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神の子と魔法陣

第34話・死神ザクス

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―――ウェスタン王国城内―――

 ウェスタン城内庭園にて、レディと死神ザクスとの激しい戦いが繰り広げられていた。

蜘蛛斬クモギリ!!」

キィィィン!
甲高い音が城内に響く!

「フフフ、サスガ、レディ。ダガ……」

 死神ザクスの細剣がレディに襲いかかる!月は出ているが、剣先が黒くしてあるせいか剣の軌道がほとんど見えない。少しづつ押され、体に傷が増えていくレディ。

「くっ!!円月斬エンゲツザン

キィィィン!
また防がれた!

「オレノケンハ、ヴェンパイアソード……相手ノ血ヲ喰らえば喰らうホド、ツヨクナル」
「ヴァンパイアソード!?あいつはまさか本物の……」

 死神ザクス。あいつが本物のヴァンパイアの血族なのか?いくらレディが剣に自信があったとしても長期戦になれば不利だ。しかし僕が援護しても邪魔になるだけ。何か、何か、何か倒す方法は無いのか!

燕斬ツバメギリ!」
「フンッ!」

キィィィン!
やはり当たらない。肩で息をするレディ。

「くっそ!!風神フウジン

キィィィンキィィィンキィィィン!
甲高い剣音が響くがすべて見切られている!

「オロカナ。オマエは所詮、デキソコナイのヴァンパイア。オマエノ部下ハ、ワタシが全員コロシテヤル。安心してシネ」
「きさまぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 剣が体を貫き……月夜に鮮血が飛び散る。そして……レディの体はゆっくりと倒れていく。

「かはっ!」
「レディィィィ!!!」
「まずいっ!間に合え!完全回復エクスヒーリング!!」
「――ゲホゲホッ!」

 間に合ったか!?息はある!だが、回復が追いつかない?命は助かったが危険な状態だ!

「ジャマヲスルナ。コゾウ」

 見えない剣先が僕に向かい飛んでくる!そして切られた事さえわからず左腕から血が吹き出る。

「痛っ!くっ!!」

 僕は後退りしながら考える。どうするどうするどうするどうする!?レディの剣技は凄まじかった。僕が敵う相手では無い事は明白だ。

「ドウシタ……カカッテコヌノカ……」

 その時レディの持っていた妖刀村正が目に入り、僕は村正を拾い上げる。これだ!魔法剣と妖刀村正の二刀流……!

「せいやぁぁぁぁぁ!!!」

キィィィン!!キンキンキンキンッ!!
激しく斬りつけるが、死神ザクスはすべて受け流す。

「コンナモノカ……」
「ちっくしょうぅぅ!!!」

 その時だった!妖刀村正が激しく光り僕の体が光に包まれる!

「な、なんだこれは……魔力が満ちてくる……」
「騒がしいのぉ……」
「アリスっ!?目覚めたのかっ!」
「ナンダ?コノ気配ハ……マサカ……神カ……」
「なんじゃ……魔力が戻り目が覚めたわ……」
「アリスっ!力を貸してくれっ!」
「うむ……こやつが死神か。ハルトよ、詠唱せよ……」

 アリスはすぐに状況を飲み込み実体化し、詠唱を始める。僕がアリスに続き詠唱を始めると魔法剣が輝き始めた!

『混沌の地より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……その名は!!』
「混沌の地より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……その名は!!」




『!!!聖なる十字架ルシファー!!!』




魔法剣が激しく輝き出すっ!!

「クッ!マブシィィィ!!メガァァァ!」

 一帯が昼間のように明るくなる。そうかヴァンパイアは異様に目が弱いのか。

「マブシィダケカッ!ソンナモノキカヌワ!」

 死神ザクスは目を押さえ、剣を手当たり次第に振り襲いかかってくる。

「愚かものめ……」

 ザシュッ!死神ザクスの剣が僕に……届く前にそれは死神ザクスを貫ぬいた!!

「アガッ!?……ガハッ……!」

 1つの光の十字架がザクスの背中に突き刺さる。そして2つ3つ4つと止まる事なく突き刺さり続ける……!!
 夜空を見上げると空には月に反射する無数の光の十字架が輝いていた。

ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ!!!

