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青年期
亜人基地にて
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「かなりの数が居るね」
暗い森の中を抜けて国境になっている山の麓まで来てみれば、そこにはうまく隠されてはいるものの巧妙に作られた亜人達の拠点が存在していた。
火を使っていないのは火に対しての恐怖心があるからか、それとも自分たちの存在を気取られないようにするためなのか。
しかし性濁豚がこれだけいるとなると臭いも相当なものになり、風下にいればかなりの距離離れていても気づけるだろう。
ところどころ何の声なのか潰れて聞き取れない声がエルピスの耳に入って来るものの、それが性濁豚なのかほかの生物なのかを判断することはエルピスには難しいことだった。
「報告にあった遊撃大隊の様だけれど……潰すにしても中に人が多すぎる」
「捕らえられてる量が今回の被害者の量と合ってないし、道中どっかで引っ掛けてきたみたいだね」
〈神域〉を使用すると感づかれる可能性があるので目視による確認ではあるが、少なくとも数百人以上の人間が捉えられているように見える。
陣地の外を守っているのは基本的に性濁豚ばかりだが、よく見てみれば陣地の中には粘触種などの姿もちらほらと目に入ってきた。
これだけ密集している陣地ならば魔法を用いて一撃で沈めるのも難しいことではない、ないのだが数百名もの人命を無視して魔法を放つのはさすがにエルピスにも荷が重い。
魔法を展開だけはしてみるものの途中でそれを諦めたエルピスは、陣地を眺めているセラに軽く言葉を投げかける。
「セラなら構わずやっちゃえって言うと思ったけど、人間にもそろそろ愛着わいてきた?」
「いいえ? 全く持って。でも私だって貴方の大切な物を守るために気くらい使うわよ。それに当初の目的は王国を守ること、王国市民が一人でも紛れ込んでいたらその目的を完全に推敲できないのよ?」
「なるほど、完璧主義ってやつだね」
「ーーとは言え性濁豚に凌辱されてまだ生きる意思があるのかどうかは気になるところではあるのだけれど」
遠い目をしながらそんな事をセラが口にするのは、自分がそうなったときの事を想像しているからなのだろう。
冒険者であればそういった事態になることを覚悟している者たちの方が多いし、その時のために普段から自決用の毒を持ち運んでいる女性冒険者は少なくない。
だが捕まっているである人たちは冒険者ではなくおそらくは村娘や商人といったところ、凌辱される可能性を村で生きる以上考慮に入れていなかったということはないだろうが、このひどい野営地で何日も凌辱されていればまともな精神が残っているかどうかすら怪しいところではある。
「そこら辺は俺には触れにくい話題だね。出来ればあまり考えたくないってのが本音だけど」
「私なら性濁豚を絶滅させてから自殺するわね。ニルならその場でどんな手段を使ってでも周囲を巻き込んで死にそうな物だけれど」
「自分の妹をなんだと思ってるのさ」
「可愛い妹よ。理解しているからこそニルのする事くらい分かるのよ」
実際のところ彼女たちがそんな目にあったとして、エルピスがするべきこととは何なのだろうか。
考えたところで答えなど出てくる気もせず、そう思えば性濁豚に殺されていたあの村の住民はまだましだったといえるのだろうか。
「とりあえずの目標は捕られている人の救出だね。俺がやっておくからセラは浮いてる性濁豚の排除を任せてもいい?」
「救出の方でいいの? 人にとっては嫌な物を見ることになるわよ」
「セラにそんなもの見せるくらいなら頑張るよ、それじゃあ行ってくるね」
一瞬そんな事を考えてしまう思考を振り払い、エルピスはそれだけ言うと夜の闇に消えていく。
権能こそ使用できていなくとも、エルピスの盗神としての能力は性濁豚の気配察知能力であろうともいともたやすく欺くことができる。
セラの視界にももう映らなくなってしまったエルピスの背中を探すようにして陣地の方を見ていると、ニルが王都から戻ったのか軽い足取りでセラの横に立つ。
「よっと。あれ? どうしたの姉さん顔赤いよ?」
