上 下
22 / 46
国作と往古来今

第21話・邪神トカゲネビュラ

しおりを挟む

―――中央都市6日目―――

 区画のロープ引きも終わり、今日からは基礎の穴掘りが始まる。

「今日からは基礎を作るための穴掘りをする。さすがに手掘りだと時間がかかるので、この方達を呼んだ!どうぞ!」

ドスン!ドスン!

「ゴーレム君です!」

 パチパチ……少しだけ拍手が起こる。さっきここで召喚したから、皆見てたんだけどね。茶番に付き合ってくれてありがとう。
 ゴーレムは全部で4体。それぞれに指示役をつけて城壁基礎の穴掘りに向かってもらった。ロープも張り終えてるし、穴掘りが終わればようやくこの砂漠ともおさらばだ!
 僕とアリスは今日は休みで、マリンの時間割通りに順調に進んでいる。
 僕達がコテージでゴロゴロしていると……。

「アリス様、ハルト、いつもお疲れ様。お茶煎れましたよ」
「あぁ、メリダありがとう」

 砂漠に女神だな。最近おねぇさんに似てすごく綺麗になった気がする。出会った頃は痩せてたせいか不健康そうな感じがしていた。
 いつの間にかアリスがメリダの膝枕で寝ている。

「あらあら」
「エルバルト教会のこと、マリアから聞いたよ。大変だったみたいだな」
「えぇ。父と母が残してくれた大事な教会。全部燃やされてしまい、もう何も残っていないと……ねぇさんが言っていました」
「あのさ、この国に教会を建てようと思うんだけどマリアとメリダで管理してくれないか?」

 メリダが「はっ!」と口に手を当てると目から涙が溢れてくる。

「ハルト……う、うれしい!」
「こっちに来てから考えてたんだ。設計図にももう追加した。帰る所が無いんだろ?ずっと気になってて。僕は1度……君を刺した。その償いをさせて欲しい。アリスがいなかったら、あの時からマリアは1人ぼっちだったんだ」

 僕は頭を下げる。頭を横に振りながら泣くメリダ。涙が降ってくるので、顔を拭くので忙しいアリス。いや、起きなさい。
 しばらく泣いていたが落ち着いた様子のメリダ。僕も話をして胸のつっかえが取れた。
 そしてアリスは顔を洗いに行った。さて、明日からは……!?

「ハルトっ……ん……!」

突然メリダが抱きつき、僕にキスを……あぁ……。

「ありがとう。だいすき」
「え……」

 そのまま倒れ込む。僕がメリダに手をかけ抱こう……とした瞬間!
 ダダダダダッ!と、走ってくる足音で2人共慌てて起き上がる。

「聞け!ハルト!プリンから連絡じゃ!」
『ね、ねぇさま!大変です!今、そちらに向かって帰っていたのですが!暗黒龍が追って来ています!ドラゴンの群れを引き連れていて――その数100匹はいるかとっ!』
「暗黒龍とドラゴン100匹!?」
『はぁはぁ!何とか食い止めながら向かいますが、持たないかもですわっ!』
「わかったのじゃ!こちらもすぐ向かう!ハルト用意せい!」
「わかった!メリダっ!皆をコテージに呼んで!いつでも逃げれるように馬車の用意をさせて!」
「は、はいっ!」
「プリン!無理はするなよ!おぬし!本体なのじゃからな!」
『わかりました!また連絡をいれますわ!』
「本体っ!?」

 僕の中に本体は入ってると思ってたのに出てたのか!アリスと僕は急いで用意する。
 その時ふいに頭に直接話しかけられる。念話だ、誰だ?アリスは目の前にいる。

「ご主人様!お急ぎのご様子!魔力の流れが伝わってきました!すぐに行きますのでお待ち下さい!」
「え?誰だ?聞いたこ事ある様な、ない様な声。アリスも聞こえた?」
「うむ。そういうことか。ハルトお手柄かもしれんぞ!」
「何の事だ?」

 コテージから出て待っていると空から馬が飛んでくる。

「お待たせしました!さぁ、お乗りください!」
「……へ?きりん?大きくなってる?」
「詳しくは乗ってから話します!」
「さぁ、いくぞ!ハルト!」

 アリスと僕はきりんの背に乗ると、きりんは大空に駆け出した!

