クラス転移で神様に?

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青年期学問都市

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 血と汗で固まった髪に無理やり手を通してすきながら返り血を浴びて歩くのは、普段よりさらに爛々と黄色く目を光らせるニルだ。
 細かく見てみれば返り血だけでなく外傷も受けているようで、先ほどまでニルにはセラの力も加えられていたことを考えるとニルに外傷をつけた異世界人の強さもよく分かるというものである。

「援軍に来るまでも無かったのかな? もしかしたらと思って来てみたんだけど」
「いえ、来てくれて助かりました。正直もう立ってるのもやっとなので」
「一応縛って放り投げてあるけどいつまた復活するか、困ったなって感じ」

 そう言ってアウローラが指差す先には確かに三人異世界人らしき人物が見える。
 とどめを指した方が良いと思うのだが、わざわざ生きて残したアウローラの目の前で殺すのはさすがにニルでも躊躇われた。
 縛られた敵の処分は後で姉かエルピス辺りに頼んでおくとして、そうなってくると気にかかるのはいまも異世界人と戦っているであろうエルピスの状況だ。
 先程から何度も神級クラスの魔法の反応がエルピスの方から発せられているが、どれも発動直前でエルピス本人の手で発動を停止しているのが気になる。

「とりあえずはエルピスのところへ行ってみる? 向こうのことも気になるし」
「うーん、行く必要は無いかな?」
「え? それってどうーー」

 疑問を口に出そうとしたアウローラの少し横、地面へと目にも止まらぬ速さで叩きつけられ、土砂を空高く巻き上げながら立ち上がったのは話に上がっていたエルピスだ。
 噂をすれば影がさすとはよく言ったものだが、それにしても随分とダイナミックな登場方法である。
 見た限り外傷はないものの先程までの戦闘でかなり精神的に疲労しているようで、元が人である以上仕方のないことではあるのだがかなり疲れているように見える。

「加勢するよエルピス」
「ーー痛つつ、頼んだ。ちょっと舐めてたわ、あいつ一体何人分力吸って来たんだ?」

 エルピスの身体に着いた土を軽く払いながらニルが加勢を提案すると、エルピスは待っていたとばかりに頷く。

「何人じゃない、何匹だ。帝国領土の北に広がる龍の谷、そこにいる龍の身体能力を全て我がものとした。随分と効くだろう?」

 そう言って黒髪の青年が軽く腕を振るうと、エルピスの近くにあった瓦礫が音も立てずに砂に変わる。
 島がまだ原型を保っているのはエルピスが軽くではあるが障壁を張っているからだ、それがなければ今ごろとっくの昔にこの島も海の一部になっていたことだろう。

「二対一か、卑怯者にはお似合いな姿だな。女に守られながら戦えるか?」
「確かにこの子は俺より強いけど守られるわけにはいかないな、相棒なんだからって頼ってばかりは男の沽券に関わる」
「ほーん、そんなもんかよ」
「聞いたアウローラ! いま相棒って! 僕相棒だってさ!」
「……あんた空気ぶっ壊してるわよ」

 冗談を口にしながらも、ニルは今日初めてエルピスから受け取った双剣を構える。
 エルピスから目の前の相手、名前は……名前はなんだったろうか。
 確か雄一だったか雄二だったか、そんな名前の目の前の敵は強奪系の特殊技能ユニークスキルを所持していると聞いている。
 強奪は条件さえ揃ってしまえば権能よりも厄介になる可能性のある力だ。
 発動条件は敵に触れていること、自分が魔法を使用していないこと、それ意外にも個人によって変化する発動条件もあるので出来るだけ近づけたくない相手である。
 エルピスが苦戦しているのはおそらくそこだろう、能力を取られる条件が分からない以上はうかつに攻撃することもままならない。

『どうするエルピス? 僕と姉さんなら身体能力の交換もできるし僕が条件探ろうか?』
『いや、安全策でいい。追加で転移してくる様子もないし、外から来ている敵は海神が全て潰してくれているから焦る必要もないだろう』
『分かった。僕が動き合わせるからエルピスは自由に動いてね』