一番最初にニルの視界に入ったのはかつて一度も目にしたこともない程に赤く染まった姉の顔だ。
普段はドライアイスのようにつめたい姉の表情、それをここまで動かすことのできる存在などニルの知る限りでは一人しかいない。
なんだかんだとつんけんしていることはあるものの、姉もやはり女神であり女性なのだろう。
「いったいなんのことかしら。エルピスが中に入って救出作戦をしているから、私達は周りの浮いた性濁豚を狩るわよ」
「見てないふりしてあげるよ。でもさぁ浮いた性濁豚って言うけどーー」
会話しながらかるく手足を振るい準備運動を終えたニルが足に力を込めれば、物見櫓に登り周囲を警戒していた性濁豚の首が音よりも早く落ちる。
残像を残してその場を後にしたニルはすぐに戻ってくると、圧倒的な速度により引きちぎられた性濁豚の頭をふらふらとさせる。
黄緑色の血液が地面に流れ落ちていく事すらなく、切断面を見てみれば焼き枯れた様な跡すらあった。
「ーー全力出したら全部バレない様にこうやって殺せるよ?」
「引きちぎった頭部を持つのはやめなさい、はしたないわよ」
「戦場にはしたないもなにもないと思うんだけど~。まぁいいや、それでどうする姉さん? こんな感じで殺しちゃう?」
「このまま救出作戦をさせていれば良いのよ。性濁豚達の目から逃れるのはいい訓練にもなるわ」
エルピス一人だけであったならばまだしも、ニルもセラもいるいまであれば性濁豚達に気づかれないように殺していくことなど児戯にも等しい行為である。
もし人質として致命傷を負わされている人が出てきたとしても魔法を使えば助けることができるし、死んでもすぐならば蘇生だってできるだろう。
だがあえてセラはそれをエルピスには言わない。
エルピスは自己の力を過小評価している、その気になれば国だって落とせるのに口では言うもののいつだって死におびえながら安全を最優先に戦っている。
ならばその思いをセラは汲み取ろう。
あえて力で押しつぶすのではなく、小手先の手段でせっせと勝利をつかみに行くこともまた戦術の一つだといえる。
「姉さんがわざわざエルピスの最大幸福を優先して動かない理由ってもしかしてそれ?」
「それだけではないけれどーーまぁそれが一番のウェイトを占めているかしら」
「だとしたら今回の行動は余計なお世話になっちゃったかな?」
ニルが口にした今回の行動とは王に対して亜人の侵略を告げ口したことだろう。
セラの予定としては村の崩壊に加えて街に多少の被害が出た後にエルピスの耳に入るようにしたかったのだが、それはあくまでも予定であってそうあるべきという予言でも何でもない。
崩されることを前提としたものなのだからその程度の事は問題にもならないし、こうしてエルピスの強化につながるような出来事が持ち込めたのならむしろそうしてくれてありがたいとまで言える。
それにニルの限界が近いことくらいは分かっていた。
「余計なお世話と言うほどではないわよ、いくらでも機転は効くしそれに貴方がそろそろ我慢できなくなるのも分かっていたしね」
「姉さんもしかして僕のこと試したの?」
「貴方の狂愛は理性で抑えられる様なものではないのよ、そもそもからして。わざわざ解放されていく神の力を私に譲渡しているのも暴走した時が怖いからでしょう?」
ニルがセラに力を譲渡していることが一番はっきりとわかるのは、外見年齢だろう。
年齢にして25歳といったところか、それくらいの外見年齢になったときがおそらくはニルやセラがこの世界で出せる最大の力を手にしたときである。
セラはこの数年間で18そこら、エルピスと同じくらいの年齢を手にしたがニルの外見はいつまでたっても変わらないまま。
本来ならば解放されていく己の力に歯止めをかけているのは、万が一にでも自分が暴走した時に姉であるセラに排除してもらうためだろう。
「なんでも見透かしてるね姉さんは。まぁあと数年は大丈夫だろうけどね、エルピスといたら退屈しなさそうだし」
「我慢できなくなったら相手してあげるから、早めに言うのよ?」
「分かってるよ姉さん。分かってる」
出来るだけ殺さないように善処はするつもりだが、ニルが相手ともなればセラに出来るのはせいぜい殺し合いくらいの物だろう。
かつて創生神と互角に渡り合った野良神の力はそれほどまでに強大である。
