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国作と往古来今
第16話・出立準備
しおりを挟む―――宿屋フラン―――
――明け方……日も登らぬまだ薄暗い中、僕の布団の中にゼシカが入ってくる。
「はぁはぁはぁはぁ……」
ゼシカの息遣いが、耳元で聞こえる。
「ハ、ハルト……ん……」
ゼシカの胸が肌に触れ、足を絡めてくる……。エルとリンはまだ寝ているようだ。
これはあれだな……不可抗力というやつだ!
【不可抗力とは天変地異等の様に、人の力ではどうする事も出来ない外部からの巨大な力の事】
「クチャクチャ……!」
(……あぁ。R15設定なのにR18になってしまう)
「クチャクチャクチャクチャ……!」
(ゼシカ……そんな事をしたら僕はもう……!)
そっと目を開けてゼシカの目を見る。ゼシカと僕の唇が触れ合う……直前。
ギョロ。
「ギャャァァァァァァァァ!」
「――キャャァァァァァァァァ!」
僕の悲鳴にゼシカが驚き、2人で悲鳴をあげる。
「ア、アリスっ!?」
ゼシカの背後にアリスが立っている。そしてイカをクチャクチャ言わせながら食べていた。
「2人共おはよう。腹が減ったので朝ごはんにしないか?」
「ん……どうしたの?」
「ふぁぁぁぁぁ……」
エルとリンが目を覚ましてしまった。
「な、なんでもない……」
こうして僕とゼシカの初夜は未遂に終わった。
◆◇◆◇◆
僕はマリアとメリダと合流し、冒険者ギルドへ向かっていた。今日は暑くなりそうだ。ゼシカは抜けがけした罰として別行動で買い出しに出かけた。
「マリアさん、少しは落ち着きましたか?」
「えぇ。メリダが無事で何よりでした。呪いの話も、奴隷の話も全て聞きました。ハルト殿が救ってくださった事、本当に感謝しています。あ、私の事はマリアって呼んでくださいね」
ご機嫌なマリア。今日は甲冑ではなく私服で来ているが、何を着ても似合う。ブロンドの髪が朝日に当たりキラキラしている。
「ハルトっ!!おねぇちゃんばかり見てる!」
ちょっとご機嫌ななめなメリダ。いや、どうしようもなかったとは言え、一度は光の剣でメリダを刺してしまったのだ。僕はあれからメリダときちんと話が出来ていない気がする。
………
……
…
「じぃぃぃぃぃぃぃぃ。ハルト……私の胸にはハルトが残した傷があるの。一生消えない。だから、そのぉ……一生大事にしてね」
「ぶっ!」
飲みかけの水を吹いてしまった……。
「メリダごめん。僕には心に決めた人が……」
「噓だっ!!」
メリダが怒り狂い剣を取る。
「一緒に死にましょう。ねぇ……ハルト?ふふふ」
「ぎゃぁぁぁぁ!」
…
……
………
はっ!と我にかえる。きょとん?とするメリダ。そんな妄想をしているうちに冒険者ギルドへと着いた。
―――冒険者ギルド―――
「お疲れ様ですっ!冒険者ギルドへようこそっ!」
「あのハルトと言います。ラルクさんにお会いしたいのですが」
「あ!はい!少々お待ち下さい!」
今日はマリンじゃないのか。その方が話が早い。
「どうぞ!突き当りの応接室です!」
「ありがとうございます」
僕とマリアとメリダは応接室と向かう。応接室が何やら賑やかだ。
「おっ!お父様!それではあんまりですっ!私も行きたいです!」
「だがのぉ、ハルト殿に迷惑はかけれないしのぉ」
「僕に?」
コンコンッ……カチャ。
「失礼しますっ!」
「おぉ、ハルト殿。ちょうど良かった。ハルト殿からも言ってやってくれ」
「ハルト殿っ!私を捨てるなんてあんまりですっ!」
マリンが僕の服を掴んでくる。右手の手の甲をメリダがつねる。地味に痛い……。
「お、落ち着いてください。どうされたんですか?」
「私と言うものがありながら、他の女の子たちと1つの馬車に揺られて行くなんて……あぁぁぁぁぁ……!」
左手の手の甲をさらにマリアがつねる。痛いって。
ラルクさんがやれやれと言った表情をし、全員が席に着くと詳細の打ち合わせが始まる。
「ハルト殿、馬車はどのように用意しようかの。あと商人だったな」
「はい。馬車は3台欲しいですね。1台は移動用と1台は食料、1台は資材を積んで行きます」
「わかった、手配しよう。あと商人の件なんだが……こほん。あぁ、うちのマリンを連れて行ってはくれまいか。どうしても一緒に行くと聞かないのだよ。この子は商人ギルドにも登録があるし、秘書としても優秀ではある」
「へぇ、マリンは商人ギルドにも顔が効くのか」
「良いのではないか。ズゥズズズズゥ……」
僕の紅茶を飲みながらアリスが答える。
「ア、アリス様!いつの間にっ!このような場所にお越し下さりありがとうございます!」
2回目ね。壺割ってたしね。窓もバッタンバッタンしてたしね。
「まぁ、商人ギルドにも精通であるのならば問題ないかと。マリンさんよろしくお願いします」
マリンが急に席を立つ。
「(妄想)完全回復!キラキラキラ~!」
なんか腹たつな。
「ハルト殿!アリス様!おまけの方々!よろしくお願いしますわっ!」
僕の右耳と左耳を、マリアとメリダが引っ張る。
「いててててて!!」
完全にもらい事故だ。ともあれこれで最低限の用意は出来た。
「ハルト殿、他に必要なものはあるかね?」
「そうですね。大陸の地図ですかね。あとは準備を整えて、1週間ないうちに出立します」
「わかった。それまでに用意させよう。では準備が出来次第連絡する」
「はい。お世話になります」
―――宿屋フラン食堂―――
「皆、お疲れ様」
「おぉ、ハルト!ちょうど今、帰って来たとこだ」
「ハルトっ!ハルトっ!ゼシカったら、なんかこーんな下着買うとか言って、エルに怒られたんだよっ!」
「ちょっ!リンっ!」
鼻の下が伸びる僕。よしっ!分かった!もう全員まとめてかかってこい。
「今日からハルトは1人部屋な。わしとマリアとメリダ、ゼシカとエルとリンの部屋割じゃ」
「えぇぇぇぇぇぇ!アリスゥ!それはないぜぇぇ……」
がっくりと肩を落とす僕。ニヤニヤするアリス。
「出立は5日後じゃ。おのおの準備をしておれ」
僕とアリス、ゼシカ、エル、リン、それにマリアとメリダも加わった。2人は行く当てもないため当面、僕達と行動を共にするという。後は後日、ゼシカの護衛ギルを含む10人の城騎士団、商人代行のマリンが加わる。
これで準備万端だ。後は……ゼシカの下着姿だけ見たかったなぁ……。
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