異世界ざこぴぃ冒険たん

ざこぴぃ。

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国作と往古来今

第23話・竜族との再会

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―――中央都市跡コテージ―――

 ――目が覚め、気が付くとベッドで横になっていた。コテージの天井が見える。

「ハルトっ!気が付いたのねっ!!」
「エル……?」

 ぎゅっとエルが抱きついてくる。夢であって欲しいが、徐々に気を失う前の記憶がよみがえる。そして無意識に涙が出てきた。

「……皆は?」
「うん。さっき、マリアさんの火葬が終わって……ハルト3日も目を覚まさないんだから……」
「3日?そんなに?そうか、毒を喰らったのか……」

エルが涙声で言う。

「ハルトまで……連れて行かないで!って精霊にお願いしてた……ずっと!お願いっ!て……」

 涙がこぼれて止まらなくなったエルは泣き崩れた。ずっと看病してくれていたのだろう。エルの頭をそっとなでる。

「ごめん、心配かけた。もう大丈夫だから」
「……うん」
「皆の所へ行こう」

僕はエルに肩を借り、皆がいるリビングへと向かった。

「ハルト!良かった!気が付いて……」

 ゼシカが気付き、皆がこちらを振り向く。
 僕は……メリダに……合わせる顔がない。と、メリダが立ち上がり僕の方へと来る。僕がいながらマリアを守れなかった……1発2発殴られて当然か。と覚悟を決める。

「おかえりなさい……おかえりなさい。無事で良く戻られました……!」

 涙声で抱きついてくるメリダにあっけに取られる僕。殴られても罵られても仕方ないと思っていた。

「メリダ……。マリアの事……本当にすま……」

言いかけると、メリダが僕の口を手で押さえる。

「ハルトのせいじゃないわ。おねぇちゃんは最後『ギルを守れて幸せだった』……て言ってたそうよ。大丈夫、誰もあなたのことを恨んでなんかいないわ」
「そうですぜ、旦那。俺が不甲斐ないばかりにこんなことになって、こっちが謝るべきだ。本当に迷惑をかけてすまなかった!」

 頭を下げるギル。そしてやさしく微笑んでくれるメリダ。

「2人共……」

 涙がまたこみ上げてくる。
 あらかたの話はアリスから聞いたそうだ。帰ってきた日は皆泣き崩れたが、泣いていてもマリアは戻ってこない。そして泣く事でリンや僕に責任を背負わせるのは間違ってると……アリスに怒鳴られたそうだ。『お前らはマリアの分まで生きよ、そして生きてる者でマリアを見送ってやれ』……と、アリスありがとう。

「皆、ちょっと聞いてくれないか」

僕は落ち着くと話始めた。

「メリダには話したんだが、この国に教会を建てようと思う。エルバルト教会を。そこで本当はマリアとメリダに司祭を任せようと思っていた。だけど、マリアはもういない。そこでマリアを忘れない為にもマリアの像を作り、崇拝したいと思う。どうだろうか?お墓もその教会に作ろうと思う」
「うむ、いいのではないか。エルバルト教会が何の神を崇めていたかは知らぬが、エルバルト教会を愛していたマリアは適任だと思うのじゃ」
「そうね……おねぇちゃんとずっとこれからも一緒にいられる気がする。賛成だわ」
「旦那がそう言ってくれるなら、毎日通いますぜ」
「わかった。守護像はマリアで決定だ。彫刻の得意な人を探そう。そしてマリアにもずっとこの国を見守ってもらおう」
「はい……」

また涙がこぼれるメリダ。

「そうじゃなぁ……彫刻ならドワーフの親父が得意じゃったな」
「アリス、ドワーフは確か音信不通になっているって」
「うむ。後でプリンに詳しく聞いてみるかの」

 ドワーフ族は音信不通だとプリンから聞いてる。まずは情報収集からだ。
 僕達はその後、皆でご飯を食べたくさんの話をした。明日からはまた国作りの再開だ。

「くぅぅぅん!はぐはぐはぐはぐ……」

―――中央都市10日目―――

 ギル達には引き続きゴーレムと基礎工事のお願いをし、ゼシカ、エル、リンの3人には周辺の警備と狩りをお願いした。
 そして僕は朝から追加のコテージ作りをしていた。サウスタンの避難民の為の物だ。リンの祖母も無事に救出できた。僕が気を失ってる3日間、テントもなく、馬車や屋外で寝泊まりをしていたらしい。大変申し訳なかったと思う。
 マリンの段取りが良く、順調に工事は進み助かっていた。体調がまだ戻らない僕の身の周りの世話はクルミがしてくれてる。

「クルミ、そっち持ってくれるかい?」
「はい!ご主人様!ん……?向こうから誰か来るにゃ!」
「誰だ?こんな辺境地に。しかも大人数だな」
「すみませんが、この土地の主殿ですかな?」

ボロボロの服を来た老人。

「今は……そうですね。僕がこの国の主です」
「これはこれは申し遅れました。わしはゲンゴロウ。わしら南の竜族の民ですじゃ。何者かに操られて町を失い、こうして町を探して旅をしています。どうかお恵みを頂けないでしょうか?」
「竜族!?忘れてたっ!」
「はて?わしらは気が付くと羽根が傷付き飛ぶ事も出来ず、何が何やらわからぬままここまで来ましたのじゃ」

僕は慌てて事情を説明した。

「何とっ!?あなた様があの暗黒龍を倒して下さったのですか!何とお礼を言ったらいいのやらっ!」

 話を聞きつけて、サウスタンの避難民達もやってくる。家族の無事を喜ぶ者や、悲しむ者、それぞれの再会をした。

完全回復エクスヒーリング!!」

竜族達の傷が癒えていき、歓声があがる。

「皆で話合ったのですが、わしらは今後あなた様にお仕えしとうございます。いかがでしょうか」

人手は欲しいし、悪い人達ではなさそうだ。

「わかりました。是非、ご協力お願いします。早速ですが……」

 サウスタンの避難民20名と竜族100名。
30名ほど戦闘ができる者を集めて、サウスタンに再度行き生存者、状況確認、暗黒龍の根城の確認をお願いした。30名ほどはギルの元国作り、30名はゼシカの狩りの手伝い、残りの高齢者、子供達は生活するための準備に充てる。
 マリンにあらかたの状況を伝え、僕はコテージで少し休むことにした。

「あら、あなたおかえりなさい。今、お茶煎れますね」
「あぁ、メリダありがとう。アリスはいるかい?」
「アリス様はまだおやすみされていますよ?」
「そうか。しょうがないやつだ」

 ふぅ、と椅子に腰をおろす僕。……あれ?今『あなた』ってメリダが言わなかったか?……さすがに気のせいか。

「あなた、今日もいい天気ですわね!さっ!洗濯洗濯!」

……あ。

「う、うん。そうだね」

外では国作りの工事がようやく再開した。
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