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番外編(読み切り)

アリスと夏休み

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キィィィィィィィ!!ガッシャァァァンッ!!!

「キャァァァァァァァァ!!」
「やべぇ!!車が歩道に突っ込んだっ!!」
「おいっ!!学生が引かれたぞっ!!救急車!救急車を呼べっ!!」
(……あぁ、騒がしいな。あれ?体が動かない……?冷たい?これはコンクリート?あぁ、もしかして僕がひかれれたのか。頭がぼぅとする……)
「――ルトッ!ハルト!ねぇっ!しっかりして!」
「あ……あれ?この声はアリス……?じゃないか。……ひさしぶりだな……」
「しゃべらないで!今、何とかするからっ!」

 『助からない』直感で女の子は思い、そして女の子は男の子を助けたいあまり禁忌を犯した。

THE複製ザコピー!!」
「……雑魚……ぴぃ?ははは……アリスはゲームばかりして……」
「くっ!何で!何でうまくいかないのっ!!お願いっっ!!」
(僕はここで死ぬのか……あぁ、アリス……懐かしい……最後に会えて良かっ……)

………
……


 ――10年前。春斗がまだ小学1年生の頃。
 ミーンミーンミンミンミーン……。

「げっ!手さげカバン忘れた!先に行ってて!」
「わかった!春斗、先に行ってるぞ!後でな!」
「うんっ!!」

 1学期の終業式が終わり、下校途中で手さげカバンを教室に忘れた事に気付き慌てて取りに戻る。
 ガラガラガラッ!

「はぁはぁ……着いた!カバンカバンと……あれ?お前誰だ?」
「え?あたしはアマ……ス……」

ビュゥゥゥゥゥ!!バサバサバサッ!
開けっ放しの窓から風が吹き込みカーテンが揺れる。

「はぁ?あます?ん?ありすか?変な名前!学校閉まるぞ!早く帰ろう!!」
「う、うん!」

 男の子はアリスの手を取り走り出す。校門を抜けたところでようやく落ち着き、話始めた。

「僕は春斗、よろしくな!ねぇ、アリスはどこの学校なの?もしかして引っ越しして来たの?」
「あ、え、と。あたしもう帰らないと!あっ!あの神社の――」
「そうか!神社の子だったか!!じゃまた明日な!ありす!」
「え!あっ!う、うん!またね!」

◆◇◆◇◆

 夏休み初日、男の子は神社の境内に来ていた。

「アーリースー!あそーぼー!」
「ハル……ト?」

木の木陰から顔を覗かせるアリス。

「いたっ!昨日は急いで帰っちゃってごめんな!気になってたんだ!うちに来いよ!一緒にゲームしようぜ!」
「ゲーム?」

 アリスはそれから毎日の様に春斗の家に遊びに行った。中でもゲームはアリスにとってとても楽しい時間だった。

「――とっ!ここで魔法を!」
「アリス!そろそろ交代しようぜ!」
「えぇ!もう少し!しっしっし!ざこは倒した!さぁ、次はボスを――」
「そういえばアリス、夏休みの終わりに花火大会があるんだけど、一緒に行かないか?」
「花火大会?美味しいの?」
「え!花火知らないの!すごいんだ!もうこうなってこうなってバーン!て!」
「ふぅん、良くわかんないけど行ってみる!」

 夏休みから数日が経ち、7月も終わる頃。春斗は両親に呼ばれ、お父さんの仕事の都合で9月に引っ越しをすることを告げられた。

「嘘だっ!そんなの嫌だっ!!せっかくアリスと仲良くなれ……ゔぅ……」

 男の子はアリスに引っ越しの事を言えずにいた。そしてそのまま夏休みも過ぎていき、花火大会の日を迎える。

◆◇◆◇◆

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
バァァァァァァァァァァァァン!
パラパラパラ……!
バァァァァァァァァァァァァァン!
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
バァァァァァァァァァァァァァン!!!
パラパラパラ……!


「これが花火……綺麗……」
「……なぁアリス。言わなきゃならない事があるんだ」
「え?なぁに?」

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
バァァァァァァァァァァァァァン!!!
パラパラパラ……!

「……」
「これも綺麗!……ハルト、どうしたの?」

 男の子は花火の音にかき消されそうになりながらも、頑張って言った。

「明日、引っ越しをするんだ」

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
バァァァァァァァァァァァァァン!!!
パラパラパラ……!

「引っ越し?」
「うん……ギリギリまで言えなくてごめん」
「そっか……会えなくなるんだね」
「うん、明日最後に神社まで行くから待っててくれる?」
「わかった。待ってる」
「アリス……大好――」

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
バァァァァァァァァァァァァァン!!!
パラパラパラ……!

「え?ハルト、何?聞こえない!」
「うぅん、何でもない!!花火……綺麗だな!」
「うんっ!!」
(ありがとう……楽しかったよ、アリス)

 翌日、引っ越し前にアリスにお別れを言い男の子は大事にしていた宝物を手渡した。

「これ大事にしてた玩具じゃない!もらえないよ!」
「良いんだよ!もう名前書いたし!お前にやる!」

その玩具の剣には『ありす』と書かれていた。


……
………

 そして10年後、僕とアリスと再会したのは交通事故で意識が遠くなる寸前だった……。

※この物語はフィクションであり実在の人物や団体などとは関係ありません
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