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南の大陸の下僕
第84話・ロック鳥誕生
しおりを挟む―――ネプチューン神殿―――
ザァァ……!
「あ……あ。マリン聞こえるか?」
「はぁ、国王様、いつの間にいなくなったんですか。守衛から話を聞いて……」
「すまない。それより――」
「えぇぇぇぇ!?東町を………はい。わかりました。妖精の蜜は届けておきます。はい、また連絡します。リンさんとアカシアさんを行かせたらいいんですね」
「大至急たのむ」
ザァァ……!
で、次はと。
「アリス聞こえるか。アリス」
「……なんじゃ。わしは今、温泉まんじゅうで忙しい。クワァァァァァ」
「いや、じつはかくかくしかじかまるかいてちょん。と言うわけなんだ。ちょっと手伝ってくれないか」
「……えぇ……めんどくさ……クワァァァ!」
「ハルト、すぐアリス様を連れて向かいます。ネプチューン神殿ですね」
「あぁ、ありがとう。エル。さっきからアリスがなんか叫んでるけど?」
ザァ……!
あれ?念話器が切れてる。まぁいいか……とりあえず出来ることをしてしまおう。
「鋳造合成!!」
僕は東町を破壊してしまい、再建する事になった。
海に隣接する神殿を半円の城壁で囲い、さらに3キロ先で半円の城壁を作ることにした。敷地の半分で同程度の住居用の敷地確保は出来そうだ。残りの半分を使い養殖場と海岸に港を作る……イメージは出来てはいるが、上空から範囲を決めないと進まない。そうこうしてるうちにリンとアカシアがきりんに乗ってやってくる。
「ハルトっ!呼んだ?」
「国王様、お待たせしました」
「あぁ、急がせてすまない。城壁と区画割をするからリンはゴーレムの召喚と、アカシアはざっくり区画の図面を引いてくれ」
「わかったよぉん」
「かしこまりました」
3人で打ち合わせをしていると、エルの声も聞えた。
「あなたぁ!こっちこっち!」
上空から何かに乗ってやってくるエル達。
バサ、バサ、バサ……!
「クワァァァァァァ!!」
「あ。さっきの叫び声はこの鳥か」
「お待たせっ!!ロック鳥が卵からかえったの!!」
「でかくない?」
「ちょうどこっちに来る前にマリンが妖精の蜜を届けてくれたのでの。こやつに飲ませてみたら、あら不思議。こんなに大きくなりました。というわけじゃ」
「へぇ、そうなんだ。そう言えば妖精の蜜は世界樹にあげるんじゃなかったの?」
少し考えるアリスとプリンとエル。
「あっ……」
「あっ……」
「あっ……」
「何してるんだよっ!僕も人のこと言えないけどっ!」
「温泉に行ったらクロちゃんが溺れてて……」
……そういえば何日か前に温泉に浮かんでた卵があったような。
「水は吐かせたんだけど、元気がなかったからアリス様が妖精の蜜を飲ませてみよう。てなって」
「クワワァァァァァァ!」
「そっか。まぁ、それならまた妖精の蜜はまた探そう。ところで白兎は一緒じゃないの?」
「ちっち、ちっち、うるさいから置いてきたのじゃ」
「なるほど」
「ねぇ、ハルト。これは何ですの?」
プリンが座り込んで何かをつんつん突いている。地面から何かが突き出ている様だ。
「何だこれ?黒い石?」
黒石の周りを掘っていると、レディとカエデもやって来る。
「どうしたのじゃ。皆集まって」
「あぁ、レディ。この黒い石が取れなくて。これ……どっかで見たことあるような……」
「あっ!ハルトさん、これはネプチン様を拘束していた黒鉄です!」
カエデが気付く。あの解錠出来なかったあの鎖か。
「ハルトっ!それ隕鉄かも!小さい頃ばぁばが言ってた!昔、北の空に大きな火の玉が降ってきた。って!」
「隕鉄!?と言う事はドムドさんに作ってもらった黒剣も隕鉄なのか!」
「旦那様。これは希少な物ですぞ」
「プリン!大型ゴーレムをお願い!!」
「わかった!」
「マリン!聞こえるか!転移魔陣は使えるか!うん!とりあえず1回でいい!ドムドさんをこっちによこして!」
