36 / 36
最終話
しおりを挟む
電話を切ると、私は走った。
先輩に会いたい。先輩と話したい。私は、先輩のことが――。
「ほのか!」
道路を挟んで向かい側にいた先輩が、私の名前を呼ぶ。
「先輩っ」
私は道路を横切ると先輩の胸に飛び込んだ。
「ほのか……」
先輩が私を強く抱きしめた。
「先輩、先輩……」
私は何度も先輩を呼んだ。今、先輩の胸の中にいることを深く感じたくて。
「俺はお前を傷付けて泣かせてばかりだ。だけど俺は、ほのかのことが……」
そこで、私は背伸びをすると先輩の唇にキスをした。
先輩の瞳が大きく見開かれた。私から先輩にキスをするのはこれが初めてだった。
「……高校の頃、先輩は私に好きって言ってくれたのに私は何も伝えてなかった。ずっと自分の気持ちを言わなかった」
自分の声が震えているのがわかった。でも、ちゃんと伝えなくちゃ。
「私は……私は、先輩のことが好きです」
やっと、言うことができた――。
先輩の瞳に光が差した。
「俺も、ほのかのことが好きだ。ずっと、高校の時から……」
私と先輩は見つめ合う。お互いに、愛おしそうに。
「愛してる」
二人の言葉が重なった。
ほのかの家にあがると、俺はほのかに優しくキスをする。
そして服を脱がせるとベッドに横たわらせた。
「先輩……」
不安そうに見つめるほのか。
その不安を取り除くように俺は指先で頬を撫でると、ゆっくりと首筋に吸い付いた。
「……っ」
ほのかの身体が跳ねた。
「怖い?」
俺が訊くと、ほのかは横に首を振る。
俺はほのかの身体に触る。大事なものに触れるかのように。そっと、優しく――。
俺は満たされていた。以前はほのかにいくら触れたってキスしたって抱いても満足できなかったのに。一体、どうして……。
「先輩」
ほのかが両手をあげ、俺の顔に触れた。とても幸せそうな顔をしながら。
――……そうか。
いくら触れたってキスしたって抱いても満足できなかったのは、ほのかの心を確かめてなかったからだ。ほのかの気持ちがわからなくて、ほのかが俺のことをどう思っているのか不安だったからだ。でも、今は……。
「先輩、好きです」
あぁ、心が繋がるってこんなにも満たされて幸せなんだ――。
ある日、私は呼び出された場所で愛しい人を待っていた。
「ほのか」
彼が私の名前を呼ぶ。
振り返ると目を細めて微笑む先輩が立っていた。
「どうしてここに呼び出したの?」
そう言うと私は一面に広がるネモフィラ畑を見つめる。ネモフィラの青色がどこまでも続いていた。
先輩は私の横に並んだ。
「一度、ほのかと一緒に見てみたかったんだ。高校の時、中庭で言ってただろ? 一面ネモフィラが咲いたネモフィラ畑は綺麗だって」
「そんなこと言ってたね」
私はくすりと笑う。
「本当に綺麗なんだな」
「うん……」
風が吹いた。私は靡く髪を手で押さえる。
「ほのか。今日君を呼び出したのは、これを渡すためなんだ」
そう言って先輩が取り出したのは指輪だった。
「これって――」
「俺と結婚して欲しい」
私はゆっくりと頷くと、先輩は指輪をはめる。
「ほのか、愛してる」
「私も、愛してる」
どちらともなく、私たちはキスをした。
また、風が吹いた。ネモフィラの青い花びらが空を舞う。
私の左薬指には、はめた指輪が銀色に光り輝いていた。
【了】
先輩に会いたい。先輩と話したい。私は、先輩のことが――。
「ほのか!」
道路を挟んで向かい側にいた先輩が、私の名前を呼ぶ。
「先輩っ」
私は道路を横切ると先輩の胸に飛び込んだ。
「ほのか……」
先輩が私を強く抱きしめた。
「先輩、先輩……」
私は何度も先輩を呼んだ。今、先輩の胸の中にいることを深く感じたくて。
「俺はお前を傷付けて泣かせてばかりだ。だけど俺は、ほのかのことが……」
そこで、私は背伸びをすると先輩の唇にキスをした。
先輩の瞳が大きく見開かれた。私から先輩にキスをするのはこれが初めてだった。
「……高校の頃、先輩は私に好きって言ってくれたのに私は何も伝えてなかった。ずっと自分の気持ちを言わなかった」
自分の声が震えているのがわかった。でも、ちゃんと伝えなくちゃ。
「私は……私は、先輩のことが好きです」
やっと、言うことができた――。
先輩の瞳に光が差した。
「俺も、ほのかのことが好きだ。ずっと、高校の時から……」
私と先輩は見つめ合う。お互いに、愛おしそうに。
「愛してる」
二人の言葉が重なった。
ほのかの家にあがると、俺はほのかに優しくキスをする。
そして服を脱がせるとベッドに横たわらせた。
「先輩……」
不安そうに見つめるほのか。
その不安を取り除くように俺は指先で頬を撫でると、ゆっくりと首筋に吸い付いた。
「……っ」
ほのかの身体が跳ねた。
「怖い?」
俺が訊くと、ほのかは横に首を振る。
俺はほのかの身体に触る。大事なものに触れるかのように。そっと、優しく――。
俺は満たされていた。以前はほのかにいくら触れたってキスしたって抱いても満足できなかったのに。一体、どうして……。
「先輩」
ほのかが両手をあげ、俺の顔に触れた。とても幸せそうな顔をしながら。
――……そうか。
いくら触れたってキスしたって抱いても満足できなかったのは、ほのかの心を確かめてなかったからだ。ほのかの気持ちがわからなくて、ほのかが俺のことをどう思っているのか不安だったからだ。でも、今は……。
「先輩、好きです」
あぁ、心が繋がるってこんなにも満たされて幸せなんだ――。
ある日、私は呼び出された場所で愛しい人を待っていた。
「ほのか」
彼が私の名前を呼ぶ。
振り返ると目を細めて微笑む先輩が立っていた。
「どうしてここに呼び出したの?」
そう言うと私は一面に広がるネモフィラ畑を見つめる。ネモフィラの青色がどこまでも続いていた。
先輩は私の横に並んだ。
「一度、ほのかと一緒に見てみたかったんだ。高校の時、中庭で言ってただろ? 一面ネモフィラが咲いたネモフィラ畑は綺麗だって」
「そんなこと言ってたね」
私はくすりと笑う。
「本当に綺麗なんだな」
「うん……」
風が吹いた。私は靡く髪を手で押さえる。
「ほのか。今日君を呼び出したのは、これを渡すためなんだ」
そう言って先輩が取り出したのは指輪だった。
「これって――」
「俺と結婚して欲しい」
私はゆっくりと頷くと、先輩は指輪をはめる。
「ほのか、愛してる」
「私も、愛してる」
どちらともなく、私たちはキスをした。
また、風が吹いた。ネモフィラの青い花びらが空を舞う。
私の左薬指には、はめた指輪が銀色に光り輝いていた。
【了】
1
お気に入りに追加
99
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説


