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国作と往古来今
第21話・邪神トカゲネビュラ
しおりを挟む―――中央都市6日目―――
区画のロープ引きも終わり、今日からは基礎の穴掘りが始まる。
「今日からは基礎を作るための穴掘りをする。さすがに手掘りだと時間がかかるので、この方達を呼んだ!どうぞ!」
ドスン!ドスン!
「ゴーレム君です!」
パチパチ……少しだけ拍手が起こる。さっきここで召喚したから、皆見てたんだけどね。茶番に付き合ってくれてありがとう。
ゴーレムは全部で4体。それぞれに指示役をつけて城壁基礎の穴掘りに向かってもらった。ロープも張り終えてるし、穴掘りが終わればようやくこの砂漠ともおさらばだ!
僕とアリスは今日は休みで、マリンの時間割通りに順調に進んでいる。
僕達がコテージでゴロゴロしていると……。
「アリス様、ハルト、いつもお疲れ様。お茶煎れましたよ」
「あぁ、メリダありがとう」
砂漠に女神だな。最近おねぇさんに似てすごく綺麗になった気がする。出会った頃は痩せてたせいか不健康そうな感じがしていた。
いつの間にかアリスがメリダの膝枕で寝ている。
「あらあら」
「エルバルト教会のこと、マリアから聞いたよ。大変だったみたいだな」
「えぇ。父と母が残してくれた大事な教会。全部燃やされてしまい、もう何も残っていないと……ねぇさんが言っていました」
「あのさ、この国に教会を建てようと思うんだけどマリアとメリダで管理してくれないか?」
メリダが「はっ!」と口に手を当てると目から涙が溢れてくる。
「ハルト……う、うれしい!」
「こっちに来てから考えてたんだ。設計図にももう追加した。帰る所が無いんだろ?ずっと気になってて。僕は1度……君を刺した。その償いをさせて欲しい。アリスがいなかったら、あの時からマリアは1人ぼっちだったんだ」
僕は頭を下げる。頭を横に振りながら泣くメリダ。涙が降ってくるので、顔を拭くので忙しいアリス。いや、起きなさい。
しばらく泣いていたが落ち着いた様子のメリダ。僕も話をして胸のつっかえが取れた。
そしてアリスは顔を洗いに行った。さて、明日からは……!?
「ハルトっ……ん……!」
突然メリダが抱きつき、僕にキスを……あぁ……。
「ありがとう。だいすき」
「え……」
そのまま倒れ込む。僕がメリダに手をかけ抱こう……とした瞬間!
ダダダダダッ!と、走ってくる足音で2人共慌てて起き上がる。
「聞け!ハルト!プリンから連絡じゃ!」
『ね、ねぇさま!大変です!今、そちらに向かって帰っていたのですが!暗黒龍が追って来ています!ドラゴンの群れを引き連れていて――その数100匹はいるかとっ!』
「暗黒龍とドラゴン100匹!?」
『はぁはぁ!何とか食い止めながら向かいますが、持たないかもですわっ!』
「わかったのじゃ!こちらもすぐ向かう!ハルト用意せい!」
「わかった!メリダっ!皆をコテージに呼んで!いつでも逃げれるように馬車の用意をさせて!」
「は、はいっ!」
「プリン!無理はするなよ!おぬし!本体なのじゃからな!」
『わかりました!また連絡をいれますわ!』
「本体っ!?」
僕の中に本体は入ってると思ってたのに出てたのか!アリスと僕は急いで用意する。
その時ふいに頭に直接話しかけられる。念話だ、誰だ?アリスは目の前にいる。
「ご主人様!お急ぎのご様子!魔力の流れが伝わってきました!すぐに行きますのでお待ち下さい!」
「え?誰だ?聞いたこ事ある様な、ない様な声。アリスも聞こえた?」
「うむ。そういうことか。ハルトお手柄かもしれんぞ!」
「何の事だ?」
コテージから出て待っていると空から馬が飛んでくる。
「お待たせしました!さぁ、お乗りください!」
「……へ?きりん?大きくなってる?」
「詳しくは乗ってから話します!」
「さぁ、いくぞ!ハルト!」
アリスと僕はきりんの背に乗ると、きりんは大空に駆け出した!
「ご主人様、今まで黙っていてすいませんでした。ご主人様達が仕えるべき神かどうか探っておりました。お許しください」
「きりん、急に大人になったね」
「ははは!元がこの状態なのです。小さい姿は色々と便利なもので。今日はご主人様の魔力の焦りを感じ、ただごとではないと思い姿を見せました。改めてよろしくお願いします。ともあれお急ぎなのでしょう。飛ばしますのでしっかり掴まっていて下さい!」
きりんはそう言うと空を蹴り加速する。
「早っ!?」
早いというか、中央都市ウェスタン王国を馬車で2日なら、きりんなら半日で着くかもしれない。
「うむ。これならすぐ救援にいけるか。プリンよっ!聞こえるか!わしじゃ!」
『……ね、ねぇさま!』
「まだ生きておるようじゃの。安心したわ。状況を話せ」
『は、はい。馬車3台でそちらに移動中。前2台は避難民です。後ろの1台にゼシカ達が乗っております。距離は……あれ?ねぇさまの魔力まで5分もあれば着くかと?5分?先程は1時間以上かかるかと……ねぇさま、早すぎません?』
「着いてからのお楽しみじゃ。合流するぞ!」
『はいっ!ねぇさま!』
◆◇◆◇◆
「ハルト!雲の上に光の雨を待機じゃ。できるだけ多くな」
「わかった!」
僕達が地上に急降下すると、馬車とドラゴンの群れが見えてきた。
―――中央都市南の草原―――
「おいでなすったか。このクソトカゲめ!」
時々この子は口が悪い。相当トカゲが嫌いなんだろうな。
馬車が僕達の横を過ぎていく。
「ハルトっ!!」
「ゼシカ!話は後だ!前2台を護衛しながらそのまま逃げて!」
「……ホウ、オマエハタシカ、アリスカ。ナンノヨウダ」
「トカゲ……何の用だと?わしの子分に手を出しておいて、いい度胸だのぉ。ハルト、殺れ!」
「光の雨ッ!!」
僕の合図で雲間から一斉に光の雨がドラゴンに向かって降り注ぐ。その数……実に1万本!!!
シュンシュンシュンシュン!
「ギュギャァァァァァァァ!!」
シュンシュンシュンシュン!
「グァァァァァァァァァァ!!」
先手必勝!ドラゴンの群れが悲鳴とともに地面に落ちてくる。9割くらいはこれで落とせたか。
「ハルトよ……それはやりすぎじゃ」
「えぇぇぇ!できるだけ多くって言ったじゃん!」
ギロッ……と邪神がこちらをにらむ。
「さ、さぁ、かかってきやがれ!」
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