僕達が隕鉄を掘り返していると、ドムドさん達がすぐやって来た。まだ魔力補給が課題ではあるが、転移魔陣があるとすごく便利だ。
「こりゃ、見事な鉱石じゃ。旦那。これだけあれば天之叢雲の修復どころか、エクスキャリパーも直せますぜ。あと、ブラックボックスの強化……いや、甲鉄ゴーレムもいけるのでは――」
「天之叢雲はわかるけど、エクスキャリパー……も?」
「へぇ。先日、ゼシカ様が机の角にぶつけて折れてしまったらしく、内緒で修理依頼をされてまして……あっ」
「折れたっ!?伝説の剣なのに!?」
ある意味そっちが伝説だ。
「案ずるな。あれはわしが作った試作品じゃからの。特に思い入れもない」
アリス、伝説の剣を簡単に諦めるのか。
そして興奮するドムドさん達も加わり、僕達は隕鉄を掘り返した。
「まてよ。この隕鉄で国と国をつなぐ線路を作るのはどうだろう。強度も十分ありそうだし」
「そりゃぁ、一番良いかしれませんが量的に足りないのでは?」
「THE複製を使って線路を一本作れば増やせる。ドムドさん、どうだろう?」
「それならいけますぜ、旦那!帰ったら早速作りますぜ!」
「よし、任せた」
それから僕達は数日かけて城壁から港、養殖場、住居や商店、そして隕鉄の運び出しと大忙しだった。
その間にカエデとレディが妖精の蜜の情報を探してくれていた。
◆◇◆◇◆
――1週間後。
「完成っ!!」
パチパチパチパチッ!!
立派な町が出来た。町長もご満悦の笑顔だった。
「婿殿、見事じゃっ!!実に見事な町が出来たっ!」
ネプチン、もっと褒めて。町を壊した原因は僕だけど。
「今夜は宴をしようぞ!ハッハッハ!」
――シュッと、タイミング良く情報収集に行っていたカエデが帰って来る。
「ご主人様。戻りました」
「おっ!カエデ、何かわかったかい?」
「はい。南東の森で妖精の蜜を見た者がおりまして、なんでも南の大陸で売られていたのを見た事があると」
「こちらも別の場所で同じ話を聞きました」
レディもちょうど帰ってきた。
「ただ妖精の蜜は本来、妖精王のみが精製できる物らしく、希少性が高く流通するものではないと言う事です」
「妖精王……か。と言う事は妖精王を探し――」
「妖精王は行方知れずなんですよ、ピューイ」
び、びっくりした!
「ピューイ来てたのか」
「先ほどマリンさんがお祝いを持って来たので、クルミさんと一緒に」
「で、妖精王は行方知れずなのか?」
「はい。妖精王がいなくなってから世界樹様は急激に老化されていきました」
「なるほど。この大陸で情報を集めるより南の大陸に行ったほうが早そうだな」
「おそらく」
今いるメンバーを見渡す。行くとしたら、僕とアリス、きりんと……。
「私も行く」
「私も行く」
「ねぇさまが行くなら私も行く」
「私は行きません」
「………」
「私が行くにゃ」
「ぼくも行く」
「ウフフ」
「同時にしゃべるな」
プリンはアリスの部屋に収納できるから良いとして、もう1人くらい……。
「南の大陸は亜人族が多いそうだから、クルミ行こうか」
「やったにゃーーー!わーーい!」
『えぇぇぇぇぇ!?』
「プリンは宝石に入ってたら行けるよ」
「よしっ!」
ガッツポーズをするプリン。レディが僕の胸の宝石に頭を押し付けてくる。
「レディ!痛い痛い痛いっ!!」
「入れぬ……くっ。不覚っ!」
「やめぇい!!」
結局レディとカエデはネプチューン神殿の警護、エルはエルフの里に、リンはサウスタンの警護に行く事になった。コリータ王国はミヤビとベリアルがいるから大丈夫だろう。
――その日の夜。
ネプチューン神殿で、新しい町の完成祝いとなった。僕達はしばらく遠征になりそうなので、その日は遅くまで飲み食いし騒いだ。
天十握剣はまたレディに返し、僕はマリンが持って来てくれた隕鉄の剣2本を受け取ったのだった。
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