の光を浴びた砂はまるで空を写しとるかのように地面を光らせる。
息を呑むほどの絶景、こんなところが探せば簡単に見つかるあたり世界というのはやはり美しい。
「お待たせ、待った?」
いつだってデートというのは不思議なほどに心を躍らせる。
小綺麗な格好に身を包み、ロームにどんな服装がいいかを相談して、まるで自分には似合っていないと思えるような服を着ながらエルピスは先に到着していた先人に対して声をかける。
「いま来たところよ。なんだか人間のカップルみたいね」
「初々しくて良いじゃん。待ち合わせ場所ここなのもポイント高いでしょ?」
声をかけた相手はセラだ。
相変わらずゆったりとした服装を着込んでいる彼女はエルピスの言葉に対して微笑を浮かべながらいたずらっ子のような目線を向けてくる。
「そう言うのは普通言わないのよ。それで? 今日はどこかに連れて行ってくれるの?それとも何かをするの? 私に何か言うことがあるとか?」
「全部お見通しってわけ?」
「お見落としが無いのは確実よ」
なんだか聞いたことのない言い回しだが、実際考えが透かされているのは事実なのだろう。
恋のABCだかなんだかを早足で最近スキップしている様な気がしていたが、これに関してはエルピスは自分の意思でしっかりといつ申し込むのかは決めていた。
有名な話で戦地に赴いた兵士が帰ったら結婚する約束を取り付ける事があるが、エルピスから言わせてみれば生きて帰れるのかも分からないのに最愛の人と添い遂げる約束をしないなど信じられないものだ。
「じゃあ見透されてることを分かってて言うけどさ、ちょっと歩きながら話しない?」
「もしかして予定変更?」
「人生予定通りに行かないもんだからね。さすがにセラ相手にドッキリは難しいや」
「なんだかごめんなさいね。それじゃあ少し歩きましょうか」
見通されるとなんだかやりにくさは感じるが、それだけ自分のことをよく見られていると思えばむしろそんな事にも嬉しさを感じられる。
一瞬視界を下に落としたエルピスはセラがヒールとまでは言わずとも踵の高い靴を履いている事に一瞬考えを巡らせるが、いくら砂地とはいえセラの身体能力を考えれば多少歩いても問題はなさそうである。
「なんだかあっという間だったね。気が向いたらもうセラとあってから8年とかだっけ」
「10歳の時に貴方と出会ったから……まぁその前後くらいね。小さい貴方は結構可愛かったわよ」
「そんなこと言ったらセラだって可愛かったよ? いまは綺麗って感じだけどね」
砂を軽く蹴飛ばすようにして地面と戯れながら、エルピスとセラは過去のことを思い出す。
初めて会ったのは教会を通じて召喚された神の世界、ロームの代わりにセラのところへと飛ばされたのはいま思えば創生神の手が入っていそうだ。
「あらありがとう。どうやら追いかけてもらえるような人に見えているようね」
「隣に立てる人間で入れているか心配なくらいだよ」
「貴方は貴方でいるだけでいいんだけど……そういう話じゃないのは私も分かってるつもりよ。だって私もそうなんだから」
相手の為に自分を高め続けていられるのならば、それほど素晴らしいことはないだろう。
人は自分のために何かをするときは意外と簡単にあきらめてしまうものだが、誰かのために何かをしようというときは驚くほどの力を見せてくれるものなのだ。
自分が自分であることを認めてくれる相手が隣にいることはこれ以上ない程の喜びだがだからと言って停滞できないのは二人の性質がそういうものだという証明である。
「でもそうね。この一年は随分といろいろあったから、お互いに成長できた気はするわね」
「妖精神の解放ができたのが一番大きな成長かな個人的には。あと二つ称号が残ってるけど、とりあえず戦闘はこれで何とかなりそうでよかった」
「妖精神の力はいまはまだエラに渡しているままなの?」
「そうだよ、アウローラの警護をエラがしたいって言ってたからさ。未来を見通す目とか天災魔法とか気になることはいくつかあるけど、実験はまた今度になりそうかな」
妖精神の力の中でエルピスが気になっているのは主に二つ。
未来を見通すことのできる妖精神の目と神級魔法を超える天災魔法は使用される神の称号によってその効果を変質させるのだが、妖精神の称号によって放たれる魔法がどのようなものになるのかはエルピスとしては興味をそそられることの一つである。
「戦闘中に未来が見れるようになれば幅が広がるからしっかりと特訓しないといけないわね」
「その時はセラが相手になってくれる?」
「もちろん構わないわよ」
