上 下
61 / 113
無限牢獄の生娘

第59話・正室と側室

しおりを挟む

―――コリータ王国―――

「うぅ……眩しい……」
「ご主人様、おはようございますにゃ」

 にこっと笑うクルミ。アリスの部屋から目覚め、起き上がろうとすると体のあちこちが痛い。

「まだ寝てなきゃ駄目だにゃ。傷はふさがってますだにゃ、血が足りてないですにゃ」
「おっ、旦那様。お目覚めかっ!ちゅ!」

 レディがキスをしてくる。……寝起きなのに。クルミが見てるのに。

「シャァァァァァァァァァァ!!」
「ん?」

レディに対してクルミが怒ってる。

「で、なぜレディは動き回れるんだ。相当な深手を追ったはずでは?」
「人魚だから?」

 レディは腕を組み、首をかしげる……わからんのかいっ!!

「そうだ、ミヤビとベリアルさんは!?」
「お二人共、順調に回復しておりますにゃ。もう日常生活は出来るまでになったにゃ。ウェスタン国王様も無事お目覚めになられま……シャァァァァァァァァァァ!」

 クルミよ、僕の腕を噛むな。
 目が覚め、気を失う前の事を少しずつ思い出す。ミヤビの腕を繋げた後、天之叢雲アメノムラクモも複製したのだった。後はアクアがウェスタン国王の呪いを解いてくれたのだろう。

「わかった。1時間後に全員食堂に集合させてくれ。ゼシカも呼んでくれ」
「わかりました。ご主人様、ふぅぅぅぅ!」

 亜人猫族のクルミの喜怒哀楽がかわいい。自己制御できないのだろう。

―――コリータ食堂―――

「ざわざわ……」
「皆さんお静かに!これよりハルト国王より大事なお話があります。国王どうぞ」

静まり返る食堂。

「こほん。まずは皆さん、今回の事件について説明します」

 イスタン帝国の進軍、ウェスタン国王の呪い、王妃の死、天之叢雲、そして剣聖ミヤビ……僕が説明し終わると、ミヤビが立ち上がる。

「この度は我が不甲斐ないばかりに皆さんにご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。我に出来ることがあればこれから少しでも恩返しをしていこうと思っております」

深々と頭を下げるミヤビ。

「わかった。では早速だが……金貨100枚の話は無しで」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?ハルト殿!それは約束が――!」
「その代わりにコリータ王国の騎士団長に任命する」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?我はもう引退した身で――!」
「コリータ王国は本日より、最低限の防御軍隊の結成をします。ミヤビ騎士団長、そしてギル副団長にて編成を行うように」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?旦那!俺もですかいっ!」

ギルが聞いてないよ!という顔をする。

「それからウェスタン国王にご提案があります。サルトこっちへ」
「なんじゃ?改まって……」
「ご存知の通り王妃は亡くなられ、これよりさらにイスタン帝国の進軍は増えるかと思われます。そこでご提案です。僕はゼシカを正室に迎え、サルトを養子に迎えます」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?ハルト殿!そそそれはけけけっこん――!」

皆、同じ反応するなぁ……。

「ウェスタン国王には引退表明をして頂き、サルトを第一王子としチグサを婚約者と致します」
「しかし……いや、待てよ。それなら誰も争う火種がなくなるのか。でもゼシカを嫁に出す条件となると……」
「ハルトっ!大好きっ!」
「ちっ!」

 ちっ!言うな。レディとメリダの舌打が聞こえた。そしてサルトが胸を張り、ウェスタン国王の前に立つ。

「お父上。いえ、ウェスタン国王様。ぼくは今回の件で、母を殺したイスタン帝国を憎んでいました。だけどハルトさんに教えてもらいました。憎しみからは何も生まれない、生きてる限り誰かのために尽くせと。それはぼくの中では……チグサなんです。チグサのために生きていきたい。是非、善処して頂けないでしょうか」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?サルト?え?私が?え?」

