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国作と往古来今

第20話・国作りスタート!

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―――中央都市跡・コテージ―――

「はぁぁぁ、いい湯だったわい」
「はぁぁぁ、いい湯だったですわ」

 アリスとプリンがお風呂から上がってきた。早速聞いてみるか。

「ねぇ、そこのプリンさんや。いつ戻って来てたんだ?」
「えぇと……さっき?」
「そうなんだ。何の報告も無かったみたいだけど?」
「何でよ?勘違いしないで。私はねぇさまのために動いてるの。あなたに報告の義務はないわ」
「冷たいプリン用意したんだけど食べる?」
「ぷっ!?ご主人様。何なりとお申し付けください」

 ふっ、ちょろい。冷えたプリンをむさぼるプリン。たぶんだけど、プリンが大好物なんだと思う。

「それで、プリンさんや。飛龍はどうだったんだ?」
「もぐもぐもぐ、ちゅるん。飛龍は紋章を持っていなかった。ただ、まずいことにもなっていたわ。皆が揃ってから話すから……だから、もう1個だけプリン下さい。ご主人様」

 2個目のプリンを美味しそうに食べるプリン。ちょうどゼシカ達もお風呂から上がってきた。

「はぁぁ……いいお湯でしたわぁ」
「ゼシカ、クルミのこと頼んだよ」
「……あぁ、わかった。すまなかったな」

 クルミは麒麟を頭に乗せ、ゼシカと手を繋いでいた。少しは落ち着いたか?
 そういえば、麒麟って名前付けて無かったな。

「ゼシカ。麒麟って名前付けったけ?」
「え……いや、麒麟って呼んでたわね……」
「何て呼んだらいいと思う?」

 エル、リン、アリス、プリン、メリダ、マリン、マリアが順番に答える。

「きりん」
「きりん」
「非常食」
「下僕」
「きりん」
「きりん」
「きりん」
「くぅぅぅん」

 ――結果、『きりん』に命名した。

◆◇◆◇◆

 荷物の運び出しも片付けも終わり、全員集まった。

「明日からの予定を伝える前にプリンから飛龍の報告を聞きます」
「我が下僕達よ、よく聞け!」
「プリンよ」
「はい、すいません。ねぇさま、調子に乗りました」

根はいい子なんだろうな。

「飛龍に関してだけど、紋章は見つからなかったわ。変わりに少々面倒な事が起きているのよ。ここから南のサウスタンの町はほぼ壊滅状態。サウス山には暗黒龍が住み着いたという噂も聞いたわ。さらに東のドワーフ族とも最近は音信不通……だそうよ」

皆、言葉を失う。

「サウスタンの町は確か……リンの故郷では?」
「ばば様っ!?」

 立ち上がり、コテージから出て行こうとするリン。エルがすぐさま止め、アリスがなだめる。

「慌てるでない。お主の故郷はサウスタンの集落であろう。町は壊滅かもしれぬが集落とは言っておらぬ。それに昼間の魔法でお主は魔力がからじゃ。出ていくのは自殺行為じゃ。じゃが……ほっておくわけにも行くまい。ハルトよ、国作りに支障がない程度で明日出立できるメンバーを決めよ」
「そうだな……リン、ゼシカ、ギルとマリアも一緒の方が安心か。あとギルの部下で3名選んでくれ。全員で7名とプリン。このメンバーで1週間後には戻って欲しい。戦闘は避け、速やかに生存者の確保を優先としてくれ。ゼシカ、頼めるか?」
「わかった。私が指揮を取ろう。サウスタンの町まではここから2日はかかるか。リン、それでいいか」
「う、うん……」

 今にも泣き出しそうなリン。仕方がない、今はこれが最善だと思う。

「皆には申し訳ないけど、ここにはウェスタン国王と1ヶ月で国の形を作るという約束をしてきた。裏切るわけにはいかない。かといって、リンの家族もほおってはおけない、最善の選択だと思う。協力してくれ!」
「おぉぉぉぉぉぉぉ!」
「……ハルト、ありがとう。ぐすっ……」

 それから僕達は明日の予定をたて寝床に着いた。
 プリンの言っていた暗黒龍が気にかかる。アリスにまた詳しく教えてもらおう。

◆◇◆◇◆

 ――翌朝。

「それでは行ってくる!」
「あぁ、気をつけて!ゼシカ、リンを頼んだ!」

 笑顔で手を振るゼシカ。ゼシカには頼んでばかりだな。何かお礼を考えておこう。

「さっ!皆、集まってくれ!」

 僕は僕の仕事をしなくちゃだな。初めて皆に国の設計図を見せる。

「こ……これはすごい!しかしこの規模だと、周辺の城壁を作るだけでも数億金貨かかるかもしれませんよ」

 さすがはマリン、計算が早い。魔法以外なら頼れそうだ。早速仕事を振り分ける。
 まずエルに精霊呪文で水場の確保と、地下水路の確認、同行で鼻の効きそうなクルミときりんに任せる。
 マリンには図面の確認と指示、休憩などの時間割を任せる。メリダには食事と洗濯など家事全般。
 ギルの部下7人は肉体労働班で境界線を決める段取りとした。最初は直径約5キロ圏内の障害物、樹木や岩などを片付ける。

―――中央都市4日目―――

 方位磁石でウェスタン王国を西に合わせて、中心から2キロ先までロープを張って円を描く。それが出来たらさらに3キロ先までロープを張って円を描く。内壁まで2キロ。外側壁まで5キロがこの国の全体サイズになる。

「よし、始めよう!」

 近衛兵と手分けしてロープを張る。炎天下で数キロの円を描く大作業だ。

「暑い……アリス、ここはなぜ砂漠地帯になったんだ?」
「わしも詳しく覚えておらぬ。最初は確か近くで川が氾濫し、全てが流されたような気がする」

 涼し気な顔でアリスが答える。涼し気?はて?よく見るとブラックボックスを背負ってる!しかも小型化してる!冷風浴びながら気持ち良さそうに歩くアリス。

「しかし、暑いのぉ」
「やかましい」
「ハルト、何か言うたか?」
「いや……そう言えば暗黒龍の事なんだけど、アリス、暗黒龍とはいったい何者なんだ?」
「うむ。あいつとは犬猿の仲でな。大昔、何度かガチで戦った事はあるが……正式名称は確か、邪神トカゲネビュラ。元々はただのトカゲじゃ」

ツッコミどころが多すぎて困る。

「神……なのか?アリスが勝てないほどの。羽根の生えたトカゲ……」
「正式には神ではない。どこかの血筋で神の血が混ざったのであろう。あいつはわしの嫌いな猛毒を持つ。わしの力でも浄化するのに時間がかかるのじゃ。それに何か臭い。だから関わりたくないのが本音じゃ」
「何か、臭いって……」

 皆、無事で帰って来てくれ。僕は南の空を見て願った。
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