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四章・宿命
第二十七話・天真爛漫
しおりを挟む時を同じくして、春夫と蛇姫とおたまが桜の里に着いた頃。古神社では皆でお茶を飲んでいた。
「はい。のこさん、お茶をドウゾ」
「レイちゃんありがとう」
「……しかし珍しくお客が来ないにゃ」
「本当ですわね、昼下がりの古神社にこんなに美人の妖狐がいますのに……」
「それは関係ないにゃ。何ならいなくても大丈夫にゃ」
「あらあら、この捨て猫はお口が達者なこと」
「捨て猫……!!このドブ狐が昼間から、盛ってるくせに良く言うにゃ」
「ドブ狐……!!このあほ猫が焼き殺して差し上げますわ!!」
「望むところにゃ……!!」
「はいはい、そこまで。二人共うるさい……ズズズ」
「ぐぬぬにゃ……!はっ!!良いことを思いついたにゃ!!」
「くるみの言う良いことなんて所詮、知れてますけどね」
「キィィィ!!」
「もう、陽子さんはいちいちあおらないの」
「見て驚くにゃよ……」
「?」
『――猫纏!!』
幼猫が叫ぶと、周囲に青色の円が出来る!!
「で、出来たにゃ……」
「嘘……何でくるみが『纏』を使えるの……」
「妖狐もやってみるにゃ、まぁ、出来ないにゃろうけど。ヒッヒッヒ」
「くっ……幼猫に出来て妖狐に出来ないことなんてありませんわ!!」
『――狐纏!!』
妖狐が叫ぶと、周囲に赤色の円が出来る!!
「コーン!!ほ、ほら!!で、出来ましたわ!」
「何でにゃ……しかも動揺がすごいにゃ……」
「二人共すごい!!私の神纏とはるくんの闇纏を合わせたら四人も出来るじゃない!もう一人いたら、ゴレン……」
「皆さん……すごいデス……私にも出来るカナ……」
そう言うと、星野瀬も意識を集中する……。
「はァァァァァァ!!」
『人形纏!!』
「――プスッ」
「ん?何か聞こえたにゃ……」
「――おならが出まシタ……スイマセン」
「お人形さんでもおならが出ますのね……」
「ハイ……」
「わ、わたしもおならくらいするから大丈夫よ!レイちゃん!」
「のこサン……それはそれでいやカモ……」
「うっ……」
「のこにゃが自爆したにゃ……」
「希子さんどんまいですわ……」
「うっうっ……」
星野瀬には出来ない技ではあったが、希子達は大いに盛り上がり召喚を試みる。
「のこにゃ、こうかにゃ?」
「くるみ、手がこうで……お尻をこう……くぃっとあげて……」
「えぇぇ!恥ずかしいにゃ!」
「それじゃぁ、召喚できないわ!こう……くぃっと!」
「こ、こうかにゃ……くぃ……」
「そうそう!そのままそのまま!」
「希子さん、こうですか?」
「まぁ!陽子さん!素敵!完璧です」
「くぅ!妖狐は尻軽にゃから……」
「あら……そういう化け猫はいつも盛ってらして?」
「にゃんだとぉぉ!」
「ちょっと!二人共!!ちゃんとしなさい!」
「はいにゃ……」
「はい……」
希子の厳しい指導は続く……。そしてその瞬間がついに訪れる。
「のこにゃん、一回お手本を見せて欲しいにゃ」
「私も見たいですわ」
「んん……でも召喚はまだ成功したことないけど……やってみましょうか」
『神纏!!』
希子の体が金色に光り輝き、周囲に円が出来る。
「おぉぉ!」
見慣れてる神纏だが、改めて見て妖狐も幼猫も星野瀬も歓声をあげる。
「じゃぁ……行くわよ。鬼が出るか蛇が出るか……!」
『召喚!!』
さらに神纏が激しく光輝き、希子の姿が見えなくなる!三人は肌でそれを感じ取った!!
「な、何か来るにゃ!!」
「とんでもない者を召喚したんですわ!!」
「眩しいデスゥ!!」
そして!!
キュィィィィィン!!
ぴと。
「ん……ここはどこじゃ……?」
「え……?」
「何にゃ……」
「まさか……」
「蛇姫サマ……?」
「ん……何でお主らが桜の里におるのじゃ?」
「あはは……これには深い事情がありまして……」
希子達は、蛇姫を召喚してしまった事を理解し土下座をする。
「ばっかもぉぉぉぉん!!!」
「ひぃぃぃ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「堪忍にゃぁぁぁ!」
「申し訳御座いません!」
「なんまいダブ、なんまいダブ!!」
「春夫達が二人きりになってしまったではないか!どうするのじゃ!!このばかちんが!!」
「は、はるくんならきっと大丈夫です!すっごく強くなってたから……あはは……」
蛇姫はさらに声を荒げる。
「違うわっ!たわけ!春夫はおたまと二人きりで話が続かず、今頃は無言で村を歩いておるぞ!!良いのか!」
「え……蛇姫様……そこですか……?」
「おたまにゃん、可哀想にゃ……」
「沈黙は嫌ですわね……」
「おたまチャン、かわうソウ……」
これが蛇姫の消えた理由だった。春夫達から見たらまさに神隠し。しかも村中で起こっているタイミングである。古神社で希子が召喚したなどと思うはずもない。
「まぁ……戻ってきたものはしょうがないの……」
「蛇姫様、お茶でございマス」
「うむ……ズズズ……ところで何をしておったのじゃ?」
「召喚の練習なのにゃ!蛇姫様、見てて欲しいのにゃ!」
「あ……私のも……」
『猫纏!!』
『狐纏!!』
そう言うと、幼猫と妖狐の体が輝き周囲に光の円が出来上がる。
「ほぅ……お主らも『纏』が出来る様になったのじゃな。良い良い」
「えへへにゃ!」
「嬉しいですわ!」
「で、何を召喚するのじゃ?」
「それをちょうどのこにゃに習ってた所なのにゃ!」
「私も……ここからどうしようかと。お尻をくいっと上げる所までは出来たのですが……」
「うむ……どれ……」
蛇姫が二人の背中を、ポンッ、と押した瞬間――
ズドォォォォォォォン!!!
激しい閃光が辺りを包み込む!!
『ココハ……ドコカニャ……?』
『お前が我が主なのか……?』
光が消え、古神社は吹き飛び、二つの影に後光が差している。
「う……そ……にゃ……まさか……にゃ……!」
「そんな……この方は……!?」
「うむ……とんでもない者が来た様じゃの……シャシャシャ……」
「誰が……神社を直すの……」
「私のおうちが無くなりまシタ……」
それぞれが自分の事で精一杯だった……。
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