63 / 113
無限牢獄の生娘
第61話・レイド開始
しおりを挟む―――ネプチューン城―――
「そうか……」
アリスがつぶやく。ナツト・チガ。魔王城の玉座に座り、息絶えていた人物の名だ。そして……。
「そやつはハルトの複製……じゃな」
「やはり、そんな気はした。ん?待てよ……?」
「ん?待て!と言う事はこの世界にまだ月夜見命様が生きてる可能性があるんじゃないか!月夜見命様は殺されてはいない。どこかにまだ幽閉されているんじゃ!」
「えっ!?そうか……それは気付かなかった。確かにそうじゃ。捕らえられたは言え、あやつが簡単にくたばるはずはない……。実際、天之叢雲はイスタン帝国にあった。と言う事は、無限牢獄もどこかにあるかもしれないと言う事じゃな……」
「カエデ頼む!天之叢雲のあったイスタン帝国周辺をもう1度探ってくれないか!」
「はっ!ただちにっ!」
すぅと消えるカエデ。先日は大臣コブラの件で頭がいっぱいだった。もし牢獄があれば他に捕らわれてる人も他にいるかもしれない。
「まったく、旦那様の発想にはいつも驚かされる。さすがは我が旦那様。あ、おじいちゃん。このハルト殿と結婚する事になったのじゃ。正室として……もう身内みたいなもんじゃ!ハッハッハ!」
ちがうよ。側室って言ったよね。
「なんとっ!ムコ殿!これはめでたい!」
「あらあらまぁまぁ。今夜はお祝いしなくちゃね」
「ちょっと待て、皆、一旦落ち着け」
「うむ。わしはイカをご所望じゃ」
ちがうよ。今はそこじゃないよ。
――こうしてその夜、元魔王城でお祝いが盛大に行われた。タイやヒラメやサキュバスが舞い踊り、イカ焼きを食べすぎたアリスが気分が悪くなり、脱ぎ出したレディを必死で止め、踊っていたタイをネプチンが食べ、酔ったお菊が城内でドラゴン化して城を破壊し、もうそれはそれは……地獄だった。チーン……。
◆◇◆◇◆
――翌日。
「レディよ。これをお前に授ける。天之叢雲にも劣らぬ神器。わしはもう振るう事も無いのでな」
「おじぃちゃん、これは?」
「天十握剣と言う。海を切り裂き、奇跡を起こすと言う神器じゃ。持って行きなさい」
「ん?村正?」
『カタカタカタ……』
レディの持つもう1本の妖刀、村正が小刻みに揺れている。
「レディよ。まさか、村正を持っておるのか?何と奇遇な。それはかつて、互いに思いを寄せた神がそれぞれ持っていたという。離れ離れになっても引き寄せ合うという伝承がある。まるで二人の愛の様じゃな」
「いやいやさすがにそれはウソでは……」
『ガタガタガタガタッ!!』
「ごめんなさい。村正さん落ち着いてください……」
レディは神器・天十握剣を受け取り、僕達は帰路に着いた。
そう言えばネプチンが後で贈り物を送るって言ってたな。楽しみしておこう。
―――ウェスタン王国北の森草原―――
数日後。僕達の周りを魔法球が飛び回る。魔法球はウェスタン王国、コリータ王国、エルフの里、サウスタンの街、そしてイスタン帝国にも配置してある。これで僕達の戦いは近隣諸国に映し出されると言うわけだ。
ここはウェスタン王国北の森を抜けた草原……かつて10万の魔王軍と対峙した場所。ここでいよいよレイドが始まる。登録メンバーがこちら。
【1チーム3人制】
①ハルト、アリス、カエデ
②ミヤビ、エル、リン
③プリン、レディ、ベリアル
④メリダ、セシル(サキュバス)、ロゼ(人魚族)
この12人で挑む魔物がアリスが先程召喚した……地上最悪最強の『マスターロードドラゴン』。何とドロップ金貨1億枚!
「ほんとにいいのじゃな……?」
「あぁ。アリス、やろう」
「武者震いしてきたぞ!」
「天十握剣、村正……行くぞ!」
「おいおい、こいつはヤバい匂いしかしないな……」
「……切る!」
「やばっ!ウケる!!」
「ちょっとデカすぎじゃない……?」
「ぼく、ちょっとちびったかも……」
「回復はお任せを!セシル!ロゼ!行きますわよ!」
「はいっ!メリダ様!」
『グオォォォォォォォォッ!!』
マスターロードドラゴンの雄叫びで、ついにレイドは始まった!
「マサミカ大陸の皆様!こんにちは!さぁ始まりました!最恐最悪の魔物マスターロードドラゴンと勇者ロドリゲスとその仲間達のレイド戦です!解説はコリータ王国より私マリンと――」
「――妹のアクアの2人でお届けします!」
「オオォォォオォォォォォォォォ!!」
各国の街に歓声が上がる。そして魔法球に映し出されるマスターロードドラゴンの姿。
「さてやりますか!まずは手始めに……光の雨極み!!」
数千の光の雨がドラゴンに降り注ぐ!!