 最初に島が爆撃されてからすでに二時間以上が経過している。
 外からくる敵はエルピスが言ったとおり海神によって全て片付けられており、転移によってこちらに来ようにも万全状態のセラが目を光らせているので転移が終了する頃には肉の塊に早変わりだ。
 走り出すエルピスよりも少し早く、エルピスの動きを予想したニルが右側から雄二へと詰め寄っていく。

「まずは腕、貰うよ」
「やるかよ狼娘」

 血を這うようにして移動したニルはそのままの勢いで雄二の腕に双剣を振り下ろす、この程度で持っていけるとは思っていないが、口に出せばそれだけで相手への威圧にもなり得る。
 キィィィンと甲高い音を立てながらニルが振った双剣は左手に握った長剣で防がれはするものの、武器を潰せたのはかなり大きい収穫だ。
 ニルが敵の武器を押さえている間にエルピスは左側から右肩から腰にかけて、両手でしっかりと刀を握り袈裟懸けに雄二に対して斬りつける。
 とっさに後ろへと避けられてしまい深い傷は負わせる事が出来なかったが、それでも今のエルピスの武器には様々な呪いや毒が付着している。
 一度切られただけでもかなりの致命傷になることだろう。

「正義の味方が二対一かぁ? しかもなんだこれ……毒か? 身体が痺れやがる、鬱陶しい事この上ないな」
「……正義の味方になった覚えはないな、お前は悪だが」

 ーーだが雄二に目立った変化はない。
 邪神の毒と呪いはニルをしても脅威を感じるほどのものだ、耐性もなく食らえばいくら目の前の相手でも、痛みでまともに立っていられないはず。
 だと言うのに目の前の人物の余裕ぶりから察して、おそらくはかなり高位の呪いに対する耐性を持っているのだろう。
 姉から聞いた目の前の敵の出生に関わる話を思い出し、ニルは抑え切れないほどの殺意をなんとか飲み込みながら冷静に判断する。
 ニルにとって言わば目の前の相手は、自分とエルピスが出会うまでの時間を引き伸ばした敵だ。
 創生神がエルピスになってくれたおかげで契りを結べたと言っても、間接的に創生神を殺したと言っても過言ではない目の前の敵に狂愛の彼女が殺意を抱かないわけがない。

「正義の味方でもないお前が悪を説くか、図が高いな。正義のしもべで無いならばお前はただの部外者だ、関係のない奴には退場してもらおうか」

 雄二の刃がエルピスの首を狙う。
 だが魔法によって減速させられ、かつ二人がかりで押し戻された事で雄二は苦い顔をしながらある程度距離を取る。
 地力ではニルとエルピスの圧勝だ、危険を犯す必要もなく武器を構えての睨み合いは続く。

「正義でなくとも悪は切れる、お前みたいな奴なら尚更な。目的はあろうと意味がなく意義もなく、ただ世界を壊したいだけの存在相手ならば丁度いい」
「それの何がいけない事だ? 俺は世界が壊れるところを見てみたい。一度で良いからこの世界を壊してみたい、力の限り蹂躙し、嬲り、甚振り、生を懇願するその様を眺めながら世界を潰してみたい。そうしなければ見えない高みがある、そうしなければ得れない快感がある。最大多数の幸福を世界が望むのならば、俺は俺の幸福のために多数の幸福を犠牲にする。この感情が何か分かるか龍と人の混ざり物!」
「分かりたくもない、そんなものーー」
「ーーそう。そんなものだ、分かりたくもないだろう、だがお前は分かるはずだ。先程からお前は俺を殺さない、一撃で殺せる手立てがあるというのにそれをしてしまうと下の生徒達も間違いなく死ぬからそれができないでいる。この世界では驚きに値するほどの甘さ、それが何故お前にあるのか分かるか? 他人を思いやる気持ち? 生まれ持った善性? 気まぐれ? 違うな。全て違う」

