100年の恋

ざこぴぃ。

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第二章

エピローグ

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 ――2040年9月1日、現在。

 夏休みも終わり、ここ夢希望高校では2学期の始業式が始まろうとしていた。この時代に帰って来て1年が過ぎ、私も高校生になった。今では生徒会で毎日忙しい日々を過ごしている。

「千草ちゃん!」
「夢姉ちゃん!」

 猿渡夢子、2つ年上の高校3年生。彼女は小さい頃からの私の姉的存在だ。同じく生徒会に籍を置いている。

「聞いたわよ!いよいよ最終回ですってね!」
「へへ、何か恥ずかしいなぁ」
「なんでよ~堂々としてなさい!で、夢姉ちゃんには先に教えてくれるんでしょ?」
「駄目ですってば!千鶴パイセン達に怒られますよ」
「あはは!言えてる!千鶴ったら『100年の恋』が好き過ぎて何度も読み返してるそうよ!」
「嬉しいなぁ。私が書いた小説をこんなにたくさん読んでもらえて――」
「あら?噂をすれば生徒会長のお出ましよ」
「2人共、廊下で何を騒いでいるのかしら?そろそろ生徒会始めますわよ」
「千鶴パイセン!お疲れ様です!」
「千鶴!聞いて聞いて!千草ちゃんが最終回で――」
「もう!夢姉ちゃん!まだ何も言ってないじゃないですかぁ!」

 ひょんな事から夢姉ちゃんに誘われ、生徒会に入った。そして毎月発行される『生徒会新聞』の1枠に私の書いていた小説が掲載される事になる。
 元々は中庭の石碑の事を調べ、過去にあった出来事や私が体験した事を箇条書きにしていたノートを夢姉ちゃんに見られ、すごく興味を持ってくれたのがきっかけだ。それから2人して、この歴史を小説にしようって事になって……。

「数回投稿しただけで学校中大騒ぎで!あの時は笑ったわ!生徒会室に生徒が押しかけて、次の話はまだですか!って興奮しちゃって」
「あはは!千鶴パイセンが止めてくれると高をくくっていたのに一緒になって大騒ぎして!」
「忘れたわ、そんな事……あっ、西奈さんご機嫌よう」
「あっ!早乙女会長お疲れ様ですっ!」

 生徒会室に入ろうとすると、書記の西奈薫パイセンもちょうど部屋に着くタイミングだった。
 生徒会は6人で構成されている。
 早乙女千鶴会長、猿渡夢子副会長、西奈薫副会長、霧川靖子書記、そして千鶴パイセンの弟でもあり私の同級生の早乙女次郎、そして私、千家千草。
 今日は2学期の始業式の後に生徒会が開かれた。次回の生徒会新聞の打ち合わせと、転校生が来ると言う事で全校集会の打ち合わせだ。

「――皆、揃いましたね。始業式お疲れ様でした。早速ですが来週の月曜日に転校生が来ると言う事ですので準備を……」

………
……


 放課後、生徒会を終え教室へと戻る。教室に入ると先生が部活動をしている生徒を窓辺から眺めていた。

「立花先生!」
「あら?千家さん。生徒会は終わったの?」
「はい!先生は何をしてるんですか?」
「ん?部活動をしてる若い子を見てるとこっちまで元気になるのよねぇ。て、ちょっとおばさんくさいわね」
「そんな事ないですよ!」
「そう言えば千家さんの小説良かったわよ、先生もなんだかまた書きたくなっちゃったわ」
「そんな!恥ずかしいです!私は先生が書いた『私の彼岸花』に感動して小説書くようになったんですよ!」
「ふふ、ありがとう。あれは若気の至りよ」
「そんな事ないです!また書いて下さいね!」
「千草ちゃん!帰るよ!あれ、立花先生」
「あらあら、猿渡さんまで――」

 私は少し立花先生と話が出来て嬉しかった。学校の先生になってからは忙しくて小説を書かなくなったと聞いていたからだ。またいつか読んでみたいと思っていた。
 学校を後にし、夢姉ちゃんと下校する。もっぱら生徒会の話で盛り上がり家に着く頃にはいつも喉がカラカラだ。
 今日もいつも通り小説の話をしたり転校生の話をしたりして、疲れて帰宅する。

「ただいまぁ…ひぃ……疲れた」
「あら、千草おかえり」
「お母さんただいま。ジュースちょうだい」
「はいはい。そう言えば来週から来るって言ってたお母さんの親戚の子がね――」
「あぁ、そんな事言ってたわね。ごくごくごく……」
「急だけど、今夜挨拶に来るらしいのよ。学校の手続きでこっちに来るから先に挨拶をってね」
「へぇ……」
「あなたより2つ上のお兄ちゃんだからちゃんと挨拶くらいしてよね」
「へぇい」
「もう、この子ったら。ほら、ジュース飲んだら着替えてらっしゃい」
「へぇい」

 その日の夜。食卓にはご馳走が並び、親戚が来るのを待つ……。

――午後18時。

『ピンポーン!』
「こんばんは!まぁ!小夜ちゃん!元気だった?」
「いらっしゃい!おばさん待ってたわ!疲れたでしょ!さ、上がって上がって!あら!この子が!」
「えぇ、うちで預かってる南方文春ふみはる君よ」
「こんばんは、初めまして。文春です」
「え……?」

 私は一瞬目を疑った。そして彼の姿に、彼の格好に……自然に涙が溢れた。
 お母さんもお父さんも、彼の記憶はもう無くなってるのかもしれない。だけど私だけが覚えてる彼の記憶。

「う……そ……!は、はるにぃ……!!」

 涙で声が出ない。びっくりしたのと、赤い車椅子に乗った彼の姿があまりに春文……はるにぃに似ていたから――!

「この子、生まれつき両足が悪くてね。この近くの大学病院に通う事になって……小夜ちゃん、迷惑かけるわね」
「全然いいのよ!千草、ほら挨拶しなさい!千草?あらやだ、あなた泣いてるの?」
「ひっく……ひっく……だって……!」
「初めまして、千草ちゃん。よろしくね」

 手を差し出す文春の手を握りしめ、私は涙をこらえて声をかけた。

「ひっく……。あのっ!文春さん!は、はるにぃ……って呼んでも……いいですか?」
「え?は、はい。よろしくね、千草ちゃん」
「うんっ!はるにぃ!」

 それは100年の時を越え、兄妹の垣根を越えた恋の始まりだった。

………
……


「真昼よ、ここで良かったのかぇ?」
「はい、有栖様。ここから家までは近いですし、病院にも寄って行きますから」
「うむ。それでは文春の事頼んだぞ。弓子と亡くなった春文に頼まれておったのでな」
「もちろんです。まさか、美穂さんの子孫がこうして時を越えて妹さんと再会するとは……ね」
「後はお主が文春の面倒を見てやってくれ」
「わかりました、有栖様」
「それではわしも戻るとするかの……真昼よ、達者での」
「はい!有栖様もお元気で!」

 真昼は元の時代に戻り、南方美穂の子孫、南方文春の治療を行う事になる。
 春文と弓子の間には子供は出来なかった。だが、美穂が産んだ子供が春文の意思を受け継ぎ、そのまた子供がまたこの時代に戻って来る……。






「ただいま――






―完―


※この物語はフィクションであり実在の人物や団体などとは関係ありません。
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