「ご主人様、今まで黙っていてすいませんでした。ご主人様達が仕えるべき神かどうか探っておりました。お許しください」
「きりん、急に大人になったね」
「ははは!元がこの状態なのです。小さい姿は色々と便利なもので。今日はご主人様の魔力の焦りを感じ、ただごとではないと思い姿を見せました。改めてよろしくお願いします。ともあれお急ぎなのでしょう。飛ばしますのでしっかり掴まっていて下さい!」

 きりんはそう言うと空を蹴り加速する。

「早っ!?」

 早いというか、中央都市ウェスタン王国を馬車で2日なら、きりんなら半日で着くかもしれない。

「うむ。これならすぐ救援にいけるか。プリンよっ!聞こえるか!わしじゃ!」
『……ね、ねぇさま!』
「まだ生きておるようじゃの。安心したわ。状況を話せ」
『は、はい。馬車3台でそちらに移動中。前2台は避難民です。後ろの1台にゼシカ達が乗っております。距離は……あれ?ねぇさまの魔力まで5分もあれば着くかと?5分?先程は1時間以上かかるかと……ねぇさま、早すぎません?』
「着いてからのお楽しみじゃ。合流するぞ!」
『はいっ!ねぇさま!』

◆◇◆◇◆

「ハルト!雲の上に光の雨ライトレインを待機じゃ。できるだけ多くな」
「わかった!」

 僕達が地上に急降下すると、馬車とドラゴンの群れが見えてきた。

―――中央都市南の草原―――

「おいでなすったか。このクソトカゲめ!」

 時々この子は口が悪い。相当トカゲが嫌いなんだろうな。
 馬車が僕達の横を過ぎていく。

「ハルトっ!!」
「ゼシカ!話は後だ!前2台を護衛しながらそのまま逃げて!」
「……ホウ、オマエハタシカ、アリスカ。ナンノヨウダ」
「トカゲ……何の用だと?わしの子分に手を出しておいて、いい度胸だのぉ。ハルト、殺れ!」
光の雨ライトレインッ!!」

 僕の合図で雲間から一斉に光の雨がドラゴンに向かって降り注ぐ。その数……実に1万本!!!

シュンシュンシュンシュン!
「ギュギャァァァァァァァ!!」
シュンシュンシュンシュン!
「グァァァァァァァァァァ!!」

 先手必勝!ドラゴンの群れが悲鳴とともに地面に落ちてくる。9割くらいはこれで落とせたか。

「ハルトよ……それはやりすぎじゃ」
「えぇぇぇ!できるだけ多くって言ったじゃん!」

ギロッ……と邪神がこちらをにらむ。

「さ、さぁ、かかってきやがれ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました

海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」 「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」 「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」 貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・? 何故、私を愛するふりをするのですか? [登場人物] セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。  × ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。 リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。 アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?

セフレとセフレによる俺の取り合い〜えちえち双子3P対イチャラブ風躾けえっち〜

かぎのえみずる
BL
幼い頃から惚れていた双子に弄ばれる奴元野良介。野良介は気づけば性的にだらしない生活を送っていて、ある日同僚のリルという留学生から、セフレの誘いを受ける。 双子とリルによる野良介の取り合いが始まった。 *ネコ2タチ1の3P要素あります *倫理観がくそです *気まぐれ更新です

冷酷な少年に成り代わってしまった俺の話

岩永みやび
BL
気が付いたら異世界にいた主人公。それもユリスという大公家の三男に成り代わっていた。しかもユリスは「ヴィアンの氷の花」と呼ばれるほど冷酷な美少年らしい。本来のユリスがあれこれやらかしていたせいで周囲とはなんだかギクシャク。なんで俺が尻拭いをしないといけないんだ! 知識・記憶一切なしの成り代わり主人公が手探り異世界生活を送ることに。 突然性格が豹変したユリスに戸惑う周囲を翻弄しつつ異世界ライフを楽しむお話です。 ※基本ほのぼの路線です。不定期更新。冒頭から少しですが流血表現あります。苦手な方はご注意下さい。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

鳥籠の中の執行者

蒼森丘ひもたか
ファンタジー
魔法を使うことが出来る架空の街・鳥飛光(とばいひかり)を舞台とした現代ファンタジーです。 ※この物語はフィクションであり、人物、団体、地名、名称などは架空のものです。 実在のものとは一切関係ありません。 たまに残酷なシーンや暴力描写もあるためご注意下さい。 そのため、R-15に指定しています。

今日も空は青い空

桃井すもも
恋愛
グレースは才を買われて侯爵家に輿入した。夫には長く付き合う恋人がいる。それを承知の上での婚姻であった。 婚家では、義父母にも使用人達にも大切にされて不自由は無い。けれども肝心の夫は、恋人を住まわせる別宅にいて戻らない。気まぐれにグレースのいる本邸に戻るのは、月に数える程である。 夫不在の邸にいて、グレースは自らが立ち上げた商会の経営に勤しむのだが...。 ❇只今番外編執筆中です。公開まで今暫くお待ち下さいませ。 加筆に伴い全体の微修正を行いました。 「いいね!」「エール!」を頂戴しましたお話しに影響の無いよう留意致しました。 あらすじ・一話毎のストーリーに大きな改変はございません。 ❇相変わらずの100%妄想の産物です。史実とは異なっております。 ❇後半厳しいシーンがございます。ご不安な方は、気配を感じられましたら即バックor飛ばしてお読み下さる事をお勧め致します。 ❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。 疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。 ❇座右の銘は「知らないことは書けない」「嘘をつくなら最後まで」。 ❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく激しい微修正が入ります。 「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。

ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します

たぬきち25番
ファンタジー
*『第16回ファンタジー小説大賞【大賞】・【読者賞】W受賞』 *書籍化2024年9月下旬発売 ※書籍化の関係で1章が近日中にレンタルに切り替わりますことをご報告いたします。 彼氏にフラれた直後に異世界転生。気が付くと、ラノベの中の悪役令嬢クローディアになっていた。すでに周りからの評判は最悪なのに、王太子の婚約者。しかも政略結婚なので婚約解消不可?! 王太子は主人公と熱愛中。私は結婚前からお飾りの王太子妃決定。さらに、私は王太子妃として鬼の公爵子息がお目付け役に……。 しかも、私……ざまぁ対象!! ざまぁ回避のために、なんやかんや大忙しです!! ※【感想欄について】感想ありがとうございます。皆様にお知らせとお願いです。 感想欄は多くの方が読まれますので、過激または攻撃的な発言、乱暴な言葉遣い、ポジティブ・ネガティブに関わらず他の方のお名前を出した感想、またこの作品は成人指定ではありませんので卑猥だと思われる発言など、読んだ方がお心を痛めたり、不快だと感じるような内容は承認を控えさせて頂きたいと思います。トラブルに発展してしまうと、感想欄を閉じることも検討しなければならなくなりますので、どうかご理解いただければと思います。

邪悪で凶悪な魔物ですが聖女です。~神の使命を忘れて仲間と気ままなスローライフを送っていたら、気付けば魔王とか呼ばれていた訳でして~

日奈 うさぎ
ファンタジー
 とある山奥にて魔物のお友達と共にスローライフを始めた心優しき子猫獣人のネルル。実は彼女には誰にも言えない秘密があった。  それは彼女が元人間で、魔物の宿敵である聖女だったということ。  聖女、それは人類を産んだ至高神オーヴェルの力を授かりし者。本来なら神の使命を全うして神々の仲間になるはずだった……のだが。  色々あって転生した結果、なぜか人類の敵である魔物に生まれ変わってしまった訳でして。  それでもネルルは諦めなかった。人間の敵になろうとも優しい心を忘れず、一生懸命生きようと努力し続けたのだ。  そうして苦難を乗り越え、分かり合える友達と出会い、その末に山奥の元聖地という自分たちの理想郷を手に入れたのである。  しかしそんな彼女たちの平穏は意図しない客人によって振り回されることに。  人間や魔物の間で噂が広まり始め、気付けば尾ひれ背びれが付いて収集が付かなくなっていって――  元聖女だとバレたくない。でもお友達は一杯欲しい!  だけど来るのは奇人変人ついでに亜人に怖い魔物たち!  その中でネルルたちは理想のスローライフを維持し続けられるのだろうか!?  邪悪で凶悪な猫聖女の新たなる人生譚が今ここに始まるにゃーん!

処理中です...