55 / 113
ホンモノと複製
第54話・ノストラザマスの大予言
しおりを挟む―――ネプチューン神殿―――
僕達は今、魔王城にいた。ここは、ネプチューン神の作ったの元海底神殿である。
「エルか?そっちはどうだ?そう、そうなんだ。じゃぁ、エルはプリンを連れてコリータへ行けるか。お菊は魔王城に来てくれる?うん、そう。よろしく。あ、コリータまでは転移魔陣を……」
ネプチューンがしつこく聞くので、お菊ことマザードラゴンを魔王城に呼んだ。
「マリン?あぁ、今大丈夫?エルとプリンがね。うん、そう。で、リンとアカシアをサウスタンへ向かわせてくれる?転移魔陣でエルたちが……なんだって!わかった。お菊が到着次第向かう。とゼシカをウェスタンに。うん。あ、あと、念のためにドムドさんに……」
「……のぉ、アリスよ。あの御人は一人言を言う病なのか?」
「ズズズ……うむ、あやつは痛いやつなのじゃ」
聞こえてるぞ。
「レディはここでお菊が来るのを迎えてくれるかい?カエデは一緒にウェスタン城に行ってほしい」
「ウェスタンに?」
「ふぅ。イスタン帝国がまた挙兵したらしい。しかも魔物や亜人も含む編成だ。で、このタイミングでウェスタン国王が倒れた」
「またやっかいなタイミングじゃの」
「僕とアリスとカエデはお菊が着き次第、ウェスタンに向かう。向こうでゼシカ達と合流する予定だ。カエデにイスタン帝国の偵察をお願いしたい」
「旦那様、わしも加勢しなくても良いのか?」
「いや、レディはここにいてくれ。と、出来ればこの城にサキュバス達を呼んで1度掃除しようか。ははは……」
「わかった。ネプチューン神様は天界へ帰られるのか?」
「どうしようかのぉ。今さら帰っても、居場所がないかもしれんしのぉ、それにマザーを置いては帰れないのぉ」
優柔不断!?
「そういえば、あの大岩戸は何のために作られたんだ?」
「おぉ、そこに部屋があるじゃろ?そこの部屋はわしとマザーの寝室でな。寝室から西の洞窟までの散歩用の地下道じゃ。さしずめ、大岩戸は裏口じゃな」
「へ、へぇ……そうなんだ……」
『あんなに頑張って開けて来たのに裏口なんだ』レディも僕と同じ表情を浮かべてる。
「お菊が来るまで少し休むよ。夜にはウェスタンに出発する」
「わかり申した。夕食を何か調達しておこう」
「レディありがとう。よろしくね」
僕は客間のちょっとホコリっぽいベッド横になる。すぐに眠気に襲われ意識が無くなった……。
―――異次元空間アリスの部屋―――
「うぅ……あれ?夢?ここはアリスの部屋か?」
「よぅきたな。そこの若いの」
毎回、誰設定なの。
「今回のプリンの件、世話になった。かたじけない」
珍しくアリスにお礼を言われた。そしてきりんがいつもの様にお茶を淹れてくれる。
「なぁ、アリス。神の子を6人集めると魔法結界が出来るんだよね?その……世界が滅ぶ前にとかって言ってた」
「うむ。ハルトがガッコウで死んだ後、数年もしないうちに世界は滅んだ。未曾有の危機は数百年、数千年単位でやってくるのじゃ。それを防ぐためにハルトをこの世界に復活させた。経本の最後のページにその予言はある……」
「あぁ、あの絵本の」
「うむ。よく聞けよ――」
そう言うとアリスは経典の最後のページを開く。
『1999の年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる。アンコロモチの大王を復活させるために』
「ノストラザマスの大予言じゃねぇか。もう大分、過ぎてるだろうよ」
「そうじゃろうか?わしの予想では隕石が降って……」
「ズズズ……」
お茶をすするきりんが微笑んでる姿を見ながら意識が遠のいていった。
―――ネプチューン神殿客間―――
「うぅ……」
なぜか寝起きが悪い。ノストラザマスの夢を見ていたような錯覚がする。
「……旦那様、旦那様。もうすぐ到着します。魔物はいないのでございますか?」
「あぁ、お菊か。お疲れ様、魔物は大丈夫だ。2階の王広間に来てくれる?」
「わかりました」
外から羽ばたく音がする。さて、ネプチューンに挨拶してから行くか。
僕は客間を出て、王広間へと向かう。
「ぎゃははは!ネプチン!ネプチン!」
「アリス様!ネプチンは失礼かと!ぷっ!」
「もう何でも良いわ!ガッハッハッハ!」
お花畑でピクニックしてる風景が見える……。
「ネプチンって何だよ……皆、お菊が来たよ」
「旦那様、お待たせしました。妾に会わせたい人とは!?え?まさか……ネプチンっ!?」
「いや、あんたもネプチン呼びかいっ!」
「マザーか?本当にマザーか?」
「はい……何とご無沙汰か!生きてまた会えるとは……!」
泣き出すお菊を抱きしめるネプチン。
「実は呪いを受けた後、我を忘れサウス山にて死ぬ間際でした。それをハルト殿に救われ……」
「そうじゃったのか!しかし先程、ハルト殿を旦那様と言ってなかったか?!」
「あれは冗談です」
「それならいい」
信じるの早いな。
「感動の再会の所を悪いんだけど、もう1つあってね」
「何じゃ?まだ何かあるのか?」
「ネプチンとお菊はその昔、夫婦?だったんだよね?たぶんだけど、その間に産まれた子供は神族系人魚族と竜族のハーフ。まぁ、数百年だからはっきりした証拠は無いけど……たぶんレディとカエデは子孫だよ」
『なんじゃとっ!!』
3人共しゃべり方が同じだし。カエデは何となくわかっていたか。そんなに驚かない。
「ついでにレディと竜族のリンは親戚かもしれないね」
「なんじゃとっ!!」
「……ザザ……ハルト殿、ハルト殿。ゼシカさんが今、転移魔陣で出立されました。エルさんも戻られてプリンさんもご無事です」
「マリン、わかった。転移魔陣の魔力補給を頼む。ウェスタン国王を転移させる」
「わかりました。用意しておきます。では」
「それでは行ってくるよ。レディ、お菊、ここは頼んだ。攻めてくる者もいないだろうけど」
「旦那様、気をつけての。私のお腹の子も無事を祈っておる」
「そなた!身ごもって……!?」
「めでたいのぉ。婚姻の準備を……」
「行ってきまーす」
僕とアリスとカエデは、きりんに乗ってネプチン城を後にした。
ウェスタン王国に向かう最中にも日は暮れ、夜空に月が昇る。
「……月子よ」
「どうした?アリス」
空に浮かぶ月を見てアリスがつぶやく。
「……いや、何でもない。さて!いっちょやったるか!」
「おぉ!」
こうして僕達はまた新たな試練に立ち向かうのであった。
―第4章完―
5
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる