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国作と往古来今

第26話・未来

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―――中央都市・旧リベラル―――

 目が覚めるとそこはいつものコテージだった。まだ夢を見ているような感覚だ。
 だけどこれでスッキリした。僕は何の目的の為とか、そんなことばかり考えていたけど、この大陸で生きていくのが僕の使命だと思えた。これが現実。夢でも幻想でもない、ここが僕の生きる場所。ここで新しい未来を作る。

「まぁ、あれだ。難しく考えるな。今まで通りじゃ」
「そうですわ。ねぇさまの言うとおりですわ」
「ご主人様。私らは今、ここにいます。忘れませぬよう」

僕はうなずき、立ち上がる。

「よし!まずは国を作ろう。そして皆が住みやすい世界を作ろう。僕達は歩きだすんだ!未来へむかって!」

 歯が浮く様なセリフを堂々と言ってのけた。どや顔をしようとすると、アリスに膝カックンされる。

『カックン』
「いってっ!」
「ハルト、ちょっと待たぬか!まずはご飯を食べてからじゃ」

 カックンとなった僕を指を指して笑うプリン。誰がこの子を教育したんだかっ!

「旦那!ちょっと来て下さいっ!」
「はぁい……すぐ行きます……」

 そして僕達の国の名は「中央都市コリータ」に決まった。アリスの名前のアリス・ウメ・コリータから付けた。
 そう言えばアリスの話には出て来なかったが、結局『うめこ』て誰なんだ……?

―――中央都市コリータ20日目―――

「旦那っ!これでパーツは出来ましたぜ!いよいよですね!」
「あぁ、これでようやく城壁が組める」

 城壁のパーツが完成した。全体の100分の1程度の長さだ。これを組み立てて1つの城壁を作る。城壁の中は部屋や階段、排水など様々な用途で使える様に複雑になっている。
 しかし1個出来てしまえば工事の8割が終わったと言えよう!マリンとギルの部下のアカシアが中心になって内装等の細かい設計図を書いてくれた。アカシアは元建築関係の仕事をしていたらしく、知る得る限りの知識をコリータの国に詰め込んだ。

「それでは発動いたします!THE複製ザコピー!」

城壁のパーツが2つになる!

「オォォォォォ!」

 上がる歓声。これをエルが呼んだ風の精霊さんにちょっと浮かせてもらい、ゴーレム君達が隣のパーツにはめ込む。

『ガッコン!』

 見事成功。この状態で内装、強度確認を行い、大丈夫そうならさらにこれを複製していく。そうすると内装も買わなくても増えていく!

「アハッハッハッハ!」

 明後日の方向を向き一人で笑う僕。天才かもしれない。ここまで最低限の材料は買ってきたが、億の金貨が浮いた計算になる。

「旦那!この窓ガラスはこっちで大丈夫ですか!」
「あぁ!そっちに運んでくれ!」

 そして複製を繰り返し……3日後、ついに城壁が完成する!しかも2重構造の外城壁と内城壁だ!

―――中央都市コリータ24日目―――

 今日はエルを筆頭に水路を整備し、ブラックボックスの設置をゼシカ達に、通路の整備をリンを筆頭にしていく。
 竜族の半数は休み、半数は狩りに向かう。そして、マリンとギルの部下達にはコテージの片付けをお願いした。

「アリス準備はいいか?」
「うむ。地殻変動スナアソビ!」

 アリスが指をパチンッと鳴らす。もうこれは魔法とかスキルのレベルではない。大地を変形させ、思いのままの形を作る。アリスにとっては砂遊びみたいなものだと言うが、神だから簡単に出来る技だと改めて認識する。
 中央都市の中央に小高い丘が出来上がる。アリスが階段の形を作ると、僕がコンクリートを複製して流す。プリンが時間を進め硬めていく。そしてきりんが横切り、足跡が付く。よくあるやつだ。
 この丘の上に僕達の城を作る。設計図ももう出来ていた。

鋳造合成キャストシンセンス!」

 丘の上に城が形成されていく。コンクリート製の見たことある懐かしい形……。

「アリス……ようやく出来たよ。ガッコウだ」
「……礼を言うぞ。ハルト」

 涙ぐむアリス。アリスはこのガッコウの思い出を幾百年も追いかけてきたのだろう。

「内装は明日するとして、今日はこのくらいにしとくか。さ、皆で荷物をガッコウまで運ぼう!」

 丘の上のガッコウには僕、アリス、プリン、きりん、ゼシカ、エル、リン、クルミが住むことになる。
 丘の上から見える東側が亜人族、そしてサウスタンの町から避難して来た竜族達。西側には人間族。最終的にはどんな族性であっても受け入れたいと思っている。
 マリンには冒険者ギルド、商業ギルドの長として働いてもらうかたわら、中央都市コリータの財政を任せた。ギルたちは城壁内の見張り台に近い部屋に住んでもらう。
 アカシアには別途修理工房を用意し今後の建物の整備を任せた。そしてエルバルト教会と行く先がない孤児たちの受入れ施設を併設した教会を建てた。マリアの像を作れる職人がまだ見つかっていないので、そこだけ空いている。
 まだ家やお店がないので殺風景だが、内壁内には店などを中心とした商業、ギルドや役所などの共有施設、外壁内には工業、農業、酪農などを考えている。砂漠化していたこの都市の砂はほぼ使いきり、すべて城壁に変わった。

「ようやくここまで出来たか……」

 その夜はガッコウに皆を呼び、バーベキューをし夜遅くまで騒いだ。

―――中央都市コリータ26日目―――

 やわらかい感触が顔にある。右手にもある。なんなら左手は動かしている。ゼシカのとリンのと、これはメリダのか。だいたいわかるようになってきた。いつもの朝だ。
 ようやく水路も整備が済み、通路もできた。城内を見回っているとクルミが呼びにくる。

「ご主人様!竜族が帰って来ましたにゃ!」
「分かった。すぐ行く」

―――ガッコウ内応接間―――

「すまない、待たせた。首尾はどうだった?」

竜族が頭を下げる。

「はっ!サウスタンの町、村、すべてを周り生存者確認と数人の生き残りを連れて帰りました。暗黒龍の住処にあったお宝はすべて回収、先ほど宝物庫にいれております。ご確認ください。あとはドワーフの情報ですが、以前サウス山が噴火した際に村が焼け、ほうぼうに逃げたそうです。ここから南東10キロの所にも小さな集落があるそうです」
「わかった、報告ありがとう。しばらくゆっくり休んでくれ。各自部屋はマリンに聞いてくれ」
「かしこまりました」

礼儀正しい竜族だ。深々頭下げ部屋を出ていく。

「アリス、暗黒龍のお宝見に行くか?」
「うむ。ちょっと見てみるか」

こうして僕の国作りも佳境を迎えるのであった。

―第2章完―
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