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ホンモノと複製
第48話・ショウ、スー、シー
しおりを挟む―――エルフの里宿舎―――
気が付くと僕はなぜかベットの中だった。
「いったぁ……」
頭が痛い。手を当てると包帯らしきものが巻いてある。そして横でエルが寝ている。状況がわからない。
すると、ドアをノックする音が聞こえる。
「旦那様、そろそろ魔王城へ行ってくる……」
「レディか……?」
「起こしてしまったか、すまない」
僕は体を起こし見送る。
「いいや、起きていた。気を付けて行ってくれ。何かあれば連絡を……」
「う、うむ。まぁ、あれだ。その何だ。お遊びもほどほどにな。では行ってくる」
そう言い残し、レディが部屋から出ていく。
「お遊び?」
レディの言った意味がわからずドアを見ていると、エルも起きた様だ。
「エル、おはよう」
「ひゃっ!」
「ん?何を驚いて……あっ」
そうか、僕は裸だった……。
「ひゃっ!」
布団の一部が盛り上がっている……僕はそそくさと服を着た。
◆◇◆◇◆
僕達は数日のうちに海岸の城壁、世界樹の植替え、エルフの里の城壁、あとロドリゲス温泉に看板を立てて帰路についた。
『木の桶は投げないこと!勇者ロドリゲス』
中央都市コリータへは、長老に借りた馬車で帰ることにした。僕とアリス、ゼシカ、エル、そしてミレーさん。
ベリアルさんはレディと魔王城へ向かってくれた。彼が帰るまで中央都市でミレーさんを預かることにしたのだ。
エルフの里から馬車でコリータへと戻る道中……。
「そういえば、ハルトが前に言いかけた事はなんじゃったかの。途中で途切れてしまった話」
僕は思い出す。
「何だっけ……あぁ、神の子6人の話ね。アリスは神の子だよな?」
「そうじゃ」
「プリンは?」
「神の子じゃ」
「だよな。もう2人神の子が集まってる。てことよな?」
「ほんとじゃの!」
「勇者の周りには神の子がいなかった。だから諦めて自分で探すことにした。ていうことは、最初からいたら探さなくていいよな」
「おぉぉ~。ハルトは博識じゃのぉ」
博識なんて難しい言葉を知ってるのに、なぜおとぎ話を疑わないのか不思議だ。
「ただレディ、ベリアルさん、ミレーさんが神の血を引いてはいるけど、直接神の子なのかは確認する方法がいるよな。例えば家系図みたいな物とか……本当はDNA検査とかすればわかるかもしれないが、この世界にはまだ――」
「そういう事か、うむ。調べてみるか。ミレー、ちょっと鼻の穴を見せよ」
「鼻!?アリス、ちょっと!鼻を見てもわからないよ!ミレーさん冗談だから、気にしな……」
この面白神様は何を言い出すんだ。
「アリス様、こうですか?」
「ミレーさんも見せるのかいっ!」
「ちょっと痛いけど我慢じゃぞ」
「ん……ん……」
「えぇぇぇ……」
どこから取り出したのか、アリスが綿棒みたいな棒をミレーさんの鼻の奥まで突っ込んでいる。
「はい、これでオケーです。ミレーさんお疲れ様でした」
「アリス先生ありがとうございました」
「急にお医者さんごっこ!?」
それを何やら怪しい検査キットに入れるアリス。
「ふむ……陰性じゃ。神の血は少し混じっておる様じゃがだいぶ薄まっておるな」
「そうですか、お役に立てずすいません」
そんなよくわからないやりとりをしているとレディから念話が入る。
「……旦那様。もしもーし。あら聞こえないのかしら?浮気でもしていたら半殺しにしてさしあげま……」
「レディかっ!」
「あっ、旦那様っ!あぁ、愛しゅうございます。無事に任務完了しましたわ。皆無事でございます」
今、半殺しって言ったような……?
「これから東村に寄って、コリータにもどりんす」
「わかった!こっちも今、帰路の途中だ。ミレーさんも無事だからベリアルさんに伝えておいてくれ!」
「わかりもうした。で、旦那様。そのぉ、愛して……」
僕は静かに念話を切った。また電波が悪かったことにしよう。
「皆、無事に救出できたのだな!良かった!良かった!」
「また忙しくなりそうだね!さぁ、うちに帰ろう!」
僕達はコリータ王国に向かって馬車を飛ばすのであった。
―――コリータ王国―――
「マリン!クルミ!ただいま!」
「はっ!ハルト殿!おかえりなさいませ!」
「ご主人様っ!!!」
帰るなり、クルミが飛びついてきた。よしよし。
『おかえりなさいませ。ご主人様』
「あれ?この子達は奴隷商のとこで保護した亜人……?」
3人共、メイド服を着ている。
「この子達も私と同じで行く所がなくって、住み込み?で働いてもらう事になったのにゃ!ねぇマリンさん!」
「そうなんです。さすがにほったらかしもいけないと思い、ここに住み込みで働いてもらう事にしました。さ、ご挨拶を」
「ショウです。よろしくお願い、です」
「スーです。お願いしたです」
「シーです。です」
「チグサです。よろしくお願い致します」
「皆よろしくね。チグサは違うねぇ。メイド服を着たかったのかなぁ」
ぷぅ、とふくらむチグサ。
「先日、転移魔陣がウェスタン王国で開通しまして、国王も昨日おいででしたよ」
「そうなんだ。またこっちからも行ってみよう。エルフの里にも行けるようになるよ!マリンちょっといいかな」
僕はマリンに亜人の子達の生活費を渡しておいた。住む所はともかく、好きな物を買わせてやってほしいと。あと両親がいるのなら探してやってくれと。
「かしこまりました。その様に致します」
「あ、あと明日、レディとその仲間達がここに来る。明日は宴を開きたい。宴……いや、お祭りにしようか!」
「お祭りっ!?」
キラキラした目でアリスが僕の部屋から飛び出してきた。
「イカ焼きじゃろ!トウモロコシ焼きじゃろ!イカ焼きじゃろ!それから!トウモロコシ焼きじゃ!」
商品2つかよ。どんな祭りなんだ。
「マリン。夕食後、全員そのまま祭りの打ち合わせをする。各員に連絡をお願い」
「かしこまりました」
―――コリータ王国食堂―――
夕食が済み、竜族、ドワーフ族、ギルたちも食堂に集まった。そしてなぜかお菊が宙に浮いている。いや、マザードラゴンだし浮きたい時もあるよね。そっとしておこう。
「皆!まず僕達が留守の間、城の運営をありがとう!助かった!無事にエルフの里を救出、同盟を結ぶことができた。そして奴隷商を制圧し、新しい仲間も加わった。合わせて、明日には魔王城からレディの部下達も到着する。そこでだ!1週間後、初めての祝祭を行おうと思う!」
「オォォォォ!パチパチパチパチ!ピューイ!」
室内で口笛吹くと蛇が出るんだぞ。
「あれ?そう言えばプリンがいない?」
僕はこの時、プリンが大変な事になっていようとは知るよしもなかった……。
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