 真っ赤になるチグサ。すっかり男らしくなったな、サルト。

「わかった。帰って急ぎ会議を行う、善処しよう」
「ありがとうございます」

さて、これからが本番だ。

「さて、ここからが本題です。今回の件も含めてこれからの事をお話します。僕がこの国を作ったのは……」

そう、それはアリスに言われた6人の神の子を作る為。

「……ですのでゼシカを正室に迎えたいと考えます。そして今後は側室にレディ、メリダ、エル、リンをと考えています。まぁ、あくまで個人の意見なのでこちらは追々考えたいと思います」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!」
「イヤァァァァァン!」
「あぁぁぁぁぁぁぁ!」
「いや、その、マジで?照れる」
「……ギャッ!」
「シャァァァァァァァァァァ!」

ギャッ!って何だ。

「うむ、聞いての通りだ。これは創造神であるわしの意見でもある。皆、ハルトに従え。この大陸を守るためじゃ。それに……もう交尾もほとんど済んでおるっ!!」

ダンッ!!机を叩くアリス。

「……いや。ちょっと待て、アリス今なんつった?」
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 騒然となる食堂。してないとは言わないけど、してるとも言い難い……半分半分だ。

「皆様!静粛にっ!!」
「こ、こほん。まだ決定ではなく、順序立て時間をかけてそうしたいなぁ、という感じなので。ほらっ!ゼシカに子供が出来たと勘違いしたとかではないから!ははは……」

疑いの視線をアクアが送ってくる。

「うっ……。それからこの城の城外四隅に、剣術訓練場、魔法訓練場、農業漁業育成所、製錬育成所を開設したいと思います。そして城の見張り塔内に教育施設も作り、子供達の教育を始めます。管理運営をアクア、ミレーさん、ベリアルさんにお任せしたい」
「ほんとですかっ!!一度、先生をしてみたかったんです!」
「意義はありません。全力でやります」

ミレーさんもベリアルさんも乗り気だ。

「え!いくらかかるの!えっと……あれがこうなって、それがあぁなって……もう頭がパンクするぅぅぅぅ!!」
「アクア!大丈――!?ギャァァ!」

 アクアの感情が高まると魔法壁が生成され、近付いたギルがふっ飛ばされた。

「合わせて、ミレーさんとベリアルさんはコリータ王国を拠点に音楽活動をして欲しい。マネージメントはベリアルさんに任せる。エルはエルフ族で音楽に精通する者を募集してくれ、エルフ族で音楽隊を結成したい」
「はい、すぐに募集します。あ……あなた。ポッ」
「ありがとうございます。皆様、改めてよろしくおねがいします!」
「ミレーと共に頑張ります。お任せください」

パチパチパチパチ……!

「リン、アカシア、サウスタンの進捗状況は?」
「はっ。国王様、ほぼ修繕改築終えております」
「ハルト!すごいんだよっ!図書館に出来た大穴と新しく出来た温泉がね!観光なんとかターンで人がいっぱい来てる!」
「結果オーライだな。ところでプリンの容態はどうだ?」
「さっきからあそこでプリンを召し上がっておられますが……」
「え?」
「ん?んぐうん?ちゅるん。何?」
「怪我は治ったんかい!?」
「さすがわしのプリン!かわゆいのぉ」
「ねぇさまぁぁぁ!」

 がしっと抱き合うアリスとプリン。スリスリスリスリ……。

「も、もういいぞ、プリン。ちょっと離れ……」
「いやですぅぅぅ!」
「ピキッ!ありすちょっぷ!!」
「ふぎゃぁぁぁぁ!!」

はぁ、もうほっとこ。

「それでは各自、行動を起こしてくれ!以上!」
『はっ!!』

 皆それぞれ、打ち合わせをする者、急いで食堂を出る者、バタバタと動き出した。

「ふぅ、疲れた」
「ご主人様、お疲れ様ですシャァァァァァァァァァァ!」
「いててて!」

クルミにまた腕を噛まれる。

「クルミの名前が無かったにゃ!私もしつそくになりたい!」
「側室ね。わかった、わかった。考えておくよ。よしよし」
「ゴロゴロゴロゴロ……」


クルミの頭を撫でてやるとようやく大人しくなった。

「また忙しくなりそうだな……」

 その前に僕はとりあえず数日間の養生を余儀なくされた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...