118 / 276
青年期:修行編
異世界人
しおりを挟む
目の前に並べられた多種多様な日本料理を眺めながら、男女混合の七人組は、かなりの人で賑わう食堂の中で嬉しそうに悲鳴をあげる。
声の主人たちは最近王国にて徐々にその名を広めつつある異世界人。
本日は首都防衛に成功した者達を祝う祝賀会が行われ、エルピス主導の元遥希達もその祝賀会に参加していた。
「寿司に天麩羅に唐揚げとか、マジでなんでもあんじゃんこの店!!」
「おい旬斗! あっちにはバイキングもあるらしいぞ! 早く行こうぜ!!」
「おっけー小林君も行こうぜ…って小林君それ水零してる! めっちゃ零してるから!!」
「そんなに騒がずとも、この程度の水ならタオルでどうとでもなるだろうが」
「まぁ確かにーーって秋季!? それタオルじゃない! 俺の羽織ってた服!!」
いくら騒がしい事の多い店内とは言え、一際目立つ騒ぎ方をしている異世界の勇者達。
だがそんな異世界の勇者達に向かって、周囲の者達は嫌そうな視線を向けるのではなく楽しそうに見つめるばかり。
何故なら周りに居るのは、亜人達に襲われそうになっていた街や村の住人だからだ。
国王の迅速な判断により人的被害は二つの村で済んだとは言え、それでも少なからずの恐怖心を抱いていた住人からすれば、亜人達を打ち倒してくれた黒髪の者達は英雄の様にも写っていた。
だがそんな英雄とも言える者達に対して、声を荒げるものが一人。
「あんた達周りの迷惑も考えなさい! いくら晴人ーーじゃなかった、エルピスが貸し切ってしかも料理まで用意してくれたとはいえ、他の人達もいるのが見て分からないの!?」
そう叫びながら男達に対して文句を言うのは、同じ綺麗な黒髪を携えた可憐な女性だ。
周りの者達からすれば全然気にしなくて良いことかもしれない、だがそれとこれとは話が別、一般の常識は例え相手が許そうとも守るべきだと語り、それを肯定する様にして遥希が口を開く。
「確かに少し騒ぎ過ぎだぞ。ニルさんを見習え、静かに何時の間にか有り得ないくらいの量食べてるだろ」
「遥希さん、僕有り得ないって言われる程の量は、食べてませんよ!? 人の事大食いみたいな言い方するのやめてくださいよ、少食でしょ?」
「いやその積み上げられた食器の数は普通じゃないんだがーーとは言え確かに舞妓と遥希が言う通りだな、五月蝿くしてすいませんでした!」
「いやいや、気にすんな気にすんな! あんた達を見てるとこっちも元気が貰えるんだ、好きに続けてくれ!」
酒を浴びる様に飲んでいた男が率先してそう言うと、それにつられる様にして周りの者達からも同意の声が上がる。
「そうだそうだ! エルピス様の奢りなんだし好きに騒ごうぜ!!」
「ーーと言う事で騒ぐぞーっ!!!」
「あんたらはーーあぁもういいや! 好きに騒ぎなさい!!」
周りの者達に影響されて再び騒ぎ出した旬斗を見て、舞妓は頭を抑えながらヤケ酒を飲み始める。
そんな先程よりも一際騒ぎ出した者達を遠巻きから眺めるのは、灰色に近い髪の毛をショートにし、いつのまにかさっきいた場所から移動して大量のご飯を食べるニルと、短い黒髪に飾り付け用の簪を付け日本酒と書かれた酒をゆったりと飲む紅葉だ。
お酒に強い紅葉からすれば程よく酔える度数の日本酒を飲み、騒ぎの中心をぼーっと眺めていると、食事の手を止めニルが口を開く。
「紅葉さんはあそこに入ってこないんですか? 随分と楽しそうですが」
「私はああいうのは苦手やもんでなぁ……そう言うニルはんは入ってこんでええん? 私らの監視すんのやったら、距離的にも少しとは言え、近い方がええやろ?」
「気付かれないように振舞っていたつもりでしたが、どうやらバレバレだったようですね。ーー確かに見て来てくれとはエルピス様に言われましたが、貴方達の行動を制限したりそう言ったものでは有りませんし。恐らくは貴方達になんらかの危害が及んだ場合に危険を排除する為の僕でしょう」
