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第1章
悪魔
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「さあ、はじめましょう」
黒いスマホの画面に文字が浮かぶ。
「さあ、はじめましょう」
さっき電池が切れたはずのスマホが動き出す。
「yes or no」
ボタンが出てきた。
再起動ならyesだ。
こんな画面は見たことがないが、
バグかなんかなんだろう。
「名前を入力してください」
持ち主に名前を入れろとは。
いつも使ってやってるのに。
「鹿威ルカ」
面倒な作業だ。
生年月日を入力したところで、次の画面が出る。
「あなたは、ロボットではありませんか?」
この質問、いつも疑問に思う。
おれは人間であるし、この端末を使うのも人間が前提のはずなのに。
おれはロボットではありませんにチェックを入れた。
画面が暗転する。
やつれた顔がまた反射して映った。
禁断の果実のロゴマークが浮かんで、文字列が浮かび上がった。
「あなたは、人間デスカ?」
……。
なるほど。これは夢か。
気持ち悪い質問だ。
やつれた悪魔のような自分の顔の残像がよぎる。
「おれは、人間じゃない。」
呟いた。
そして、好奇心で No のボタンをタップする。
この夢はおれに何を訴えてるんだろうか。
深層心理は夢に現れる。
寝つきが悪くなるからやめて頂きたいが、こういうリアルな夢はたまに面白い。
画面にノイズが走る。
知恵のリンゴが表示され、かけた部分が残りを侵食してゆく。
最後は、葉っぱの部分もなくなって暗転した。
またこの顔。おれ自身のやつれた、悪魔の顔。
その後ろに何かが見えた。
思わず振り向いてみると、そこにはおれとよく似た背格好の、男とも女とも見分けのつかない何者かが立っていた。
気持ち悪いやつだったを
「さあ、はじめましょう。」
高くもなく低くもない平坦な声で、そいつはそう言い放った。
「おまえは?なに?」
「私はメフィストフェレス。あなたを待っていました。」
馬鹿なファンタジーゲームをやりすぎた。
早く夢が覚めることに期待する。
「へぇ、待っていましたとはいつから?なんで?」
「こちらの側にいらっしゃる資質をお持ちでしたので、今日の日が来るまで待っていました。」
「なるほどね、ファウスト?とかいう小説のあれか。立ち読みでもちゃんと内容が入るものだな。」
「今日はご挨拶まで。これにて失礼致します。またお会いしましょう。」
淡々と、声というよりは機械音に近い無機質なトーンでそいつは挨拶を済ませて消えた。
この手の奇妙な夢を見ることはよくあるが、登場人物が語りかけてくるのは初めてだった。
やけに喉が渇く。焼けるようだ。
視野が狭くなっていく。
そろそろ目覚めの時間か。
意識が落ちた。
黒いスマホの画面に文字が浮かぶ。
「さあ、はじめましょう」
さっき電池が切れたはずのスマホが動き出す。
「yes or no」
ボタンが出てきた。
再起動ならyesだ。
こんな画面は見たことがないが、
バグかなんかなんだろう。
「名前を入力してください」
持ち主に名前を入れろとは。
いつも使ってやってるのに。
「鹿威ルカ」
面倒な作業だ。
生年月日を入力したところで、次の画面が出る。
「あなたは、ロボットではありませんか?」
この質問、いつも疑問に思う。
おれは人間であるし、この端末を使うのも人間が前提のはずなのに。
おれはロボットではありませんにチェックを入れた。
画面が暗転する。
やつれた顔がまた反射して映った。
禁断の果実のロゴマークが浮かんで、文字列が浮かび上がった。
「あなたは、人間デスカ?」
……。
なるほど。これは夢か。
気持ち悪い質問だ。
やつれた悪魔のような自分の顔の残像がよぎる。
「おれは、人間じゃない。」
呟いた。
そして、好奇心で No のボタンをタップする。
この夢はおれに何を訴えてるんだろうか。
深層心理は夢に現れる。
寝つきが悪くなるからやめて頂きたいが、こういうリアルな夢はたまに面白い。
画面にノイズが走る。
知恵のリンゴが表示され、かけた部分が残りを侵食してゆく。
最後は、葉っぱの部分もなくなって暗転した。
またこの顔。おれ自身のやつれた、悪魔の顔。
その後ろに何かが見えた。
思わず振り向いてみると、そこにはおれとよく似た背格好の、男とも女とも見分けのつかない何者かが立っていた。
気持ち悪いやつだったを
「さあ、はじめましょう。」
高くもなく低くもない平坦な声で、そいつはそう言い放った。
「おまえは?なに?」
「私はメフィストフェレス。あなたを待っていました。」
馬鹿なファンタジーゲームをやりすぎた。
早く夢が覚めることに期待する。
「へぇ、待っていましたとはいつから?なんで?」
「こちらの側にいらっしゃる資質をお持ちでしたので、今日の日が来るまで待っていました。」
「なるほどね、ファウスト?とかいう小説のあれか。立ち読みでもちゃんと内容が入るものだな。」
「今日はご挨拶まで。これにて失礼致します。またお会いしましょう。」
淡々と、声というよりは機械音に近い無機質なトーンでそいつは挨拶を済ませて消えた。
この手の奇妙な夢を見ることはよくあるが、登場人物が語りかけてくるのは初めてだった。
やけに喉が渇く。焼けるようだ。
視野が狭くなっていく。
そろそろ目覚めの時間か。
意識が落ちた。
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