どうにかしてニルの狂愛が満足を得る様な状況を作れればいいのだが、そんなことを思いながらもセラは眼前の陣地で空間が割れるほどの魔力を感じて予定どうり物事が進んでいるのを確信した。
「そろそろエルピスが怒りに飲まれて暴走する頃でしょうし、周囲の被害を抑える役は任せたわよ? 私は救出し忘れがないかチェックしておくから」
「大規模攻撃を見るのは久しぶりだねーなんだかテンション上がるや」
横を見てみればどうやらこうなることを予想していたらしい妹がにっこりと笑みを浮かべながら嬉々として陣地の中へとかけていく。
大規模攻撃の中でも最高峰、人類が一度も使用したことのない最高位の魔法が加減なしに放たれるのだ。
セラも少しだけドキドキと胸を躍らせながら自らの仕事を行うのだった。
/
「mpmtdtd'm!!」
最悪、この一言に尽きる。
肉に肉を打ち付ける音がそこら中から聞こえ、耳を塞いでも呼吸を止めても目を塞いでもそこは人にとっての地獄であった。
阿鼻叫喚の地獄の中で山と積まれた死体は全て男の物、ところどころ肉が食われ臓器が零れ落ちておりひどい臭いを辺り一面にまき散らしている。
聞こえていた謎のうめき声の正体はそんな死体の山に積まれた喉を割かれたまだ生きている人間から発されるものだった。
そちらに限っては男ばかりというわけでもなく、嬌声が煩わしかったのか性癖なのか女性もそれなりの数が混じっている。
「やめて! もうやめてぇ!」
「lvmgd'dmvm」
「うっーーうっーーううっ」
喘ぎ声など聞こえるはずもなく、奥に進めば進むほど叫び声と許しを求めて潰された喉で訴えかける哀れな人間の鳴き声がエルピスの耳の中を蹂躙していく。
外ではあまり聞こえてこなかった肉を潰すような音が聞こえてくるのはそれだけその場所とエルピスがいる場所が近いからに他ならない。
「地獄だね本当に。本当にひどい」
つぶやきながらエルピスは隠れることをやめて堂々と道の真ん中を歩いていく。
「森霊種? 手を出されていないってことは仲間なのかな?」
いま踏みしめている肉が何の肉なのか考えていると、怒りに染まったエルピスの目の中に意外な種族が入って来る。
緑の髪に黄金色の目、長い耳はそれが森霊種であることを証明してくれていた。
窟暗種と見間違えたかと鑑定を使用してみてみるが鑑定結果はそれが森霊種であることを裏付けしてくれただけだった。
誇り高いといわれている森霊種が性濁豚と行動を共にする? ありえないといいたいがそうであればアルキゴスの残した捕虜が矢に殺された理由も分かるというものだ。
「綺麗な世界じゃないことは知ってたけど、優しい世界じゃないことは知ってたけど、これはないだろ」
目の前で人が死ぬのには慣れた、こう言ってはなんだがもはや驚くこともない。
綺麗な世界でないと言うことを痛いほどに実感しながらも、それでもエルピスの口から言葉が漏れ出して行くのはどこまでだってこの世界に希望を抱いているからだろう。
こんな酷いことがあっても今も世界のどこかでは夢にみた光景が広がっている。
美しさの中に汚さが有るのが世界だと言うのならば、エルピスは美しさの中にだけ身を浸す様な生活など一生涯遅れそうにはない。
「権能発動」
怒りのままに漏れ出る言葉は最も分かりやすい死の宣告だ。
エルピスを隠していた能力はそのままそこにある、だが瞬時に周りの生命体全てが先程までは気に求めていなかったエルピスの方を向くと躍起になって襲いかかり始める。
今回のエルピスの隠蔽は意識を強制的に外すと言うものだったが、眼前まで迫った確実な死を前にして外れる意識などどこにもない。
「対象空間内における善性値の計測、権能並列起動による悪性の拘束を開始」
だが爪も牙もエルピスの肌を貫くにはあまりにも脆弱すぎる。
人の肌であれば見るも無惨なものになっていたことだろうが、龍神の鱗を貫くのには遥かに足りていない。
写真の権能の力によって強制的にその場に膝をつかされた性濁豚達は、何が起きたのかも分からず必死に自らの身体を動かそうともがく。
「転移魔法起動、王都のアルヘオ家まで」
初めからこうしておけば時間をかけずに済んだのだろうか。
権能の同時使用によってぼんやりとしてくる頭のなかでそんなことを思い浮かべながら、エルピスは続いて魔法を練って行く。