「確かにあんさんかなり強そうやしなぁ…私らがちょっと頑張ったくらいじゃ、絶対に超えられやん壁があんのが何となくわかるわ」
そう言いながら紅葉は自分が飲んでいた日本酒をニルに対して渡し、ニルも数千年振りの酒に頬を緩ませる。
ニル自身が今回の騒動前である状態ならば、紅葉達全員が力を合わせれば多少なりとも善戦は出来ただろう。
だが今ニルの主人であるエルピスは龍神、魔神、邪神の称号を解除した状態にあり、エルピスの力に比例して強くなるニルは"神獣"と呼んでも差し支えのないほどの力を手に入れた。
世界を作ることの出来た全盛期には未だ及ばないとはいえ、人類が勝つには余りにも高すぎる壁と言えるだろう。
それを少しでも知覚できた紅葉に対して少しばかりの敬意を抱きながら、ニルは話を変える。
「まぁ僕は強いですから。そう言えば話は変わりますが、委員長と呼ばれていたあの青年は、一体エルピスとどのような関係だったのでしょうか?」
「ーー委員長さんは確か、エルピスはんとは昔からの友達やったと思うよ? 私は高校からエルピスはんと会ったから、詳しい事は言えんけど、それでも家の関係で面倒事から逃げてた私とは違って、格別に仲が良かったんは記憶しとるよ」
過去の自分に対して、怒りの感情でも持っているかのような表情でそう言いながら、紅葉は酒を煽る。
休み時間だけではなく、休日も良く会っていると、委員長と同じで晴人と気兼ねなく喋ることが出来た舞妓が言っていたのを、なんとなく覚えていたからだ。
舞妓の家はかなりの大金持ちで、雄二が親に麗子を退学にしようと言ったところでそれが無駄に終わる事を知っていた。
だからこそ晴人と平気で喋れていた舞妓の事を思い出し、紅葉はやるせない気持ちになる。
自分がその立場だったら、もっと違う結末があったのではないかと。
(とかそんな事をいくら考えても、私が逃げた事には変わりは無いんやけどなぁ)
もしかすれば別の世界さんもあったのかもしれないが、それはもう既に過ぎ去った話だ。
過去を変えられるのならば変えたいものだが、未来さえ見えていない今ではそれをしたところで何が変わるかすら分からない。
「委員長ですか……確かそう呼ばれていた子は王城の治療室に居たはずですね。少し席を外します、すいませんが見ておいてください」
「ええけど任されたのに離れてええん? それにエルピスはあんまり委員長に会いたがってなかった見たいやし、あんさんも委員長にはあんまり興味ないんとちゃうん?」
「何ですかその偏見。確かに姉さんならエルピスが興味を持つものしか殆ど興味を持ちませんけど、僕は意外と色んな事に興味を持つタイプですから。なんかあったらこれを吹いてください、戻ってくるので」
紅葉に笛のようなものを手渡し、そう言いながらニルは席を立ちその場から消える。
おそらくは超高速で構築したであろう転移魔法に、ああいうのが化け物と言うのだろうと考えながら、紅葉は騒ぎを更に大きくしている遥希達の元へと静かに足を進めるのだった。
#
「さてさて委員長さん、正気は保ててますか?」
薬品の匂いが辺りに充満し、立地的に陽の当たらない暗い医務室の中で、委員長と呼ばれた男は静かに入ってきた小柄な女性に目を向ける。
見たことはない、だがそれは幹からすれば当たり前のことだった。
この数年間、具体的に言えば一、二年の記憶が全て抜け落ちてしまっているからだ。
もしかすれば知人か何かなのかと思いその綺麗な顔を見てみるが、その目からは優しさや友好的な雰囲気は感じ取れない。
どちらかといえば見定めるような、敵に対しての視線のような、そんな雰囲気がある。
だから幹は何の為に目の前の女性が来たのか疑問に思い声をかける。
「……どなたですか? 僕が殺した人の家族か何かでしょうか?」
「真っ先にそれが思い浮かぶと言うのは何と言うか…この世界もそこら辺は厳しく作ったんだなと実感できますね」
「厳しく作った? どう言う事でしょうか?」
