幼女は無邪気に笑う

柚木 かつお

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アカネチャン

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私は完璧な「優等生」だ。
誰にも親切。成績優秀。
いわゆる「文系」とやらだそうだ。

「先生が茜ちゃんのこと、褒めてたわよ!お母さん。鼻が高いわぁ」
「茜ちゃんはお父さんより優秀だなぁ。茜ちゃんのこと、頼りにしてるよ」
「お姉ちゃんは頭がいいからテストも楽だよねー。私なんか赤点ギリギリなんだから。」

「「「あっはっはっは」」」

明るい食卓には、笑いが響いていた。

「お母さん。私、予習やるから部屋に戻るね。」
「勉強がんばりなさいよ!将来のために」
「そうだな。」

「‥うん。じゃあね。」

そう言って私は自分の部屋に戻った。

「はぁー…みんなのイイコでいるの、辛すぎる....」
バフっとベットに倒れる。

そして家族を思い浮かべた。
お母さんと今のお父さん。優。
前のお父さんとお母さんは相性が悪かったらしい。
お父さんの記憶は、家に怒声が響いている場面しか思い当たらない。
なんであんなに喧嘩してたんだろうな。

‥暇だなぁ。

私はそのまま寝てしまった。



‥朝だ。
「おはよう。茜ちゃん。昨日寝落ちしてたわよ?」
「そんなに勉強してたのかぁ。偉いなあ。茜ちゃんは。優もしっかり勉強するんだぞ」
「えー面倒くさーい」
「もう。優ちゃんったら」
「ははは。まあ、家族と仲がいいだけで十分だ。」
「そうだよね!お姉ちゃん!」
「そ、そうだね。」




「はい。お弁当。学校、頑張ってきてね!」
「ありがとう。行ってきます」


…なにかモヤモヤがする。
なにもおかしくないのに。
変な感じ。


学校に行く途中、小学三年生ぐらいの緑色のパーカーを着た女の子が歩いているのを見かけた。
‥小学校って、この辺にないよね…

少し心配なので女の子に声をかける。

「ねえ、あなたどこの小学校の子?」
「小学校にはいってないよ?」
「えっと…じゃあお家は?」
「ないよ。今、家出中なの。」
「‥そっ‥か。じゃあ、ちゃんとお家戻るんだよ?」
「分かった」
「うん。じゃあね。お姉ちゃん学校行かなきゃ。」
「またね。」
女の子は手を振ってくれた。

‥家出か…小さい頃はよくそんなことしたなー‥懐かしい。


少し歩くと、中学校についた。
「茜ちゃん、おはよー」
「おはよ、友梨。」
「もー。茜ちゃんは朝から固いなー。」
「そう?」
「うん」
「じゃあ柔らかくなろっかな」
「ふふ。頑張って。」


教室に着いたときだった。
「茜ちゃん!悪いけど、これ理科準備室に持ってってくれない?」
「‥いいけど…」
「ありがとー。茜ちゃんマジ神。」

そう言ってクラスメイトは友達の席へ走っていった。

…神‥か....

私は嫌いだな。神様。





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