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神の子と魔法陣
第27話・紋章と五芒星
しおりを挟む―――中央都市コリータ26日目―――
僕とアリスとプリンは宝物庫へと向かっていた。暗黒龍……いや、邪神トカゲネビュラの住処から回収した宝物に紋章がないか調べるためだ。
「アリス、紋章ってそもそも何だ?」
「うむ、わしが持っていた神器じゃよ。あらゆる邪気から身を守ってくれる」
「そうなのか。でも邪神って言うくらいだから、紋章持ってたらトカゲは自分の家に帰れないよな?」
「しっしっし!そうじゃな。今回は期待が薄いかもしれぬな」
僕達は宝物庫を開けた。そこにはたくさんの黄金や武器、金貨が積み上げられている。そして一番見えやすい場所に紋章があった。
「あったぞ!これじゃっ!」
「あるんかーい!」
邪神は家に入れないじゃないか。アリスは紋章を首にかける。すぅぅぅと薄い光の壁が辺りに広がる。
「うむ。ちょっと力が弱まってはおる様じゃが……うむ、いけそうじゃ。ハルト、この紋章に触れて魔力を送ってくれ」
「こうか?」
僕は他のお宝を見ながら紋章に触れる。
「へぇ、紋章ってやわらかいんだな……おっ、この剣は良さそうだな……後は……」
「えっ!?」
「……ん?やわらかい?」
「ハルト……貴様、乙女の胸を堂々と揉むとはいい度胸じゃな!!」
「え?ちょっと待てよっ!誤解だ!」
ゴゴゴゴゴゴ……!?
ゴツンッ!!
「カハッ……」
手加減のないグーパンが顔面に入る。どんまい、僕。
「ねぇさま!私も触ったことないのに!ハルトだけずるいですわっ!」
「ちょ!やめんか!プリン!あぁれぇー!」
キャーキャー言う2人をよそに僕は宝物の物色を続ける。
「これとあれとそれと……。アリスさんや、お楽しみの所悪いんだが、この宝物を皆に分配しても良いか」
「それはハルトのもんじゃ。好きにせい。わしは紋章以外に興味はない」
「わかった。ちょっとマリンを呼んで来る」
そしてマリンと打ち合わせし、後日お宝を皆で分配することにした。
―――中央都市コリータ27日目―――
国作りは順調に進んでいた。あの砂漠だった場所がすっかり様変わりした。
今日はギルの部下ジルを中心に、城の南西部外壁内への樹木や農地の区画割りを行う。ジルは元農家の出らしい。
アリスたちは東側に丘を作り、エルが果物の木を植えることになった。丘には洞窟も作り、洞窟を好む亜人族がいても大丈夫な様にと追加した。
この外壁内の魔物はすべて狩ってある。そして今後、この国内での狩りや殺しは一切禁止とした。
「主様、おはようございます。今日もいい天気ですなぁ」
「ゲンゴロウさん、おはようございます。今日はお休みですか?」
竜族の族長ゲンゴロウ。町の噴水前でベンチに腰かけている。
「ゲンゴロウさん。飛龍、いや、リンのおじいさんの行方はわかりましたか?」
「いいえ、あの一件以来どこへ行ってしまったんだか。引き続き探させます。ところでドワーフの集落より昨夜連絡があり、近々こちらへお伺いしたいと言っておりました」
「ほんとですか!助かります!是非!」
飛龍はプリンが一度見かけている。そして邪神トカゲネビュラに操られてる竜族の中にもいなかった。どこに行ってしまったんだろう。飛龍は引き続き捜索してもらうとして、ドワーフ族との接触が先となった。マリアの像の件もあるし妥当だろう。
「ゲンゴロウさん、明日城に来てもらえますか。また案内役を行かせます」
「わかりました。わしもドワーフの話をまとめておきます」
ゲンゴロウさんと別れ、町を見て回る。そして僕はガッコウから城下町を眺めていた。
魔導学校、製錬学校、剣術学校、農業学校も欲しいな。見張り台内を改築してみるか。後はこの国の名物になる物、そして外の国に売れる物も欲しい。
「何をブツブツ言っておるのじゃ?クチャクチャ」
イカをほおばりながらアリスが来た。
「いや、この城を発展させるためのアイデアをね、色々と考えてた」
「うむ。ハルトにはまだ五芒星の話はしてなかったな」
「五芒星?」
「この中央都市を中心に北、東、西、南東、南西、そしてここ中央の6箇所に神の血を持つものを置きこの紋章を使うとじゃな、大結界が張れるのじゃ」
「へぇ、そうなんだ」
「ゼシカを西、東にはエル、南にはリン、中央はメリダの子で良いと思うておる」
「ふぅん、そうなんだ……」
「お主の子の話じゃぞ?」
「へぇ……え?なんつった?」
「わしは!最初から!6人の神の血を引く子を!お主に作らせるのが目・的・じゃ!」
「あぁ、そう言えばそうだったなぁ……」
完全に忘れていた。
「ねぇさま~♪なにしてるの~お茶しましょうよ~♪ルンルン~♪」
あぁ……お花畑が近づいてくる。
「そもそもじゃ!お主はメリダと!その……あの……チュ……チュウをしたではないか!もう子供は産まれるんじゃないのか!えぇ!まだなのか!おいっ!」
「え……?アリス、見てたの……」
「ねぇさまっ!楽しいお話してるのね!ちょっとお耳をいいかしら!」
何やらゴニョゴニョとアリスの耳元でささやくプリン。急に顔が赤くなっていくアリス。
「そっ!?そんな事をしないと子供は出来ぬのか!チュ、チュウをしたら天から授かると!教典書いてあっ……あわわわ……」
卒倒しそうなアリスをプリンが支える。
「よいしょっと。ねぇさまいくつになってもかわいいのね!さっ!お茶にしましょう!」
手を引かれ、なぜか僕もお茶会に連れていかれる。たぶんあれだ……メリダとの事を色々と聞かれる。最悪だ……。
僕は頭のスイッチを現実逃避モードに切り替えた……。
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