「あ、そこら辺は気にしないでください。ただの独り言ですので」
久方振りに会話という行為を行う所為で、少し言葉が出てくるのが遅いが、なんとか会話を出来る事に安堵していると、目の前の女性は幹が寝そべるベットに腰掛けた。
その仕草は妖艶と言うには余りにも殺気と怒気を含んだ立ち振る舞いで、死と隣り合わせに生きていたこの十数年の中で最も死をハッキリと認識させてくる。
一言を間違えればそこに死があるのがはっきりと認識でき、死んでも構わないと思っていたはずなのに手が無意識に震えていた。
「先ずは自己紹介から、僕の名前はニル・レクス。色々話を聞いて私の方は貴方の事を知っていますので、自己紹介は不要です」
「あ、はい。分かりましたニルさん」
「良い返事です。それでですが、貴方は一体どちらの味方なのかーー聞いてもよろしいでしょうか?」
「どちらの……とは?」
「エルピス様の敵かそうじゃないか、ただそれだけです。あ、嘘ついても直ぐに分かるので、下手な嘘は自分の首を締めるだけだと思ってくださいね?」
文字通り返答次第では首が飛びそうな問いに対して、必死になって脳から言葉を選び出そうとする。
幻覚魔法の応用によって一般常識全てを混濁させられ、何が良くて何が悪いのか理解出来なかったからと言う理由だけでは、目の前の少女には通じないだろう。
だから寂しげな顔をしてベットの横に立ち、泣きながら去って言ったエルピスという名前の青年を見て思った事を素直に口に出す。
「味方でも敵でも有りませんよ。確かに始めて出会った人に対して剣を向けたーーまぁこれも後から聞いた話ですがーー事は許されない行為です。だから彼の前には二度と顔を出しません」
これは幹がこの数日間の間に考えて出した結論だ。
いままで一体何人殺してきたのか、罪悪感すらけされて頭の中がこんがらがっている今では自分の罪を意識はできないが、それが悪いことであるというのは理解できる。
だからこそ責任を持って、これで命を狙った事を許してくれるとは思ってもいないが、幹は二度と合わない決断をした。
「そうですか……今のは聞いていない事にしておきます。貴方の事は大体理解出来ましたので、私はここら辺で失礼させてもらいます」
「分かりました」
静かな足取りで部屋を出て行くニルの背中を眺めながら、委員長は静かに言葉を漏らす。
懐かしい友人を思い出しながら。
「あぁ怖かった。それにしてもこんな世界で、晴人は一体何処に行ったのかな?」
唯一の心の救いにしていた晴人との約束を思い出しながら、幹はゆっくりと息を吐き出す。
自身が心の支えにしていた物を、自分で突き放したとも知らずに。
#
龍の森の最奥、イロアスやクリムですら知らない秘境の地にニルは訪れていた。
足元は少しぬかるんでおり、どうやら先ほどまで雨でも降っていたようで靴が汚れるのを気にしつつ、周囲から襲ってくる龍達をあしらいつつ進んでいく。
比嘉の戦力差を分かっているはずなのに一心不乱に龍達が襲いかかってくるのは、この奥にいる人物を必死になって守っているからだろう。
「なんだ、やけに若い奴らがコテンパンにされていると思ったらニルじゃないか。お前ら通してやれ、龍神の番だ」
いつの間に影からでてきていたのか、周囲の龍を押し除けて出てきたのはエキドナだ。
普段はこうして表に出てくるのは珍しいのだが、周りの龍と同じでエルピスの感情に感化されて出てきたのだろう。
「ありがとエキドナ。思ってたより執念深かったからもうちょっとで実力行使しちゃうところだった」
「そうだろうと思って出てきたんだ。エルピスはこの先だ、少々荒れているから気をつけた方がいいぞ」
「分かってる。理由もね」
ニル自身には言われたことがなかったが、セラから先程会ってきた委員長とエルピスは仲が良かったと聞いている。
そんな相手に初対面の相手だの二度と合わないだの言われれば、落ち込んでしまうのも無理はない。
思っていたより時間がかかりそうなので魔法を使ってセラに護衛の交代をお願いし、足早にエルピスの方へと向かう。
