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終わりと始まり

第2話・魔法と鋳造

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―――西の洞窟―――

 転生初日に逃げ込んだ洞窟を拠点とし、数日が経った。

「せいっ!!やぁ!!とぅ!!」

 僕はアリスに言われるままに剣の稽古をした。
 たまたま逃げ込んだ洞窟だったが、水もあり、少し離れた場所には木の実もなっている。
 洞窟内には剣や斧が落ちており、過去にこの周辺で戦闘が行われた跡の様にも思えた。その剣を使い、アリスに教えてもらいながら魔物を狩っていく。

「あらかた周囲の下級な魔物は狩れるようになったの。次はちょっと魔法の練習でもしてみるかの」
「魔法って誰にでも使えるものなのか?」
「うむ。適正はそれぞれあるが、人間では生まれながらに魔力を持つ者は魔法を操れるが、元々魔力のないものは生涯魔法は使えん。また光や闇といった自分の得意な属性や召喚魔法もある。適正が合えば高度な魔法も使用可能じゃ」

 魔力……属性に召喚か。いや適正がなければそもそも魔法は使えないということか……。

「案ずるな。そなたには魔力適正が備わっている。わしがこの世界に転生させる時にちぃと、体をいじっておいたからの」

 「心を読むな、体もいじるな」と色々思う所もあったが、考えても何も変わらないので、とりあえずアリスの言う通りにすることにした。

「魔力とは肉体ではなく、魂の生命力みたいなものだと思え。魔力が尽きると気を失う。使い切ると命の危険もあり得る。そして魂の生命力が強ければ強いほど強大な魔力を得られる」
「肉体にはまったく依存しないのか?」
「うむ。依存するのは魂と適正能力。あと魔法の習得に必要な知識じゃな。肉体と魔力は別物だと思うがよい」
「なるほど」

 つまりは肉体が子供であっても、魂、すなわち生命力が強大ならそこそこ強い魔法は使える。だが、そもそも習得した魔法しか使えない、ということか。

「それではやってみるかの。心の中で魔法をイメージして魔力を膨らませ放つ。光の柱ライトニングを使ってみよ」
「わかった……」

 僕は心の中で光の柱をイメージした。光の柱、光の柱、光の……そして……放つ!!!

光の柱ライトニング!!」

し――――――ん……

「……え。何も起きない?」
「まぁ最初は皆、こんな感じで練習をしていく、ということじゃな。次は詠唱をしてからとするかの。時間はかかるが発動はできるじゃろ。詠唱とはイメージを言葉で表すことじゃ。最初は無詠唱で使えるほど簡単にはゆかぬ」
「は、ははは……そうだよね。いきなりは無理だよね。しかも詠唱あるんなら先に教え……」

その時だった!!

ピカッッ!!!!!ズッドォォォォォォォォォォンッッ!!!!

 近くの山頂で閃光が走り、巨大な光の柱があたりを包む!!

パラパラパラ……

「へ?」
「へ?」

 僕とアリスは目が点になる。しかも走った閃光が……その……あれだ。曲線というか、その……胸の形というか……うん。あれは胸の形だったな。

「は?」
「は?」

……顔を見合わせ、沈黙が流れる。

「貴様!魔法をイメージしてる時に胸の想像をしたなっ!!!この変態めっ!この変態!アリスちょぉぉっっぷ!!!」

べしっ!!

「いってぇぇぇぇ!」
「ふん!……しかし無詠唱でこの威力とは恐れ入った。そなたは剣より、魔法に長けているのかもしれんの。一度、魔力鑑定をすればはっきりするのじゃが……」

 今の光の柱ライトニングで山の周辺にいた魔物を一掃した様だ。
 この世界の不思議な所はたくさんある。倒した魔物のアイテムや硬貨が自動的に入手できること。また離れていても入手可能だ。倒してすぐであれば素材として魔物をアイテムボックスに収納も可能。まるでゲームの中のようだ。

「ハルトよ。眉間に力を入れ意識を集中させてみよ」
「こうか?」

 意識を向けると何もない空間に、通貨、魔法、アイテム、固有スキルなどの表示がある。さっきの光の柱ライトニングで魔物をけっこう倒したのか。アイテムがいっぱいになってる。

「アリス。アイテムがたくさん入るカバンみたいなのも存在するのか?」
「うむ。アイテムBOXだな。魔物を狩ると時々、BOXの素材がドロップする。それを鋳造すると作れるぞ」
「鋳造?」
「要は2つの物から1つの物を作る合体魔法じゃ。習得可能じゃから、あとでやってみるがいい」


……
………

――1ヶ月後。

 アリスに教えてもらい、魔法の習得をし、魔力制御も覚え、アイテムや通貨も持てるだけ持った。僕なりにかなり成長した気分だ。
 これで!!……ふと、気付く。これで……これで?僕はどうするんだ?
 よくある話だが、元の世界に帰るとか?魔王を倒すとか?そういう設定の元、修行をしたり、目的を果たすために頑張るとかじゃないのか。

「なぁ、アリス。僕はこの世界で何をしたらいいんだ?」
「今さらなんじゃ。子作りと言ったではないか」
「は?」

 ぽかーんとする僕を、アリスは冷ややかな目で見ている。

「子作り、ていう魔法とか、何かの暗号とかか?」
「何を言っておる。子供を作るのじゃ、わしのために。転生した日に教えたではないか」

 ……何て言うか、あれだ。ウメコのくだりで聞いてなかったやつだ。という事は、今までの修行は何だったんだ!!と思うが時すでに遅し。最初にちゃんと聞いとくべきだった。ここに来てようやく目的を知った僕だった……。
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