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この世界の希望
第104話・新世界
しおりを挟む―――コリータ王国―――
世界の崩壊……巨大隕石アンコロモチの襲来が終わり、空は晴れ渡る。しかし、コリータ王国にはこの戦いで亡くなった者達がいた。
「アリス様ぁぁぁ!国王様っ!プリン様!!」
泣き叫ぶマリン。目の前で3人の姿が……徐々に消えていく。
「この世界を救った……か。それも一興……」
「月子様!!何とかなりませんかっ!!」
「わしの力ではどうにもならん。が、3人の努力は決して無駄にはならんよ。……さぁセリよ、そろそろ天界へ連れて行ってやろう」
「はい、月子様。それでは皆様、短い間でしたがお世話になりました」
「さらばだ」
そう言うと月子とセリ、そして白兎も天界へと旅立って行った。
「皆様!いつかまたっペ!!」
月子達がいなくなり、またアリスの姿も完全に消えていく……。
それに合わせるかの様に、手を握るハルトの体もプリンの体もほとんどが消えている。
そこにいる全員が涙を流し天に祈り、魔法球を通じて全大陸の仲間達も天に祈る。
そしてレディ、エル、エリサ達が各都市から駆けつけた。
が……すでに時間は刻々と過ぎており何もできない。
「くっそ!!ネプじぃさま!!何とかならないのか!!こんな……こんな終わり方なんて……ぐっ!」
涙をこらえていたレディが涙を流す。ネプチューンからの回答はない。既に何も出来ないことを察したのだろう。
エルの目にも3人の消えていく最後の姿が映る……。
「ハルトォォォォ!!うぅ……!ゼシカ、リン!お願い!!ハルトを!!ハルトを連れて行かないでっ!!」
「うぅぅぅぅ……!ご主人様……!」
そして、ついに3人の姿が消えて無くなった。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!神様!!」
その場にいる全員が泣き崩れる……。
その時だった!耳をつんざく音が聞こえてくる!
『――キィィィィィィィィィン!!』
アリスの姿が消えたと同時に、世界中が光に包まれるっ!!
そして次の瞬間!激しい衝撃と音が辺りに鳴り響くっ!!
ズドォォォォォォォォォン!!
バサバサバサバサバサッ!!
ピュゥゥゥゥゥゥゥ!!
バチィィィィィィィィン!!!
………
……
…
……しばらくして、辺りから音が消えまた静まり返る。
「な!今のはなんなんにゃっ!?」
「な、何じゃ!何も見えん!!」
「何事ですのっ!」
激しい光と音がおさまり、辺りがだんだん見えてくる。
そして……!!
「まさか……アリス様の最後の言葉って……!」
「THE・完全複製て、聞こえた気がする……」
「世界が元通りになってるにゃ……!」
壊れたはずの城壁、燃えた山、氾濫した川……全てが災害が起こる前の状態になっていた。
ザァァ……!
「……か!誰か聞こえぬか!!」
「ミヤビ師匠!?」
「レディか!!急ぎサウスタンに救護班をよこしてくれ!!プリン様が!」
その場にいた全員が耳を疑う。
「プリン様がなぜサウスタンに……?」
「詳しい事はわからぬが空が光ったと思ったら、空から降ってきて!いいから誰か早く来いっ!!」
「わ、わかりました!救護班!急ぎサウスタンへ!」
「はっ!」
カツン……カツン……カツン……。
カチャ……キィィィィ。
伝令の兵士が屋上の扉を開けようとした時、城内から扉が開いた。
「どういう事だ。私は……いったい……え?エル?エルなのか?」
「え……うそ……なんで……?何で……!?」
―――神の社―――
「セリよ、しばらくここで待て。用事を済ませてくる」
「はい、月夜見命のおば様」
「おば様じゃない!おねぇ様じゃ!」
「は、はい!おねぇ様!!」
「ねぇさん、聞こえておるか。約束通り全ての魂を元の場所へと返したぞ。はぁ、帰ったらまたお父様とお母様に言い訳せねばならんな。ふぅ」
「おかえりなさいませ。月子様ぺ」
「ふふ。お主も口癖が直らぬか。白兎……いや白兎神よ。長らく、偵察ご苦労じゃった」
「はっ!ありがたきお言葉っぺ。これを持ち帰りましたっぺ」