【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

練習なのに、とろけてしまいました
あさぎ
恋愛
ちょっとオタクな吉住瞳子(よしずみとうこ)は漫画やゲームが大好き。ある日、漫画動画を創作している友人から意外なお願いをされ引き受けると、なぜか会社のイケメン上司・小野田主任が現れびっくり。友人のお願いにうまく応えることができない瞳子を主任が手ずから教えこんでいく。
「だんだんいやらしくなってきたな」「お前の声、すごくそそられる……」主任の手が止まらない。まさかこんな練習になるなんて。瞳子はどこまでも甘く淫らにとかされていく
※※※〈本編12話+番外編1話〉※※※

ハイスペミュージシャンは女神(ミューズ)を手放さない!
汐瀬うに
恋愛
雫は失恋し、単身オーストリア旅行へ。そこで素性を隠した男:隆介と出会う。意気投合したふたりは数日を共にしたが、最終日、隆介は雫を残してひと足先にった。スマホのない雫に番号を書いたメモを残したが、それを別れの言葉だと思った雫は連絡せずに日本へ帰国。日本で再会したふたりの恋はすぐに再燃するが、そこには様々な障害が…
互いに惹かれ合う大人の溺愛×運命のラブストーリーです。
※ムーンライトノベルス・アルファポリス・Nola・Berry'scafeで同時掲載しています

密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる