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青年期:法国
もはや救えぬ
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場所は変わって法国の何処かにある小さな小屋の中。
ペトロを発見した後に別れたエルピス達だったが、後々地下通路を一人でよたよたと歩く帝国の第一皇女を発見し保護。
回復魔法の付与をニルに丸投げしたエルピスは次の仕事に取り掛かっている。
ここはハイトが事前に作戦行動用に用意していた場所らしく、もし何かあった場合はここに来るようにと言われていたエルピス達は一応警戒用に聖都にエラを残してこの場所へとやってきていた。
部屋の中へと入ってみれば殺風景な最低限度の生活ができそうな家具類と、椅子に腰をかけて話をしていたセラとハイトの姿が目に映る。
先に小屋の中に入って事情を説明したエルピスがレネスに小屋の外へと待機させていたペトロを連れてくるように頼むと、目に見えてハイトの表情が変わった。
「そんな……嘘っすよね?」
絶望を味わった人間はその瞬間を生涯にわたって忘れることができない。
二度とそんな経験をしてしまうことのないように体がそうさせるのだが、だとしてもし一度味わえば生きていられいられないほどの絶望を人が味わうとどうなるのだろうか。
いついかなる時であっても余裕を持って行動する。
そんな信念を生まれてからずっと胸に秘めていたハイトだったが、目の前の光景を前にして膝から崩れ落ちた。
「う──ぁ」
「ふざけるなっ……ふさげるなぁぁぁぁあ!!!」
ハイトの圧に気圧される形で部屋がミシリと音を立てながら軋み始める。
聖人の怒りによって質量を伴った魔力は周囲を無差別に攻撃し始め、その圧は常人であれば十分に意識を手放すほどのものだ。
そんな魔力を放出している本人であるハイトは憤怒に我を忘れ、近くにあったテーブルを蹴り飛ばした。
轟音と共に破壊されたテーブルの破片が部屋の中に飛び散るが、それによって怪我をするような存在は部屋の中には居ない。
普段の彼女からは想像もつかない行動、あまりの怒りに誰も声をかけられないほどだ。
「どこに行くというのかしら?」
「止めるなッ!! アイツは私の可愛い妹に手を出した、このまま生かしておく事なんて出来るわけがない!」
家族だから非道な行いをしていても責める気にはなれずにいたが、その非道な行いが家族へと向かうのであればハイトはそれを許容できるだけの心を残念ながら持ち合わせていない。
神に仕える身としてそれがどうなのかといわれてしまえばよくはないのだろうが、実際問題人が最も大切にするのは自分の次に家族であると法国の神自体が思っているのだから仕方がないだろう。
怒りを露わにするハイトを前にして部屋中の人間が警戒の色を見せるが、そんな中でセラは至って落ち着いて言葉をかける。
「そう。悪いけれど止めさせてもらうわ。作戦はまだ終わっていない。貴方一人の勝手な行動で既にかなりのリスクを背負っているのよ?
これ以上リスクは背負えない」
「例え熾天使が相手でも私は一歩を引く気はない」
神に使える人間として熾天使の強さは理解していることだろう。
ハイトの力を考えればセラを前にしてある程度言葉を吐くだけの事はできるだろうが、勝算があるかと聞かれればほとんど皆無である。
だというのに彼女がセラに対して喧嘩を売らんばかりの勢いで言葉を投げ返すのは、それだけ彼女が焦っている事を示している。
部屋の中を冷たい空気が流れていくが、それに対してレネスは打開策を提示した。
「神ならば──神ならばなんとかなるのではないのか?」
「どういう事っすか?」
ほんの少しではあるがレネスの言葉に反応してハイトの張り詰められた空気が緩む。
彼女にとって神という存在はこのなんとも言えない現状すらも変えてくれるものだと認識されているようだ。
「エルピスの状況がどうなっているかは正直分からんが、アウローラの状況を解決する力が法国の神にあるならばこの少女の状況もなんとかなるのでは、そう思ったのだが」
「……残念っすけどそれは無いっす。ウチの神様は確かに癒しの神っす。
ただそれは瀕死の状況にあるものを復活させる事はできても、世界のルールに従って壊れてしまったものをどうこうする事はできないっす」
癒しの神であるならばなおさら直すことができるのではないか。
そこまで考えていたエルピスの横で、ふとセラとレネスが同時に怪訝な顔をする。
気がつけばレネスに至っては腰の刀に手を添えている程であり、臨戦体制をとっているのはもはや口にするまでもないだろう。
「──なぜ貴方がこの子の状態を知っているのか。もはや聞く必要もないと考えていいのかしら?」
「好きにするといいっす。自分は聖人、敵対したいならタダで死ぬ気は無いっすよ?」
先程までの諭すような言葉とは違い、セラの言葉に込められていたのは敵意と殺意の二つのみである。
未だに状況を理解できていないエルピスはなぜセラがそんな感情をハイトに対してむけているのか分からないが、彼女は理由もなしにそのような事をする人間ではないのでそれなりに大きな理由があるのだろう。
頭がいい人間同士で話を早く進めてくれる分にはありがたいが、それで喧嘩をされては敵わないとエルピスが一歩前へと出る。
「はいはい、喧嘩しない喧嘩しない。レネスもさっきは止めたのになんでいまはやる気満々なのさ」
「止めなければいけないのは分かっているのだが、聖人と戦える事はあまりないのだ……」
レネスに対して止めてくれと口にしたエルピスだったが、そんなエルピスに対してレネスはなにやら不満げなようである。
もしこの場でレネスとハイトの戦闘が巻き起これば聖都に出る被害は壊滅的なものになるので、それだけはエルピスとしては酒なければいけない。
どうしようかと焦っているエルピスの横で、ふとセラがバインダーを取り出してその上にある書類に目を通し始めた。
「貴方達……まぁいいわ。それよりようやく正体を表してくれたわね。
ヴァイスハイト、知恵をその名前に冠する法国出身の聖人であり、狂気のマッドサイエンティスト。
アウローラを攫った共和国暗部への薬の供与から始まり、共和国党首への密告や森妖種の国での妨害工作。
王国襲撃事件の毒物作成や学園都市で使用された薬品類の開発その他諸々と随分この世界で暴れ回っていたみたいね」
それにはセラがここ数年調べていた情報が記載されていたようであり、もはや確定された容疑者に対して調べていた事をセラはつらつらと口にする。
この世界で最もエルピス達と知らず知らずのうちに密接に関わっていた人間、実はそれは雄二や破壊神などではなくハイトだったというのだから世の中分からないものである。
信じられないようなものを見る目でハイトに対して視線を送るエルピスだったが、それに対してハイトは何の悪びれもなく先程までの怒りをどこにやったのか疑問に思えるほどに普段通りの表情で言葉を返してきた。
「それの何がいけない事っすか? 法国の発展、ひいては人類救済の為には必要な事っす」
「そんな……なんだと思っているんですか人の生活を! 人の命を!」
ようやくハイトのしていることに理解が及び、家族や友人を大切にしたいがためにこの世界で力を得ようともがいてきたエルピスはそんなハイトの行動に対して怒りよりも先に驚きと疑問から詰めかけるように言葉を投げる。
ハイトが女性でなければ、出会ってからの期間がなければ胸倉を掴んでいたか下手をすれば攻撃を始めていたかもしれない。
神からの無意識に漏れ出る圧力をその身に受けながらも、ハイトは表情を変えることなくエルピスに対して言葉を返す。
「大切なものっす。この世界で変えられるものなんてないくらいに大事なものっす」
「ならなぜそんな事が出来たんですか?」
「大事なものの数をなるべく減らさないようにするために、多少大事なものが減るのは仕方がない事っす」
人の命を大切であるとするならば、なおさらエルピスからしてみれば理解ができない。
確かに人類がみな誰しも擬似的に聖人のような力を手に入れることができれば、魔物による被害というのは劇的に減少するだろう。
大事なものの数をなるべく減らしたくないというのはそういったところに当たるはずだ。
だとすれば犠牲を覚悟の上で作業を行ったのにも関わらず、自分の妹がその実験に巻き込まれて怒りを露わにするなどなんとも醜い。
「なら貴方が妹がこうなってしまった事に怒りを見せる理由が分からないわね、貴方の言うところの必要な犠牲ではないのかしら」
「家族だけは別っす。家族に比べたらそこら辺を歩いてる奴らの命なんてなんの価値もないっす」
その目は黒く澄んでいる。
愛を語るときのニルのそれと同じ、彼女の家族に対しての感情もまた狂愛のそれなのだろう。
「感情を手に入れたいまなら分かるよ、これが狂人と言うのだろう?」
「それでどうするっすか? 私を殺すっすか?」
「本当はこんなところで戦いたくないんだが、敵ならば殺さねばならないだろう」
ゆっくりと音を立ててレネスの腰から刀が抜かれる。
目にも留まらぬ早さで抜刀できる彼女がわざわざゆっくりと武器を抜いた理由は、共に時間を過ごす中でレネスにも多少なり彼女との繋がりを感じるところがあるからだろう。
もはやいまこの場にいる人間ではこの状況から流れを変えることはできない。
一度戦闘が始まってしまえばハイトの死はほぼ確実だし、エルピスとしても戦闘になるべく入りたくないが入ってしまえばいままでの事を考えるとハイトを殺さざるおえない。
来るはずもない何かの到来を期待しながらゆっくりとエルピスも刀を抜き始めると、刀の中ほどまで見え始めた頃にふと転移魔法が発動された気配を感じ取る。
いまいる場所から別の場所への転移はハイトの行為発覚時にエルピスが禁止したので、そうなると必然的にやってくるのは外部からの人間だ。
「──まぁ。なんて面白そうな状況なのかしら」
その人形のように整った顔を歪め、悪魔のような笑みを携えてやってきたのは帝国第一皇女。
セラやニルが警戒する人間でありレネスが異質と表現した事もある異形、覇王と呼ばれた現帝国帝王をして御しきれなかった最強の暴れ馬。
それこそがこの狂人──エモニ・ミクロシア・センテリアである。
ペトロを発見した後に別れたエルピス達だったが、後々地下通路を一人でよたよたと歩く帝国の第一皇女を発見し保護。
回復魔法の付与をニルに丸投げしたエルピスは次の仕事に取り掛かっている。
ここはハイトが事前に作戦行動用に用意していた場所らしく、もし何かあった場合はここに来るようにと言われていたエルピス達は一応警戒用に聖都にエラを残してこの場所へとやってきていた。
部屋の中へと入ってみれば殺風景な最低限度の生活ができそうな家具類と、椅子に腰をかけて話をしていたセラとハイトの姿が目に映る。
先に小屋の中に入って事情を説明したエルピスがレネスに小屋の外へと待機させていたペトロを連れてくるように頼むと、目に見えてハイトの表情が変わった。
「そんな……嘘っすよね?」
絶望を味わった人間はその瞬間を生涯にわたって忘れることができない。
二度とそんな経験をしてしまうことのないように体がそうさせるのだが、だとしてもし一度味わえば生きていられいられないほどの絶望を人が味わうとどうなるのだろうか。
いついかなる時であっても余裕を持って行動する。
そんな信念を生まれてからずっと胸に秘めていたハイトだったが、目の前の光景を前にして膝から崩れ落ちた。
「う──ぁ」
「ふざけるなっ……ふさげるなぁぁぁぁあ!!!」
ハイトの圧に気圧される形で部屋がミシリと音を立てながら軋み始める。
聖人の怒りによって質量を伴った魔力は周囲を無差別に攻撃し始め、その圧は常人であれば十分に意識を手放すほどのものだ。
そんな魔力を放出している本人であるハイトは憤怒に我を忘れ、近くにあったテーブルを蹴り飛ばした。
轟音と共に破壊されたテーブルの破片が部屋の中に飛び散るが、それによって怪我をするような存在は部屋の中には居ない。
普段の彼女からは想像もつかない行動、あまりの怒りに誰も声をかけられないほどだ。
「どこに行くというのかしら?」
「止めるなッ!! アイツは私の可愛い妹に手を出した、このまま生かしておく事なんて出来るわけがない!」
家族だから非道な行いをしていても責める気にはなれずにいたが、その非道な行いが家族へと向かうのであればハイトはそれを許容できるだけの心を残念ながら持ち合わせていない。
神に仕える身としてそれがどうなのかといわれてしまえばよくはないのだろうが、実際問題人が最も大切にするのは自分の次に家族であると法国の神自体が思っているのだから仕方がないだろう。
怒りを露わにするハイトを前にして部屋中の人間が警戒の色を見せるが、そんな中でセラは至って落ち着いて言葉をかける。
「そう。悪いけれど止めさせてもらうわ。作戦はまだ終わっていない。貴方一人の勝手な行動で既にかなりのリスクを背負っているのよ?