「ormpnpmt!」
「ngodudqnpm!」
「37376948205!!」
練り上げられて行く魔力の量は生物に扱える量をはるかに超え、通常種では到達不可能なはるかな高みへと昇って行く。
それは逃げられぬ死だ、その場にいる全員が平等にそのことを認識する。
「もう遅いよ。それにさぁ、何言ってるか分からないよ」
そう言って言葉を投げかけたのは最後の時間を彼らに与えるためなのだろうか。
どちらにせよ神の怒りに触れてしまった哀れな亜人達は、その生涯を呆気なく引き下ろしてしまうことになる。
それは仕方のないことだ、ただ攻め込んだ相手が悪かったそれだけのことだ。
「神級魔法〈流星群〉」
雲の切れ目から一瞬チラリと太陽が見えたかと思うと、それは雲を吹き飛ばして性濁豚達のいる野営地を圧倒的な破壊力で粉砕する。
鼓膜を突き破り脳を壊すほどの轟音と閃光、だがそれはまだ始まりの合図に過ぎない。
神級魔法は神の魔法、それが全力で放たれたのだこの程度で済むはずもない。
周囲に存在する山を数個ほど消しとばし、その山の標高よりも遥かに深くクレーターを作り上げたエルピスは消し飛んだ大地の代わりに空中に浮きながら言葉を吐き出す。
「神の怒りに触れて、奈落の底に還りなよ」
遙か地の底を眺めるエルピスの目はなによりも冷たいものであった。
殺せば殺意が霧散するなどそんな簡単に物事は進んでくれない。
殺せばまたそれだけ嫌な気分が心の中を満たし、どうにも解決できない宙に浮いた心だけが取り残されるのだ。
「随分とまた派手にやったもんだねエルピス。僕と姉さんが守ってなかったら下手すれば王都まで消し飛んでたよ?」
そう言って少し怒った顔を見せるニルの口にした言葉は事実で有る。
実際この時の王国の記録には歴史的な大地震が記録されており、短時間の揺れであったため犠牲者こそ確認されていないが大規模災害の前触れとして後世の歴史書にも記されているほどで有る。
大地に吸収された衝撃だけでそれだ、音と光更には爆炎や熱風がエルピスのいた範囲内で抑えられていたのは二人が押さえつけてくれていたからに他ならない。
「ごめんニル、情報収集しとかないといけなかったのに……」
「別にそこら辺は問題ないけどさ、それにしたって随分と怒ってたね。興味深いなぁ…。どれどれ」
エルピスの肌に触れたニルは興味深そうにあちこちを眺める。
特に技能を使用している様な雰囲気こそないが、何かを見極めているのは直感的に判断できた。
「ふむふむ、どうやら権能の使用によって邪神の精神抑制効果が薄れていたみたいだね、激昂に駆られた理由はそれだろう」
「どうやら普段から権能には助けてもらってるらしいね。まだムカムカが収まんないんだけどこれどうすればいいかな」
「権能の使用によって効果が薄れたのだから、一時間くらいはそのままでしょうね。ストレス発散にニルと遊んできたらどう?」
「お、いいねエルピス。暴走する人を止めてみるって一回やってみたかったんだよね」
気がつけば近くにやってきたセラがそんな事を口にすると、いつのまにか乗り気なニルと勝負をすることが決まっていた。
大規模魔法を打った後にニルを相手に取るのは少々骨ではあったが、それでストレスが発散できるのであればまぁ良いだろうとエルピスはふわふわと浮かびながらその後をついて行く。
そして爆心地に一人残ったセラが軽く腕を振るい、また無造作にそれを元の位置へと戻すといくつかの書類が手元に現れる。
「さて、置いてあった書類はこれだけのようね」
書類など先程の隕石群で跡形もなく消滅している。
だというのにどこからともなく現れたその書類には、これから攻める場所と舞台の編成方法についてざっくばらんではあったが情報が記載されていた。
遊撃大隊の処理に情報の確保、一晩の戦果としては圧倒的とも言える。
「ニルに相手してもらっている間に私は後の展開を予測しておいた方が良さそうね」
そんなことを口にしながらセラは燃え広がり始めている火災を止めて後の処理を始め出した。
予測できる事はいくつかある、最悪の可能性を否定するのは愚か者のやることだろう。
だがその可能性をエルピスに伝える事だけはするべきではないと今のセラは判断した。
それが正しいかどうかはきっとすぐにわかる事だろう。
暗い森の中を抜けて国境になっている山の麓まで来てみれば、そこにはうまく隠されてはいるものの巧妙に作られた亜人達の拠点が存在していた。
火を使っていないのは火に対しての恐怖心があるからか、それとも自分たちの存在を気取られないようにするためなのか。
しかし性濁豚がこれだけいるとなると臭いも相当なものになり、風下にいればかなりの距離離れていても気づけるだろう。
ところどころ何の声なのか潰れて聞き取れない声がエルピスの耳に入って来るものの、それが性濁豚なのかほかの生物なのかを判断することはエルピスには難しいことだった。
「報告にあった遊撃大隊の様だけれど……潰すにしても中に人が多すぎる」
「捕らえられてる量が今回の被害者の量と合ってないし、道中どっかで引っ掛けてきたみたいだね」
〈神域〉を使用すると感づかれる可能性があるので目視による確認ではあるが、少なくとも数百人以上の人間が捉えられているように見える。
陣地の外を守っているのは基本的に性濁豚ばかりだが、よく見てみれば陣地の中には粘触種などの姿もちらほらと目に入ってきた。
これだけ密集している陣地ならば魔法を用いて一撃で沈めるのも難しいことではない、ないのだが数百名もの人命を無視して魔法を放つのはさすがにエルピスにも荷が重い。
魔法を展開だけはしてみるものの途中でそれを諦めたエルピスは、陣地を眺めているセラに軽く言葉を投げかける。
「セラなら構わずやっちゃえって言うと思ったけど、人間にもそろそろ愛着わいてきた?」
「いいえ? 全く持って。でも私だって貴方の大切な物を守るために気くらい使うわよ。それに当初の目的は王国を守ること、王国市民が一人でも紛れ込んでいたらその目的を完全に推敲できないのよ?」
「なるほど、完璧主義ってやつだね」
「ーーとは言え性濁豚に凌辱されてまだ生きる意思があるのかどうかは気になるところではあるのだけれど」
遠い目をしながらそんな事をセラが口にするのは、自分がそうなったときの事を想像しているからなのだろう。
冒険者であればそういった事態になることを覚悟している者たちの方が多いし、その時のために普段から自決用の毒を持ち運んでいる女性冒険者は少なくない。
だが捕まっているである人たちは冒険者ではなくおそらくは村娘や商人といったところ、凌辱される可能性を村で生きる以上考慮に入れていなかったということはないだろうが、このひどい野営地で何日も凌辱されていればまともな精神が残っているかどうかすら怪しいところではある。
「そこら辺は俺には触れにくい話題だね。出来ればあまり考えたくないってのが本音だけど」
「私なら性濁豚を絶滅させてから自殺するわね。ニルならその場でどんな手段を使ってでも周囲を巻き込んで死にそうな物だけれど」
「自分の妹をなんだと思ってるのさ」
「可愛い妹よ。理解しているからこそニルのする事くらい分かるのよ」
実際のところ彼女たちがそんな目にあったとして、エルピスがするべきこととは何なのだろうか。
考えたところで答えなど出てくる気もせず、そう思えば性濁豚に殺されていたあの村の住民はまだましだったといえるのだろうか。
「とりあえずの目標は捕られている人の救出だね。俺がやっておくからセラは浮いてる性濁豚の排除を任せてもいい?」
「救出の方でいいの? 人にとっては嫌な物を見ることになるわよ」
「セラにそんなもの見せるくらいなら頑張るよ、それじゃあ行ってくるね」
一瞬そんな事を考えてしまう思考を振り払い、エルピスはそれだけ言うと夜の闇に消えていく。
権能こそ使用できていなくとも、エルピスの盗神としての能力は性濁豚の気配察知能力であろうともいともたやすく欺くことができる。
セラの視界にももう映らなくなってしまったエルピスの背中を探すようにして陣地の方を見ていると、ニルが王都から戻ったのか軽い足取りでセラの横に立つ。
「よっと。あれ? どうしたの姉さん顔赤いよ?」
一番最初にニルの視界に入ったのはかつて一度も目にしたこともない程に赤く染まった姉の顔だ。
普段はドライアイスのようにつめたい姉の表情、それをここまで動かすことのできる存在などニルの知る限りでは一人しかいない。
なんだかんだとつんけんしていることはあるものの、姉もやはり女神であり女性なのだろう。
「いったいなんのことかしら。エルピスが中に入って救出作戦をしているから、私達は周りの浮いた性濁豚を狩るわよ」
「見てないふりしてあげるよ。でもさぁ浮いた性濁豚って言うけどーー」
会話しながらかるく手足を振るい準備運動を終えたニルが足に力を込めれば、物見櫓に登り周囲を警戒していた性濁豚の首が音よりも早く落ちる。
残像を残してその場を後にしたニルはすぐに戻ってくると、圧倒的な速度により引きちぎられた性濁豚の頭をふらふらとさせる。
黄緑色の血液が地面に流れ落ちていく事すらなく、切断面を見てみれば焼き枯れた様な跡すらあった。
「ーー全力出したら全部バレない様にこうやって殺せるよ?」
「引きちぎった頭部を持つのはやめなさい、はしたないわよ」
「戦場にはしたないもなにもないと思うんだけど~。まぁいいや、それでどうする姉さん? こんな感じで殺しちゃう?」
「このまま救出作戦をさせていれば良いのよ。性濁豚達の目から逃れるのはいい訓練にもなるわ」
エルピス一人だけであったならばまだしも、ニルもセラもいるいまであれば性濁豚達に気づかれないように殺していくことなど児戯にも等しい行為である。
もし人質として致命傷を負わされている人が出てきたとしても魔法を使えば助けることができるし、死んでもすぐならば蘇生だってできるだろう。
だがあえてセラはそれをエルピスには言わない。
エルピスは自己の力を過小評価している、その気になれば国だって落とせるのに口では言うもののいつだって死におびえながら安全を最優先に戦っている。
ならばその思いをセラは汲み取ろう。
あえて力で押しつぶすのではなく、小手先の手段でせっせと勝利をつかみに行くこともまた戦術の一つだといえる。
「姉さんがわざわざエルピスの最大幸福を優先して動かない理由ってもしかしてそれ?」
「それだけではないけれどーーまぁそれが一番のウェイトを占めているかしら」
「だとしたら今回の行動は余計なお世話になっちゃったかな?」
ニルが口にした今回の行動とは王に対して亜人の侵略を告げ口したことだろう。
セラの予定としては村の崩壊に加えて街に多少の被害が出た後にエルピスの耳に入るようにしたかったのだが、それはあくまでも予定であってそうあるべきという予言でも何でもない。
崩されることを前提としたものなのだからその程度の事は問題にもならないし、こうしてエルピスの強化につながるような出来事が持ち込めたのならむしろそうしてくれてありがたいとまで言える。
それにニルの限界が近いことくらいは分かっていた。
「余計なお世話と言うほどではないわよ、いくらでも機転は効くしそれに貴方がそろそろ我慢できなくなるのも分かっていたしね」
「姉さんもしかして僕のこと試したの?」
「貴方の狂愛は理性で抑えられる様なものではないのよ、そもそもからして。わざわざ解放されていく神の力を私に譲渡しているのも暴走した時が怖いからでしょう?」
ニルがセラに力を譲渡していることが一番はっきりとわかるのは、外見年齢だろう。
年齢にして25歳といったところか、それくらいの外見年齢になったときがおそらくはニルやセラがこの世界で出せる最大の力を手にしたときである。
セラはこの数年間で18そこら、エルピスと同じくらいの年齢を手にしたがニルの外見はいつまでたっても変わらないまま。
本来ならば解放されていく己の力に歯止めをかけているのは、万が一にでも自分が暴走した時に姉であるセラに排除してもらうためだろう。
「なんでも見透かしてるね姉さんは。まぁあと数年は大丈夫だろうけどね、エルピスといたら退屈しなさそうだし」
「我慢できなくなったら相手してあげるから、早めに言うのよ?」
「分かってるよ姉さん。分かってる」
出来るだけ殺さないように善処はするつもりだが、ニルが相手ともなればセラに出来るのはせいぜい殺し合いくらいの物だろう。
かつて創生神と互角に渡り合った野良神の力はそれほどまでに強大である。
どうにかしてニルの狂愛が満足を得る様な状況を作れればいいのだが、そんなことを思いながらもセラは眼前の陣地で空間が割れるほどの魔力を感じて予定どうり物事が進んでいるのを確信した。
「そろそろエルピスが怒りに飲まれて暴走する頃でしょうし、周囲の被害を抑える役は任せたわよ? 私は救出し忘れがないかチェックしておくから」
「大規模攻撃を見るのは久しぶりだねーなんだかテンション上がるや」
横を見てみればどうやらこうなることを予想していたらしい妹がにっこりと笑みを浮かべながら嬉々として陣地の中へとかけていく。
大規模攻撃の中でも最高峰、人類が一度も使用したことのない最高位の魔法が加減なしに放たれるのだ。
セラも少しだけドキドキと胸を躍らせながら自らの仕事を行うのだった。
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「mpmtdtd'm!!」
最悪、この一言に尽きる。
肉に肉を打ち付ける音がそこら中から聞こえ、耳を塞いでも呼吸を止めても目を塞いでもそこは人にとっての地獄であった。
阿鼻叫喚の地獄の中で山と積まれた死体は全て男の物、ところどころ肉が食われ臓器が零れ落ちておりひどい臭いを辺り一面にまき散らしている。
聞こえていた謎のうめき声の正体はそんな死体の山に積まれた喉を割かれたまだ生きている人間から発されるものだった。
そちらに限っては男ばかりというわけでもなく、嬌声が煩わしかったのか性癖なのか女性もそれなりの数が混じっている。
「やめて! もうやめてぇ!」
「lvmgd'dmvm」
「うっーーうっーーううっ」
喘ぎ声など聞こえるはずもなく、奥に進めば進むほど叫び声と許しを求めて潰された喉で訴えかける哀れな人間の鳴き声がエルピスの耳の中を蹂躙していく。
外ではあまり聞こえてこなかった肉を潰すような音が聞こえてくるのはそれだけその場所とエルピスがいる場所が近いからに他ならない。
「地獄だね本当に。本当にひどい」
つぶやきながらエルピスは隠れることをやめて堂々と道の真ん中を歩いていく。
「森霊種? 手を出されていないってことは仲間なのかな?」
いま踏みしめている肉が何の肉なのか考えていると、怒りに染まったエルピスの目の中に意外な種族が入って来る。
緑の髪に黄金色の目、長い耳はそれが森霊種であることを証明してくれていた。
窟暗種と見間違えたかと鑑定を使用してみてみるが鑑定結果はそれが森霊種であることを裏付けしてくれただけだった。
誇り高いといわれている森霊種が性濁豚と行動を共にする? ありえないといいたいがそうであればアルキゴスの残した捕虜が矢に殺された理由も分かるというものだ。
「綺麗な世界じゃないことは知ってたけど、優しい世界じゃないことは知ってたけど、これはないだろ」
目の前で人が死ぬのには慣れた、こう言ってはなんだがもはや驚くこともない。
綺麗な世界でないと言うことを痛いほどに実感しながらも、それでもエルピスの口から言葉が漏れ出して行くのはどこまでだってこの世界に希望を抱いているからだろう。
こんな酷いことがあっても今も世界のどこかでは夢にみた光景が広がっている。
美しさの中に汚さが有るのが世界だと言うのならば、エルピスは美しさの中にだけ身を浸す様な生活など一生涯遅れそうにはない。
「権能発動」
怒りのままに漏れ出る言葉は最も分かりやすい死の宣告だ。
エルピスを隠していた能力はそのままそこにある、だが瞬時に周りの生命体全てが先程までは気に求めていなかったエルピスの方を向くと躍起になって襲いかかり始める。
今回のエルピスの隠蔽は意識を強制的に外すと言うものだったが、眼前まで迫った確実な死を前にして外れる意識などどこにもない。
「対象空間内における善性値の計測、権能並列起動による悪性の拘束を開始」
だが爪も牙もエルピスの肌を貫くにはあまりにも脆弱すぎる。
人の肌であれば見るも無惨なものになっていたことだろうが、龍神の鱗を貫くのには遥かに足りていない。
写真の権能の力によって強制的にその場に膝をつかされた性濁豚達は、何が起きたのかも分からず必死に自らの身体を動かそうともがく。
「転移魔法起動、王都のアルヘオ家まで」
初めからこうしておけば時間をかけずに済んだのだろうか。
権能の同時使用によってぼんやりとしてくる頭のなかでそんなことを思い浮かべながら、エルピスは続いて魔法を練って行く。
「ormpnpmt!」
「ngodudqnpm!」
「37376948205!!」
