異世界ざこぴぃ冒険たん

ざこぴぃ。

文字の大きさ
上 下
86 / 113
南の大陸の下僕

第84話・ロック鳥誕生

しおりを挟む

―――ネプチューン神殿―――

ザァァ……!

「あ……あ。マリン聞こえるか?」
「はぁ、国王様、いつの間にいなくなったんですか。守衛から話を聞いて……」
「すまない。それより――」
「えぇぇぇぇ!?東町を………はい。わかりました。妖精の蜜は届けておきます。はい、また連絡します。リンさんとアカシアさんを行かせたらいいんですね」
「大至急たのむ」

ザァァ……!
で、次はと。

「アリス聞こえるか。アリス」
「……なんじゃ。わしは今、温泉まんじゅうで忙しい。クワァァァァァ」
「いや、じつはかくかくしかじかまるかいてちょん。と言うわけなんだ。ちょっと手伝ってくれないか」
「……えぇ……めんどくさ……クワァァァ!」
「ハルト、すぐアリス様を連れて向かいます。ネプチューン神殿ですね」
「あぁ、ありがとう。エル。さっきからアリスがなんか叫んでるけど?」

ザァ……!
 あれ?念話器が切れてる。まぁいいか……とりあえず出来ることをしてしまおう。

鋳造合成キャストシンセンス!!」

 僕は東町を破壊してしまい、再建する事になった。
 海に隣接する神殿を半円の城壁で囲い、さらに3キロ先で半円の城壁を作ることにした。敷地の半分で同程度の住居用の敷地確保は出来そうだ。残りの半分を使い養殖場と海岸に港を作る……イメージは出来てはいるが、上空から範囲を決めないと進まない。そうこうしてるうちにリンとアカシアがきりんに乗ってやってくる。

「ハルトっ!呼んだ?」
「国王様、お待たせしました」
「あぁ、急がせてすまない。城壁と区画割をするからリンはゴーレムの召喚と、アカシアはざっくり区画の図面を引いてくれ」
「わかったよぉん」
「かしこまりました」

3人で打ち合わせをしていると、エルの声も聞えた。

「あなたぁ!こっちこっち!」

上空から何かに乗ってやってくるエル達。
バサ、バサ、バサ……!

「クワァァァァァァ!!」
「あ。さっきの叫び声はこの鳥か」
「お待たせっ!!ロック鳥が卵からかえったの!!」
「でかくない?」
「ちょうどこっちに来る前にマリンが妖精の蜜を届けてくれたのでの。こやつに飲ませてみたら、あら不思議。こんなに大きくなりました。というわけじゃ」
「へぇ、そうなんだ。そう言えば妖精の蜜は世界樹にあげるんじゃなかったの?」

少し考えるアリスとプリンとエル。

「あっ……」
「あっ……」
「あっ……」
「何してるんだよっ!僕も人のこと言えないけどっ!」
「温泉に行ったらクロちゃんが溺れてて……」

 ……そういえば何日か前に温泉に浮かんでた卵があったような。

「水は吐かせたんだけど、元気がなかったからアリス様が妖精の蜜を飲ませてみよう。てなって」
「クワワァァァァァァ!」
「そっか。まぁ、それならまた妖精の蜜はまた探そう。ところで白兎は一緒じゃないの?」
「ちっち、ちっち、うるさいから置いてきたのじゃ」
「なるほど」
「ねぇ、ハルト。これは何ですの?」

 プリンが座り込んで何かをつんつん突いている。地面から何かが突き出ている様だ。

「何だこれ?黒い石?」

 黒石の周りを掘っていると、レディとカエデもやって来る。

「どうしたのじゃ。皆集まって」
「あぁ、レディ。この黒い石が取れなくて。これ……どっかで見たことあるような……」
「あっ!ハルトさん、これはネプチン様を拘束していた黒鉄です!」

カエデが気付く。あの解錠出来なかったあの鎖か。

「ハルトっ!それ隕鉄かも!小さい頃ばぁばが言ってた!昔、北の空に大きな火の玉が降ってきた。って!」
「隕鉄!?と言う事はドムドさんに作ってもらった黒剣も隕鉄なのか!」
「旦那様。これは希少な物ですぞ」
「プリン!大型ゴーレムをお願い!!」
「わかった!」
「マリン!聞こえるか!転移魔陣は使えるか!うん!とりあえず1回でいい!ドムドさんをこっちによこして!」

 僕達が隕鉄を掘り返していると、ドムドさん達がすぐやって来た。まだ魔力補給が課題ではあるが、転移魔陣があるとすごく便利だ。

「こりゃ、見事な鉱石じゃ。旦那。これだけあれば天之叢雲アメノムラクモの修復どころか、エクスキャリパーも直せますぜ。あと、ブラックボックスの強化……いや、甲鉄ゴーレムもいけるのでは――」
「天之叢雲はわかるけど、エクスキャリパー……も?」
「へぇ。先日、ゼシカ様が机の角にぶつけて折れてしまったらしく、内緒で修理依頼をされてまして……あっ」
「折れたっ!?伝説の剣なのに!?」