この世界において最高峰の力が振るわれる目の前の空間に近づきつつ、ニルは大声を上げてエルピスに自分が来た事をわからせる。
「エルピス、僕が来たよーっ!!」
ただ叫んだだけではあるがそれだけすれば十分で、目の前で行われていた破壊活動も一旦なりを潜め土煙が晴れてきたことでエルピスの姿がしっかりと目視できるようになる。
特にこれと言って外見上の変化はないが、威圧感だけでいえば普段の数倍だ。
周囲にある草木はその怒りの感情だけで枯れ果て、大地も使い物にならなくなってしまっている。
「どうしたんだニル。遥希達に何かあったか?」
「向こうは至って平和だよ、セラに任せてきたから特に問題もないと思う」
「それなら良かった、どうしてここに? よくここが分かったな」
「そりゃ完全無敵のニルさんだからね、好きな人が傷ついてたら助けにもくるよ」
「ーー慰めに来てくれたのか?」
「うん。座るよ。よこ」
「ああ」
了承を得てエルピスの横に座りつつ、ニルはどんな言葉をかけようか悩む。
なんとなくエルピスが落ち込んでいる気がしてここに来ただけなので、はっきり言って無計画だしなにか慰めの言葉を思いついたわけでもない。
だからとりあえず一番心に来ていることから解決させてみる。
「すっごい落ち込んでるところ悪いんだけどさ、エルピス」
「ん? なんだ?」
「ーーエルピス自分が晴人だって事あの子に伝えた?」
あの口ぶりからしておそらく言っていないのではないか、そう思っていたニルの考えは的中したようで、みるみるうちにエルピスの顔が納得したような表情に変わっていく。
創生神の時から何も変わっていない、肝心な所でエルピスは抜けているのだ。
「そう言えば言ってなかった…!」
「ちょ、ちょまって。いきなり行こうとしない、向こうも洗脳が解けたばっかりでまだ不安定なんだから」
いますぐにでも行こうとしているエルピスの手を掴みなんとか止めて、ニルはエルピスを静止する。
言いたい気持ちは分かるが今行けばただでさえ混乱している頭がさらに混乱するだろう。
「確かにそうだな。ありがとニル」
「いやいや大丈夫だけどさ。それで悩みは解決した?」
「半分は」
「残りの半分は?」
「実力不足かな、みんなに実戦経験積んでもらおうと最初の方は手加減してたから良いとして、最後は本気でやったのに殺しきれなかった。それが心残りかな」
確かに神の力を使っていたというのにしっかりと殺しきれていなかったのは、ニルも側から見ていたのでよく分かっている。
殺す気でやったのに殺さなかったということは、単純に実力不足故だからだ。
油断ももちろんあっただろうが、それでも神の力から逃げ切ったあの男の方が一枚上手だった。
「なるほど。そういう事なら僕と姉さんに任せてよ、確かに今のエルピスは神の力を使いこなせてないし、修行をつけないとダメだとは思ってたんだよね」
「助かるよ。委員長が落ち着くまでは真面目に特訓してみるか」
一頻り納得して考えが落ち着いたのか、先ほどまでの荒ぶる気を抑えてエルピスは修行のために準備を開始する。
こうして数週間にわたる地獄のような特訓が始まるのだった。
声の主人たちは最近王国にて徐々にその名を広めつつある異世界人。
本日は首都防衛に成功した者達を祝う祝賀会が行われ、エルピス主導の元遥希達もその祝賀会に参加していた。
「寿司に天麩羅に唐揚げとか、マジでなんでもあんじゃんこの店!!」
「おい旬斗! あっちにはバイキングもあるらしいぞ! 早く行こうぜ!!」
「おっけー小林君も行こうぜ…って小林君それ水零してる! めっちゃ零してるから!!」
「そんなに騒がずとも、この程度の水ならタオルでどうとでもなるだろうが」
「まぁ確かにーーって秋季!? それタオルじゃない! 俺の羽織ってた服!!」
いくら騒がしい事の多い店内とは言え、一際目立つ騒ぎ方をしている異世界の勇者達。