 構えを解き、その姿はまるで演説でもするかの如く。
 いつかの生徒会長立候補者演説の時のような自信に満ち溢れた表情で、支配者になるべくして産まれてきた男は己が持論を展開する。

「全ては知識欲だ。関係のない下の奴らが死んで困るのは、関係がないからこそ得られるものがあるとお前自信が考えているからだ。
全てのものには終わりがある、創生と破壊、その二つの性質を生物が有する以上は終わりがない筈もない。この世から自分が消えてしまうのは嫌だ、だが消えてしまうのは必然。だからこそ人は知識を求めるのさ、己が他人でないならば他人が己になればいい。
考え方でも感じ方でも良い、記憶に焼き付いて離れない? 十分結構な事だ、必要な事は忘れられないこととと覚えさせる事。どうだぁ今日の出来事は、忘れられるか? いやお前は忘れられない。その分俺は生きられる。知識欲があるから他人を守り、知識欲があるから未知を求め、知識欲があるから人は愛などというまやかしに溺れる。食欲もなく性欲もなく睡眠欲もなく、三大欲求を乗り越えて見る他人の世界は随分とつまらないかエルピス・アルヘオ」

 ふと、アウローラの言葉を思い出した。
 エルピスは人を信用しない、もっと人を信用しろとそう言っていたのを。
 エルピスからしてみれば十分信頼し、頼っているつもりだった。
 自らが行えない大切で必ず失敗してはいけない事を自らの代わりに行ってもらい、自らよりも優れた所を持つ人に対して心を寄せていたつもりだ。
 それに対して雄二はそれらは全て知識欲からするものだという。
 知ればその人物の貴重性はなくなり、知れば自らが行い解決し、知ればその人物の事をもはや知る必要もなくなる。
 庇護欲と知識欲のみがエルピスを動かす原動力であると言われればなるほど納得だ、それに対して反論する術を持たないしするつもりも毛頭ない。
 だが愛に関して言うのならば話は少し変わってくるだろう。
 左手には魔の力を、右手には刀を、いつもと変わらない戦闘スタイルをとりながらゆっくりとエルピスは口を開く。

「確かに知識欲があるからこそ俺は動けるのかも知れない。これから永劫の時を生きる俺には必要不可欠なもので、だからこそそれを追い求めるのかも知れない。だがそれは普通の事だ、人が人であるが故に、人である以上は知識を追い求めるのは必定、そんなに大それた話でもない」
「ほざけそんな戯言ーー」
「ーーほざくさ。この世界に来て数年戦争していた程度で、自分がまるで哲学家にでもなったような言い草のお前に長々説教される筋合いはない。それに性欲がなくても知識欲がなくても俺は彼女達を好きになる、たとえ性別が変わったとしてもだ。いまさらお前がぐだぐだ抜かしてどうにかなる関係でもないし、揺らぐ俺でもない」

 それだけ言い終えるとエルピスは今日初めて全力を出す。
 目は黒く、髪は少し黄色がかり龍神の鱗は眩しい程に輝き始める。
 相手に悟られないようにしながら行ったため随分と時間が掛かったが、この学園にいる人間は全員王国まで飛ばしておいた、もはや加減する必要もない。
 エルピスが全開を出したのを確認してからニルはアウローラ達の元へと戻っていく、神の力を振るうのならばニルが側に居ては邪魔だろうという判断からだ。

「いくぞ雄二、さよならだ」
「大口を叩くなよ混ざりもの如きが!」
「王国式抜刀術〈一閃〉」

 見てから避けられる筈がない。
 構えも手順も王国で一般的に使われる抜刀術のそれと同じ、だが基礎能力の差が圧倒的な能力を生む。
 この世界で最も力のある生物が出した全力は音の壁を容易に越え、雄二が認識するよりも速くその首にエルピスの刀が入り込んでいく。
 驚くべきはエルピスの力ではなく雄二の耐久力だろう。
 空を割り海を裂き大地を切り離す神の一撃を喰らっても首の皮一枚でその体を残す雄二の耐久力は驚きに値する。

