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青年期:修行編
悪魔達
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エルピスの強化は昨日までで、ひとしきり終える事が出来た。
魔法も剣も、以前とは比べ物にならないほどの経験と方法を覚え、技術面においてもこれから成熟していくのを含めて大幅な強化といえる。
ならば次にすることはアルに言った通り周りの強化、エルピスだけが強くなったところで今回のような事に対処できるわけではないからだ。
いまから強くなれと言ってすぐに強くなれるのはアウローラ、エキドナ、フェルその他召使が数人と言ったところか。
神の称号を仮使用させる事で即座の超強化を図れる面々を挙げてはみたが、その中でエルピスが自身が神であると言うことを告げることができるのはフェルとあと一人いるかどうかというところ。
邪神の称号を使用して強化する関係上、相手は悪魔であることが望ましい。
「ーーそうなると信用できる相手で悪魔なんだから、フィトゥスか」
思えば長かったものだ。
いつかは正体を話すと言って、もう何年経ったことだろう。
久しぶりに会ったフィトゥスはその事について触れてこなかったが、それはエルピスがいつか自分から話をすると言ったからだ。
タイミングもちょうどいいし、こう言ってはなんだが自由に使える手駒は欲しかった。
信頼に値しなおかつ強く、エルピスと離れていても連絡が取れる相手、丁度探していた人材にぴったりだ。
「この場所だとさすがにまずいかな、市街地からは離れてるけど人通りもあるにはあるし。近くに洞窟も無さそうだから適当に作るか」
森霊種だけが使える木の魔法を使用して森の中に小さな小屋を建てたエルピスは、魔法でできた鳩を二人の悪魔に向かって放つ。
動物をここまで完璧に真似られるようになったのは、〈神域〉をしっかりと使えるようになってからか。
生物の内部構造まで完璧に把握できるようになる〈神域〉だからこそ、その生物の出来ることや出来ないこと、癖や何気ない仕草なんかも真似することができる。
半刻ほど経ってエルピスがいよいよ手料理を作り始めた頃、二人の悪魔が家に来た。
「すいませんエルピスさん! 入れてもらえます?」
「よく来たなフェル。空いてるだろ?」
「それが悪魔って家主が招待してくれないと家の中入れないんですよ!」
ドアをどんどんと叩きながらそういうフェルの声を聞いて、そう言えばそんな特性もあったなとエルピスはドアを開ける。
確か家主が招待しないと入れないのは吸血鬼だったかなんだかの筈だが、どうやらこの世界では悪魔がそれにあたるらしい。
二人とも示し合わせたように黒い服を着用しており、何も言われなければ暗部が何かと勘違いしてしまいそうになる程存在感もいつもよりなかった。
おそらくは先程まで街中にでも居たのだろう、そう思いながらエルピスは二人を中に通す。
「ようやく落ち着いて話せますねエルピス様。あっという間に大きくなられて、先の戦闘においても見事な魔法と指示でした。最後に敵を全滅に追い込んだ魔法の凄さたるや、イロアス様も超えていたかもしれません」
「褒めすぎだよフィトゥス、父さんにはまだまだ勝てない。それより今日は湖の辺りで交わした約束を果たそうと思って」
「ーーっ、そうですか。リリィやヘリア先輩も共にと言うわけにはいかないんですね」
「二人のことを信用していない訳じゃないよ、それは信じて欲しい。ただちょっと厄介なのを敵に回してしまった、なるべく知ってる人間を減らして最悪の場合でも被害を抑えたい」
邪神になったエルピスだからこそ、悪の側に立つ神の出来ることと出来ないことが分かる。
その内の一つで、神の持つ能力の中でも悪によっている神しか使えない能力に、神罰と言うものがある。
範囲指定して対象の人物とそれに関連する人物に、回避不可能の物理か魔法による攻撃を行う権能の内の一つ。
あれは関わる人間すべてだったり自分について知っていたりと、色々な制限の方法がある。
それに対抗するために情報量は絞った方がいい。
「そう言うことでしたらまぁ……。リリィやヘリア先輩も特に文句は言わないでしょう」