だがそんな異世界の勇者達に向かって、周囲の者達は嫌そうな視線を向けるのではなく楽しそうに見つめるばかり。
何故なら周りに居るのは、亜人達に襲われそうになっていた街や村の住人だからだ。
国王の迅速な判断により人的被害は二つの村で済んだとは言え、それでも少なからずの恐怖心を抱いていた住人からすれば、亜人達を打ち倒してくれた黒髪の者達は英雄の様にも写っていた。
だがそんな英雄とも言える者達に対して、声を荒げるものが一人。
「あんた達周りの迷惑も考えなさい! いくら晴人ーーじゃなかった、エルピスが貸し切ってしかも料理まで用意してくれたとはいえ、他の人達もいるのが見て分からないの!?」
そう叫びながら男達に対して文句を言うのは、同じ綺麗な黒髪を携えた可憐な女性だ。
周りの者達からすれば全然気にしなくて良いことかもしれない、だがそれとこれとは話が別、一般の常識は例え相手が許そうとも守るべきだと語り、それを肯定する様にして遥希が口を開く。
「確かに少し騒ぎ過ぎだぞ。ニルさんを見習え、静かに何時の間にか有り得ないくらいの量食べてるだろ」
「遥希さん、僕有り得ないって言われる程の量は、食べてませんよ!? 人の事大食いみたいな言い方するのやめてくださいよ、少食でしょ?」
「いやその積み上げられた食器の数は普通じゃないんだがーーとは言え確かに舞妓と遥希が言う通りだな、五月蝿くしてすいませんでした!」
「いやいや、気にすんな気にすんな! あんた達を見てるとこっちも元気が貰えるんだ、好きに続けてくれ!」
酒を浴びる様に飲んでいた男が率先してそう言うと、それにつられる様にして周りの者達からも同意の声が上がる。
「そうだそうだ! エルピス様の奢りなんだし好きに騒ごうぜ!!」
「ーーと言う事で騒ぐぞーっ!!!」
「あんたらはーーあぁもういいや! 好きに騒ぎなさい!!」
周りの者達に影響されて再び騒ぎ出した旬斗を見て、舞妓は頭を抑えながらヤケ酒を飲み始める。
そんな先程よりも一際騒ぎ出した者達を遠巻きから眺めるのは、灰色に近い髪の毛をショートにし、いつのまにかさっきいた場所から移動して大量のご飯を食べるニルと、短い黒髪に飾り付け用の簪を付け日本酒と書かれた酒をゆったりと飲む紅葉だ。
お酒に強い紅葉からすれば程よく酔える度数の日本酒を飲み、騒ぎの中心をぼーっと眺めていると、食事の手を止めニルが口を開く。
「紅葉さんはあそこに入ってこないんですか? 随分と楽しそうですが」
「私はああいうのは苦手やもんでなぁ……そう言うニルはんは入ってこんでええん? 私らの監視すんのやったら、距離的にも少しとは言え、近い方がええやろ?」
「気付かれないように振舞っていたつもりでしたが、どうやらバレバレだったようですね。ーー確かに見て来てくれとはエルピス様に言われましたが、貴方達の行動を制限したりそう言ったものでは有りませんし。恐らくは貴方達になんらかの危害が及んだ場合に危険を排除する為の僕でしょう」
「確かにあんさんかなり強そうやしなぁ…私らがちょっと頑張ったくらいじゃ、絶対に超えられやん壁があんのが何となくわかるわ」
そう言いながら紅葉は自分が飲んでいた日本酒をニルに対して渡し、ニルも数千年振りの酒に頬を緩ませる。
ニル自身が今回の騒動前である状態ならば、紅葉達全員が力を合わせれば多少なりとも善戦は出来ただろう。
だが今ニルの主人であるエルピスは龍神、魔神、邪神の称号を解除した状態にあり、エルピスの力に比例して強くなるニルは"神獣"と呼んでも差し支えのないほどの力を手に入れた。
世界を作ることの出来た全盛期には未だ及ばないとはいえ、人類が勝つには余りにも高すぎる壁と言えるだろう。
それを少しでも知覚できた紅葉に対して少しばかりの敬意を抱きながら、ニルは話を変える。
「まぁ僕は強いですから。そう言えば話は変わりますが、委員長と呼ばれていたあの青年は、一体エルピスとどのような関係だったのでしょうか?」
