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6話

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 「俺、そろそろ宿に戻るな。ヴィオラも、準備あるんだろ」
よく見るパーティーって、だいたい夜にやっていたのを覚えている。
実際のドレスを着るような女性の準備がどれだけかかるか分からないが、メイクだってしないといけないだろう。
「君はこの後、どうするんだ?」
「俺は今日は宿戻って、明日の列車で帰ります」
「え、もう帰るの!?」
ヴィオラは驚いて、大声を上げる。
耳の近くで叫んだので、耳が痛い。
「この前まで学生だった農家の息子に何泊もする余裕あるか!」
「王都の宿って、やはり高いですものね」
「ロゼッタはよく知っているね」
「殿下も王になるんですから、それくらい把握してくださいませ」
まあ、王子様が自分でお金払って、泊まることなんて、そうそうないだろうな。
泊まるにしても、俺なんかが一生かかっても払えないであろう高級な宿だろうし。
それでも、ちゃんとロゼッタ嬢は勉強しているんだな。
よく見るようなわがままで勉強サボっているような悪役令嬢ではないのか。
「しかし、せっかく王都に来たのに、あまり楽しめないのは勿体ないな」
「まあ、ヴィオラに会うという目的は果たせましたから」
まだ安心はできないが、ここまで他の攻略対象にエンカウントしていないから、攻略しているのはこの王子様だけと思っていいかもしれない。
まあ、婚約者とも一緒に過ごしているから、攻略すらしていない友情エンドというやつかもしれないが。
「そうだ。君もパーティーに参加してはどうかな?」
「は?」
いきなりこの王子様は何を言っているんだろうか。
「殿下、学校の部外者をパーティーに招くのはいかがなものでしょう」
ロゼッタ嬢がそのことを咎めてくれた。
この人、もしかしたらけっこうな常識人かもしれない。
「学園のほとんどの生徒が参加するんだ。給仕の手が多くても、困らないだろう」
「それはそうかもしれませんが」
あ、給仕としてってことか。
確かに、ただ参加するだけよりはいい気もするが。
「その日分の給料はもちろん出るし、パーティーの食事も人の目がないところなら、食べてもいいし」
それは、少し魅力的かもしれない。
宿代が思ったより高かったから、今日の夕食から明日にかけて、ろくなもの食べられないと思っていたけど。
「でも、アズにそんな経験ないし」
「あ、それはここまで来るお金稼ぐのに、友達の飲食店でお手伝いがてら働かせてもらったから」
「そうなの?」
それに、前世でも動画配信以外のバイトもやっていたし。
「まあ、貴族相手の対応の仕方はさすがに分からないけど」
「それは、仕事前に指導してくれる人がいるんだ。それに、君は一つ下とはいえ、同年代なんだから、気負うことはない」
そうは言っても、貴族はプライド高そうだしな。
ハルト王子みたいな柔軟な態度珍しいだろ。
まあ、宿に帰っても、食べることができないなら、特に何もすることないからな。
今回、言葉に甘えさせていただくか。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「そうか!それなら、会場に案内するよ!」
ハルト王子に促されて、会場へと向かって行った。
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