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国作と往古来今
第18話・奥義大地隕石魔法
しおりを挟む―――ノルマの町―――
――翌朝。
僕達はノルマの町を後に、以前修行した西の洞窟に向かった。途中、魔物とも遭遇したが僕が出る間もなくゼシカたちが討伐してくれる。頼れる仲間たちだ。マリンが興奮してる姿にも慣れてきた。
「そろそろ洞窟が見えてくるのぉ……」
何だか懐かしい風景だ。最初この世界に来た時に逃げ込んだ洞窟だ。あの時はこんな風になるなんて思いもしなかった。
「着いたようじゃな。ちょっと待っておれ」
そう言うとアリスが馬車から降り、洞窟へと向かっていく。そう言えば僕がアリスと同化してから、アリスの分体もプリンの分体も結構自由に動いてるな。前はこう、すぅ~と付いて来るのが面白かったのに。そんな事を考えていると……。
「ぐるぅぅぅぅぅ!!」
突然、麒麟が威嚇をする。
「ハルト聞こえるかっ!戦闘準備じゃ!」
アリスからの念話だ。
「わかった!全員戦闘準備!ギル達とマリン達は待機!」
一瞬で緊張が走る。
洞窟の入口には石像の形をした魔物の姿が見える。あれはゴーレムか。しかも色がグレー……ゴーレムキングだろう。通常のゴーレムならブラウン色のはずだ。通常の10倍は強そうだ。高さ10mはあろうゴーレムが数体と2~3mの通常サイズのゴーレム数体が洞窟から這い出してくる。
「アリスが召喚したのか?いや……そういう事か!」
アリスは僕の秘策をとっくにお見通しなわけだ。
「束縛呪縛!!」
すばやくゴーレムの足を絡める。
「ゼシカ達はブラウンのゴーレムを狙ってくれ!核は頭にある!グレーのゴーレムには近づくな!」
「わかった!」
ゼシカと、エル、リンがゴーレムの後方へ走り出す。ゴーレムは核と呼ばれる心臓を破壊しないと復活する。核は頭にあるとアリスに聞いていた。
……聞いていた?違うな。わざと教えてくれていた、か。
「砕けろっ!!」
キンッッッ!!パキンッ!!
甲高い音がし、核が砕ける!頭部は硬いが核だけ狙えば行けそうだ!お次はっ!
「ハルト!右じゃ!」
「え?」
アリスの声に反応し、右を振り向き剣を構える!
「え?あれ?ゴーレムがいない……?」
「間違えた!左じゃ!」
「え?」
ゴンッ!!
ゴーレムのパンチが体の左側面に命中する!この重さと威力はオーガキング並のパンチだ。
「んがはっ!」
そ、そんなバカな……!?アリスの言い間違えで僕は……また死ぬの……か……?
吹き飛ばされ転がりながら死を覚悟した……つもりだった。
「……ん、あ、あれ?痛くない。まさかこれが神族の力……!肉体も強化されるのか!これならゴーレムの攻撃は効かない!」
僕は立ち上がり、アリスの方を向き指を差す!
「アリスっ!後で覚えとけっ!」
「てへっ♡」
「てへっ♡じゃないっ!!この悪魔っ!」
しかしそうとわかれば怖くない。
「空中歩行!」
僕はプリンに教わった魔法で宙に浮き、ゴーレムの頭をパンチしてみる。
ズゴンッ!パンチ一発で砕けるゴーレムキング。やはりこれで十分みたいだ。
「ていっ!ていっ!ていっ!」
パタパタと倒れ、砕けていくゴーレムキング……。
あぁ、僕はもう人間族としては生きていけないのかもしれない。
数分ですべてのゴーレムキングを倒し終えた。ゴーレムキングがドロップアイテムに変わる前に回収をしていく。これがアリスと僕の狙いだ。
するとゴーレムを倒し終えたゼシカが声をかけてくる。
「お疲れっ!ハルト!かっこよかったぞ!」
「てへっ♡」
アリスの真似をしてみる。
「……それはちょっといただけない」
冷ややかなゼシカと目をそらすエルとリン。……3人共、食ってやろうか。
無事にゴーレムの群れを討伐し、中央都市へと向かう。しかしアリスが同じことに気付いていたとは恐れ入った。
ゴーレムは本来、土素材で出来ている。ドロップアイテムに変わる前に回収することでレンガとして使える。これが広く世界に使われている壁材だ。しかしゴーレムキングの素材は石灰石。人間族では到底倒せない魔物なだけに石灰石は希少なのだ。
最初にあの洞窟に来た時に、恐らくアリスは石灰石に気付いていた。そして事前に何かを用意し、先程ゴーレムを召喚ではなく生成したのだ。
……とまぁ、恐らくそんな所だろう。
「おしいのぉ。あの洞窟はな。かつて魔界の……」
アリスが何かを言いかけて、しぃぃぃ!と口を抑える。先頭の馬車から何か聞こえる。
「混沌の地より生まれし彗星、我の声に答え、導け。我はこの世界を欲する者也……我が名はリン・ドラコ!この名を世界に示せっ!すべてを破壊せよっ!!」
「は?」
先頭の馬車からなぜかリンの詠唱が聞こえる。アリスと2人で顔を見合わせる。
「は?」
「は?」
『奥義・大地隕石魔法ッッッ!!』
空が暗くなり地響きがする!!
「は?」
ゴゴゴゴゴゴ……ドドドドドド……!!
轟音と共に空から1つの隕石が降ってくる……!?
「……え?」
ズドォォォォォォォォォン!!!
遠くで隕石が落下し、遅れて爆風がくる!!
ブォォォォォォ……!!!
「で、できた……」
馬車を止めさせリンを呼び出す。
「リンっ!何をしている!!」
魔力を使い切ったリンが、グッジョブと親指を立てて気を失ってる。
「ゼシカ!エル!マリンっ!説明しろっ!」
「ハ、ハルト……え……と、あそこにほら。メタルスコーピオンが見えまして……で、あれ美味しそうだねぇ!て話をしてたら、リンが魔法を試してみたい!て言い出しまして」
「と、とめたんですよ!でも、スコーピオン美味しそうだなぁ……て」
ゼシカとエルも僕と目を合わせない。マリンは奥義魔法を見たせいだろう、興奮して昇天している。
「しかし他に魔物を倒す方法はいくらでもあるだろう。失敗したらどうするんだ。まったく!」
「まぁ、魔物は討伐できたみたいだし行ってみるか。面白いものも見れたしの。しっしっし!」
リンが目を覚まし、天を仰ぎつぶやく。
「……夢に……現れた偉大なる魔法使い様が……ぼくにお告げを……名前は……メグミ……ガクッ!」
チーーン。
また気を失った。二度と使うな。
僕達はメタルスコーピオンがいた場所に行ってみる。辺りには焼けた良い匂いが漂ってる。
ゼシカが器用に剣でメタルスコーピオンをさばいていく。
そして一口目をアリスに差し出す。
「アリス様、いかがでしょうか?」
「はふはふ。もぐもぐ……うぅっ!?」
「アリス様!大丈夫ですか!!ギル!お水を!」
「はっ!」
「うっ……うまい♡これはカニ?じゃな♡しっしっし!」
「え?では私達も頂きます……もぐもぐもぐ……!?」
「お、おいしいっ!ちょうど良い焼け具合ですね!」
「はぐはぐはぐはぐはぐはぐはぐはぐ!」
麒麟もメタルスコーピオンの丸焼きにむさぼりつく。確かに美味しかった。確かに……カニ。
ピースサインをするリンもエルに食べさせてもらって満足気だった。
新都市の名物にでもするか。災い転じて何とやら。ただ他の討伐方法を考えようと僕は心に決めた。
「ぼ、ぼくはついにやりましたよ……メ、メグミ……ガクッ!」
リンはお腹がいっぱいになるとまた気を失った。
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