「ーー委員長さんは確か、エルピスはんとは昔からの友達やったと思うよ? 私は高校からエルピスはんと会ったから、詳しい事は言えんけど、それでも家の関係で面倒事から逃げてた私とは違って、格別に仲が良かったんは記憶しとるよ」
過去の自分に対して、怒りの感情でも持っているかのような表情でそう言いながら、紅葉は酒を煽る。
休み時間だけではなく、休日も良く会っていると、委員長と同じで晴人と気兼ねなく喋ることが出来た舞妓が言っていたのを、なんとなく覚えていたからだ。
舞妓の家はかなりの大金持ちで、雄二が親に麗子を退学にしようと言ったところでそれが無駄に終わる事を知っていた。
だからこそ晴人と平気で喋れていた舞妓の事を思い出し、紅葉はやるせない気持ちになる。
自分がその立場だったら、もっと違う結末があったのではないかと。
(とかそんな事をいくら考えても、私が逃げた事には変わりは無いんやけどなぁ)
もしかすれば別の世界さんもあったのかもしれないが、それはもう既に過ぎ去った話だ。
過去を変えられるのならば変えたいものだが、未来さえ見えていない今ではそれをしたところで何が変わるかすら分からない。
「委員長ですか……確かそう呼ばれていた子は王城の治療室に居たはずですね。少し席を外します、すいませんが見ておいてください」
「ええけど任されたのに離れてええん? それにエルピスはあんまり委員長に会いたがってなかった見たいやし、あんさんも委員長にはあんまり興味ないんとちゃうん?」
「何ですかその偏見。確かに姉さんならエルピスが興味を持つものしか殆ど興味を持ちませんけど、僕は意外と色んな事に興味を持つタイプですから。なんかあったらこれを吹いてください、戻ってくるので」
紅葉に笛のようなものを手渡し、そう言いながらニルは席を立ちその場から消える。
おそらくは超高速で構築したであろう転移魔法に、ああいうのが化け物と言うのだろうと考えながら、紅葉は騒ぎを更に大きくしている遥希達の元へと静かに足を進めるのだった。
#
「さてさて委員長さん、正気は保ててますか?」
薬品の匂いが辺りに充満し、立地的に陽の当たらない暗い医務室の中で、委員長と呼ばれた男は静かに入ってきた小柄な女性に目を向ける。
見たことはない、だがそれは幹からすれば当たり前のことだった。
この数年間、具体的に言えば一、二年の記憶が全て抜け落ちてしまっているからだ。
もしかすれば知人か何かなのかと思いその綺麗な顔を見てみるが、その目からは優しさや友好的な雰囲気は感じ取れない。
どちらかといえば見定めるような、敵に対しての視線のような、そんな雰囲気がある。
だから幹は何の為に目の前の女性が来たのか疑問に思い声をかける。
「……どなたですか? 僕が殺した人の家族か何かでしょうか?」
「真っ先にそれが思い浮かぶと言うのは何と言うか…この世界もそこら辺は厳しく作ったんだなと実感できますね」
「厳しく作った? どう言う事でしょうか?」
「あ、そこら辺は気にしないでください。ただの独り言ですので」
久方振りに会話という行為を行う所為で、少し言葉が出てくるのが遅いが、なんとか会話を出来る事に安堵していると、目の前の女性は幹が寝そべるベットに腰掛けた。
その仕草は妖艶と言うには余りにも殺気と怒気を含んだ立ち振る舞いで、死と隣り合わせに生きていたこの十数年の中で最も死をハッキリと認識させてくる。
一言を間違えればそこに死があるのがはっきりと認識でき、死んでも構わないと思っていたはずなのに手が無意識に震えていた。
「先ずは自己紹介から、僕の名前はニル・レクス。色々話を聞いて私の方は貴方の事を知っていますので、自己紹介は不要です」
「あ、はい。分かりましたニルさん」
「良い返事です。それでですが、貴方は一体どちらの味方なのかーー聞いてもよろしいでしょうか?」
「どちらの……とは?」
「エルピス様の敵かそうじゃないか、ただそれだけです。あ、嘘ついても直ぐに分かるので、下手な嘘は自分の首を締めるだけだと思ってくださいね?」
