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神の子と魔法陣
第31話・有能な秘書マリン
しおりを挟む―――中央都市コリータ食堂―――
――翌朝。パンの焼けるいい匂いが食堂に広がる。
「おはようございます。ハルト、昨夜はありがとうございました」
誰だっけ?この美人な娘さんは。
「う、うん……おはよう」
「ご飯も頂けてとても美味しかったです。コウモリの干物とか、生のトカゲとか、そういう臭みがまったくありませんでした」
……あぁ、レディか。化粧や、角や、キバや、色々外したのか。これはこれはべっぴんさんですな。
「おはようございます。ハルト。こちらの方は?」
「おはよう、メリダ」
おやおや。お気付きにならないですか。
「レディさん」
「ピキッ!まぁだいらっしゃったのですか?早くお帰りになれよろしいのに。ほほほ。ずぅずぅしい!」
「そっちこそ、何様のつもり?」
昨夜の続きが始まる。メリダてキャラ変わったよね。そんな事を思っていたら、朝食が運ばれてくる。
「そなたこそ!ハルトのなんなのです!」
「私とハルトは……!」
「いただきまぁす!」
ニッポン風いただきます。この国ではこれを定着させよう。2人共、皆にうながされ席に着く。
「いただけます。これ茶色のもこもこはなんですの?貝?」
「レディさん、それはパンだよ。ぼくはこうやってスープにつけて食べるんだ。おいしんだよ」
「こら、そんなお行儀の悪い!リンはあとでマナーを教えないといけませんね!」
「えぇぇぇぇ、ハルトがしてたもーん!」
こらこら。巻き込み事故を起こすな。
「んんんっ!!すごく美味しいっ!!」
人魚って何食べるんだろう。そもそも食べたあとは……いや、今はやめておこう。
僕は皆に昨日のいきさつを話した。彼女はヴァンパイアではなく人魚族で仲間を救うために助けを求めてきたと。
「そうだったのですか。レディさん意地悪な態度を取ってすみませんでした。お詫びに後で町を案内しますわ。南には川もあるので、海ほどではないですが水遊びもできますわ」
「こちらこそ言い過ぎた。メリダすまなかった。川で泳いだことはないな。是非案内してほしい」
ふふ。昨日の敵は今日の……!?そうだ!
「そうだ!レディために養殖をしよう!」
「ようしょしょ?おいしいの?」
リンが不思議そうな顔をする。
「なるほど、養殖か。この地では海水はないから、淡水……。エビとか……川魚ならいけるか。ウェスタン王国の近くなら海魚も養殖できるかもしれぬな」
「あぁ、アリス。どのくらいの期間かわからないけど、レディの部下も来るなら魚は必須な気がする。早速、竜族たちと相談してみるよ!」
「面白そうじゃな。ご飯食べたらわしも行く」
「プリン10個食べたら私も行く」
プリンそんなに食うな。
―――コリータ王国南東―――
城の南東に位置するこの場所は外からの川が引き込んである。エルに頼んで水脈と相性の良い場所を選んだ。
魚釣りが出来る程度の川幅もあるし、人魚族もここなら泳げそうだ。
川から少し離れた場所にロープを張る。川から分岐させた水を養殖場に流し、養殖場で使った水を畑で使えるように分岐させる。余った水はまた主流に戻す様にロープで形作る。そこへちょうどアリス達も来た。
「アーリースー。このロープ……」
「地殻変動!」
アリスが指をパチンッと鳴らすと、養殖場の区画の地面が、ドンっ!と2mほど下がる。
「あ、うん。そうなんだけどまだ説明とか……」
「いらん」
「…こほん。これで水を調整する水門を付けて、水路をきれいにしたら完成だ。そうだ。明日か明後日にはドワーフ達が来る。初仕事は養殖を任せよう」
「わし達は川で游んでから帰るっ!行くぞ!プリン!リン!メリダ!レディ!」
「おぉぉぉぉぉぉ!!」
キャッキャッ、キャッキャ!言ってる。さて、僕は帰ってマリンと来訪の打ち合わせだ。
「空中歩行」
城に帰ると、マリンがお茶を入れてくれた。
「ハルト殿お疲れ様です。早速ですが、ドワーフ族の受入れ、ウェスタン国王の来訪、レディさんの部下の救出、あとはエルさんの動き次第と、飛龍の行方と南東南西の城壁の建設、あと税金の集め方は…」
ズズズズズ…お茶をすすりながら今更思う。国作るのって大変じゃん。
「マリンっ!」
「はいっ!」
「秘書が欲しいっ!採用条件はマリンより優れた頭脳!マリンにはギルドの運営と国の財政を見てもらわないといけない。かといって、今のマリンの変わりが出来る人もいない。早急に募集をかけよう!」
「かしこまりました。ただ秘書ではないですが、私より出来る者なら1名心当たりがあります」
「そうなの?」
「はい。管理という観点でしたら才能は私より、はるかに上かと」
色々言い回しが気になるが会ってから考えよう。
数日後…
あっいう間に時間は流れてゆく。ドワーフ族が国に入り養殖の仕事を任せたり、王広間の内装が完成したり、アリスがプリンのプリンを食べてプリンと喧嘩したりと、まぁ色々あったが、明日いよいよウェスタン国王が来ることとなった。
「ウェスタン国王様ご入場です!」
ゼシカを先頭に、ウェスタン国王、チグサ、各大臣、総勢30名が中央都市コリータに到着した。
「うむ。ハルト殿。見事な城じゃ。たった1ヶ月でまことに見事である。認めよう。そなたがこの国の主にふさわしいと」
「ははっ!ありがたきお言葉。是非、今後とも同盟国として末永くよろしくお願いします」
「わかった。約束だ。ウェスタン王国と中央都市コリータは今後ますますの発展のために協力しよう。まずは、国と国との道の整備からじゃな」
「おにぃちゃん!おめでとう!」
にこっと笑うチグサ。その隣で、にこっと笑うなアリス。目が怖い。よからぬ事を考えてる顔だ。
「時に国王よ。あのおばさんはどうした?」
「アリス様。急なことだったで、隣国のお茶会に行ってていなかったのです」
「やはりな。今日は泊まって明日の朝一で国へ戻るがいい。ハルト。エルときりんはまだ帰らぬか」
「エルは今日帰ってくるはずだけど。どうして?」
「明朝、きりんとウェスタン王国へ向かう。マリン。晩餐の用意じゃ。ごはんを食べながら話そう」
意味深なアリスの言葉に僕たちは違和感を覚えた。
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