「グガャァァァァァァァ!!」
「なっ!皮膚が硬すぎてほぼ無傷か!」
僕はドラゴンの攻撃を避けつつ、魔法剣を抜く。レディとベリアルもドラゴンの足に攻撃を始める!
「月陰咆哮二之太刀!」
「月陰奥義月花!!」
レディとベリアルが斬り込むとドラゴンの足から血が吹きでる!!
「グギャァァァァァァァ!!」
凄まじい雄叫びと同時にドラゴンの尾が飛んでくる!慌ててエルとリンが援護魔法を唱える!
「ちょっ!待て待て待てっ!!ふぎゃぁぁぁ!」
「魔法障壁!」
「高速移動!」
レディがぎりぎりの所でドラゴンの尾をかわす!掩護魔法がナイスタイミングだ。
「私の出番の様ですわね!行きますわよ!『極大火球』♪」
「おいっ!プリン!今は危ないっ!全員――!!」
ズゴゴゴゴゴゴゴ……!!
地鳴りがしたかと思うと、空から直径数百メートルの火球が落ちてくる!
「全員退避っ!!退避!!プリンのばかっ!!」
ズゴドオォォォォォォォン!!!
超大型の火球が直撃し、ドラゴンが火に包まれる!
「グギャァァァァァァァ!!」
「嘘だろ……あれでも効いてないのか……」
ちょっとだけドラゴンが焦げた匂いはした。
「無双千草!!」
すかさず、見えない速さでミヤビがドラゴンの足を切りつけるっ!!
「煙玉っ!」
カエデがドラゴンの視界を奪う!
「わしに任せろっ!くらえっ!イカの丸焼き投げ!」
ひゅゅゅぅぅぅぅぅぅ………びちゃ。
アリスの食べかけのイカでドラゴンの足がジタジタする!
「アリス!!食べ物を粗末にしては駄目だっ!」
「ちっ!」
イカがもったいない。
「金剛弓連奏!!」
キュイィィィィィン!シュゥゥゥゥゥッ!!
「これはどうだっ!」
7本の矢がドラゴンに向かって飛んでいく!しかしこれも虫に刺された程度か、簡単に振り払われる。
ミヤビ、レディ、ベリアルも必死に攻撃を繰り出すが深手を負わせるまでのダメージはない!
「はっはっは!これは愉快!まったく歯が立たぬ!」
「レディ!」
「旦那様よ!おじいちゃんにもらったこの神器の力をとくと見よ!『海斬覇』!!」
天十握剣が光輝き、剣から召喚された1匹の水龍がドラゴンの尾を噛みちぎるっ!
「ウギャァァァァァァァァ!!!」
「え?嘘だろ。まさかの尻尾が切れた……?」
「うぅ……はぁはぁ……こ、これは、魔力の消費がパない……はぁはぁ……」
「レディ!大丈夫――!?」
尻尾を失ったドラゴンが空中へ飛び立つ!そしてレディめがけて火炎を吹出した!
「ガァァァァァァァ!!!」
「危ないっ!!」
ミヤビがレディをかばい、炎に包まれる!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「まずい!メリダ!2人を下がらせて!回復を!」
「はいっ!あなた!セシル!ロゼ!」
「はいっ!メリダ様!」
「リン!魔法の準備を!エルはリンの姿を隠してくれ!」
「わかった!」
「プリンとベリアルさんでドラゴンを引き付けてくれ!」
「私の出番ですわね!」
「承知!」
「アリス!!」
「くちゃくちゃ……おう!いつでもこいやっ!」
アリスだけなぜか緊張感がない。いつもの事で慣れてはいるが……。
「さぁ!どうなるっ!現在!負傷者2名!次回クライマックスです!」
To be continued.....!
6
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
魔法使いの国で無能だった少年は、魔物使いとして世界を救う旅に出る
ムーン
ファンタジー
完結しました!
魔法使いの国に生まれた少年には、魔法を扱う才能がなかった。
無能と蔑まれ、両親にも愛されず、優秀な兄を頼りに何年も引きこもっていた。
そんなある日、国が魔物の襲撃を受け、少年の魔物を操る能力も目覚める。
能力に呼応し現れた狼は少年だけを助けた。狼は少年を息子のように愛し、少年も狼を母のように慕った。
滅びた故郷を去り、一人と一匹は様々な国を渡り歩く。
悪魔の家畜として扱われる人間、退廃的な生活を送る天使、人との共存を望む悪魔、地の底に封印された堕天使──残酷な呪いを知り、凄惨な日常を知り、少年は自らの能力を平和のために使うと決意する。
悪魔との契約や邪神との接触により少年は人間から離れていく。対価のように精神がすり減り、壊れかけた少年に狼は寄り添い続けた。次第に一人と一匹の絆は親子のようなものから夫婦のようなものに変化する。
狂いかけた少年の精神は狼によって繋ぎ止められる。
やがて少年は数多の天使を取り込んで上位存在へと変転し、出生も狼との出会いもこれまでの旅路も……全てを仕組んだ邪神と対決する。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる