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1話

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 「アイザック。お前、勇者やめろ」
魔王を倒して、数ヶ月が経った。
その後、移ってきた街のいつものように集まる酒場で、ジークとアイザックは向かい合わせになっていた。
仕事が終わり、席について早々ジークは冒頭の言葉をアイザックに言い放つのだった。
「おい、貴様何を言っている!」
アイザックに忠誠心を抱いているスコルは、ジークの唐突な言い様に、椅子を倒し立ち上がり、大きな音が響いた。
一瞬、酒場にいる他の人から注目を浴びるが、酒場で冒険者たちのいさかいは日常茶飯事なので、気にせず喧騒は戻った。
「そうだよ、ジーク。いきなりどうしたの?」
ライリーが不安げな顔で問いかける。
アイザックとジークは自他ともに認める親友同士で、今まで喧嘩はしたことあっても、追放や脱退など話に出たことはなかった。
普段能天気だと言われるライリーも、非常事態だと感じていた。
「いきなりなもんか。お前らも見ただろ。今までのこいつの足の引っ張り具合」
心当たりはあったので、スコルもライリーも口が閉じる。
「こいつ、最近一撃一撃の強度が下がってきてんだよ。俺たちだって、別の敵相手にしてんのに、こいつを誰か一人はこいつをかばいながら、攻撃や自分の防御しなくちゃならないんだぜ」
はあ、と心底あきれたように大きなため息をついた。
「だったら、俺だけに託せばいいだろう!我が主を守りながら、魔物を相手にするなど、俺には容易いことだ!」
「それに、仲間がピンチになったときにかばうなんて、今までもやってきたことだよ!」
「その頻度が最近こいつは多いって、言ってんの。俺たちはかばわれてないだろ」
また、図星を刺されたので、黙ってしまう。
「後、スコルだけとか言ったけど、それで今日お前怪我したんだよな」
びしっと、スコルの顔を指さす。
右頬には、湿布が貼られていた。
「…本当にごめん」
「そんな主!こんな怪我などすぐに治り…」
「そうやって、お前らがかばうからこいつも言い出せないんじゃねえの」
ジークはアイザックをにらみつける。
「もうお前は勇者じゃないって」
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