他愛もない会話と重ね、二人で手をつなぎながら砂の海を歩いていると何とも言えない幸せが胸の内から溢れ出す。
会話の間に何度かタイミングを計ってみるがどのタイミングで言い出せばいいものか。
元々の計画は既に破綻しているので、その場のノリで何とかするしかない事は分かっているのだが失敗することを考えると恐怖心も胸の中に生まれてくる。
引き伸ばし続けていればいつかは良いタイミングも見えてくるのかもしれないが、それではこちらからの言葉を待ってくれているセラに失礼というものだろう。
「話がそれちゃったから戻すよ。俺の告白聞いてくれる?」
「これだけ待たせているのだから、それはそれは素晴らしい言葉が聞けるのかしら?」
「ハードル上げないでよ。でもそうだね、うん。一回しか言わないから聞き逃さないでよ」
「もちろん」
セラの赤い瞳に射抜かれて、エルピスは一瞬自分が何を口にしようとしていたかを忘れてしまいそうになる。
その美しさはまさに愛を司る女神であり、彼女が本気を出せば意図も容易く落とされていただろうエルピスは、一度大きく深呼吸を挟んで人生でたった一度だけ目の前の人物に捧げる言葉を口にする。
「セラ。一生俺の側に居てほしいんだ、結婚してください」
「──はいっ」
その時、初めてセラが泣いた。
この世界に来てから、一度たりとも涙を見せたことのなかった彼女が初めて涙を流したのだ。
嬉しそうにほほを上げて涙を流す彼女の姿はきっとこれから先の長い人生でもそう見ることはないだろう。
そう確信できるほどに彼女にとって今回の出来事は特別なことであり、エルピスは恥ずかしさにほほを赤くしながらも両手を開けて涙を流し続けるセラを抱きしめた。
「セラが泣くなんて珍しいね」
「それだけ嬉しいってことですよ」
そうやってどれくらいかの間、エルピスはセラを抱きしめていた。
セラは意外と恥ずかしがり屋なので人前でこういった行為をするのを嫌がるため、エルピスとしエルピスとしてもなんだか新鮮な気持ちだ。
少しするとセラの涙も止まり落ち着いたようである。
「落ち着いた?」
「ええ、少しだけ。でもいまはこうして居てください」
「……こうしてると、迷宮の時を思い出すな」
「思えばあの時告白してから随分と長い時間が経ちましたね」
この世界にきて初めて王国以外の場所へといったタイミングであり、クラスメイト達と出会ったことで不安定になり始めていたエルピスの精神状態を安定させてくれていたのは間違いなくセラだった。
自分が人を殺したことやこの世界で生きていくことについて悩んでいたあの時、セラがああして隣にいてくれなければ自分が壊れてしまっていたかもしれないとエルピスは考えている。
あれからも何度となく助けてもらっているエルピスだが、何よりも記憶に残っているのはやはりあのタイミングだ。
誰も知らない二人っきりの秘密を思い出し、セラはほんのすこし照れくさそうにしている。
愛される存在であって愛する存在でない彼女が何とか振り絞って出した告白の言葉は、実はロームがその話を聞いて驚きのあまり神としての業務を完全に止めて話に聞き入ってしまうほどの重大なことだったのだ。
「告白された時は本当にびっくりしたよ。女の子に告白されたのは初めてだったから」
「あれでも緊張しながら言ったんですよ」
「そうだったの? 緊張してるようには見えなかったよ」
そうやって仲良く会話を楽しんでいたエルピスがふと何かを思い出したようにしてぴたりと止まる。
敵が来たわけでもなし、他の彼女たちのことを思い出している様子でもないエルピスを前にしてセラはほんの少しだけ自分の時間を他に使われている嫉妬心からほほを膨らませながらエルピスへと問いかけた。
「……どうかした?」
「やっばいかも。創生神がこの前夢に出てきて忠告してきたんだけどそれをガッツリ忘れてた」
聞いてみればセラからしてみればその程度の事だったのかというべき程度の事だったが、エルピスからしてみれば重要なことだった。
創生神の思惑が何にしろ、いまのところ彼の言う事に従っておいた方がよかったことしかない。
いまさら取り返しのつかないことなのでまぁ仕方がないかとエルピスが切り替えようといったん思考の外にそれを置こうとすると、それを許さないとばかりにまばゆい光がエルピスたちの目の前を包み見覚えのある黒い影が視界の中央を占領する。
「──焦るのが遅いんだよ」
そうして創生神はエルピスたちの前に現れた。
湖の中央にぼんやりと浮かぶ黒い影、神という概念そのもののような存在が確かにそこにはいた。
抱き合っている男女の目の前にいきなりやってくるなど人としてどうかと思うのだが、野外でそんなことをしている方が悪いと言われればそれまでである。