これ以上リスクは背負えない」
「例え熾天使が相手でも私は一歩を引く気はない」
神に使える人間として熾天使の強さは理解していることだろう。
ハイトの力を考えればセラを前にしてある程度言葉を吐くだけの事はできるだろうが、勝算があるかと聞かれればほとんど皆無である。
だというのに彼女がセラに対して喧嘩を売らんばかりの勢いで言葉を投げ返すのは、それだけ彼女が焦っている事を示している。
部屋の中を冷たい空気が流れていくが、それに対してレネスは打開策を提示した。
「神ならば──神ならばなんとかなるのではないのか?」
「どういう事っすか?」
ほんの少しではあるがレネスの言葉に反応してハイトの張り詰められた空気が緩む。
彼女にとって神という存在はこのなんとも言えない現状すらも変えてくれるものだと認識されているようだ。
「エルピスの状況がどうなっているかは正直分からんが、アウローラの状況を解決する力が法国の神にあるならばこの少女の状況もなんとかなるのでは、そう思ったのだが」
「……残念っすけどそれは無いっす。ウチの神様は確かに癒しの神っす。
ただそれは瀕死の状況にあるものを復活させる事はできても、世界のルールに従って壊れてしまったものをどうこうする事はできないっす」
癒しの神であるならばなおさら直すことができるのではないか。
そこまで考えていたエルピスの横で、ふとセラとレネスが同時に怪訝な顔をする。
気がつけばレネスに至っては腰の刀に手を添えている程であり、臨戦体制をとっているのはもはや口にするまでもないだろう。
「──なぜ貴方がこの子の状態を知っているのか。もはや聞く必要もないと考えていいのかしら?」
「好きにするといいっす。自分は聖人、敵対したいならタダで死ぬ気は無いっすよ?」
先程までの諭すような言葉とは違い、セラの言葉に込められていたのは敵意と殺意の二つのみである。
未だに状況を理解できていないエルピスはなぜセラがそんな感情をハイトに対してむけているのか分からないが、彼女は理由もなしにそのような事をする人間ではないのでそれなりに大きな理由があるのだろう。
頭がいい人間同士で話を早く進めてくれる分にはありがたいが、それで喧嘩をされては敵わないとエルピスが一歩前へと出る。
「はいはい、喧嘩しない喧嘩しない。レネスもさっきは止めたのになんでいまはやる気満々なのさ」
「止めなければいけないのは分かっているのだが、聖人と戦える事はあまりないのだ……」
レネスに対して止めてくれと口にしたエルピスだったが、そんなエルピスに対してレネスはなにやら不満げなようである。
もしこの場でレネスとハイトの戦闘が巻き起これば聖都に出る被害は壊滅的なものになるので、それだけはエルピスとしては酒なければいけない。
どうしようかと焦っているエルピスの横で、ふとセラがバインダーを取り出してその上にある書類に目を通し始めた。
「貴方達……まぁいいわ。それよりようやく正体を表してくれたわね。
ヴァイスハイト、知恵をその名前に冠する法国出身の聖人であり、狂気のマッドサイエンティスト。
アウローラを攫った共和国暗部への薬の供与から始まり、共和国党首への密告や森妖種の国での妨害工作。
王国襲撃事件の毒物作成や学園都市で使用された薬品類の開発その他諸々と随分この世界で暴れ回っていたみたいね」
それにはセラがここ数年調べていた情報が記載されていたようであり、もはや確定された容疑者に対して調べていた事をセラはつらつらと口にする。
この世界で最もエルピス達と知らず知らずのうちに密接に関わっていた人間、実はそれは雄二や破壊神などではなくハイトだったというのだから世の中分からないものである。
