上 下
24 / 113
国作と往古来今

第23話・竜族との再会

しおりを挟む

―――中央都市跡コテージ―――

 ――目が覚め、気が付くとベッドで横になっていた。コテージの天井が見える。

「ハルトっ!気が付いたのねっ!!」
「エル……?」

 ぎゅっとエルが抱きついてくる。夢であって欲しいが、徐々に気を失う前の記憶がよみがえる。そして無意識に涙が出てきた。

「……皆は?」
「うん。さっき、マリアさんの火葬が終わって……ハルト3日も目を覚まさないんだから……」
「3日?そんなに?そうか、毒を喰らったのか……」

エルが涙声で言う。

「ハルトまで……連れて行かないで!って精霊にお願いしてた……ずっと!お願いっ!て……」

 涙がこぼれて止まらなくなったエルは泣き崩れた。ずっと看病してくれていたのだろう。エルの頭をそっとなでる。

「ごめん、心配かけた。もう大丈夫だから」
「……うん」
「皆の所へ行こう」

僕はエルに肩を借り、皆がいるリビングへと向かった。

「ハルト!良かった!気が付いて……」

 ゼシカが気付き、皆がこちらを振り向く。
 僕は……メリダに……合わせる顔がない。と、メリダが立ち上がり僕の方へと来る。僕がいながらマリアを守れなかった……1発2発殴られて当然か。と覚悟を決める。

「おかえりなさい……おかえりなさい。無事で良く戻られました……!」

 涙声で抱きついてくるメリダにあっけに取られる僕。殴られても罵られても仕方ないと思っていた。

「メリダ……。マリアの事……本当にすま……」

言いかけると、メリダが僕の口を手で押さえる。

「ハルトのせいじゃないわ。おねぇちゃんは最後『ギルを守れて幸せだった』……て言ってたそうよ。大丈夫、誰もあなたのことを恨んでなんかいないわ」
「そうですぜ、旦那。俺が不甲斐ないばかりにこんなことになって、こっちが謝るべきだ。本当に迷惑をかけてすまなかった!」

 頭を下げるギル。そしてやさしく微笑んでくれるメリダ。

「2人共……」

 涙がまたこみ上げてくる。
 あらかたの話はアリスから聞いたそうだ。帰ってきた日は皆泣き崩れたが、泣いていてもマリアは戻ってこない。そして泣く事でリンや僕に責任を背負わせるのは間違ってると……アリスに怒鳴られたそうだ。『お前らはマリアの分まで生きよ、そして生きてる者でマリアを見送ってやれ』……と、アリスありがとう。

「皆、ちょっと聞いてくれないか」

僕は落ち着くと話始めた。

「メリダには話したんだが、この国に教会を建てようと思う。エルバルト教会を。そこで本当はマリアとメリダに司祭を任せようと思っていた。だけど、マリアはもういない。そこでマリアを忘れない為にもマリアの像を作り、崇拝したいと思う。どうだろうか?お墓もその教会に作ろうと思う」
「うむ、いいのではないか。エルバルト教会が何の神を崇めていたかは知らぬが、エルバルト教会を愛していたマリアは適任だと思うのじゃ」
「そうね……おねぇちゃんとずっとこれからも一緒にいられる気がする。賛成だわ」
「旦那がそう言ってくれるなら、毎日通いますぜ」
「わかった。守護像はマリアで決定だ。彫刻の得意な人を探そう。そしてマリアにもずっとこの国を見守ってもらおう」
「はい……」

また涙がこぼれるメリダ。

「そうじゃなぁ……彫刻ならドワーフの親父が得意じゃったな」
「アリス、ドワーフは確か音信不通になっているって」
「うむ。後でプリンに詳しく聞いてみるかの」

 ドワーフ族は音信不通だとプリンから聞いてる。まずは情報収集からだ。
 僕達はその後、皆でご飯を食べたくさんの話をした。明日からはまた国作りの再開だ。

「くぅぅぅん!はぐはぐはぐはぐ……」

―――中央都市10日目―――

 ギル達には引き続きゴーレムと基礎工事のお願いをし、ゼシカ、エル、リンの3人には周辺の警備と狩りをお願いした。
 そして僕は朝から追加のコテージ作りをしていた。サウスタンの避難民の為の物だ。リンの祖母も無事に救出できた。僕が気を失ってる3日間、テントもなく、馬車や屋外で寝泊まりをしていたらしい。大変申し訳なかったと思う。
 マリンの段取りが良く、順調に工事は進み助かっていた。体調がまだ戻らない僕の身の周りの世話はクルミがしてくれてる。

「クルミ、そっち持ってくれるかい?」
「はい!ご主人様!ん……?向こうから誰か来るにゃ!」
「誰だ?こんな辺境地に。しかも大人数だな」
「すみませんが、この土地の主殿ですかな?」

ボロボロの服を来た老人。

「今は……そうですね。僕がこの国の主です」
「これはこれは申し遅れました。わしはゲンゴロウ。わしら南の竜族の民ですじゃ。何者かに操られて町を失い、こうして町を探して旅をしています。どうかお恵みを頂けないでしょうか?」
「竜族!?忘れてたっ!」
「はて?わしらは気が付くと羽根が傷付き飛ぶ事も出来ず、何が何やらわからぬままここまで来ましたのじゃ」

僕は慌てて事情を説明した。

「何とっ!?あなた様があの暗黒龍を倒して下さったのですか!何とお礼を言ったらいいのやらっ!」

 話を聞きつけて、サウスタンの避難民達もやってくる。家族の無事を喜ぶ者や、悲しむ者、それぞれの再会をした。

完全回復エクスヒーリング!!」

竜族達の傷が癒えていき、歓声があがる。

「皆で話合ったのですが、わしらは今後あなた様にお仕えしとうございます。いかがでしょうか」

人手は欲しいし、悪い人達ではなさそうだ。

「わかりました。是非、ご協力お願いします。早速ですが……」

 サウスタンの避難民20名と竜族100名。
30名ほど戦闘ができる者を集めて、サウスタンに再度行き生存者、状況確認、暗黒龍の根城の確認をお願いした。30名ほどはギルの元国作り、30名はゼシカの狩りの手伝い、残りの高齢者、子供達は生活するための準備に充てる。
 マリンにあらかたの状況を伝え、僕はコテージで少し休むことにした。

「あら、あなたおかえりなさい。今、お茶煎れますね」
「あぁ、メリダありがとう。アリスはいるかい?」
「アリス様はまだおやすみされていますよ?」
「そうか。しょうがないやつだ」

 ふぅ、と椅子に腰をおろす僕。……あれ?今『あなた』ってメリダが言わなかったか?……さすがに気のせいか。

「あなた、今日もいい天気ですわね!さっ!洗濯洗濯!」

……あ。

「う、うん。そうだね」

外では国作りの工事がようやく再開した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...