創生神は目があるかも分からないその陰の姿のまま、だが確かにエルピスではなくセラを見ていると感じさせる視線でゆっくりとエルピスたちに近寄った。
手を伸ばせば届くような距離、なんだかんだとあってこなかったセラと創生神の対面はこうしてなんともあっけなく達成される。
「やぁセラ久しぶり」
「…………久しぶり」
拒絶するつもりはなくとも、人間性を獲得しているセラは人の心を持たない創生神を見て少しだけ引いてしまう。
神として頭で彼のことについては理解できるはずなのに、それでもその神の特性がなんとも不気味なのだ。
そんなセラの態度に対して創生神は特に何も感じていなさそうな雰囲気を出しながら、まぁ座りなよと自分も地面に腰を下ろす。
「そんな反応しないでよ傷つくな。普通にエルピスの隣にいてくれればいいんだ、変に俺に気を使う必要はないよ」
「元から気を使うつもりはありませんよ。貴方はエルピスの前世でしかないですから」
「随分と好かれたもんだねエルピス。だけどセラ、口調敬語に戻ってるよ?」
指摘され、セラは顔を赤くした後にそれよりもさらに濃く青い顔を浮かべると泣きそうな顔をエルピスに見せる。
いまの状況を正確に表現するのであれば、元カレとイマ彼が結局適切な関係性なのだろう。
創生神がまるで自分の彼女のようにして扱っていることに少し不満が湧き出し、エルピスは分かりやすく自分の薬指に付けられた指輪を見せつけながら少し威圧しながら創生神を引き離す。
「俺の嫁を虐めないでくださいよ」
「……これは手厳しいことを言うな、妬けてきたよ。ニルとだけ結婚する件だけど、ぶっちゃけあれはもう大丈夫になったんだ。セラが法国の第三王女を治療してくれたからね」
「あの子が何か関係あったんですか?」
法国の第三王女といえば薬によってその自我を失ってしまっていたフィーユの事だ。
セラが治療に当たったおかげで回復の兆しを見せているフィーユだが、彼女を助けたこととニルとの結婚がどう関係するというのだろうか。
「法国の存続は彼女がここで死ぬかどうかにかかってたんだよ。それを分かっていたからセラも無理をして治療をしたんだろう?」
「私は私がみんなのためにやれることをやっただけ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
「それで良いんだよ。相変わらず気遣いのできるいい子だね、ニルと結婚して魔界に幽閉されたエルピスが魔王として人間たちに干渉するルートにならなくてよかったよ」
「用事はそれだけなんですか?」
「さすがにまだ用事はあるよ。わざわざこんなどこぞの鹿の神みたいな登場の仕方したんだから神託くらい下ろしていくさ」
いままでのところ創生神の言っていることは全て正しい。
エルピスにとってはどうか別として、少なくとも創生神がニルやセラにとって悪い状況を作り出さないことくらいは理解しているつもりだ。
もはや疑うつもりもなく、エルピスは素直にその神託を聞くことにした。
「戦況は終局、ここに来るまでに拾えたものと拾えなかったものがあるのは君もわかってるだろう? 拾えなかったものはもはや拾うこともできないが、拾えたルートを予想することはできる。淫魔の国の神、人類生存権の第三の神、そして鬼神とこの世界最強の神である戦神。破壊神との戦局を左右するのはこの四柱だ。君が誰に会って誰と戦うか、決めるのはキミだけどね」
「随分と今回は教えてくれるんですね」
「それくらい差し迫ってるってことさ。ニルが向かってきてるから俺は消えるよ、じゃあね」
来た時と同じように唐突に立ち去ろうとする創生神は神らしく何とも身勝手なものである。
消えていく創生神の影はゆっくりとセラの方へと歩いていき、彼女の頭を撫でたかと思うと耳元で何かを呟いて光の粒へとなって消えていく。
セラの身体能力を考えれば嫌であれば頭を撫でられることを拒否するなど造作もないこと。
だが彼女がその頭を無造作に明け渡し、あまつさえ耳元で囁かれることすら許すのはエルピスからしてみれば面白くない。
そんなエルピスを笑うように笑みを浮かべた創生神はそうしてどこかへと消えていった。
「本当なんなんですか……あの人は」
「本当だね、つぎ会う機会があったら絶対に締める」
固く決意を胸にしたエルピスがそうして何とも言えない空気の中撤収の準備をしていると、ふと湖の空間がひどく湾曲していく。
それは尋常ではない魔力によって次元を直接捻じ曲げるような荒業。
この領域に入る許可を持っていない人物がこの領域に無理矢理押し入るために外と内を隔てている空間を無理やり飛ばしてこの領域内に侵入しようとしている証である。
「呼ばれて飛び出て僕だよ! エルピス呼んだ?」
「俺じゃない方の俺だよ呼んだの」
「……なるほどね。随分と僕をコケにしてくれるじゃないか」
嬉しそうな、悔しそうな、何とも言えない表情を浮かべているニルはいったいどんな胸中なのだろうか。
何かと意味を求めようとするあの男の事だ、ニルに会わなかった事にも何かの理由があるというのだろう。
何かを考えているような素振りをしているニルは少しすると二人で立っているセラとエルピスに目を向ける。
今日は用事があるから外すと二人に言われていたのでデートをしていたこと自体は知っている。
だがエルピスはデートをする場合全員一回ずつするようにしているので本格的なデートであれば自分の方にも何かあってしかるべきだとニルは考える。
てっきり戦闘訓練だと考えていたのに綺麗な湖のほとりで二人でいる姉とエルピスを見たらニルの腹の底はなんだか怒りで熱を帯びずにはいられなかった。
「それで? 僕も教えられていないこんな場所でエルピスは姉さんと何をしていたのかな?」
「怖いから怒んないでよ。ほらそこ立って」
「ここでいいのかい?」
怒っていてもエルピスに言われればニルは素直に言われた通りの場所に立つ。
場所はエルピスにとってこの湖であれば特に関係はないのでニルを一旦落ち着かせるための物だ。
「うん、そこでいいよ」
「こんな景色のキレイな場所で片膝ついてるとなんだかプロポーズみたいだね」
照れるように頬をかきながらそんな事を口にするニル。
みすかされているのかそれとも分かりやすすぎるのか。
自分のみっともなさになんだか笑いがこみあげてきて少し下を向いて笑みを抑えると、エルピスは先ほどセラに申し込んだ時と同じくらいの気持ちを込めて心からの言葉を伝える。
「そうだよ。俺と結婚してくれないか? ニル」
「――ッ!! 姉さん! 姉さん!!」
エルピスが発した言葉の意味を一瞬理解できなかったのかフリーズしていたニルは、少々の読み込み時間を経てバッとセラの方に顔ごと向ける。
泣き顔と笑顔を足して半分で割ったような顔、愛の女神がするような顔ではないが恋する乙女が最高の幸せを手に入れた時の顔としてはこれ以上の物はないだろう。
頭を撫でてよかったねと言ってあげたい気持ちはあるが、それよりもセラがまず優先するべきは喜ぶニルの少し奥で告白が成功したのかどうか分からなくてどぎまぎしているエルピスだろう。
「なんで私に振るのよ。まずエルピスの告白に答えて上げなさい」
「エルピス!」
言われるが早いがニルはエルピスに抱き着いた。
エルピスの手の中に有った指輪を目にも止まらぬ速さで左手の薬指に取り付け、神としての全力を込めてエルピスに感謝の気持ちを伝える。
「ニル? 嬉しいけど力加減! 死んじゃうから! ホントに死ぬ!!」
「愛する女の腕の中で死ぬなんて随分とうらやましいわねエルピス」
「セラそれ本当に言ってる? 俺死んじゃうよ?」
最近なんだか死生観に関する考え方が変わってきていると思う今日この頃。
いくら回復魔法を使えば死にかけ新鮮なら無理やり起こせるとは言え死にかけるのはさすがに不味い。
なんとかニルを落ち着かせようといろいろと頑張った結果、10分ほどでニルから離れた。
「姉さんが泣いたっぽい雰囲気あったからなんだと思ったらそういう事だったんだね。僕もちょっと泣いちゃったよ」
「やめなさい。それでエルピス、他の三人にもプロポーズはするんでしょう?」
「もちろん。ただ他の三人には一緒に帰省することを言ってあるからうすうす感づかれてるかもしれないけど」
「きっといい思い出になるよ。僕が保証する」
愛の女神に保障されたなら、きっとうまく行くのだろう。
それでもプロポーズに対しての緊張感というものは薄れることはなく、どきどきする気持ちは変わらない。
「まあでも今日一日は僕と姉さんでもらうけどね。こんないい場所秘密にしてたなんて姉さんも酷いよ」
「良いじゃないニルだってここに来たんだから」
いまはこの二人と共に平和に過ごそう。
さざ波一つない綺麗な湖を見ながらエルピスは空を眺めるのだった。
現代科学を知るエルピスではそんな事実などあり得ないと知っているが、魔法が存在するこの世界において天動説も地動説もまるで意味がないことなど語るまでもないだろう。
世界の果てを散歩すればそこには巨大な塩の壁があり、その壁を乗り越えれば滝のような場所から水が滴り落ちて世界を支える亀にぶつかりその下に咲く巨大な花を湿らせている可能性すらある。
神は神でも全能の神でないエルピスは驚くほどに何も知る事ができていない。
そんなことを改めてエルピスが認識できたのは、パーナに教えられたとっておきの場所に来てからだった。
視界を少し外してみればそこに広がるのは満天の星空と光り輝く流れ星、辺り一面は大きな砂漠なのだが星空の光を浴びた砂はまるで空を写しとるかのように地面を光らせる。
息を呑むほどの絶景、こんなところが探せば簡単に見つかるあたり世界というのはやはり美しい。
「お待たせ、待った?」
いつだってデートというのは不思議なほどに心を躍らせる。
小綺麗な格好に身を包み、ロームにどんな服装がいいかを相談して、まるで自分には似合っていないと思えるような服を着ながらエルピスは先に到着していた先人に対して声をかける。
「いま来たところよ。なんだか人間のカップルみたいね」
「初々しくて良いじゃん。待ち合わせ場所ここなのもポイント高いでしょ?」
声をかけた相手はセラだ。
相変わらずゆったりとした服装を着込んでいる彼女はエルピスの言葉に対して微笑を浮かべながらいたずらっ子のような目線を向けてくる。
「そう言うのは普通言わないのよ。それで? 今日はどこかに連れて行ってくれるの?それとも何かをするの? 私に何か言うことがあるとか?」
「全部お見通しってわけ?」
「お見落としが無いのは確実よ」
なんだか聞いたことのない言い回しだが、実際考えが透かされているのは事実なのだろう。
恋のABCだかなんだかを早足で最近スキップしている様な気がしていたが、これに関してはエルピスは自分の意思でしっかりといつ申し込むのかは決めていた。
有名な話で戦地に赴いた兵士が帰ったら結婚する約束を取り付ける事があるが、エルピスから言わせてみれば生きて帰れるのかも分からないのに最愛の人と添い遂げる約束をしないなど信じられないものだ。
「じゃあ見透されてることを分かってて言うけどさ、ちょっと歩きながら話しない?」
「もしかして予定変更?」
「人生予定通りに行かないもんだからね。さすがにセラ相手にドッキリは難しいや」
「なんだかごめんなさいね。それじゃあ少し歩きましょうか」
見通されるとなんだかやりにくさは感じるが、それだけ自分のことをよく見られていると思えばむしろそんな事にも嬉しさを感じられる。
一瞬視界を下に落としたエルピスはセラがヒールとまでは言わずとも踵の高い靴を履いている事に一瞬考えを巡らせるが、いくら砂地とはいえセラの身体能力を考えれば多少歩いても問題はなさそうである。
「なんだかあっという間だったね。気が向いたらもうセラとあってから8年とかだっけ」
「10歳の時に貴方と出会ったから……まぁその前後くらいね。小さい貴方は結構可愛かったわよ」
「そんなこと言ったらセラだって可愛かったよ? いまは綺麗って感じだけどね」
砂を軽く蹴飛ばすようにして地面と戯れながら、エルピスとセラは過去のことを思い出す。
初めて会ったのは教会を通じて召喚された神の世界、ロームの代わりにセラのところへと飛ばされたのはいま思えば創生神の手が入っていそうだ。
「あらありがとう。どうやら追いかけてもらえるような人に見えているようね」
「隣に立てる人間で入れているか心配なくらいだよ」
「貴方は貴方でいるだけでいいんだけど……そういう話じゃないのは私も分かってるつもりよ。だって私もそうなんだから」
相手の為に自分を高め続けていられるのならば、それほど素晴らしいことはないだろう。
人は自分のために何かをするときは意外と簡単にあきらめてしまうものだが、誰かのために何かをしようというときは驚くほどの力を見せてくれるものなのだ。
自分が自分であることを認めてくれる相手が隣にいることはこれ以上ない程の喜びだがだからと言って停滞できないのは二人の性質がそういうものだという証明である。
「でもそうね。この一年は随分といろいろあったから、お互いに成長できた気はするわね」
「妖精神の解放ができたのが一番大きな成長かな個人的には。あと二つ称号が残ってるけど、とりあえず戦闘はこれで何とかなりそうでよかった」
「妖精神の力はいまはまだエラに渡しているままなの?」
「そうだよ、アウローラの警護をエラがしたいって言ってたからさ。未来を見通す目とか天災魔法とか気になることはいくつかあるけど、実験はまた今度になりそうかな」
妖精神の力の中でエルピスが気になっているのは主に二つ。
未来を見通すことのできる妖精神の目と神級魔法を超える天災魔法は使用される神の称号によってその効果を変質させるのだが、妖精神の称号によって放たれる魔法がどのようなものになるのかはエルピスとしては興味をそそられることの一つである。
「戦闘中に未来が見れるようになれば幅が広がるからしっかりと特訓しないといけないわね」
「その時はセラが相手になってくれる?」
「もちろん構わないわよ」
他愛もない会話と重ね、二人で手をつなぎながら砂の海を歩いていると何とも言えない幸せが胸の内から溢れ出す。
会話の間に何度かタイミングを計ってみるがどのタイミングで言い出せばいいものか。
元々の計画は既に破綻しているので、その場のノリで何とかするしかない事は分かっているのだが失敗することを考えると恐怖心も胸の中に生まれてくる。
引き伸ばし続けていればいつかは良いタイミングも見えてくるのかもしれないが、それではこちらからの言葉を待ってくれているセラに失礼というものだろう。
「話がそれちゃったから戻すよ。俺の告白聞いてくれる?」
「これだけ待たせているのだから、それはそれは素晴らしい言葉が聞けるのかしら?」
「ハードル上げないでよ。でもそうだね、うん。一回しか言わないから聞き逃さないでよ」
「もちろん」
セラの赤い瞳に射抜かれて、エルピスは一瞬自分が何を口にしようとしていたかを忘れてしまいそうになる。
その美しさはまさに愛を司る女神であり、彼女が本気を出せば意図も容易く落とされていただろうエルピスは、一度大きく深呼吸を挟んで人生でたった一度だけ目の前の人物に捧げる言葉を口にする。
「セラ。一生俺の側に居てほしいんだ、結婚してください」
「──はいっ」
その時、初めてセラが泣いた。
この世界に来てから、一度たりとも涙を見せたことのなかった彼女が初めて涙を流したのだ。
嬉しそうにほほを上げて涙を流す彼女の姿はきっとこれから先の長い人生でもそう見ることはないだろう。
そう確信できるほどに彼女にとって今回の出来事は特別なことであり、エルピスは恥ずかしさにほほを赤くしながらも両手を開けて涙を流し続けるセラを抱きしめた。
「セラが泣くなんて珍しいね」
「それだけ嬉しいってことですよ」
そうやってどれくらいかの間、エルピスはセラを抱きしめていた。
セラは意外と恥ずかしがり屋なので人前でこういった行為をするのを嫌がるため、エルピスとしエルピスとしてもなんだか新鮮な気持ちだ。
少しするとセラの涙も止まり落ち着いたようである。
「落ち着いた?」
「ええ、少しだけ。でもいまはこうして居てください」
「……こうしてると、迷宮の時を思い出すな」
「思えばあの時告白してから随分と長い時間が経ちましたね」
この世界にきて初めて王国以外の場所へといったタイミングであり、クラスメイト達と出会ったことで不安定になり始めていたエルピスの精神状態を安定させてくれていたのは間違いなくセラだった。
自分が人を殺したことやこの世界で生きていくことについて悩んでいたあの時、セラがああして隣にいてくれなければ自分が壊れてしまっていたかもしれないとエルピスは考えている。
あれからも何度となく助けてもらっているエルピスだが、何よりも記憶に残っているのはやはりあのタイミングだ。
誰も知らない二人っきりの秘密を思い出し、セラはほんのすこし照れくさそうにしている。
愛される存在であって愛する存在でない彼女が何とか振り絞って出した告白の言葉は、実はロームがその話を聞いて驚きのあまり神としての業務を完全に止めて話に聞き入ってしまうほどの重大なことだったのだ。
「告白された時は本当にびっくりしたよ。女の子に告白されたのは初めてだったから」
「あれでも緊張しながら言ったんですよ」
「そうだったの? 緊張してるようには見えなかったよ」
そうやって仲良く会話を楽しんでいたエルピスがふと何かを思い出したようにしてぴたりと止まる。
敵が来たわけでもなし、他の彼女たちのことを思い出している様子でもないエルピスを前にしてセラはほんの少しだけ自分の時間を他に使われている嫉妬心からほほを膨らませながらエルピスへと問いかけた。
「……どうかした?」
「やっばいかも。創生神がこの前夢に出てきて忠告してきたんだけどそれをガッツリ忘れてた」
聞いてみればセラからしてみればその程度の事だったのかというべき程度の事だったが、エルピスからしてみれば重要なことだった。
創生神の思惑が何にしろ、いまのところ彼の言う事に従っておいた方がよかったことしかない。
いまさら取り返しのつかないことなのでまぁ仕方がないかとエルピスが切り替えようといったん思考の外にそれを置こうとすると、それを許さないとばかりにまばゆい光がエルピスたちの目の前を包み見覚えのある黒い影が視界の中央を占領する。
「──焦るのが遅いんだよ」