文字通り返答次第では首が飛びそうな問いに対して、必死になって脳から言葉を選び出そうとする。
幻覚魔法の応用によって一般常識全てを混濁させられ、何が良くて何が悪いのか理解出来なかったからと言う理由だけでは、目の前の少女には通じないだろう。
だから寂しげな顔をしてベットの横に立ち、泣きながら去って言ったエルピスという名前の青年を見て思った事を素直に口に出す。
「味方でも敵でも有りませんよ。確かに始めて出会った人に対して剣を向けたーーまぁこれも後から聞いた話ですがーー事は許されない行為です。だから彼の前には二度と顔を出しません」
これは幹がこの数日間の間に考えて出した結論だ。
いままで一体何人殺してきたのか、罪悪感すらけされて頭の中がこんがらがっている今では自分の罪を意識はできないが、それが悪いことであるというのは理解できる。
だからこそ責任を持って、これで命を狙った事を許してくれるとは思ってもいないが、幹は二度と合わない決断をした。
「そうですか……今のは聞いていない事にしておきます。貴方の事は大体理解出来ましたので、私はここら辺で失礼させてもらいます」
「分かりました」
静かな足取りで部屋を出て行くニルの背中を眺めながら、委員長は静かに言葉を漏らす。
懐かしい友人を思い出しながら。
「あぁ怖かった。それにしてもこんな世界で、晴人は一体何処に行ったのかな?」
唯一の心の救いにしていた晴人との約束を思い出しながら、幹はゆっくりと息を吐き出す。
自身が心の支えにしていた物を、自分で突き放したとも知らずに。
#
龍の森の最奥、イロアスやクリムですら知らない秘境の地にニルは訪れていた。
足元は少しぬかるんでおり、どうやら先ほどまで雨でも降っていたようで靴が汚れるのを気にしつつ、周囲から襲ってくる龍達をあしらいつつ進んでいく。
比嘉の戦力差を分かっているはずなのに一心不乱に龍達が襲いかかってくるのは、この奥にいる人物を必死になって守っているからだろう。
「なんだ、やけに若い奴らがコテンパンにされていると思ったらニルじゃないか。お前ら通してやれ、龍神の番だ」
いつの間に影からでてきていたのか、周囲の龍を押し除けて出てきたのはエキドナだ。
普段はこうして表に出てくるのは珍しいのだが、周りの龍と同じでエルピスの感情に感化されて出てきたのだろう。
「ありがとエキドナ。思ってたより執念深かったからもうちょっとで実力行使しちゃうところだった」
「そうだろうと思って出てきたんだ。エルピスはこの先だ、少々荒れているから気をつけた方がいいぞ」
「分かってる。理由もね」
ニル自身には言われたことがなかったが、セラから先程会ってきた委員長とエルピスは仲が良かったと聞いている。
そんな相手に初対面の相手だの二度と合わないだの言われれば、落ち込んでしまうのも無理はない。
思っていたより時間がかかりそうなので魔法を使ってセラに護衛の交代をお願いし、足早にエルピスの方へと向かう。
この世界において最高峰の力が振るわれる目の前の空間に近づきつつ、ニルは大声を上げてエルピスに自分が来た事をわからせる。
「エルピス、僕が来たよーっ!!」
ただ叫んだだけではあるがそれだけすれば十分で、目の前で行われていた破壊活動も一旦なりを潜め土煙が晴れてきたことでエルピスの姿がしっかりと目視できるようになる。
特にこれと言って外見上の変化はないが、威圧感だけでいえば普段の数倍だ。
周囲にある草木はその怒りの感情だけで枯れ果て、大地も使い物にならなくなってしまっている。
「どうしたんだニル。遥希達に何かあったか?」
「向こうは至って平和だよ、セラに任せてきたから特に問題もないと思う」
「それなら良かった、どうしてここに? よくここが分かったな」
「そりゃ完全無敵のニルさんだからね、好きな人が傷ついてたら助けにもくるよ」
「ーー慰めに来てくれたのか?」
「うん。座るよ。よこ」
「ああ」
了承を得てエルピスの横に座りつつ、ニルはどんな言葉をかけようか悩む。
なんとなくエルピスが落ち込んでいる気がしてここに来ただけなので、はっきり言って無計画だしなにか慰めの言葉を思いついたわけでもない。
だからとりあえず一番心に来ていることから解決させてみる。
「すっごい落ち込んでるところ悪いんだけどさ、エルピス」
「ん? なんだ?」
「ーーエルピス自分が晴人だって事あの子に伝えた?」
あの口ぶりからしておそらく言っていないのではないか、そう思っていたニルの考えは的中したようで、みるみるうちにエルピスの顔が納得したような表情に変わっていく。
創生神の時から何も変わっていない、肝心な所でエルピスは抜けているのだ。
「そう言えば言ってなかった…!」
「ちょ、ちょまって。いきなり行こうとしない、向こうも洗脳が解けたばっかりでまだ不安定なんだから」
いますぐにでも行こうとしているエルピスの手を掴みなんとか止めて、ニルはエルピスを静止する。
言いたい気持ちは分かるが今行けばただでさえ混乱している頭がさらに混乱するだろう。
「確かにそうだな。ありがとニル」
「いやいや大丈夫だけどさ。それで悩みは解決した?」
「半分は」
「残りの半分は?」
「実力不足かな、みんなに実戦経験積んでもらおうと最初の方は手加減してたから良いとして、最後は本気でやったのに殺しきれなかった。それが心残りかな」
確かに神の力を使っていたというのにしっかりと殺しきれていなかったのは、ニルも側から見ていたのでよく分かっている。
殺す気でやったのに殺さなかったということは、単純に実力不足故だからだ。
油断ももちろんあっただろうが、それでも神の力から逃げ切ったあの男の方が一枚上手だった。
「なるほど。そういう事なら僕と姉さんに任せてよ、確かに今のエルピスは神の力を使いこなせてないし、修行をつけないとダメだとは思ってたんだよね」
「助かるよ。委員長が落ち着くまでは真面目に特訓してみるか」
一頻り納得して考えが落ち着いたのか、先ほどまでの荒ぶる気を抑えてエルピスは修行のために準備を開始する。
こうして数週間にわたる地獄のような特訓が始まるのだった。
1
お気に入りに追加
2,596
あなたにおすすめの小説

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!
yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。
だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。
創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。
そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!
yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。
しかしそれは神のミスによるものだった。
神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。
そして橘 涼太に提案をする。
『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。
橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。
しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。
さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。
これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる