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魔王とその仲間
第76話・深夜の出来事
しおりを挟む―――2階ベランダ―――
「月が奇麗だ」
……なんて言ってみる。ベランダに追い出された夜。
「ご主人様も月見ですか?」
「え?」
上から声がすると思ったら、屋上にガガがいた。バサッと羽根を広げて降りて来るガガ。
「なぁ、ガガって、血とか吸うの?」
「ぷっ」
笑われた。トンチンカンな事を言ったのだろうか。
「真面目に聞いたんだけど」
「失敬。ご主人様の言い方が『蚊が血を吸う』みたいな言い方だったもので、つい」
あぁ、確かに。そんな言い方をした。
「血を吸うのかと聞かれたら吸いますね。しかし、吸わないと死ぬというわけでもなく、普通に食事をして生きていけますよ」
「そうなんだ。血しか吸わないと思っていた。聞かないとわからないものだね」
「中にはいますよ。純粋なヴァンパイアは特に。でもそれは魔物としての食事であって、本来は必要の無い事なんです」
想像してたヴァンパイアと違った。
「以前の魔物の進撃はどう見る?やはり食料問題なのか……」
「それもあるでしょうが、今回は……いや、憶測で言うのはやめましょう」
「そ、そうだな……」
えぇぇぇ、気になるぅぅ!
「そういえばご存知ですか?最近、沖合でワダツミの死体が見つかったとか。人魚族の話によると、なんでも雷にでも打たれたような跡があったそうです」
「ワダツミ?海にいる生き物なのか?」
「はい。以前、海神ネプチューンをもってしても討伐できなかった魔物です。ただ、最近では川でも目撃情報があったとか……。生活環境が変わり、弱っていたのでしょうか」
「あっ」
「ご主人様、何か心当たりでも?」
「あ、いやなんでもない……」
……もしかして初めて撃った竜の嘆きに当たったのか?そんなわけないよな。練習したの川だったけど……まさかね……ははは……。
「そう言えば、ガガ達は魔界へは帰らなくて大丈夫なのか?」
「どっちでもいいんですけどね。帰っても争いしかないし、食べるものも取り合いだし、まだこっちの世界の方が平和かな。と。それに……」
「それに?」
ガガが、すぅと近づいてきて、唇が当たりそうになる。
「そ・れ・に――こっちの世界にはご主人様がおられるので……」
カチャ……!
キィィィィ……。
「……ギロッ」
バタンッ!!カチャッ!
「ちょ、ちょっと!今のチハヤだよねっ!ねぇ!開けてくれ!」
「あっ……さ、さて、私はそろそろ寝ます!ご主人様、さらばっ!!」
バサバサバサッ!
こうして俺は朝まで1人、ベランダで過ごすはめになった。
「トホホ……」
―――学校内病室―――
――翌朝。
「へっくしょっっっん!!うぅ……」
完全に風邪をひいた。
朝から、制服姿のメリーが看病してくれている。そういえば、服って制服しかないのか……と、今頃気が付いた。合成スキルを使えば、他の服を作れるのではないか。例えばナース服とか……ををっ!?
しかし今はナース服どころではなかった。薬の用意をしてるであろうメリーが前かがみになるたびに、そのぉ……なんだ。スカートからチラチラと……見え隠れする……お、おパン……。
「ご主人タマ。お薬の用意がデキ―――」
「ぎょっ!!う、うん!!今日はいい天気だな!」
「ぎょ?ご主人タマ、今……フゥン……」
意味深な笑みを浮かべるメリー。
「さ、これを飲んで寝てくだセイ。睡眠が一番ダス」
「う、うん。ありがとう」
メリーに出された薬を飲んでまた目をつむるが、どうしてもアレが気になる。いかんっ!違うことを考えろっ!俺っ!
ひ……羊が1匹、羊が2匹、羊……メリーさんが4匹、メリーさんが5人、メリーさんのおパン……!
「だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「きゃっ!」
様子を見に来ていたチハヤがビックリして飛び上がった。
「げ、元気そうですね、ご主人様。安心しました」
「ふきゃっ!」
変な声が出る。
「あ……あぁ、チハヤ、ちょうど良かった。え……と、カルティアを呼んで欲しいんだけど」
ちょっと誤魔化してみたりする。
「かしこまりました」
丁寧にお辞儀をしていくチハヤ。こちらもお辞儀する。なんかすいません。
「お呼びでしょうか?ご主人様」
「あぁ、カルティア。ちょっとお願いなんだけど、この周辺の地図を作りたいのと、わかる範囲でこの地域にどのくらいの建物や生き物がいるかまとめて欲しい。空を飛べる者は協力をさせよう」
「かしこまりました。ただちに取りかかります」
「任せた。チハヤ、フォローをお願い」
「かしこまりました」
さて、次は……メリーの……。
「メリー、ナース……」
「ナース服レスカ?」
「え?あ、うん。ほ、ほら、看護婦さんは清潔な格好をした方がいい。て読者の人も言ってたし」
「ドクシャ?さんレスカ。聞いた事はないですが、ご主人様がそう言われるノナラ」
「う、うん。後で素材は作ってみるから、服を作ってみてくれないかな」
「わかりまスタ。裁縫ならチハヤにも聞いてみメス」
自然に自然に……ふぅぅぅぅぅ。深呼吸深呼吸。
「何か言われまスタ?」
「いや!何も!さ、ちょっと寝ようかな!おやすみ!」
「ヘイ。おやすみなさいメス」
俺は布団をかぶり、色々妄想していたらそのまま眠っていた……。
………
……
…
――その日の深夜。
ふと、目が覚めた。だいたい夜中に目が覚めるのは2時と相場が決まっている。
「はぁ……トイレ……」
カツン……カツン……。
自分の足音が廊下に響く。病室からトイレまでは20m程だが、真っ暗な廊下は正直怖い。こういう時は心を無にして……。
『シャァァァァァ……!』
「ビクッ!」
何か音が聞こえる。
『キュッキュッ……』
「あれ?シャワーの音か?こんな夜中に……?」
キィィィィ……。
扉を開けると電気が点いていた。ユニットバスが4室あるが、どこから聞こえたかはわからない。俺は思い切って声をかけてみる。
「だ、誰かいるの?」
シーーーーーン……。
嘘でしょ。誰もいないとか……?
「……ご主人タマ?」
「ほわっ!誰!?」
思わず声が出る。
「メリーレス。こんな時間にどうされたんでメスカ?」
「メリーかぁ、もう脅かすなよぉ。まったく」
俺はバカだった。安心したと同時にその扉を開けてしまったのだ!鍵もかかってない。そうだ。鍵をかけててくれたら良かったのに!!
ガチャ。
「ヘ?」
「もう、メリー。こんな夜中にシャワー浴びたら、びっく……り……する……えっ?」
そこには何も着ていないメリーがいた。
「キャッ―――!?」
と叫びそうになるメリーの口を押さえる!
「ンンンンンンッ!?」
あぁ、どうしよう。とんでもない状況な気がする。
「静かにっ!ごめんっ!俺もびっくりしてて、つまり、間違って開けてしまって、メリーがいると知らずに!」
何だか言い訳すら思いつかない。俺があたふたしていると、メリーが急に大人しくなった。
「電気を消してくだセイ……」
言われるがまま脱衣所の電気を消すと、真っ暗で何も見えない。石鹸の香りでメリーが近寄ってくるのがわかった。……そしてメリーが耳元でささやく。
「ご主人タマが私の事をあんまり見るから、私変な気分二……」
ドキドキドキドキ……!
これはあれですか。ついに初めてをお迎えしちゃうような、そんなタイミングですか!
「メ、メリー……!」
「ンンッ!」
彼女とキスをする。キスはチハヤとしたから2回目だっ!大丈夫!!落ち着けっ!!そして、俺はついに……!
To Be Continued.....!!
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