「うむ。天之叢雲は砕け散ったが、この勾玉と、鏡があればいずれまた役に立つこともあろうて。さて、最後の仕上げをお父様にお願いしに行こうかのぉ。はぁ、憂鬱じゃて……」
そう言うと月子は天界への扉を開けた。
―――サウスタンの町―――
「ここは……?」
「プリン様っ!わかりますか!マリンです!」
「マリン?私は……誰……」
「うむ、記憶が混濁しておるようじゃな」
「ミヤビ様。プリン様は血圧、脈拍とも異常はなく、外傷もありません。ただ……」
「エリサ、ただなんじゃ?」
「ただ、想像でしかないですがプリン様の肉体は神族の力を失い人間族に近い体質になっているかもしれません。それと……」
「それと?」
「お腹にお子様がおられます」
「なんじゃと!?」
「ここはどこですか……?体が動かない……」
「プリン様、ここはサウスタンですわ。無理に動かさずしばらくここで養生しましょう。ミヤビ様、このまま警護をお願いしても?」
「あぁ、マリン。もちろんだ。千冬をコリータに連れて帰ってやってくれ」
「わかりました」
マリンが念話器を使い、仲間達に話しかける。
「皆さん聞いてください。プリン様がサウスタンで見つかりました。ただ記憶が混濁しており、しばらくこちらで安静にしてもらいます。もしかしたらですが……もしかしたら……ぐっ」
言葉に詰まるマリン。
「国王様もどこかで……うっうっ……!」
マリンはこらえていた涙が……また流れた。蜘蛛の糸を掴むような話だが、プリンが生きていた事によって、もしかしたらという思いが声に出た。
「そうじゃな。皆で探そう。もしかしたら旦那様もどこかで苦しんでいるかもしれない……」
「レディさん……そうですわね……きっとどこかで――」
それから皆で数週間、数ヶ月、数年……大陸中でハルトを探し続けた。
しかしハルトは結局、見つからなかったのだった……。
………
……
…
◆◇◆◇◆
―――コリータ王国南門―――
――世界の崩壊から5年の月日が流れた……。
「あぁ、ちょっと待って下さい!通行証か、身分証明書をお持ちですか?」
「いや……すいません。持ってません……あの、水を1杯くれませんか……」
「困ったな。ここは許可証が無いと入れないんだ。ビル!水を1杯持って来てくれないか!」
「はいはい!」
ビルが水を1杯、旅人に持って来る。
「ゴクゴクゴクゴク……ぷはぁ……」
その人はフードを深く被り、かなり薄汚い成りをした人だった。
「ありがとうございます。助かりました。ところで、ここはどこですか?」
髪もボサボサで顔も泥だらけで、着ている服もボロ布の彼が聞く。
「ここはコリータ王国。かつて、この大陸を支配したハルト様のお国だ。最高に住みやすい町なのさっ!」
「ハルト様……?」
「おいおい!ハルト様を知らないとは田舎からやって来たんだな!その昔――」
ポタン……!ふいに彼が涙がこぼした。
「ハル……ト……?」
彼には、聞き覚えがある名前だった。
しかし思い出せない。だけど……なぜか胸が熱くなる。
「おい!ビル!何をしている!!」
「レディ様!す、すいません!すぐに戻ります!!」
「ったく。御仁よ、すまない。ここは身分証明書か通行証がないと通してやれない……ん?御仁?泣いているのか?」
「すいません……わからないのですが何だか涙が止まらなくて。水をありがとうございました。それでは失礼します」
「あぁ、無理はなされるなよ……?」
キィィィィィィィィィン!それは突然思い出される奇跡だった!
レディの持っている妖刀村正が激しく音を立てたのだっ!!
『カタカタカタカタカタカタッ!!』
「な、なんじゃ!?村正!?」
『――その昔、互いに思いを寄せた神がそれぞれ持っていたという。離れ離れになっても引き寄せ合うという伝承がある』
以前ネプチューン神が言ってた言葉が突然脳裏をかすめ、レディの目に彼の腰にぶら下がる剣が見えた……!
「待たれよっ!!お主、その剣をどこで!!」
「いや……記憶がなくて……ずっと持ち歩いていますが……この剣が何か……?」
彼の腰からぶら下がっているその剣は、忘れるはずもない神器・天十握剣だった……!
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