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国作と往古来今
第15話・プリン登場
しおりを挟む―――ウェスタン王国王広間―――
ブロンド髪の美女が兜を外し、膝を立ておじぎをする。
「アリス様、国王様、お初にお目にかかります。マリア・エルバルトと申します」
「お、おねぇちゃんっ!?」
「エルバルト教会の者か。なぜここに?」
「はっ。妹のメリダが誘拐され、ここウェスタンで目撃情報があり、調査しておりました。まさかここで出会えるとは思いませんでした……うぅ」
涙ぐみながら、彼女は続ける。
「ハリス侯爵に人身売買の疑があると聞きました。そしてハリス侯爵は私達の父と母の仇っ……うぅ……!」
「うむ。もう良い。メリダよ、そやつを少し休ませるがよい」
「はい。アリス様……」
「ハリス侯か……。ちょっと調べさせるとしよう」
国王がそう言い、側近に伝える。メリダはマリアの手を取り、姉妹で王広間から出て行く。
「……うむ。次はプリンじゃ。いつからこっちにいたのじゃ?」
「プリン?アリス、プリンって誰だ?」
初めて聞く名だ。すると突然、チグサが直立不動で目を見開いて答える。
「はいっ!中央都市でチグサを見つけて、媒体にして今日まで休んでおりました。ねぇさま!」
「どうりで、ウェスタンに来る馬車の中でハルトではなく、わしを見ておったのじゃろ?」
「おっしゃる通りです。ですが魔力維持もきつく、昏睡状態でした。申し訳ありません」
「わかった。チグサの体を返してやれ。お前もハルトの中に入るが良い」
「はいっ!ねぇさま!」
チグサが直立不動でしゃべるのを目の当たりにし、国王がおろおろとしている。大事な娘なんだろう。プリンがチグサの体から抜けると、チグサの体が足元から崩れた。
アリスは意識を失ったチグサを近衛兵に預け、近衛兵にイカの丸焼きとお手拭きをお願いしている。まだ食う気か。
その後、僕は国王に中央都市の復興計画を説明した。ゼシカ達冒険者、城騎士団、商人、馬車などを1ヶ月程貸り受けたいとお願いした。
「たった1ヶ月で良いのか?その程度なら特に問題はなかろう。商人、馬車はラルクに言うがいい。して、資金はどうするのじゃ?城を復興するとなるとかなりの金貨が必要だと思うが?」
「ご安心下さい。先の討伐でそこそこ金貨は持っておりますし、私に少々考えがありまして。国が出来たあかつきにはウェスタン王国との同盟、道の整備など、またご協力下さいませ」
「ほほぅ……国を作ると言うのか。面白い。わかった。お主に任せよう」
「はっ!ありがとうございます。1週間後には出立したいと思います。また王妃の件もありますので、本日は祝賀会が終わり次第、城下の宿に移りたいと思います」
これで出立の準備に取りかかれる。
「あい、分かった。ところでゼシカよ。その、なんだ。ハルト殿とは……その、もう仲良くしておるのか?」
「はい。毎晩同じ布団で寝ています」
ゼシカが真顔で答える。
「嘘つけっ!ゼシカ!そんな事を言ったら国王様が――!?」
「……そう、そうか、そうかに!」
国王も怒るどころか動揺して、そうかに、と言ってしまう状況だ。
「ぼくも一緒に寝てるよっ!一緒に寝てたら子供ができるって、ばば様が言ってたから!」
「リンまで!ある意味間違いではない!ないが!今は国王様を煽るなっ!」
「うむ……ハルト殿はあれか。たくさんの女の子がいなければ落ち着かない質なのだな……」
「変態じゃからのぉ……」
国王がアリスの方を見て、それはないぜ、という顔をしている。僕の評価っていったい……。
「し、しかし、この石像のアリス様と本物のアリス様を比べても、今も変わらずお美しいですな!」
「そうであろう!国王、お主よくわかっているではないか!」
なぜかヨイショする国王。明らかに話を変えようとしている。でも、あの石像って……。
「ねぇ、アリス。ひとつ聞きたいんだけど、あの石像って……胸、盛ってない?」
「ピキッ!貴様!くらえっ!ハルトッ!!世界のイカ丸投げ日ッ!!」
「なにぃぃぃぃぃ!??」
アリスにいきなりイカの丸焼きを投げつけられ、これは避けきれないっ!どうする!
「ハルトッ!危ない!完全防御!!」
ゼシカが僕をかばって、手を広げ前方に立つ!しかしスキルはまだ発動しきっていないっ!!
「あぁぁぁっ!!」
その場にいた全員が、スローモーションの様にゼシカに駆け寄ろうとするが……。
『びちゃ!!』
ゼシカの顔にイカの丸焼きが炸裂した!!
「ぶはぁぁぁっ……」
「あっ……」
「ゼシカ……す、すまぬ……」
ちょっと反省するアリスだった。
―――宿屋フラン―――
「ふぅ、着いた!ようやく堅苦しいのから開放された!」
「ハルト、お疲れ様でした!結局、祝賀会も忙しかったですね」
「料理おいしかった!お腹いっぱい!」
ベッドに横たわり、天井を見上げる。
マリアもチグサも祝賀会には参加していて一安心した。マリアとメリダは明日には合流予定だ。
チグサは王族の娘だった。プリンが体に入っていた事も、何も覚えていない様だった。
チグサってどことなく妹みたいでかわいいんだよなぁ……妹?ふと、そんな感情を覚えた。
ゼシカはチグサの護衛を解かれ、しばらく冒険者としてまたやっていく事になった。
後で聞いたのだが父がウェスタン国王、母は王宮のメイドだったらしい。チグサとは義理の姉妹だそうだ。
ウェスタン王国正室の王妃はチグサを産んだあと、病で亡くなり、後妻でやってきた王妃があの口の悪い王妃だそうだ。
なんだかややこしいなぁ……しかし、僕はこれで自分の目的のために動ける。
アリスはと言うと、実体化するのに魔力をかなり消費するらしく1日のうち数時間は僕の中で寝ているそうだ。今は僕の中でアリスとプリンが仲良くお昼寝だ。
プリンはアリスを崇拝する神様らしい。また今度詳しく聞いてみよう。
――そんな事を考えながら僕はいつの間にか寝入っていた。
◆◇◆◇◆
……いつの間にか寝ていたようだ。まだ外は薄暗い。
「はぁはぁはぁ……」
(ん……なんだ。なにか聞こえる……)
「ハ、ハルト……私もう……我慢できない」
(!!?ゼ、ゼシカっ!?)
僕の布団に潜りこんでくるゼシカ。暗くて見えないが、たぶん……洋服は着ていない。僕はここで初めてを迎える事になる……のか?
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