先生、時間です。

斑鳩入鹿

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第1章

先生、時間です

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ー都内某所、立て篭もり事件発生。

僕が先生にカップラーメンを作っているとスマホが振動した。速報通知がはいった。

(刃物を持った男が明大前Xビルにて立て篭もり、人質をとっている模様。)

ネットニュースのライブキャスターが焦った様子で話す。

「先生、どうしますか?」

この手の事件が最近は頻発する。

「まあまあ、ラーメン伸びちゃうし食べてからでいいでしょ」

人が死にそうだというのに呑気だ。
そう言って僕の手からカップラーメンを取り上げてズルズルとすすりだした。

2分半で食べはじめたところを見ると一応急いでいるらしい。

「田崎くん、現場に先行っててくれる?これハチロクの鍵。」

ハチロクは先生の愛車だ。

「わかりました。すぐ来てくださいよ。僕だけじゃ規制線超えられないんで。」

「はいはい。」

ズルズルとすする音。

先生を横目に僕は現場に向かった。


僕は戦闘の素人だし、頭も弱い。事件解決とかそんな漫画の探偵みたいなことはできない。できるのは車の運転くらい。先生の運転手というバイトをしている。

以前ツーベーイーツという宅配のバイトをしていたが、転倒事故でラーメンをこぼしてしまった。腕は擦過傷で、ぼろぼろのまま謝るために某事務所に行った。

そこに先生はいた。

個人事業主というが会社をいくつか経営というか関わっていて、いわゆるコンサルタントと名刺には書いてあった。

僕の怪我を見て、

「君、大丈夫かい?それ、早く病院に行った方がいい。あ、でもそのロゴ。その会社は保険加入してないよな。かわいそうに。現代の奴隷ビジネスだね。とりあえず傷口を洗って消毒しておきなさい。折れてないから大丈夫。」

スーツを着こなし、寡黙そうな印象とは裏腹によく喋る人だなと思った。

「ラ、ラーメンこぼしちゃってすみません。弁償しますんで。」

「いや、いいよ、君が腕一本怪我して運んできた残りのスープ一口でチャラにしよう。」

優しいひとだ。その時はそう思った。

「すみません。ほんと。」

「そうだ、そのナンチャライーツやめてうちで働かないかい?普通免許もってる?」

「免許は昨年とりましたけど、、」

「じゃあ決定。労働条件は時給2000円、拘束時間は最大8時間かな。業務内容はコンサルタント補佐でどう?」

「コンサルタント?え?というか時給2000円て、聞いたことないですけど大丈夫ですか?」

なんか怖い。2000円は助かるがこれやばい仕事なのか。

「コンサルタントの仕事は単価が高いからね。君はアシスタントでいいからとりあえず来てみてよ。待機時間はスキルとか資格の勉強好きにやっていいから。ねっ。」

「は、はい…」

契約書もその場で印刷してくれたし、断れる感じではない圧倒的な説得力。

僕はツーベーイーツで使ってた認印で契約書に判をおした。

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