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王国編:番外版
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一体どれほどの数があるのか、数えたくも無い程に積み上げられた本を見ながら、エルピスゆっくりとため息を吐く。
太陽は既に頭上まで上がっておりかなりの量を読み終えたといえ、まだまだ残っているのは少々精神的にキツイものがある。
積まれた本に書かれているのは、今までに王国内の公式戦などで使用された魔法や呪いなどが関係するものが多く、その内容がエルピスが何を調べたいのかを物語っていた。
積まれた本の数に比例してエルピスの悩みは増えていき、近くの雑貨屋で買ったノートもいつのまにか残り数ページほどになっている。
「ーー精が出るわね、エルピスくん。魔法を調べているの?」
「少し調べたい事があってね。それにしても珍しいね、セラがここに来るのは」
どこから取り出したのか珈琲をエルピスの横に置いたセラは、エルピスの言葉に笑みを浮かべながらそのまま隣へと座る。
エルピスがセラに対して言った珍しいという言葉の意味は、セラが既にこの図書館内の本を全て読み終えているからだ。
彼女は一度読んだ本を二度と忘れず、その内容を知識として吸収することができる体質らしいので、既に読み終えた本ばかりの図書館には普段来ない。
そんな彼女がわざわざ図書館に来たことに疑問を感じていると、セラがその疑問を感じたのかエルピスに来た理由を説明する。
「アウローラやエラからエルピスくんが困ってるって言われてね。頼りに来てくれないから私の方から助けに来たのよ」
「そっか、わざわざごめんね、ありがとう。もし良かったらここ教えてくれる?」
「良いわよ」
セラに対して行き詰まっていた事を聴きながら、エルピスはこの一年間を振り返る。
まず共和国の件に関してだが、暗部の一部を捕まえそれ以外は全滅させたことによって、今回の首謀者は手持ちの武力を失い今では肩身の狭い思いをしているらしい。
商業などに関しても行き詰まる事が多くなったらしく、最近は顧客離れも激しいとか。
観光業を生業とする国だったらしく、世界中に家があるアルヘオ家に喧嘩を売ったことで……。
二度と朝日を拝めないようにしたかったが、国王に近い立場の人間ともなれば突然死でもした場合に一番迷惑を被るのは国民なので、その案は却下となった。
アウローラはこの一年間で完全に戦術級魔法をマスターし、魔術師としての才を存分に発揮している。
王族も日々精進を重ね、魔導祭で使用していたあの魔法もいまでは全員しっかりと使いこなせるようになっていた。
魔力を変形させ、強化魔法のようにして己に纏うのではなくのではなく純粋な魔力を着るようにして作られている魔法なので、その強さは熟練度が物を言うはずだ。
先日組手をした時も前回までとは全く別人といっていいほどに強くなっていたので、特に問題がなければこれからも順当に強くなっていくだろう。
フィーユの処理については法国の神とひと悶着あったのだが、とりあえず今回無事に守ったことを盾にして将来何かあった時に間に入ってもらう確約は取ることが出来た。
かなり大きなアドバンテージだ。
それ以外の大きな変化といえばあと三つある。
一つ目は両親が魔族領へと遠征に出かけた事だ。
いままで遠征程度なら何度も経験しているし、絶対に帰ってくることが分かっていたから騒ぎはしなかった。
だが魔族領となれば話は別だ。
好戦的な生物も多く、それに比例して強い生き物が多いあの場所では、名が広く知れ渡っている両親は喧嘩を挑まれる事も多いだろう。
一番の問題は母が妹の出産も控えていると言う事実だ。
龍人である母の妊娠期間は人より少し長い、母の体の事を考えるとあまり無理はして欲しくないのだが……。
とは言えエルピスが付いていったところで、万が一の場合で邪魔になる可能性が高く、置いていかれたという事はつまりそういう事だと考えエルピスは日々の修行に励んでいる。
二つ目はフィトゥスとアリア、更にヘリアまでもが一旦自分達の地元へと帰っていった事だ。
なんでも今回の件で実力不足を実感したらしく、フィトゥスは他の悪魔達と喧嘩をしに、アリアは昔いざこざがあって直接村には帰れないらしいが、知識の収集に。
ヘリアさんは何やら伝説の弓を作ると息巻いていた。
なにか緊急事態になれば呼べと各々からベルや笛を渡されたが、帰省している彼等を呼ぶような事はあまりしたく無いので、収納庫の奥底に保管してある。
三つ目は神の称号の称号が強化された事だ。
詳しく説明すると長くなるので割愛するが、龍神の称号がようやくこの身体に馴染んできた事が一番の影響だと考えられた。
「それにしてもエルピス君。どうしていきなり魔法の勉強を? この程度の魔法なら見なくても使えるでしょう?」
「手癖で魔法は使えるけど、原理分かってないと意外な落とし穴があるかもしれないでしょ? 勉強しておくに越したことはないと思ってさ」
「良い心掛けね。ただそれなら魔法より先にやっておかなきゃいけない勉強があるでしょう?」
セラに真剣な顔でそう言われ、何か考えたりやらなければいけない事でも有ったかと頭を働かせる。
数日後に冒険者組合のギルドマスターの娘さんと会う予定や、アウローラと一緒に繁華街をぶらぶらする約束ならば思い出せるが、それ以外となると特に思い当たる節はない。
その事が顔に出ていたのか、セラに露骨な溜息をつかれる。
「技能、私が管理辞めてから一回でもちゃんと見た?」
「……見てないっす」
「そうだと思ってたわ」
セラはそう言いながらエルピスが持ってきていたノートを横から奪い取るように持っていくと、驚く程の速さで文字を書き込んでいく。
ノートが五冊分くらい、時間にして大体五分程度だから一冊辺り一分という驚異的な速度で仕上げられたそのノートには、獲得した技能の説明だけではなく、それらの応用方法や弱点などが記されていた。
「これは基本的なものだから、覚えて。いま、すぐに」
「いや、そんな事言ってもこの量はさすがに……半分くらいならまだなんとかなるかもだけど」
「神人の体なら記憶力だって上がっているわよ。現にここまで読んだ本の内容、ほとんど暗唱できるでしょう?」
「そんなこと……いや、なんとなく分かるな。なんでだ?」
「神様が記憶力悪かったら大問題になるからよ」
目と頭に魔力を回しながら、渡されたノートをパラパラとめくっていく。
一つ一つの技能はそれほど多くないが、それらの応用や利用方法はかなり多く、時計の針が半分ほど回ってようやくエルピスは五冊のノートを読み終えた。
前世の自分からすれば、考えられないほどの速さで物事を吸収できている実感があり、これがいまの自分の体なのかと少し驚くと同時に、書かれていた内容と本を読んで得た知識にそれほど祖語なかった事を再確認する。
「読み終えたよ。別途説明するって書いてたやつあったけど、あれは?」
「神の力に関係する物ね。いまの貴方は龍神以外の神の力を封印して、そこから漏れてる力を使ってる状態だから、大きく性質が変わっているのよ。たとえば邪神の障壁とか」
最も普段使いしている便利な邪神の障壁。
追加する魔力量に応じて硬度が変化するという点においては通常の障壁となんら変わりないが、物理障壁や魔法障壁のようにどちらかにしか対応できないわけではなく張っておけばどちらにも対応できる優れものだ。
いまも正にエルピスは障壁を多重に自身へとかけているので、障壁に対しての信頼性は高い。
だがこれでも邪神の称号を開放する前段階であり、開放すればその性質は大きく変わる。
「本来の邪神の障壁は攻性防壁、相手から受けた攻撃と同質量の威力を相手に放つことが出来る優れものよ。それにいまは同時展開できる障壁の数に限りがあるようだけれど、称号を開放すれば数と強度は更に上がっていくわ。龍神の力についても説明した方がいいかしら?」
「なんとなくは分かってるつもりだけど……目が変化したのと成人した龍は俺の事を襲えなくなってる。後は外皮が硬くなったのと息吹が手から打てるようになったことかな」
「大体はそんなところね。後は龍が使える基本的な能力は全て使えるから、多分天候を操作することだって出来るわよ。試しに雨を意識して力を使ってみなさい」
セラに言われて窓の向こうに広がる快晴を見ながら雨なれと強く念じてみると、みるみるうちに雨雲が集まり始め雨が降り始める。
魔法を使わなければ天候を変えられなかった今までとは違い、意志一つで簡単に気候を変えられるのはさすが神の力と言ったところか。
実験をしなければ詳しくは分からないが、雷雨や台風くらいならば実現できそうな感触がある。
「質問があるんだけど、なんでこの世界にはドワーフとかエルフみたいな前の世界でも有名だった種族が多数存在しているの?」
「それの一番の原因は貴方、とは言っても前ですが創生神様よ。あの人があなたの世界の人間が物語に出したエルフが見たいだのドワーフが見たいだの生物担当の神に直接交渉した影響よ。ちなみにエルフは森霊種、ドワーフは土精霊がこの世界の正式な呼び方ね」
「まさかのこの世界そこ参照して作られてたんだ」
「世界を作る神様も暇じゃありませんからね。既に作られた世界の中で、人や動物の手によって作り出された物をオマージュするくらいしないと手が追いつかないのよ。ちなみに神のいる場所は時間軸が違うからこの世界と貴方が元居た世界が出来てからどれくらい差があるかはまた話が別」