「ならよかった。時間をかけてもあれだし単刀直入に言うよ? 俺の種族はもう半人半龍じゃない、神人。そして龍神であり魔神であり妖精神であり鍛治神であり龍神であり邪神だ」
「えっ……なっ、神? 邪神? いやそもそも一柱分だけじゃなくて六つも身体が持つのか? ちょっと待ってくださいエルピス様、理解するのに時間がかかります」
頭を抱えながら何が何か分からないと言ったふうなフィトゥスを見て、エルピスはそうなるのも仕方がないと思う。
力が絶対なこの世界において神は全てのものの崇拝の対象であり、それが自らの種族を管轄する神であるなら身を投げ出すことも厭わないものが多い。
おそらく亜人種が雄二の命令をあそこまで聞いていたのもそれが原因なのだろうが、そんな対象がいきなり目の前に現れそれがいままで付き従っていた主人だったらエルピスも驚く自信がある。
むしろ嘘だと疑わずにそれが真実であるという前提で思考を進めるフィトゥスに、感謝をするべきところでもあるかもしれない。
「ゆっくりでいいよ分かってくれたら。そんなに急いでるわけでも無いしね」
「ありがとうございます、気を使ってもらって……それでエルピス様にこんな事を言うのは申し訳ないんですけど、証拠的な物ってありますか? こっちのはなんか分かるらしいんですけど俺にはさっぱりで」
「まぁ僕は悪魔の中でもちょっと特別だからね」
「なら権能……はやりすぎか、邪神としての側面を強めに表に出すよ?」
普段エルピスは見た目に変化が出ないように、開放している神の称号同士で力を拮抗させ姿と力が偏ったものにならないようにしている。
ただその拮抗さえ崩せばその神の側面を色濃く出すことは容易い事で、言葉通りエルピスの目は徐々に色を変えていき薄紫色に染まっていく。
半人半龍らしく少しは出ていた鱗も何処かへと引っ込んでしまい、逆に手の甲に小さく五芒星が浮き出ていた。
これが邪神としてのエルピスの姿であり、能力によって見た目が変わるなどいつぞや見た電車に乗って戦う戦隊モノのようだと思いつつ、ドキドキしながらフィトゥスの反応を待つ。
するとここまで表に出せばさすがに理解できたのか、信じられないと言う目をしながらも先程までよりも明確に、神として信じているのがなんとなく理解できた。
「どうやら本当みたいですね、エルピス様が我々に隠していた理由も分かります。我々悪魔からすれば邪神の魔力が何物にも変えがたい物であるように、妖精神の魔力も森霊種にとっては非常に魅力がありますから。喧嘩になっていたかもしれませんね」
「みんなそう言うけどそんなものなのかな。俺的にはフィトゥス達に話せなかった理由は単純に怖かったからかな、両親と皆んなに神って知られたらどんな反応されるのか怖くて」
「ーー自信満々に言って外したので恥ずかしいですね。どんな反応と言っても、あまり普段と変わりませんよ。少し魔力を貰いたい欲は出ますが、それも慣れればみんな気を使わなくなります」
悪魔にとって邪神の魔力の誘惑から逃げ切ることがどれほどに難しい事なのか、悪魔でないエルピスにはその事が理解できないが簡単なことではないはずだ。
ただそれでもフィトゥスは普段と何らか分かった様子もなく、いつも通り何かあればエルピスを甘やかそうとしているようにすら見えた。
これだからフィトゥスといるとなんだか子供っぽくなってしまう、そう思いつつエルピスは嬉しさを表に出しながら話を本題に移す。
「良かったよ、権能の兼ね合いもあるから一気にみんなに、とは行かないけど一部の人達には教えてもいいかもね」
「リリィやヘリアさんが聞いたら倒れるかもしれませんね、反応が楽しみです」
「だね。それで本題だけど、俺と専属の契約を結んでほしい」
「契約、ですか。懐かしい言葉ですね」
いつかも説明したような気はするが、この世界において悪魔とは二種類に分けられる。
魔力や賃金などを対価として、様々な依頼をこなす万屋的な役割を持つ悪魔と、命や富を代価としてなんらかの報酬を与える古典的な悪魔。
上位種の悪魔になればなるほど後者が多く、下位種の悪魔であるほど前者が多い。
元下位種族であるフィトゥスからすれば昔はよく聞いた言葉ではあるが、異端者であるフィトゥスは契約を嫌い、それが原因で死にかけたところをアルヘオ家に拾われたので、アルヘオ家に来て以来の契約となるだろうか。
召喚物と契約の決定的な違いは対等かどうかであり、召喚物は召喚されている手前どこまでいっても召喚者の下だが契約は同列だ。
つまりは邪神であるエルピスと上位種になったとはいえたかだか一悪魔のフィトゥスでは契約など未分不相応にも程がある。
フィトゥス自身それは分かっているがエルピスに頼りにされている事を思えば、その気持ちに答えないわけにもいかない。
「謹んでお受けいたしますエルピス様」
「良かった。依頼内容は諜報と戦闘、報酬は邪神の能力の使用許可」
「えっ!? 羨ましい僕もほしいんですけど! 次は絶対にやらかしませんからくださいよ!」
「本当にやらかさないか?」
「約束します!」
「じゃあ……というより元からここに二人とも呼んだのは、二人に能力を貸し与えようと思ったからだけどね。余裕があって使いこなせそうだったら権能も使っていいよ、使用権の9割は俺が使うけど残りの1割はいつでも自由に使っていいから」
「話が大きくなってきましたね、権能ですか。自分が神使になるとは思っても見ませんでしたね」
エルピスと契約することによってこれからフィトゥスとフェルは、邪神の能力と権能を自由に使用する事ができるようになる。
権能は1割とはいえ超えられない壁を越える事ができる大切なものだし、完全解放された邪神の能力はそこいらの特殊技能など比較にならないほどに強力である。
渡す相手を間違えれば一国程度ならば余裕で滅ぼせるほどの力ではあるが、この二人ならば特に問題行動は起こさないだろうと言うエルピスなりの信頼で特に制限もなく渡す。
フェルに関しては前科があるので不安がないわけではないが、本人も反省しているようだし特に問題はないだろうと言う判断だ。
「それじゃあこれから詳しく権能と能力について説明するからよく聞いてね」
並行して契約も進めつつ、エルピスは色々と能力についての説明も行なっていく。
それから完全に内容を説明し切る頃には日が落ち切っており、契約も完了して丁度日が沈む頃にはこの世界に二人の神使が出来上がっていた。
明日はついにセラとの特訓日、正直辛さはあるが強くなるためには仕方がないと割り切ってエルピスは明日に備えるのだった。
魔法も剣も、以前とは比べ物にならないほどの経験と方法を覚え、技術面においてもこれから成熟していくのを含めて大幅な強化といえる。
ならば次にすることはアルに言った通り周りの強化、エルピスだけが強くなったところで今回のような事に対処できるわけではないからだ。
いまから強くなれと言ってすぐに強くなれるのはアウローラ、エキドナ、フェルその他召使が数人と言ったところか。
神の称号を仮使用させる事で即座の超強化を図れる面々を挙げてはみたが、その中でエルピスが自身が神であると言うことを告げることができるのはフェルとあと一人いるかどうかというところ。
邪神の称号を使用して強化する関係上、相手は悪魔であることが望ましい。
「ーーそうなると信用できる相手で悪魔なんだから、フィトゥスか」
思えば長かったものだ。
いつかは正体を話すと言って、もう何年経ったことだろう。
久しぶりに会ったフィトゥスはその事について触れてこなかったが、それはエルピスがいつか自分から話をすると言ったからだ。
タイミングもちょうどいいし、こう言ってはなんだが自由に使える手駒は欲しかった。
信頼に値しなおかつ強く、エルピスと離れていても連絡が取れる相手、丁度探していた人材にぴったりだ。
「この場所だとさすがにまずいかな、市街地からは離れてるけど人通りもあるにはあるし。近くに洞窟も無さそうだから適当に作るか」
森霊種だけが使える木の魔法を使用して森の中に小さな小屋を建てたエルピスは、魔法でできた鳩を二人の悪魔に向かって放つ。
動物をここまで完璧に真似られるようになったのは、〈神域〉をしっかりと使えるようになってからか。
生物の内部構造まで完璧に把握できるようになる〈神域〉だからこそ、その生物の出来ることや出来ないこと、癖や何気ない仕草なんかも真似することができる。
半刻ほど経ってエルピスがいよいよ手料理を作り始めた頃、二人の悪魔が家に来た。