ある意味そっちが伝説だ。

「案ずるな。あれはわしが作った試作品じゃからの。特に思い入れもない」

アリス、伝説の剣を簡単に諦めるのか。
 そして興奮するドムドさん達も加わり、僕達は隕鉄を掘り返した。

「まてよ。この隕鉄で国と国をつなぐ線路を作るのはどうだろう。強度も十分ありそうだし」
「そりゃぁ、一番良いかしれませんが量的に足りないのでは?」
THE複製ザコピーを使って線路を一本作れば増やせる。ドムドさん、どうだろう?」
「それならいけますぜ、旦那!帰ったら早速作りますぜ!」
「よし、任せた」

 それから僕達は数日かけて城壁から港、養殖場、住居や商店、そして隕鉄の運び出しと大忙しだった。
 その間にカエデとレディが妖精の蜜の情報を探してくれていた。

◆◇◆◇◆

 ――1週間後。

「完成っ!!」

パチパチパチパチッ!!
立派な町が出来た。町長もご満悦の笑顔だった。

「婿殿、見事じゃっ!!実に見事な町が出来たっ!」

ネプチン、もっと褒めて。町を壊した原因は僕だけど。

「今夜は宴をしようぞ!ハッハッハ!」

 ――シュッと、タイミング良く情報収集に行っていたカエデが帰って来る。

「ご主人様。戻りました」
「おっ!カエデ、何かわかったかい?」
「はい。南東の森で妖精の蜜を見た者がおりまして、なんでも南の大陸で売られていたのを見た事があると」
「こちらも別の場所で同じ話を聞きました」

レディもちょうど帰ってきた。

「ただ妖精の蜜は本来、妖精王のみが精製できる物らしく、希少性が高く流通するものではないと言う事です」
「妖精王……か。と言う事は妖精王を探し――」
「妖精王は行方知れずなんですよ、ピューイ」

び、びっくりした!

「ピューイ来てたのか」
「先ほどマリンさんがお祝いを持って来たので、クルミさんと一緒に」
「で、妖精王は行方知れずなのか?」
「はい。妖精王がいなくなってから世界樹様は急激に老化されていきました」
「なるほど。この大陸で情報を集めるより南の大陸に行ったほうが早そうだな」
「おそらく」

 今いるメンバーを見渡す。行くとしたら、僕とアリス、きりんと……。

「私も行く」
「私も行く」
「ねぇさまが行くなら私も行く」
「私は行きません」
「………」
「私が行くにゃ」
「ぼくも行く」
「ウフフ」
「同時にしゃべるな」

 プリンはアリスの部屋に収納できるから良いとして、もう1人くらい……。

「南の大陸は亜人族が多いそうだから、クルミ行こうか」
「やったにゃーーー!わーーい!」
『えぇぇぇぇぇ!?』
「プリンは宝石に入ってたら行けるよ」
「よしっ!」

 ガッツポーズをするプリン。レディが僕の胸の宝石に頭を押し付けてくる。

「レディ!痛い痛い痛いっ!!」
「入れぬ……くっ。不覚っ!」
「やめぇい!!」

 結局レディとカエデはネプチューン神殿の警護、エルはエルフの里に、リンはサウスタンの警護に行く事になった。コリータ王国はミヤビとベリアルがいるから大丈夫だろう。

 ――その日の夜。
 ネプチューン神殿で、新しい町の完成祝いとなった。僕達はしばらく遠征になりそうなので、その日は遅くまで飲み食いし騒いだ。
 天十握剣アメノトツカノツルギはまたレディに返し、僕はマリンが持って来てくれた隕鉄の剣2本を受け取ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派
ファンタジー
 勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"  その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。  そんなところに現れた一人の中年男性。  記憶もなく、魔力もゼロ。  自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。  記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。  その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。 ◆◆◆  元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。  小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。 ※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。 表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅
ファンタジー
およそ30年前、地球にはダンジョンが出現した。それは人々に希望や憧れを与え、そして同時に、絶望と恐怖も与えた──。 最弱探索者高校の底辺である宝晶千縁は今日もスライムのみを狩る生活をしていた。夏休みが迫る中、千縁はこのままじゃ“目的”を達成できる日は来ない、と命をかける覚悟をする。 千縁が心から強くなりたいと、そう願った時──自宅のリビングにダンジョンが出現していた! そこでスキルに目覚めた千縁は、自らの目標のため、我が道を歩き出す……! 7つの人格を宿し、7つの性格を操る主人公の1読で7回楽しめる現代ファンタジー、開幕! コメントでキャラを呼ぶと返事をくれるかも!(,,> <,,) カクヨムにて先行連載中!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...