そうして創生神はエルピスたちの前に現れた。
湖の中央にぼんやりと浮かぶ黒い影、神という概念そのもののような存在が確かにそこにはいた。
抱き合っている男女の目の前にいきなりやってくるなど人としてどうかと思うのだが、野外でそんなことをしている方が悪いと言われればそれまでである。
創生神は目があるかも分からないその陰の姿のまま、だが確かにエルピスではなくセラを見ていると感じさせる視線でゆっくりとエルピスたちに近寄った。
手を伸ばせば届くような距離、なんだかんだとあってこなかったセラと創生神の対面はこうしてなんともあっけなく達成される。
「やぁセラ久しぶり」
「…………久しぶり」
拒絶するつもりはなくとも、人間性を獲得しているセラは人の心を持たない創生神を見て少しだけ引いてしまう。
神として頭で彼のことについては理解できるはずなのに、それでもその神の特性がなんとも不気味なのだ。
そんなセラの態度に対して創生神は特に何も感じていなさそうな雰囲気を出しながら、まぁ座りなよと自分も地面に腰を下ろす。
「そんな反応しないでよ傷つくな。普通にエルピスの隣にいてくれればいいんだ、変に俺に気を使う必要はないよ」
「元から気を使うつもりはありませんよ。貴方はエルピスの前世でしかないですから」
「随分と好かれたもんだねエルピス。だけどセラ、口調敬語に戻ってるよ?」
指摘され、セラは顔を赤くした後にそれよりもさらに濃く青い顔を浮かべると泣きそうな顔をエルピスに見せる。
いまの状況を正確に表現するのであれば、元カレとイマ彼が結局適切な関係性なのだろう。
創生神がまるで自分の彼女のようにして扱っていることに少し不満が湧き出し、エルピスは分かりやすく自分の薬指に付けられた指輪を見せつけながら少し威圧しながら創生神を引き離す。
「俺の嫁を虐めないでくださいよ」
「……これは手厳しいことを言うな、妬けてきたよ。ニルとだけ結婚する件だけど、ぶっちゃけあれはもう大丈夫になったんだ。セラが法国の第三王女を治療してくれたからね」
「あの子が何か関係あったんですか?」
法国の第三王女といえば薬によってその自我を失ってしまっていたフィーユの事だ。
セラが治療に当たったおかげで回復の兆しを見せているフィーユだが、彼女を助けたこととニルとの結婚がどう関係するというのだろうか。
「法国の存続は彼女がここで死ぬかどうかにかかってたんだよ。それを分かっていたからセラも無理をして治療をしたんだろう?」
「私は私がみんなのためにやれることをやっただけ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
「それで良いんだよ。相変わらず気遣いのできるいい子だね、ニルと結婚して魔界に幽閉されたエルピスが魔王として人間たちに干渉するルートにならなくてよかったよ」
「用事はそれだけなんですか?」
「さすがにまだ用事はあるよ。わざわざこんなどこぞの鹿の神みたいな登場の仕方したんだから神託くらい下ろしていくさ」
いままでのところ創生神の言っていることは全て正しい。
エルピスにとってはどうか別として、少なくとも創生神がニルやセラにとって悪い状況を作り出さないことくらいは理解しているつもりだ。
もはや疑うつもりもなく、エルピスは素直にその神託を聞くことにした。
「戦況は終局、ここに来るまでに拾えたものと拾えなかったものがあるのは君もわかってるだろう? 拾えなかったものはもはや拾うこともできないが、拾えたルートを予想することはできる。淫魔の国の神、人類生存権の第三の神、そして鬼神とこの世界最強の神である戦神。破壊神との戦局を左右するのはこの四柱だ。君が誰に会って誰と戦うか、決めるのはキミだけどね」
「随分と今回は教えてくれるんですね」
「それくらい差し迫ってるってことさ。ニルが向かってきてるから俺は消えるよ、じゃあね」
来た時と同じように唐突に立ち去ろうとする創生神は神らしく何とも身勝手なものである。
消えていく創生神の影はゆっくりとセラの方へと歩いていき、彼女の頭を撫でたかと思うと耳元で何かを呟いて光の粒へとなって消えていく。
セラの身体能力を考えれば嫌であれば頭を撫でられることを拒否するなど造作もないこと。
だが彼女がその頭を無造作に明け渡し、あまつさえ耳元で囁かれることすら許すのはエルピスからしてみれば面白くない。
そんなエルピスを笑うように笑みを浮かべた創生神はそうしてどこかへと消えていった。
「本当なんなんですか……あの人は」
「本当だね、つぎ会う機会があったら絶対に締める」