「すいませんエルピスさん! 入れてもらえます?」
「よく来たなフェル。空いてるだろ?」
「それが悪魔って家主が招待してくれないと家の中入れないんですよ!」
ドアをどんどんと叩きながらそういうフェルの声を聞いて、そう言えばそんな特性もあったなとエルピスはドアを開ける。
確か家主が招待しないと入れないのは吸血鬼だったかなんだかの筈だが、どうやらこの世界では悪魔がそれにあたるらしい。
二人とも示し合わせたように黒い服を着用しており、何も言われなければ暗部が何かと勘違いしてしまいそうになる程存在感もいつもよりなかった。
おそらくは先程まで街中にでも居たのだろう、そう思いながらエルピスは二人を中に通す。
「ようやく落ち着いて話せますねエルピス様。あっという間に大きくなられて、先の戦闘においても見事な魔法と指示でした。最後に敵を全滅に追い込んだ魔法の凄さたるや、イロアス様も超えていたかもしれません」
「褒めすぎだよフィトゥス、父さんにはまだまだ勝てない。それより今日は湖の辺りで交わした約束を果たそうと思って」
「ーーっ、そうですか。リリィやヘリア先輩も共にと言うわけにはいかないんですね」
「二人のことを信用していない訳じゃないよ、それは信じて欲しい。ただちょっと厄介なのを敵に回してしまった、なるべく知ってる人間を減らして最悪の場合でも被害を抑えたい」
邪神になったエルピスだからこそ、悪の側に立つ神の出来ることと出来ないことが分かる。
その内の一つで、神の持つ能力の中でも悪によっている神しか使えない能力に、神罰と言うものがある。
範囲指定して対象の人物とそれに関連する人物に、回避不可能の物理か魔法による攻撃を行う権能の内の一つ。
あれは関わる人間すべてだったり自分について知っていたりと、色々な制限の方法がある。
それに対抗するために情報量は絞った方がいい。
「そう言うことでしたらまぁ……。リリィやヘリア先輩も特に文句は言わないでしょう」
「ならよかった。時間をかけてもあれだし単刀直入に言うよ? 俺の種族はもう半人半龍じゃない、神人。そして龍神であり魔神であり妖精神であり鍛治神であり龍神であり邪神だ」
「えっ……なっ、神? 邪神? いやそもそも一柱分だけじゃなくて六つも身体が持つのか? ちょっと待ってくださいエルピス様、理解するのに時間がかかります」
頭を抱えながら何が何か分からないと言ったふうなフィトゥスを見て、エルピスはそうなるのも仕方がないと思う。
力が絶対なこの世界において神は全てのものの崇拝の対象であり、それが自らの種族を管轄する神であるなら身を投げ出すことも厭わないものが多い。
おそらく亜人種が雄二の命令をあそこまで聞いていたのもそれが原因なのだろうが、そんな対象がいきなり目の前に現れそれがいままで付き従っていた主人だったらエルピスも驚く自信がある。
むしろ嘘だと疑わずにそれが真実であるという前提で思考を進めるフィトゥスに、感謝をするべきところでもあるかもしれない。
「ゆっくりでいいよ分かってくれたら。そんなに急いでるわけでも無いしね」
「ありがとうございます、気を使ってもらって……それでエルピス様にこんな事を言うのは申し訳ないんですけど、証拠的な物ってありますか? こっちのはなんか分かるらしいんですけど俺にはさっぱりで」
「まぁ僕は悪魔の中でもちょっと特別だからね」
「なら権能……はやりすぎか、邪神としての側面を強めに表に出すよ?」
普段エルピスは見た目に変化が出ないように、開放している神の称号同士で力を拮抗させ姿と力が偏ったものにならないようにしている。
ただその拮抗さえ崩せばその神の側面を色濃く出すことは容易い事で、言葉通りエルピスの目は徐々に色を変えていき薄紫色に染まっていく。
半人半龍らしく少しは出ていた鱗も何処かへと引っ込んでしまい、逆に手の甲に小さく五芒星が浮き出ていた。
これが邪神としてのエルピスの姿であり、能力によって見た目が変わるなどいつぞや見た電車に乗って戦う戦隊モノのようだと思いつつ、ドキドキしながらフィトゥスの反応を待つ。
するとここまで表に出せばさすがに理解できたのか、信じられないと言う目をしながらも先程までよりも明確に、神として信じているのがなんとなく理解できた。
「どうやら本当みたいですね、エルピス様が我々に隠していた理由も分かります。我々悪魔からすれば邪神の魔力が何物にも変えがたい物であるように、妖精神の魔力も森霊種にとっては非常に魅力がありますから。喧嘩になっていたかもしれませんね」
「みんなそう言うけどそんなものなのかな。俺的にはフィトゥス達に話せなかった理由は単純に怖かったからかな、両親と皆んなに神って知られたらどんな反応されるのか怖くて」
「ーー自信満々に言って外したので恥ずかしいですね。どんな反応と言っても、あまり普段と変わりませんよ。少し魔力を貰いたい欲は出ますが、それも慣れればみんな気を使わなくなります」
悪魔にとって邪神の魔力の誘惑から逃げ切ることがどれほどに難しい事なのか、悪魔でないエルピスにはその事が理解できないが簡単なことではないはずだ。
ただそれでもフィトゥスは普段と何らか分かった様子もなく、いつも通り何かあればエルピスを甘やかそうとしているようにすら見えた。
これだからフィトゥスといるとなんだか子供っぽくなってしまう、そう思いつつエルピスは嬉しさを表に出しながら話を本題に移す。
「良かったよ、権能の兼ね合いもあるから一気にみんなに、とは行かないけど一部の人達には教えてもいいかもね」
「リリィやヘリアさんが聞いたら倒れるかもしれませんね、反応が楽しみです」
「だね。それで本題だけど、俺と専属の契約を結んでほしい」
「契約、ですか。懐かしい言葉ですね」
いつかも説明したような気はするが、この世界において悪魔とは二種類に分けられる。
魔力や賃金などを対価として、様々な依頼をこなす万屋的な役割を持つ悪魔と、命や富を代価としてなんらかの報酬を与える古典的な悪魔。
上位種の悪魔になればなるほど後者が多く、下位種の悪魔であるほど前者が多い。
元下位種族であるフィトゥスからすれば昔はよく聞いた言葉ではあるが、異端者であるフィトゥスは契約を嫌い、それが原因で死にかけたところをアルヘオ家に拾われたので、アルヘオ家に来て以来の契約となるだろうか。
召喚物と契約の決定的な違いは対等かどうかであり、召喚物は召喚されている手前どこまでいっても召喚者の下だが契約は同列だ。
つまりは邪神であるエルピスと上位種になったとはいえたかだか一悪魔のフィトゥスでは契約など未分不相応にも程がある。
フィトゥス自身それは分かっているがエルピスに頼りにされている事を思えば、その気持ちに答えないわけにもいかない。
「謹んでお受けいたしますエルピス様」
「良かった。依頼内容は諜報と戦闘、報酬は邪神の能力の使用許可」
「えっ!? 羨ましい僕もほしいんですけど! 次は絶対にやらかしませんからくださいよ!」
「本当にやらかさないか?」
「約束します!」
「じゃあ……というより元からここに二人とも呼んだのは、二人に能力を貸し与えようと思ったからだけどね。余裕があって使いこなせそうだったら権能も使っていいよ、使用権の9割は俺が使うけど残りの1割はいつでも自由に使っていいから」
「話が大きくなってきましたね、権能ですか。自分が神使になるとは思っても見ませんでしたね」
エルピスと契約することによってこれからフィトゥスとフェルは、邪神の能力と権能を自由に使用する事ができるようになる。
権能は1割とはいえ超えられない壁を越える事ができる大切なものだし、完全解放された邪神の能力はそこいらの特殊技能など比較にならないほどに強力である。
渡す相手を間違えれば一国程度ならば余裕で滅ぼせるほどの力ではあるが、この二人ならば特に問題行動は起こさないだろうと言うエルピスなりの信頼で特に制限もなく渡す。
フェルに関しては前科があるので不安がないわけではないが、本人も反省しているようだし特に問題はないだろうと言う判断だ。
「それじゃあこれから詳しく権能と能力について説明するからよく聞いてね」
並行して契約も進めつつ、エルピスは色々と能力についての説明も行なっていく。
それから完全に内容を説明し切る頃には日が落ち切っており、契約も完了して丁度日が沈む頃にはこの世界に二人の神使が出来上がっていた。
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