全ては愛の贈り物

東雲皓月

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~アイの短編~

『私は疫病神だった』

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私はいつも、誰かを不幸にさせてしまう。

どうしてだか分からないけれど人々はこう言う。

【疫病神】と。

忌み嫌われている私は、いつも独りで過ごして毎日を終わらしていた。

深く人と関わらないように。

私の周りに居るとその人らが傷付く。

だから関わらない。

そう決めたのに……アナタは違った。
 
「どうして独りでいるの?」と。

初めて会ったアナタに声を掛けられた。

でも、そう聞かれるのは初めてじゃなかったから「独りが楽だから」と当然のように答えた。

けれどアナタは…悲しそうな顔で「独りは寂しいよ」とまるで自分の事のように呟いた。

その言葉は、まるで私の心を見透かしたようだった。

でも気付かないフリをずっとしていたのに、どうしてアナタがそれに気付くのだろうと思った。

けれど、ひねくれた私は素直になれなくてアナタに怒鳴っていた。

「私の何が分かるの!?」と。

ずっと隠していた気持ちを初めて会ったアナタに見透かされて、胸の奥から沸々と怒りが込み上げる。

疫病神と言われて、側にいた人らも離れていって…辛くて悲しくて。

だから自分から深く関わらないようにしていたのに。

アナタは容易く私の心の中に入り込んだ。

でもアナタは、怒鳴った私に嫌気をさす訳でもなく優しく抱き締めてくれた。

「君は疫病神じゃないよ。だから泣かないで」と言いながら。

そこで初めて気付いた。

私の頬に流れ落ちるそれが涙だという事に。

怒っていた筈の感情が次第に薄れていき、私は泣きじゃくった。

今までずっと我慢をしていた涙は、止めるすべを知らないように次々に流れ落ちてアナタの肩を濡らしていった。

やっと落ち着いた時にはアナタの服が半分程濡れていて、私は素直に「御免なさい」と言えた。

泣いたら少し楽になったと。

そうアナタに言うと微笑みながら「良かった」とまた私を抱き締めてくれた。

今更遅いが、私はアナタに酷い事をした筈なのに…お互い名前も知らない筈なのにどうしてそこまで優しく出来るのか私には分からなかった。

でも、アナタが疫病神じゃないと言った言葉は私の凍った心を溶かしてくれた。

まだ何も知らないけれど、今からでもアナタを知っていけたらいいと少しだけ思ってしまう。

駄目だとは分かっていながら、私はアナタに引かれてしまっているのかもしれない。

だって、アナタとなら大丈夫な気がするから。

「私は疫病神だと言われているけど、それでもいいなら…アナタの名前を教えてくれませんか?」

内心、緊張状態で言った言葉。

駄目かもしれない。

引かれるかもしれない。

でも、勇気を振り絞った言葉に嘘はないから。

それで駄目でも後悔はしない。

恐る恐るアナタをみると、アナタは酷く驚いた顔をした。

あぁ、やっぱり駄目だったかと落ち込み掛けた時。

アナタは花が咲いたように笑ってこう言った。

「君と仲良くなれるなら、いくらでも教えるよ」と。

今度は私が驚いて目を見開いたけれど、それよりも私を受け入れてくれた事に酷く喜びを感じてしまった。

だから笑って「ありがとう」とまた素直に言葉に出来た。

久しく笑う事がなかったけれど、ちゃんと笑えているだろうか。

そんな心配をしながら、また「ありがとう」とアナタに言っていた。

その間、アナタの頬が赤く染まっていたなんて今の私には分からなかったけれど、私は今この瞬間がとても幸せに感じた。

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