「バ……カ……ナ……」

 最後は108つの光の十字架が死神ザクスに刺さり、大きなひとつの十字架になっていく。
 そして……死神ザクスは粉々に砕けて散った。

「ハァハァハァ……終わったか……?レディもなんとか回復が間に合った……」

ふぅと一息ついて僕は座り込む。

「なんじゃ?」
「この魔物達は元々アリスが作ったもの……だったよな?消すことは出来ないのか?」
「それは出来ぬ。元々は確かにわしが作った魔物や人間、エルフじゃ。だが長い時間をかけて神と交わる者、人間とエルフのハーフ等、とっくにわしの作った者とは異なる生態系になったのじゃ。ヴァンパイアもそうじゃな。元々はコウモリだったのかもしれぬ。どこかで神がいたずらしたのかもしれぬな。先程の十字架ではないが神もこの大陸には108人いるらしいからな」

空を見上げるアリス。

「そうか。そんなにいるのか……。しかし今回はきつかったな。相手の攻撃がまったく見えなかった。レディは良くやってくれたと思う……」

 レディの手を握る。この人は本気で戦ってくれた。裏切るかもしれない、という気持ちもどこかであった。でもそんな仕草もなく全力だった。僕はレディを抱きかかえ救護室へと向かった。

「しかし運が良かったのぉ。まさか妖刀の魔力で目覚めるとは思いもせなんだ」
「そう言えばアリスは数時間は眠るって……それに妖刀村正が光った時に魔力がどうとか言ってたけど」
「うむ。妖刀から魔力が流れ込んできての。目が覚めたのじゃ。あの妖刀には意志があるのかもしれんのぉ」
「まさかレディが危険な状態になって、助けようとした……のか」
「かもしれん。不思議な妖刀じゃ」

 今回はレディと妖刀村正のお陰で切り抜けれたのかもしれない。レディの眠る顔を見てそう思った。そしてレディを救護室へ届けると僕も深い眠りに落ちていった……。

―――異次元空間アリスのお部屋―――

目を開けるとアリスの部屋にいた。

「よぅ、目覚めたか」
「ここは……あぁ、いつもの部屋か。僕は気を失ったのか」
「説明してなかったか。いつもの事なんじゃが、わしが使う魔法は神族魔法と言ってな、魔力消費が強大なのじゃ。お主はもう2日寝ている。たぶん3日目には目が覚めるのではないか?」
「そうか。それで毎回深い眠りついてここに呼ばれるのか。そういえばイスタン帝国の進軍はどうなった?」

グラグラ……と部屋が小刻みに揺れる。

「今、ちょうど交戦中じゃよ。ウェスタン国王も帰って来て指揮は上がっておる。負けることはないじゃろう。ちょびひげ眼鏡も捕まえたみたいだしな」

グラグラ……とまた部屋が揺れる。

「そうか。王妃は?」
「うむ。まだ帰ってないみたいじゃな。勝った方につくんじゃろうよ」
「そうか……」

グラグラ……とまた部屋が揺れた。

「ところでアリス、さっきからこの地震みたいなのって何?」
「うむ。そこのきりんが覗いてる窓から外を見たらわかるのじゃが、何と言うか、その……」
「窓?そんな物があったのか。あぁ、たまに宝石からアリス達が覗いてるアレか!きりん!僕にも見せてお・く・れ!」
「い、いやっ!ご主人様は見ない方がっ!?」
「何、何?余計、気になるじゃないか!」

僕は窓を覗き込む。

「……え?」

「いや、あのですね。レディさんがですね。先程来られまして、最初はキョロキョロされていたのですが、そのぉ、急にですね。あのぉ……交尾を始められまして……」

「………え?」

「私達はご主人様の魔力でここを出入りしているので、気を失ったり、寝ているご主人様の部屋から出るのはかなり大変でして……そのぉ、止めることも出来ずにです。はい……」

「……………え?」

 グラグラ……と、部屋がまた大きく揺れた。それと同時に僕の意識は遠くなっていった……。
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