「ぐっ……がっ! 俺が……俺が負けるかァァァァッ!!」

 濁流のような魔力と共にエルピスの刀が首の皮一枚で止まり、雄二の体を黒い魔力が覆っていく。
 血飛沫によってエルピスの服は赤く染まり、改めて同級生を殺めることを認識して少し心拍数が上昇する。
 だが一切の手加減はない、これだけ大量の人間を殺した罪は贖われるべきだ。
 それでなくとも雄二を生かしておくことはこれから先破壊神を復活させるという考えうる限り最悪の状況を引き起こす可能性すらある。
 迷いを断ち切り、開いた左手でエルピスはとどめの一撃を貯めていく。

「じゃあな雄二〈龍神ブリッツーー」
「ーー雄二様危ないっ!」

 森霊種エルフの限界を明らかに超えた速度。
 光にすら到達する速さで先ほど見逃した森霊種エルフが、エルピスの体に体当たりを仕掛けてくる。
 障壁によって守られているエルピスには直接的なダメージこそないものの、撃ち損なった龍神息吹ブリッツドラッヘをなんとか腹の中にしまい直し、ならば次は首を完全に落とそうと雄二の方へ足を伸ばす。

「ーー雄二様、お逃げください。ここは我々が何としてでも食い止めます」
「我ら元より命を捨てるつもりでこの地に来ております。しからば何卒お気遣いなく」

 森霊種だけでない、土精霊と性濁豚もそれぞれ自身の武器を持ち言葉どおり命を投げ出す覚悟でエルピスの前に立っている。
 死ぬことに対する恐怖が、彼らの中で如何程かは分からない。
 他種族の死生観について詳しく知らないエルピスでは彼らにとって死がどれほどのものなのか推し量ることは不可能だ。
 だが彼らの目に宿る高潔さと誇りは、対面に位置するエルピスが最も理解できる。
 一体何のために命を投げ出すというのか、何故そこまで雄二に付き従うのか、全く理解できないそれを見てエルピスは一瞬思考が止まった。
 それだけの時間があれば雄二が回復するのには十分で、まだ全快とまでは行かないがそれなりに回復している様子が見受けられる。

「もう前のようなヘマはしない。たとえ逃げようともどこまででも追いかける、生きて帰れると思うなよ?」
「確かに、逃げられそうにないな。ならばサーズ、マーズ。悪いが死んでくれ」
「御意に」
「ーーっ! またお前はそうやって仲間を犠牲にするのか雄二ィッ!!」

 吠えるエルピスとは対照的に名を呼ばれた土精霊と性濁豚は、嬉しそうな笑みを浮かべながらエルピスの元へと無謀にも突撃する。
 もはや斬りつける必要すらない、魔力によって作られた槍のようなものに全身を串刺しにされ二人の亜人は原型すら分からないほどに身体を潰されてその生命を終えた。
 あっけなくゴミのように破れ去る、これがお前の望んでいたこいつらの姿だったのか?
 そう問いかけようとしたエルピスよりも一足早く、雄二の手がエルピスの身体に触れる。
(ーー回避!? いや間に合わない! いっそ空間ごとっ!)

「貰うぞエルピス・アルヘオ! その神の力ッッ!!」
「ーーがはっ!?」

 触れられた心臓の辺りから大事な何かが抜け落ちていく。
 おそらくは技能獲得に関するエルピスが得た記憶、もはや奪われてしまいそれが何なのかすら思い出せないが形容し難いほどの喪失感はそれ以外に考えられない。
 魔力が六割、力が三割、奪われた能力は全体の一割といったところか。
 魔力に関していえば魔神の無尽蔵の魔力があるので問題だとはいえないが、瞬発力や単純な筋力を司る体力と技能を奪われたのは痛い、
 エルピスの技能は基本的に開放していない神の力の上澄みだ、他人のそれより習得速度は早いとはいえいくつもある最大レベルのスキルを奪われるのは特殊技能 ユニークスキルを取られるのとなんら遜色がないほどの痛手であると言える。