練り上げられて行く魔力の量は生物に扱える量をはるかに超え、通常種では到達不可能なはるかな高みへと昇って行く。
それは逃げられぬ死だ、その場にいる全員が平等にそのことを認識する。
「もう遅いよ。それにさぁ、何言ってるか分からないよ」
そう言って言葉を投げかけたのは最後の時間を彼らに与えるためなのだろうか。
どちらにせよ神の怒りに触れてしまった哀れな亜人達は、その生涯を呆気なく引き下ろしてしまうことになる。
それは仕方のないことだ、ただ攻め込んだ相手が悪かったそれだけのことだ。
「神級魔法〈流星群〉」
雲の切れ目から一瞬チラリと太陽が見えたかと思うと、それは雲を吹き飛ばして性濁豚達のいる野営地を圧倒的な破壊力で粉砕する。
鼓膜を突き破り脳を壊すほどの轟音と閃光、だがそれはまだ始まりの合図に過ぎない。
神級魔法は神の魔法、それが全力で放たれたのだこの程度で済むはずもない。
周囲に存在する山を数個ほど消しとばし、その山の標高よりも遥かに深くクレーターを作り上げたエルピスは消し飛んだ大地の代わりに空中に浮きながら言葉を吐き出す。
「神の怒りに触れて、奈落の底に還りなよ」
遙か地の底を眺めるエルピスの目はなによりも冷たいものであった。
殺せば殺意が霧散するなどそんな簡単に物事は進んでくれない。
殺せばまたそれだけ嫌な気分が心の中を満たし、どうにも解決できない宙に浮いた心だけが取り残されるのだ。
「随分とまた派手にやったもんだねエルピス。僕と姉さんが守ってなかったら下手すれば王都まで消し飛んでたよ?」
そう言って少し怒った顔を見せるニルの口にした言葉は事実で有る。
実際この時の王国の記録には歴史的な大地震が記録されており、短時間の揺れであったため犠牲者こそ確認されていないが大規模災害の前触れとして後世の歴史書にも記されているほどで有る。
大地に吸収された衝撃だけでそれだ、音と光更には爆炎や熱風がエルピスのいた範囲内で抑えられていたのは二人が押さえつけてくれていたからに他ならない。
「ごめんニル、情報収集しとかないといけなかったのに……」
「別にそこら辺は問題ないけどさ、それにしたって随分と怒ってたね。興味深いなぁ…。どれどれ」
エルピスの肌に触れたニルは興味深そうにあちこちを眺める。
特に技能を使用している様な雰囲気こそないが、何かを見極めているのは直感的に判断できた。
「ふむふむ、どうやら権能の使用によって邪神の精神抑制効果が薄れていたみたいだね、激昂に駆られた理由はそれだろう」
「どうやら普段から権能には助けてもらってるらしいね。まだムカムカが収まんないんだけどこれどうすればいいかな」
「権能の使用によって効果が薄れたのだから、一時間くらいはそのままでしょうね。ストレス発散にニルと遊んできたらどう?」
「お、いいねエルピス。暴走する人を止めてみるって一回やってみたかったんだよね」
気がつけば近くにやってきたセラがそんな事を口にすると、いつのまにか乗り気なニルと勝負をすることが決まっていた。
大規模魔法を打った後にニルを相手に取るのは少々骨ではあったが、それでストレスが発散できるのであればまぁ良いだろうとエルピスはふわふわと浮かびながらその後をついて行く。
そして爆心地に一人残ったセラが軽く腕を振るい、また無造作にそれを元の位置へと戻すといくつかの書類が手元に現れる。
「さて、置いてあった書類はこれだけのようね」
書類など先程の隕石群で跡形もなく消滅している。
だというのにどこからともなく現れたその書類には、これから攻める場所と舞台の編成方法についてざっくばらんではあったが情報が記載されていた。
遊撃大隊の処理に情報の確保、一晩の戦果としては圧倒的とも言える。
「ニルに相手してもらっている間に私は後の展開を予測しておいた方が良さそうね」
そんなことを口にしながらセラは燃え広がり始めている火災を止めて後の処理を始め出した。
予測できる事はいくつかある、最悪の可能性を否定するのは愚か者のやることだろう。
だがその可能性をエルピスに伝える事だけはするべきではないと今のセラは判断した。
それが正しいかどうかはきっとすぐにわかる事だろう。
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