確かに世界を一つ作るとなればそれに含まれる情報量は途方も無いものとなり、疲労もそれらを製作するのにかかる労力も尋常なものでは無いだろう。
しかも一つ調性を間違えれば頑張って作り上げた物も一瞬で崩壊するのだからテンプレートを作ってそれを元にするのは現実的だ。
「次は…そうね、技能の種類について説明しましょうか」
「技能の種類? 特殊技能とかの事? ある程度知ってるつもりだけど」
「通常の技能と、異世界人が獲得した技能は扱いが違うのよ。本来修練の結果世界がそれを技能として認めることでステータスに刻まれるけれど、貴方達転移者や転生者は神が与えた力だから技能に無理矢理体が引っ張られているの」
神の力が存在するのに、その力にエルピスの体が耐えられていないのも他人から与えられた力だからだ。
大小あるにせよ技能や特殊技能もそれと同じで、能力自体を使用することは出来て芋それを100%の効果で使うためには本人の技術が必要なのである。
「試しに私が技能について指南しましょう。そろそろ戦闘もできるようになってきましたし、ここは一つ、実戦形式で」
「百聞は一見に、だよね。いいけど手加減は無しだよ?」
「安心してください。死んですぐなら割となんとかなりますから」
どこか不穏なセラの言葉を聞きながら、エルピスは転移魔法を使いその場を後にするのだった。
/
所変わって草原。
吹き抜ける風はまだ少し寒いがほのかに温かさを感じさせ、エルピスの意識をはっきりとさせる。
息を軽く吐き出し、吸い込むと同時に構えを取る。
まともな武術を今のところ習ったことの無いエルピスはしっかりとした構えを知っているわけではないので、我流の構えだ。
身体は半身に、手は両方自由にして相手からの攻撃に即座に反応できるように、重心は落とさず普段の生活と変わらない程度に。
前世で培った武術に関する知識があろうと、そもそもそれは人間規格での戦闘の場合において使用できる技であって、瞬間移動や回復術のあるこの世界においてそれらを使用する事を前提としない構えはあまり有利とは言えない。
特にそれが亜人ーーそれもおそらくは熾天使級の天使相手ともなれば尚の事だ。
「さて、ルールを決めておきましょう。使用可能な物は技能もしくは特殊技能で作られた武器か肉体のみ。相手に重傷を負わせるか、相手が降参した時点で終了としましょう質問は?」
「いや、ないよ。始めよう」
「ではお先に失礼して」
そう言って一瞬。
セラの姿が視界から消える。
高速移動や魔法による転移などではない、技能を使用しての移動に一瞬呆気に取られるが、すぐに意識を取り直してエルピスは〈神域〉の範囲を周囲100m程に固定してセラの出方を待つ。
一年前はまともに戦闘できないと言っていたセラだったが、いまは完全に調子を取り戻している用だ。
〈神域〉があるおかげでなんとかセラの気配を辿ればするものの、エルピスの意識が追いつくよりも先にセラは次の場所へと転々と移動しているので完全に捕えきれてはいない。
「――隙だらけよ」
「ーーぐっぅ…ッ!!」
いつの間にか背後へと迫っていたセラの蹴りをなんとか紙一重で回避し、即座にその場所から距離を取る。
早いなんてもんじゃない。
人間の限界点を嘲笑うようなその速度は、エルピスがいままでの人生で見た中でも最速に近く、頬を冷たい汗がゆっくりと落ちていく。
エルピスがいまこの状況で使用できる技能は、かなり限られている。
まず常時使用状態である〈神域〉、次に錬成や魔法その他諸々だが、その多くは格下、もしくは止まっている相手にしか効果をなさないようなものばかりだ。
転生前に見たあのメニュー表を見ても解る通りに、おそらくいまのエルピスが持ちうるこの能力は、全て創生神が自分が使用したい能力を詰め合わせただけのものだ。
創生神がどれ程の力を有していたのかは定かではないが、単身他の神の本拠地へと乗り込めるほどなのだから、それ程までに強かったのだろう。
故に彼は敗北を知らず、故に彼は自らが命をかける戦闘に置かれた際にどのような能力が最も現実的に有効活用できるのかを理解できていなかった。
その事に悪態をつきながらも、エルピスは未だに見えないセラの気配をただただ馬鹿正直にたどる。
「そんな様では、またアウローラが攫われたときに勝てないかもしれませんよ?」
「女の子に傷つけたくないから、遠慮して攻撃してないだけだし!」
「そうですか。なら手加減なんて出来なくさせて上げます」
一キロ先の遠方からエルピスの胸元まで、瞬きするほどの時間でセラはその距離を詰める。
だがエルピスもそうやすやすと攻撃を許すほど甘くはない。
事前にセラのくる位置を予測し、回避不能な魔法による一撃をセラの進行方向に向かって放っていた。
(この距離じゃ回避は無理だ! 起爆後に一気に決めーー?!)
エルピスが仕掛けた地雷式の魔法。
その一歩手前、魔法が発動するギリギリのところでセラが足を軽く持ち上げた。
どのような行動をとったところで回避不可能と思われたその魔法は、だがセラが空中を蹴った事によって避けられた。
「――あ、アリかよそんなの!? 常識の範囲内で動いてよ!」
「生物らしい動きをして欲しい? していますよ。この程度の事ならば十分人間であろうと可能。生物らしくない動きとはこう言った物の事を言うの」
回避の為に空中に居座っていたセラが右手を振るうと、エルピスの視界が赤く染まる。
そして徐々に視界は黒くなっていき、ついには何も見えなくなった。
視覚が半分消失しただけで、状況は一気に悪くなる。
「どう? エルピス君の目の魂を刈り取ってみたの。これが天使のみに許された特殊技能、これが天使が天使たり得る力、〈魂刈〉。一定以上の天使全員が持つ特殊技能であり、魂という概念に攻撃する攻撃よ」
「はははっ……それは……ちょっと卑怯じゃないのかな? それに目に魂は宿ってないと思うんだけど」
「この程度。対神や対英雄を想定しているなら、まだまだ甘いくらいよ。それにエルピス君だって無意識のうちに似たような事はしているのよ。魔法を使う時と同じ、常識をなくしてすべてが自分の思い通りになると心の底から願えばいい」
「分かったよ、頑張ってみる」
自分の手を見つめながら、エルピスは自らに言い聞かせる。
不可能などないのだと、理不尽など踏み潰せと、可能性という物をかなぐり捨ててその先に手を伸ばし、確定された勝利へとその足を伸ばす為に。
願いはやがて祈りに変わり、祈りはいつか呪いとその形を変えていくように、現実もその姿を徐々に変えていく。
ーーとは言っても劇的に何が変わるという訳では無い。
現実的に言うならば、ただ視界が広がっただけ。
いままで自分が自分に、多分これくらいしか出来ないだろうなと無意識にかけていた力の枷が、ようやく外れただけ。
だがそれだけでも、たったそれだけであろうとも、その変化は絶大だ。
「どうやらコツを掴んだようね」
世界の色が変わって見えた。
そう言ったとしても何も矛盾しない程の圧倒的な変化と共に、かつて一度も味わった事の無いような量の情報が頭の中を駆け巡る。
それらは〈神域〉の効果によって徐々に統制されていき、そして映像として映される。
目が潰されている筈なのに普段と同じ様に見えるという事自体が驚きだが、それよりも驚いたのはその精密さと範囲の広さだ。
草原にいる虫やそれらに類する生き物はもちろんのこと、空気の動きから魔力の流れ、さらに言えば相手の行動すらも同時に一切漏らす事なく把握する事ができた。
セラもエルピスがある程度〈神域〉に慣れてきたのが分かったのか、攻撃の構えを取りエルピスの事をジッと見つめる。
「ーーーーッ!」
「危なっ! その技能、武器に宿すタイプじゃなくて武器の周りを纏ってる感じなんだ」
「よく分かったわね、上手く〈神域〉を使っているのが離れていても感じられるわ」
うっすらと笑みを浮かべながら、セラは鎌をゆっくりと構え直しつつそう言った。
セラがこちらに向かって踏み込む気配を事前に察知し、重心を後ろに倒した瞬間ーーセラの身体が霞む。
頭部、腹部、下腹部の順番に振るわれた鎌を〈神域〉の効果を使って、エルピスはギリギリのところで捌ききる。
鎌が振り下ろされた位置とセラの力の込めかたによって、大雑把な攻撃範囲は分かるのでなんとか避ける事は出来るが、攻撃に転じるとなると話は別だ。
ただでさえ体術面で相手に負けているのに、その上触れたら負けなので剣や魔法で攻撃するしか無いのだが、それらも彼女の前には効果をなさないだろう。
「諦めるには早いけど…これはどうしたもんかな」
「まだまだ〈神域〉の本当の使い方に慣れていない今のエルピス君じゃ、ちょっと厳しかったかしら?」
「言ってな」
微笑みを浮かべながらそう語るセラに対して、エルピスは笑いながらそんな事は無いと言葉を返す。
分かりやすいほどの強がりは、だが確固たる意志の元に勝利への導きを映し出す。
自らの力を信じ己の能力を信頼し、ただただエルピスはセラに向かって駆け抜けていく。
その背中に確かな自信と、少しの好奇心を乗せて。
/
結果から言ってしまえば、セラの圧勝でこの勝負は幕を閉じた。
体術面だけでなく魔法面でもセラは秀でた才を見せ、〈経験値増加Ⅴ〉の能力を使用しているエルピスをして、なお追いつけない彼女の成長速度は圧巻という一言に尽きる。
そんな彼女はこれで全盛期の半分も力を出せていないらしく、エルピスが神の称号を複数開放すればするほどに、セラも全盛期の頃に近づくという事らしい。
