103 / 113
この世界の希望
第101話・魔界の入口
しおりを挟む―――コリータ王国自室―――
大陸間会議も無事に終わり子供達も送り出した。
夜になり、お風呂を済ませようやく自室へと戻る。部屋に戻る途中、廊下でアリスとすれ違った。
「ハルト、プリンを見なかったか?」
「ん?いや?見てないけど」
「かくれんぼをしておったのじゃが見つからん。もし見つけたら先に寝る、と伝えておいてくれ。ぷんすか」
「あぁ……わかった。おやすみ」
見つけれず先に寝るとか、どうなのよ。
「ふぅ……疲れた」
僕はベッドで横になる。
「ん?」
あれ?何かいる?布団の中でごそごそする生き物。バサッ!と布団をめくる。
「しぃぃぃぃぃ!!」
「やっぱりプリンか、アリスが探してたぞ。見つからないから、先に寝るって言ってたぞ」
「がぁん」
どんだけ、かくれんぼに夢中なんだ。
「じゃぁ、私はここで寝る。おやすみ」
「おいおい。自分の部屋に戻れよ」
「すぅすぅすぅ……」
……早すぎない?
「はぁ……」
予備の布団を出し、電灯を消し床に転がる。目を閉じるとレディの顔を思い出した。
「待っておる……か」
そのうちいつの間にか眠りについていた。
………
……
…
「ハァハァ……ハァハァ……」
「……何だ?」
夜中に目が覚める。目を開けると、目の前にプリンの顔がある。
「びっく……!!」
「シィィィィィ!!」
カチ……カチ……カチ……時計の音が部屋に響く。まさか!侵入者かっ!?
「ん……」
プリンがキスをしてくる。
(ん?あれ?侵入者は?)
(そんなものはおらん!おるとすればそれはお主だっ!)
服を脱がされ、お互いの肌が触れる。プリンの肌はひんやりとしていた。いつものプリンじゃないみたいに目が怖い。
(忍法金縛り!)
んん!体が動かない!?いろんな意味で金縛りだ。いや、そんな事を言っている場合じゃない。まずい、本気で動かない。
(諦めろ。私の勝ちだ。フフフ、眠れ……)
何がだっ!と言いたいのに声が出ない。
(んんん……!!)
(ハァハァ……ん……)
僕は抵抗を心みるが何も出来ぬまま、時計の針の音を聞いていた。そして意識が遠のいていった……。
カチ……カチ……カチ……。
◆◇◆◇◆
――翌朝。
横ですぅすぅと、寝息を立てるプリン。結局、金縛りが今だに解けず、あまり寝れなかった。
ガタガタガタガタ……!また地震だ。ちょっとずつ長くなってる気がする。
カチャカチャカチャ……すると誰かが部屋の鍵を開けようとしている?
カチャンッ!バタンッ!!
「ハルトッ!!すぐに支度を致せ!西――あっ!プリン見っけ!!鬼交代じゃな!しっしっし!!」
アリスか……朝から声が頭に響く。
「とりあえず、金縛りを解いてくれないか……」
「ふにゃ……?」
プリンが起き、僕に叱られ、アリスに鬼を交代させられ泣き出してしまう。
「すまんかったのぉ、ハルトが全部悪いのじゃ。次はハルトが鬼をするでのぉ。よしよし」
「何でだよっ!」
「それよりも支度をせい。西の洞窟が地震の原因じゃ」
「西の洞窟?あの修行したり、魔界と繋がってたていう洞窟?」
「そうじゃ。急ぎ向かうぞ」
―――西の洞窟―――
西の洞窟から魔物が少しずつ出て来ている。その周辺の地面には、亀裂がたくさん見えた。
「これは早めに討伐した方が良さそうだな」
木陰にカエデの姿が見えた。カエデが知らせてくれたのか。
「カエデ!状況は?」
「あ、ご主人様。昨夜から魔物が数体出入りしていますがまだ大きな動きはありません。しかしどこから……」
「洞窟内じゃろうな。魔界門が開くとき、決まって天変地異は起きておる」
「魔界門……か。その上に蓋をしたらどうなるの?」
「え?」
「いや、横向きの門ならちょっと考えるけど地面に魔界門があるなら、例えば……巨大な岩を置いてみるとか。なんて、そんなんで止まるなら苦労はしないか!はははっ!」
「え?」
きょとんとするアリス、復唱するカエデ。
「え?」
「え?」
「それはやった事がないの……」
沈黙する3人と1匹。
「え?」
「おそっ!」
きりんの反応が遅すぎて、思わず声に出た。
「うむ。一度やってみるか」
「それならいっそセメントで固めてしまおうか。なぁんて。はははっ!」
「え?」
………
……
…
……沈黙が流れる。
「え?」
「え?」
「ハルト、お主卑怯にもほどがあるぞ」
褒めてるの?しばらく考えるアリス。
「え?」
「おそっ!」
いや、このクダリは2回目だ。きりんは耳が遠いのか?そもそも何歳なんだ?
「魔界の扉の位置を確かめてくる。皆はここで待機を」
「ハルト、気をつけるのじゃぞ」
カサカサ……木陰から身を低くし洞窟に近付く。そぉ~と、そぉ~と……バレないように……!
『へっっぷしっっっ!!!』
「グガァ?」
「アリスのばかっっ!!」
くしゃみをしたアリスに魔物が気付く!。
「ちっ!月陰双竜!!」
ザシュザシュザシュッッッ!!
僕は入口付近の魔物を瞬殺し、そのまま洞窟内へ切り込んだ。
「光球」
洞窟内に明かりを灯し、そのまま走りだす。タッタッタッ……!洞窟内は比較的魔物は少ない。数体倒すと、洞窟の奥ヘとたどり着く。
「これで全部か」
突き当たりに魔界の門らしき物があり、それは予想通り地面に空いた穴だった。
「これならなんとかなるんじゃないか……?」
と、穴の横に人影がある。カチャ……!僕は剣を抜き近付く。
「誰かいるのか?」
「た……す……け……」
その女性はそのまま気を失った。
「人間?……いや、この人は……。完全回復!!」
女性を緑色の光が包むと、すぅと苦しそうな表情が楽になった。彼女を担ぎ、一旦洞窟を出る。
「きりん!この人を先にコリータへ!カエデ!付き添いを頼む」
「わかりました。ご主人様」
「はい」
2人は彼女を連れてコリータへ向かう。
「あれは誰じゃ?」
「魔界の門の横に倒れていた、人間……ではないかもね」
「うむ。こちらを片付けてからわしらも戻ろう」
アリスが洞窟に魔法をかける。
「地殻変動!!」
ゴゴゴゴゴゴ……!!地響きがし、洞窟がみるみる埋っていく。そしてさらにその上に僕は城壁を建てる!
「鋳造合成!」
ゴゴゴゴゴゴ……!!洞窟の上に城壁が立ち上がった!
「よし。これで、よっぽどの魔物じゃないと出てこれない」
「これはナイスじゃったの。もっと早くにするべきじゃった……」
クスッと笑うアリス。
「さぁ、戻ろう!きりん!コリータまで頼――」
……あれ?振り返ると、きりんがいない。
「……きりん、先に帰えしちゃった」
「……歩きじゃの」
「がーーーん!」
アリスは部屋に戻り、僕は歩く。コリータまで数時間はかかりそうだ。
「はぁはぁはぁ……運動不足だ」
初めてこの世界に来た時のことを思い出す。当時は本当に雑魚だったと今さら思う。
この世界を知れば知るほど愛おしく、失いたく無いと思えた。1人では何もできないが、アリスや皆がいる。アリスの思惑通りか、いつの間にか6人の神の子も出来て、今日を迎えている。
「ふっ……つくづくアリスはすごいな」
「なんじゃ?気持ちの悪い」
「いいや、なんでもない」
そんな事を考えながらコリータを目指した。
―――コリータ王国―――
「た、だいま……はぁはぁはぁ……」
「ご主人様!おかっ!にゃぁ!お水お水!」
汗だくでようやく着いた。
「おかえりなさいませ。カエデさんからお話は聞いています。先にお風呂に入って来て下さい」
「ごくごくごく……ぷはぁ……!そうするよ、マリン。クルミ、お水ありがとう」
「私も一緒に入るにゃ!!お背中流してあげますにゃ!」
「コラッ!クルミさん駄目です。私が流して差し上げます」
「マリンずるいにゃぁぁぁ!!」
「私が流します!」
「はぁ、静かにしてくれ。くたくたなんだ……」
ガラガラガラ……カポーン……ザァァァ……!
結局、マリンとクルミが背中を洗ってくれている。
ゴシゴシゴシゴシ……ゴシゴシ……!
「クルミ、前は自分で出来るか――」
「カプッ!」
「いたっ」
噛まれた。
ゴシゴシゴシゴシ……!
「あっ!ちょっと!そこはっ!?」
この後、どうなったかは想像にお任せする……。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる