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最終話
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電話を切ると、私は走った。
先輩に会いたい。先輩と話したい。私は、先輩のことが――。
「ほのか!」
道路を挟んで向かい側にいた先輩が、私の名前を呼ぶ。
「先輩っ」
私は道路を横切ると先輩の胸に飛び込んだ。
「ほのか……」
先輩が私を強く抱きしめた。
「先輩、先輩……」
私は何度も先輩を呼んだ。今、先輩の胸の中にいることを深く感じたくて。
「俺はお前を傷付けて泣かせてばかりだ。だけど俺は、ほのかのことが……」
そこで、私は背伸びをすると先輩の唇にキスをした。
先輩の瞳が大きく見開かれた。私から先輩にキスをするのはこれが初めてだった。
「……高校の頃、先輩は私に好きって言ってくれたのに私は何も伝えてなかった。ずっと自分の気持ちを言わなかった」
自分の声が震えているのがわかった。でも、ちゃんと伝えなくちゃ。
「私は……私は、先輩のことが好きです」
やっと、言うことができた――。
先輩の瞳に光が差した。
「俺も、ほのかのことが好きだ。ずっと、高校の時から……」
私と先輩は見つめ合う。お互いに、愛おしそうに。
「愛してる」
二人の言葉が重なった。
ほのかの家にあがると、俺はほのかに優しくキスをする。
そして服を脱がせるとベッドに横たわらせた。
「先輩……」
不安そうに見つめるほのか。
その不安を取り除くように俺は指先で頬を撫でると、ゆっくりと首筋に吸い付いた。
「……っ」
ほのかの身体が跳ねた。
「怖い?」
俺が訊くと、ほのかは横に首を振る。
俺はほのかの身体に触る。大事なものに触れるかのように。そっと、優しく――。
俺は満たされていた。以前はほのかにいくら触れたってキスしたって抱いても満足できなかったのに。一体、どうして……。
「先輩」
ほのかが両手をあげ、俺の顔に触れた。とても幸せそうな顔をしながら。
――……そうか。
いくら触れたってキスしたって抱いても満足できなかったのは、ほのかの心を確かめてなかったからだ。ほのかの気持ちがわからなくて、ほのかが俺のことをどう思っているのか不安だったからだ。でも、今は……。
「先輩、好きです」
あぁ、心が繋がるってこんなにも満たされて幸せなんだ――。
ある日、私は呼び出された場所で愛しい人を待っていた。
「ほのか」
彼が私の名前を呼ぶ。
振り返ると目を細めて微笑む先輩が立っていた。
「どうしてここに呼び出したの?」
そう言うと私は一面に広がるネモフィラ畑を見つめる。ネモフィラの青色がどこまでも続いていた。
先輩は私の横に並んだ。
「一度、ほのかと一緒に見てみたかったんだ。高校の時、中庭で言ってただろ? 一面ネモフィラが咲いたネモフィラ畑は綺麗だって」
「そんなこと言ってたね」
私はくすりと笑う。
「本当に綺麗なんだな」
「うん……」
風が吹いた。私は靡く髪を手で押さえる。
「ほのか。今日君を呼び出したのは、これを渡すためなんだ」
そう言って先輩が取り出したのは指輪だった。
「これって――」
「俺と結婚して欲しい」
私はゆっくりと頷くと、先輩は指輪をはめる。
「ほのか、愛してる」
「私も、愛してる」
どちらともなく、私たちはキスをした。
また、風が吹いた。ネモフィラの青い花びらが空を舞う。
私の左薬指には、はめた指輪が銀色に光り輝いていた。
【了】
先輩に会いたい。先輩と話したい。私は、先輩のことが――。
「ほのか!」
道路を挟んで向かい側にいた先輩が、私の名前を呼ぶ。
「先輩っ」
私は道路を横切ると先輩の胸に飛び込んだ。
「ほのか……」
先輩が私を強く抱きしめた。
「先輩、先輩……」
私は何度も先輩を呼んだ。今、先輩の胸の中にいることを深く感じたくて。
「俺はお前を傷付けて泣かせてばかりだ。だけど俺は、ほのかのことが……」
そこで、私は背伸びをすると先輩の唇にキスをした。
先輩の瞳が大きく見開かれた。私から先輩にキスをするのはこれが初めてだった。
「……高校の頃、先輩は私に好きって言ってくれたのに私は何も伝えてなかった。ずっと自分の気持ちを言わなかった」
自分の声が震えているのがわかった。でも、ちゃんと伝えなくちゃ。
「私は……私は、先輩のことが好きです」
やっと、言うことができた――。
先輩の瞳に光が差した。
「俺も、ほのかのことが好きだ。ずっと、高校の時から……」
私と先輩は見つめ合う。お互いに、愛おしそうに。
「愛してる」
二人の言葉が重なった。
ほのかの家にあがると、俺はほのかに優しくキスをする。
そして服を脱がせるとベッドに横たわらせた。
「先輩……」
不安そうに見つめるほのか。
その不安を取り除くように俺は指先で頬を撫でると、ゆっくりと首筋に吸い付いた。
「……っ」
ほのかの身体が跳ねた。
「怖い?」
俺が訊くと、ほのかは横に首を振る。
俺はほのかの身体に触る。大事なものに触れるかのように。そっと、優しく――。
俺は満たされていた。以前はほのかにいくら触れたってキスしたって抱いても満足できなかったのに。一体、どうして……。
「先輩」
ほのかが両手をあげ、俺の顔に触れた。とても幸せそうな顔をしながら。
――……そうか。
いくら触れたってキスしたって抱いても満足できなかったのは、ほのかの心を確かめてなかったからだ。ほのかの気持ちがわからなくて、ほのかが俺のことをどう思っているのか不安だったからだ。でも、今は……。
「先輩、好きです」
あぁ、心が繋がるってこんなにも満たされて幸せなんだ――。
ある日、私は呼び出された場所で愛しい人を待っていた。
「ほのか」
彼が私の名前を呼ぶ。
振り返ると目を細めて微笑む先輩が立っていた。
「どうしてここに呼び出したの?」
そう言うと私は一面に広がるネモフィラ畑を見つめる。ネモフィラの青色がどこまでも続いていた。
先輩は私の横に並んだ。
「一度、ほのかと一緒に見てみたかったんだ。高校の時、中庭で言ってただろ? 一面ネモフィラが咲いたネモフィラ畑は綺麗だって」
「そんなこと言ってたね」
私はくすりと笑う。
「本当に綺麗なんだな」
「うん……」
風が吹いた。私は靡く髪を手で押さえる。
「ほのか。今日君を呼び出したのは、これを渡すためなんだ」
そう言って先輩が取り出したのは指輪だった。
「これって――」
「俺と結婚して欲しい」
私はゆっくりと頷くと、先輩は指輪をはめる。
「ほのか、愛してる」
「私も、愛してる」
どちらともなく、私たちはキスをした。
また、風が吹いた。ネモフィラの青い花びらが空を舞う。
私の左薬指には、はめた指輪が銀色に光り輝いていた。
【了】
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