これはセラがこちらの世界に来た際に獲得した称号の効果らしいのだが、そもそもエルピスが能力を解放した事で強くなるというのはどういった原理があってのものなのだろうか。
まぁそれらを考えたところであまり利益は無いし、もしその能力を解明できたらパーティー全体の能力上昇に繋がりそうだなぁと思考を巡らせながら、エルピスは王都までの旅路を歩くのだった。
太陽は既に頭上まで上がっておりかなりの量を読み終えたといえ、まだまだ残っているのは少々精神的にキツイものがある。
積まれた本に書かれているのは、今までに王国内の公式戦などで使用された魔法や呪いなどが関係するものが多く、その内容がエルピスが何を調べたいのかを物語っていた。
積まれた本の数に比例してエルピスの悩みは増えていき、近くの雑貨屋で買ったノートもいつのまにか残り数ページほどになっている。
「ーー精が出るわね、エルピスくん。魔法を調べているの?」
「少し調べたい事があってね。それにしても珍しいね、セラがここに来るのは」
どこから取り出したのか珈琲をエルピスの横に置いたセラは、エルピスの言葉に笑みを浮かべながらそのまま隣へと座る。
エルピスがセラに対して言った珍しいという言葉の意味は、セラが既にこの図書館内の本を全て読み終えているからだ。
彼女は一度読んだ本を二度と忘れず、その内容を知識として吸収することができる体質らしいので、既に読み終えた本ばかりの図書館には普段来ない。
そんな彼女がわざわざ図書館に来たことに疑問を感じていると、セラがその疑問を感じたのかエルピスに来た理由を説明する。
「アウローラやエラからエルピスくんが困ってるって言われてね。頼りに来てくれないから私の方から助けに来たのよ」
「そっか、わざわざごめんね、ありがとう。もし良かったらここ教えてくれる?」
「良いわよ」
セラに対して行き詰まっていた事を聴きながら、エルピスはこの一年間を振り返る。
まず共和国の件に関してだが、暗部の一部を捕まえそれ以外は全滅させたことによって、今回の首謀者は手持ちの武力を失い今では肩身の狭い思いをしているらしい。
商業などに関しても行き詰まる事が多くなったらしく、最近は顧客離れも激しいとか。
観光業を生業とする国だったらしく、世界中に家があるアルヘオ家に喧嘩を売ったことで……。
二度と朝日を拝めないようにしたかったが、国王に近い立場の人間ともなれば突然死でもした場合に一番迷惑を被るのは国民なので、その案は却下となった。
アウローラはこの一年間で完全に戦術級魔法をマスターし、魔術師としての才を存分に発揮している。
王族も日々精進を重ね、魔導祭で使用していたあの魔法もいまでは全員しっかりと使いこなせるようになっていた。
魔力を変形させ、強化魔法のようにして己に纏うのではなくのではなく純粋な魔力を着るようにして作られている魔法なので、その強さは熟練度が物を言うはずだ。
先日組手をした時も前回までとは全く別人といっていいほどに強くなっていたので、特に問題がなければこれからも順当に強くなっていくだろう。
フィーユの処理については法国の神とひと悶着あったのだが、とりあえず今回無事に守ったことを盾にして将来何かあった時に間に入ってもらう確約は取ることが出来た。
かなり大きなアドバンテージだ。
それ以外の大きな変化といえばあと三つある。
一つ目は両親が魔族領へと遠征に出かけた事だ。
いままで遠征程度なら何度も経験しているし、絶対に帰ってくることが分かっていたから騒ぎはしなかった。
だが魔族領となれば話は別だ。
好戦的な生物も多く、それに比例して強い生き物が多いあの場所では、名が広く知れ渡っている両親は喧嘩を挑まれる事も多いだろう。
一番の問題は母が妹の出産も控えていると言う事実だ。
龍人である母の妊娠期間は人より少し長い、母の体の事を考えるとあまり無理はして欲しくないのだが……。
とは言えエルピスが付いていったところで、万が一の場合で邪魔になる可能性が高く、置いていかれたという事はつまりそういう事だと考えエルピスは日々の修行に励んでいる。
二つ目はフィトゥスとアリア、更にヘリアまでもが一旦自分達の地元へと帰っていった事だ。
なんでも今回の件で実力不足を実感したらしく、フィトゥスは他の悪魔達と喧嘩をしに、アリアは昔いざこざがあって直接村には帰れないらしいが、知識の収集に。
ヘリアさんは何やら伝説の弓を作ると息巻いていた。
なにか緊急事態になれば呼べと各々からベルや笛を渡されたが、帰省している彼等を呼ぶような事はあまりしたく無いので、収納庫の奥底に保管してある。
三つ目は神の称号の称号が強化された事だ。
詳しく説明すると長くなるので割愛するが、龍神の称号がようやくこの身体に馴染んできた事が一番の影響だと考えられた。
「それにしてもエルピス君。どうしていきなり魔法の勉強を? この程度の魔法なら見なくても使えるでしょう?」
「手癖で魔法は使えるけど、原理分かってないと意外な落とし穴があるかもしれないでしょ? 勉強しておくに越したことはないと思ってさ」
「良い心掛けね。ただそれなら魔法より先にやっておかなきゃいけない勉強があるでしょう?」
セラに真剣な顔でそう言われ、何か考えたりやらなければいけない事でも有ったかと頭を働かせる。
数日後に冒険者組合のギルドマスターの娘さんと会う予定や、アウローラと一緒に繁華街をぶらぶらする約束ならば思い出せるが、それ以外となると特に思い当たる節はない。
その事が顔に出ていたのか、セラに露骨な溜息をつかれる。
「技能、私が管理辞めてから一回でもちゃんと見た?」
「……見てないっす」
「そうだと思ってたわ」
セラはそう言いながらエルピスが持ってきていたノートを横から奪い取るように持っていくと、驚く程の速さで文字を書き込んでいく。
ノートが五冊分くらい、時間にして大体五分程度だから一冊辺り一分という驚異的な速度で仕上げられたそのノートには、獲得した技能の説明だけではなく、それらの応用方法や弱点などが記されていた。
「これは基本的なものだから、覚えて。いま、すぐに」
「いや、そんな事言ってもこの量はさすがに……半分くらいならまだなんとかなるかもだけど」
「神人の体なら記憶力だって上がっているわよ。現にここまで読んだ本の内容、ほとんど暗唱できるでしょう?」
「そんなこと……いや、なんとなく分かるな。なんでだ?」
「神様が記憶力悪かったら大問題になるからよ」
目と頭に魔力を回しながら、渡されたノートをパラパラとめくっていく。
一つ一つの技能はそれほど多くないが、それらの応用や利用方法はかなり多く、時計の針が半分ほど回ってようやくエルピスは五冊のノートを読み終えた。
前世の自分からすれば、考えられないほどの速さで物事を吸収できている実感があり、これがいまの自分の体なのかと少し驚くと同時に、書かれていた内容と本を読んで得た知識にそれほど祖語なかった事を再確認する。
「読み終えたよ。別途説明するって書いてたやつあったけど、あれは?」
「神の力に関係する物ね。いまの貴方は龍神以外の神の力を封印して、そこから漏れてる力を使ってる状態だから、大きく性質が変わっているのよ。たとえば邪神の障壁とか」
最も普段使いしている便利な邪神の障壁。
追加する魔力量に応じて硬度が変化するという点においては通常の障壁となんら変わりないが、物理障壁や魔法障壁のようにどちらかにしか対応できないわけではなく張っておけばどちらにも対応できる優れものだ。
いまも正にエルピスは障壁を多重に自身へとかけているので、障壁に対しての信頼性は高い。
だがこれでも邪神の称号を開放する前段階であり、開放すればその性質は大きく変わる。
「本来の邪神の障壁は攻性防壁、相手から受けた攻撃と同質量の威力を相手に放つことが出来る優れものよ。それにいまは同時展開できる障壁の数に限りがあるようだけれど、称号を開放すれば数と強度は更に上がっていくわ。龍神の力についても説明した方がいいかしら?」
「なんとなくは分かってるつもりだけど……目が変化したのと成人した龍は俺の事を襲えなくなってる。後は外皮が硬くなったのと息吹が手から打てるようになったことかな」
「大体はそんなところね。後は龍が使える基本的な能力は全て使えるから、多分天候を操作することだって出来るわよ。試しに雨を意識して力を使ってみなさい」
セラに言われて窓の向こうに広がる快晴を見ながら雨なれと強く念じてみると、みるみるうちに雨雲が集まり始め雨が降り始める。
魔法を使わなければ天候を変えられなかった今までとは違い、意志一つで簡単に気候を変えられるのはさすが神の力と言ったところか。
実験をしなければ詳しくは分からないが、雷雨や台風くらいならば実現できそうな感触がある。
「質問があるんだけど、なんでこの世界にはドワーフとかエルフみたいな前の世界でも有名だった種族が多数存在しているの?」
「それの一番の原因は貴方、とは言っても前ですが創生神様よ。あの人があなたの世界の人間が物語に出したエルフが見たいだのドワーフが見たいだの生物担当の神に直接交渉した影響よ。ちなみにエルフは森霊種、ドワーフは土精霊がこの世界の正式な呼び方ね」
「まさかのこの世界そこ参照して作られてたんだ」
「世界を作る神様も暇じゃありませんからね。既に作られた世界の中で、人や動物の手によって作り出された物をオマージュするくらいしないと手が追いつかないのよ。ちなみに神のいる場所は時間軸が違うからこの世界と貴方が元居た世界が出来てからどれくらい差があるかはまた話が別」
確かに世界を一つ作るとなればそれに含まれる情報量は途方も無いものとなり、疲労もそれらを製作するのにかかる労力も尋常なものでは無いだろう。
しかも一つ調性を間違えれば頑張って作り上げた物も一瞬で崩壊するのだからテンプレートを作ってそれを元にするのは現実的だ。
「次は…そうね、技能の種類について説明しましょうか」
「技能の種類? 特殊技能とかの事? ある程度知ってるつもりだけど」
「通常の技能と、異世界人が獲得した技能は扱いが違うのよ。本来修練の結果世界がそれを技能として認めることでステータスに刻まれるけれど、貴方達転移者や転生者は神が与えた力だから技能に無理矢理体が引っ張られているの」
神の力が存在するのに、その力にエルピスの体が耐えられていないのも他人から与えられた力だからだ。
大小あるにせよ技能や特殊技能もそれと同じで、能力自体を使用することは出来て芋それを100%の効果で使うためには本人の技術が必要なのである。
「試しに私が技能について指南しましょう。そろそろ戦闘もできるようになってきましたし、ここは一つ、実戦形式で」
「百聞は一見に、だよね。いいけど手加減は無しだよ?」
「安心してください。死んですぐなら割となんとかなりますから」
どこか不穏なセラの言葉を聞きながら、エルピスは転移魔法を使いその場を後にするのだった。
/
所変わって草原。
吹き抜ける風はまだ少し寒いがほのかに温かさを感じさせ、エルピスの意識をはっきりとさせる。
息を軽く吐き出し、吸い込むと同時に構えを取る。
まともな武術を今のところ習ったことの無いエルピスはしっかりとした構えを知っているわけではないので、我流の構えだ。
身体は半身に、手は両方自由にして相手からの攻撃に即座に反応できるように、重心は落とさず普段の生活と変わらない程度に。
前世で培った武術に関する知識があろうと、そもそもそれは人間規格での戦闘の場合において使用できる技であって、瞬間移動や回復術のあるこの世界においてそれらを使用する事を前提としない構えはあまり有利とは言えない。
特にそれが亜人ーーそれもおそらくは熾天使級の天使相手ともなれば尚の事だ。
「さて、ルールを決めておきましょう。使用可能な物は技能もしくは特殊技能で作られた武器か肉体のみ。相手に重傷を負わせるか、相手が降参した時点で終了としましょう質問は?」
「いや、ないよ。始めよう」
「ではお先に失礼して」
そう言って一瞬。
セラの姿が視界から消える。
高速移動や魔法による転移などではない、技能を使用しての移動に一瞬呆気に取られるが、すぐに意識を取り直してエルピスは〈神域〉の範囲を周囲100m程に固定してセラの出方を待つ。
一年前はまともに戦闘できないと言っていたセラだったが、いまは完全に調子を取り戻している用だ。
〈神域〉があるおかげでなんとかセラの気配を辿ればするものの、エルピスの意識が追いつくよりも先にセラは次の場所へと転々と移動しているので完全に捕えきれてはいない。
「――隙だらけよ」
「ーーぐっぅ…ッ!!」
いつの間にか背後へと迫っていたセラの蹴りをなんとか紙一重で回避し、即座にその場所から距離を取る。
早いなんてもんじゃない。
人間の限界点を嘲笑うようなその速度は、エルピスがいままでの人生で見た中でも最速に近く、頬を冷たい汗がゆっくりと落ちていく。
エルピスがいまこの状況で使用できる技能は、かなり限られている。
まず常時使用状態である〈神域〉、次に錬成や魔法その他諸々だが、その多くは格下、もしくは止まっている相手にしか効果をなさないようなものばかりだ。
転生前に見たあのメニュー表を見ても解る通りに、おそらくいまのエルピスが持ちうるこの能力は、全て創生神が自分が使用したい能力を詰め合わせただけのものだ。
創生神がどれ程の力を有していたのかは定かではないが、単身他の神の本拠地へと乗り込めるほどなのだから、それ程までに強かったのだろう。
故に彼は敗北を知らず、故に彼は自らが命をかける戦闘に置かれた際にどのような能力が最も現実的に有効活用できるのかを理解できていなかった。
その事に悪態をつきながらも、エルピスは未だに見えないセラの気配をただただ馬鹿正直にたどる。
「そんな様では、またアウローラが攫われたときに勝てないかもしれませんよ?」
「女の子に傷つけたくないから、遠慮して攻撃してないだけだし!」
「そうですか。なら手加減なんて出来なくさせて上げます」
一キロ先の遠方からエルピスの胸元まで、瞬きするほどの時間でセラはその距離を詰める。
だがエルピスもそうやすやすと攻撃を許すほど甘くはない。
事前にセラのくる位置を予測し、回避不能な魔法による一撃をセラの進行方向に向かって放っていた。
(この距離じゃ回避は無理だ! 起爆後に一気に決めーー?!)
エルピスが仕掛けた地雷式の魔法。
その一歩手前、魔法が発動するギリギリのところでセラが足を軽く持ち上げた。
どのような行動をとったところで回避不可能と思われたその魔法は、だがセラが空中を蹴った事によって避けられた。
「――あ、アリかよそんなの!? 常識の範囲内で動いてよ!」
「生物らしい動きをして欲しい? していますよ。この程度の事ならば十分人間であろうと可能。生物らしくない動きとはこう言った物の事を言うの」
回避の為に空中に居座っていたセラが右手を振るうと、エルピスの視界が赤く染まる。
そして徐々に視界は黒くなっていき、ついには何も見えなくなった。
視覚が半分消失しただけで、状況は一気に悪くなる。
「どう? エルピス君の目の魂を刈り取ってみたの。これが天使のみに許された特殊技能、これが天使が天使たり得る力、〈魂刈〉。一定以上の天使全員が持つ特殊技能であり、魂という概念に攻撃する攻撃よ」
「はははっ……それは……ちょっと卑怯じゃないのかな? それに目に魂は宿ってないと思うんだけど」
「この程度。対神や対英雄を想定しているなら、まだまだ甘いくらいよ。それにエルピス君だって無意識のうちに似たような事はしているのよ。魔法を使う時と同じ、常識をなくしてすべてが自分の思い通りになると心の底から願えばいい」
「分かったよ、頑張ってみる」
自分の手を見つめながら、エルピスは自らに言い聞かせる。
不可能などないのだと、理不尽など踏み潰せと、可能性という物をかなぐり捨ててその先に手を伸ばし、確定された勝利へとその足を伸ばす為に。
願いはやがて祈りに変わり、祈りはいつか呪いとその形を変えていくように、現実もその姿を徐々に変えていく。
ーーとは言っても劇的に何が変わるという訳では無い。
現実的に言うならば、ただ視界が広がっただけ。
いままで自分が自分に、多分これくらいしか出来ないだろうなと無意識にかけていた力の枷が、ようやく外れただけ。
だがそれだけでも、たったそれだけであろうとも、その変化は絶大だ。
「どうやらコツを掴んだようね」
世界の色が変わって見えた。
そう言ったとしても何も矛盾しない程の圧倒的な変化と共に、かつて一度も味わった事の無いような量の情報が頭の中を駆け巡る。
それらは〈神域〉の効果によって徐々に統制されていき、そして映像として映される。
目が潰されている筈なのに普段と同じ様に見えるという事自体が驚きだが、それよりも驚いたのはその精密さと範囲の広さだ。
草原にいる虫やそれらに類する生き物はもちろんのこと、空気の動きから魔力の流れ、さらに言えば相手の行動すらも同時に一切漏らす事なく把握する事ができた。
セラもエルピスがある程度〈神域〉に慣れてきたのが分かったのか、攻撃の構えを取りエルピスの事をジッと見つめる。
「ーーーーッ!」
「危なっ! その技能、武器に宿すタイプじゃなくて武器の周りを纏ってる感じなんだ」
「よく分かったわね、上手く〈神域〉を使っているのが離れていても感じられるわ」
うっすらと笑みを浮かべながら、セラは鎌をゆっくりと構え直しつつそう言った。
セラがこちらに向かって踏み込む気配を事前に察知し、重心を後ろに倒した瞬間ーーセラの身体が霞む。
頭部、腹部、下腹部の順番に振るわれた鎌を〈神域〉の効果を使って、エルピスはギリギリのところで捌ききる。
鎌が振り下ろされた位置とセラの力の込めかたによって、大雑把な攻撃範囲は分かるのでなんとか避ける事は出来るが、攻撃に転じるとなると話は別だ。
ただでさえ体術面で相手に負けているのに、その上触れたら負けなので剣や魔法で攻撃するしか無いのだが、それらも彼女の前には効果をなさないだろう。
「諦めるには早いけど…これはどうしたもんかな」
「まだまだ〈神域〉の本当の使い方に慣れていない今のエルピス君じゃ、ちょっと厳しかったかしら?」
「言ってな」
微笑みを浮かべながらそう語るセラに対して、エルピスは笑いながらそんな事は無いと言葉を返す。
分かりやすいほどの強がりは、だが確固たる意志の元に勝利への導きを映し出す。
自らの力を信じ己の能力を信頼し、ただただエルピスはセラに向かって駆け抜けていく。
その背中に確かな自信と、少しの好奇心を乗せて。
/
結果から言ってしまえば、セラの圧勝でこの勝負は幕を閉じた。
体術面だけでなく魔法面でもセラは秀でた才を見せ、〈経験値増加Ⅴ〉の能力を使用しているエルピスをして、なお追いつけない彼女の成長速度は圧巻という一言に尽きる。
そんな彼女はこれで全盛期の半分も力を出せていないらしく、エルピスが神の称号を複数開放すればするほどに、セラも全盛期の頃に近づくという事らしい。
これはセラがこちらの世界に来た際に獲得した称号の効果らしいのだが、そもそもエルピスが能力を解放した事で強くなるというのはどういった原理があってのものなのだろうか。
まぁそれらを考えたところであまり利益は無いし、もしその能力を解明できたらパーティー全体の能力上昇に繋がりそうだなぁと思考を巡らせながら、エルピスは王都までの旅路を歩くのだった。
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もはや文字ですら無かった
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