固く決意を胸にしたエルピスがそうして何とも言えない空気の中撤収の準備をしていると、ふと湖の空間がひどく湾曲していく。
それは尋常ではない魔力によって次元を直接捻じ曲げるような荒業。
この領域に入る許可を持っていない人物がこの領域に無理矢理押し入るために外と内を隔てている空間を無理やり飛ばしてこの領域内に侵入しようとしている証である。
「呼ばれて飛び出て僕だよ! エルピス呼んだ?」
「俺じゃない方の俺だよ呼んだの」
「……なるほどね。随分と僕をコケにしてくれるじゃないか」
嬉しそうな、悔しそうな、何とも言えない表情を浮かべているニルはいったいどんな胸中なのだろうか。
何かと意味を求めようとするあの男の事だ、ニルに会わなかった事にも何かの理由があるというのだろう。
何かを考えているような素振りをしているニルは少しすると二人で立っているセラとエルピスに目を向ける。
今日は用事があるから外すと二人に言われていたのでデートをしていたこと自体は知っている。
だがエルピスはデートをする場合全員一回ずつするようにしているので本格的なデートであれば自分の方にも何かあってしかるべきだとニルは考える。
てっきり戦闘訓練だと考えていたのに綺麗な湖のほとりで二人でいる姉とエルピスを見たらニルの腹の底はなんだか怒りで熱を帯びずにはいられなかった。
「それで? 僕も教えられていないこんな場所でエルピスは姉さんと何をしていたのかな?」
「怖いから怒んないでよ。ほらそこ立って」
「ここでいいのかい?」
怒っていてもエルピスに言われればニルは素直に言われた通りの場所に立つ。
場所はエルピスにとってこの湖であれば特に関係はないのでニルを一旦落ち着かせるための物だ。
「うん、そこでいいよ」
「こんな景色のキレイな場所で片膝ついてるとなんだかプロポーズみたいだね」
照れるように頬をかきながらそんな事を口にするニル。
みすかされているのかそれとも分かりやすすぎるのか。
自分のみっともなさになんだか笑いがこみあげてきて少し下を向いて笑みを抑えると、エルピスは先ほどセラに申し込んだ時と同じくらいの気持ちを込めて心からの言葉を伝える。
「そうだよ。俺と結婚してくれないか? ニル」
「――ッ!! 姉さん! 姉さん!!」
エルピスが発した言葉の意味を一瞬理解できなかったのかフリーズしていたニルは、少々の読み込み時間を経てバッとセラの方に顔ごと向ける。
泣き顔と笑顔を足して半分で割ったような顔、愛の女神がするような顔ではないが恋する乙女が最高の幸せを手に入れた時の顔としてはこれ以上の物はないだろう。
頭を撫でてよかったねと言ってあげたい気持ちはあるが、それよりもセラがまず優先するべきは喜ぶニルの少し奥で告白が成功したのかどうか分からなくてどぎまぎしているエルピスだろう。
「なんで私に振るのよ。まずエルピスの告白に答えて上げなさい」
「エルピス!」
言われるが早いがニルはエルピスに抱き着いた。
エルピスの手の中に有った指輪を目にも止まらぬ速さで左手の薬指に取り付け、神としての全力を込めてエルピスに感謝の気持ちを伝える。
「ニル? 嬉しいけど力加減! 死んじゃうから! ホントに死ぬ!!」
「愛する女の腕の中で死ぬなんて随分とうらやましいわねエルピス」
「セラそれ本当に言ってる? 俺死んじゃうよ?」
最近なんだか死生観に関する考え方が変わってきていると思う今日この頃。
いくら回復魔法を使えば死にかけ新鮮なら無理やり起こせるとは言え死にかけるのはさすがに不味い。
なんとかニルを落ち着かせようといろいろと頑張った結果、10分ほどでニルから離れた。
「姉さんが泣いたっぽい雰囲気あったからなんだと思ったらそういう事だったんだね。僕もちょっと泣いちゃったよ」
「やめなさい。それでエルピス、他の三人にもプロポーズはするんでしょう?」
「もちろん。ただ他の三人には一緒に帰省することを言ってあるからうすうす感づかれてるかもしれないけど」
「きっといい思い出になるよ。僕が保証する」
愛の女神に保障されたなら、きっとうまく行くのだろう。
それでもプロポーズに対しての緊張感というものは薄れることはなく、どきどきする気持ちは変わらない。
「まあでも今日一日は僕と姉さんでもらうけどね。こんないい場所秘密にしてたなんて姉さんも酷いよ」
「良いじゃないニルだってここに来たんだから」
いまはこの二人と共に平和に過ごそう。
さざ波一つない綺麗な湖を見ながらエルピスは空を眺めるのだった。
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