「神の力をその手にせんとするか人よ。エルピス、随分とまた手痛い仕打ちを受けたものだな」
「なんだ海神いきなり横から割ってでやがって? 人の争いに神が参入するのか?」
「神になろうとするには器が足りん。見定めていたがやはり貴様は人の器よ」
「ーーってわけで、随分と海神に好かれたねぇエルピス君?」

 未だ走る激痛に顔を歪めながらエルピスは二柱の背中を眺める。
 周囲はどうやらもう既に完全に制圧を終えたらしく、島の方も問題はなさそうなのかセラが心配そうな顔でこちらを眺めているのがエルピスには見えた。

「出てきて良かったんですか鍛治神、さすがにあれが相手だと貴方勝てませんよ?」
「ありゃ、案外元気だねぇ体力持っていかれたのに。もしかしてお邪魔だったかな?」
「いえもしあのままたたみかけて奪われてたら怪しかったです、助かりました。後はお任せください」
「……分かった。直ぐに終わらせた方がいい、でないとあの娘達に取られるぞ我慢の限界のようだからな」

 海神が言っているのはニルとセラのことだろう。
 彼女達はエルピスがこうして危険に陥ったときに助けられるよう下がってくれていたのだろうが、どうやらもうそろそろ我慢の限界らしいのがエルピスの目から見ても見て取れた。
 自分が傷ついているわけでもないのに自分の事のように怒ってくれる二人に感謝の心を抱きながらも、エルピスは再び刀を上段に構える。

「時間をくれてありがとうよ、おかげで回復できた」
「お互い様だ。先手はくれてやるよ、かかってこい」
「安い挑発だなーーッ!」

 エルピスの挑発に対して雄二が飛び出すと同時、エルピスは開いた左手で小さく魔法を発動させる。
 雄二はどこからその情報を得たのかどうやらエルピスが神人であることを知っているらしく、魔神の称号を警戒してか魔法を撃ってくる気配もなくエルピスから奪い取った大量の魔力を自らの強化に全て費やしたようだ。
 腹に雄二の刀が刺さりそれなりに出血するが、今のエルピスならば即死でなければこの程度の傷、十分耐えられる。

「ーーっぐ!」

 雄二の心臓のど真ん中にエルピスの刀がゆっくりと入っていく。
 人である以上脳か心臓を損傷してしまえば生き返ることはできない、周囲に高位の魔法使いもおらず自らの技能 スキルで回復しようにも三柱の神が存在するせいで周囲の魔力が神聖化しておりアンデットになる事は不可能だ。

「神の頑丈さを舐めるなよーー痛ッ! 技能スキルは手向にくれてやる!!」
「……ははっ……また……そのうち会うこと……になるだろうさっ」

 刀を抜き取りそのまま数度目にも止まらぬ速さでエルピスが刀を振るえば、一瞬で雄二の身体は複数のパーツに分けられる。
 だがそれでも油断する事なくエルピスはいくつもの魔法を海へと落ちていく肉片へ放つ、その一発一発がエルピスの雄二に対する恐怖心だと言っても過言ではない。
 それほどの強敵でありそれ程の脅威であった。

「……二度とないよそんなこと。後片付けするか。ニル、そこの森霊種の子任せたよ」
「もちろん、少し僕も気になることがあったんだ。丁度よかったよ」
「大丈夫エルピス? なんだか疲れているみたいだけれど……」
「大丈夫だよアウローラ。初めて死にかけたからちょっと精神的な疲労は大きいけど一時間もしたら元に戻るから」

 駆け寄ってきてくれていたアウローラに対して感謝の言葉を投げかけながらも、エルピスは一抹の不安が湧き上がる心をなんとか抑え込む。
 あの状況から逃げ延びる術はない、そう自分の心に言い聞かせながらエルピスはようやく戦闘の終わりを実感するのだった。
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