信じられないようなものを見る目でハイトに対して視線を送るエルピスだったが、それに対してハイトは何の悪びれもなく先程までの怒りをどこにやったのか疑問に思えるほどに普段通りの表情で言葉を返してきた。
「それの何がいけない事っすか? 法国の発展、ひいては人類救済の為には必要な事っす」
「そんな……なんだと思っているんですか人の生活を! 人の命を!」
ようやくハイトのしていることに理解が及び、家族や友人を大切にしたいがためにこの世界で力を得ようともがいてきたエルピスはそんなハイトの行動に対して怒りよりも先に驚きと疑問から詰めかけるように言葉を投げる。
ハイトが女性でなければ、出会ってからの期間がなければ胸倉を掴んでいたか下手をすれば攻撃を始めていたかもしれない。
神からの無意識に漏れ出る圧力をその身に受けながらも、ハイトは表情を変えることなくエルピスに対して言葉を返す。
「大切なものっす。この世界で変えられるものなんてないくらいに大事なものっす」
「ならなぜそんな事が出来たんですか?」
「大事なものの数をなるべく減らさないようにするために、多少大事なものが減るのは仕方がない事っす」
人の命を大切であるとするならば、なおさらエルピスからしてみれば理解ができない。
確かに人類がみな誰しも擬似的に聖人のような力を手に入れることができれば、魔物による被害というのは劇的に減少するだろう。
大事なものの数をなるべく減らしたくないというのはそういったところに当たるはずだ。
だとすれば犠牲を覚悟の上で作業を行ったのにも関わらず、自分の妹がその実験に巻き込まれて怒りを露わにするなどなんとも醜い。
「なら貴方が妹がこうなってしまった事に怒りを見せる理由が分からないわね、貴方の言うところの必要な犠牲ではないのかしら」
「家族だけは別っす。家族に比べたらそこら辺を歩いてる奴らの命なんてなんの価値もないっす」
その目は黒く澄んでいる。
愛を語るときのニルのそれと同じ、彼女の家族に対しての感情もまた狂愛のそれなのだろう。
「感情を手に入れたいまなら分かるよ、これが狂人と言うのだろう?」
「それでどうするっすか? 私を殺すっすか?」
「本当はこんなところで戦いたくないんだが、敵ならば殺さねばならないだろう」
ゆっくりと音を立ててレネスの腰から刀が抜かれる。
目にも留まらぬ早さで抜刀できる彼女がわざわざゆっくりと武器を抜いた理由は、共に時間を過ごす中でレネスにも多少なり彼女との繋がりを感じるところがあるからだろう。
もはやいまこの場にいる人間ではこの状況から流れを変えることはできない。
一度戦闘が始まってしまえばハイトの死はほぼ確実だし、エルピスとしても戦闘になるべく入りたくないが入ってしまえばいままでの事を考えるとハイトを殺さざるおえない。
来るはずもない何かの到来を期待しながらゆっくりとエルピスも刀を抜き始めると、刀の中ほどまで見え始めた頃にふと転移魔法が発動された気配を感じ取る。
いまいる場所から別の場所への転移はハイトの行為発覚時にエルピスが禁止したので、そうなると必然的にやってくるのは外部からの人間だ。
「──まぁ。なんて面白そうな状況なのかしら」
その人形のように整った顔を歪め、悪魔のような笑みを携えてやってきたのは帝国第一皇女。
セラやニルが警戒する人間でありレネスが異質と表現した事もある異形、覇王と呼ばれた現帝国帝王をして御しきれなかった最強の暴れ馬。
それこそがこの狂人──エモニ・ミクロシア・センテリアである。
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