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1章 「目覚めし鼓動」

10節 不審な宿屋

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「また何かあったら遠慮なく訪ねてくれ、できる限り答えよう」

「ん」

 武器1号に使用する素材の情報を現状でできる限り集め、屋敷を出た入るときと違い、特に妨害はなく出ることができた

「先ずは仮拠点の確保からだな」

 ホムンクルスは人族と違い、疲れにくく、回復が早い、1,2時間も休めば、1割以下の体力でも全快する、人間族と比べてしまうと、かなり劣っているが、それはしょうがないことだ

 この町は広く活気がある、少し歩けば様々な店や日常の風景が見える

 熱心に客を呼び込む露店の店主、大きな看板などを用いて、宣伝するパン屋、店先で、派手な演出をさせる者を雇って、客の興味を引かせる店、焼き菓子を頬張る子供、町を巡回する兵士達、変装して、町中に紛れる賞金首、迷子になって泣く子供、物陰で、暗い影を落とすスラムの青年
 本当にいろいろ見えてくる
 そんな中、数ある宿屋の中でも一つ、異彩を放つ宿があった
 その宿の名は『泡沫の夢』2階建てで、小ぢんまりとしているが、手入れは行き届き、花や草で落ち着いた雰囲気を保っている
 しかし、そんな宿に違和感がある、今回の予感は吉兆、ここで何かしら良いことがある可能性があると言うことだ
 であるのに、客の賑わう声はない、ここも立派な商店街であるにも関わらず、この宿に向かうものは全くと言っていいほどいない、現在は夕方、日も沈みかけ、闇が地上を覆う頃だ、本来ならば、人々は家もしくは宿に向かう、つまり混雑するのだ
 しかし、この宿は来ない、まるで無いもののように、人々は通過して行く、避けて行く
 こんな怪しいもの、見ないわけにはいかない

 俺は、その宿屋『泡沫の夢』に入ることにした

「おや?お客さんか、珍しい」

「この宿は客に対していきなり珍しいとか言うのか」

「いや、すまないね。客が来たのは随分久々だから驚いちまったよ」
「それで?1名様でいいのかい?何泊する?」

「あぁ、1人だ、取り敢えず3泊で、それ以降は1泊毎に支払いで」

「わかった、ちょっと待ってくれ」
「うし、待たせたな、109号室だ、鍵はこれな」

 そう言うと109と刻まれた札付きの鍵を1つ渡された

「なんかあったら部屋にある連絡用機器で頼む」

「分かった」

 どうやら部屋への案内はされないらしい、代わりに宿内の案内図を渡された
・・・これ、絶対迷うやつ出るよな、外見では分からないほど広大だ、まるで、空間を広げたように広く、迷宮を取り込んだかのように地下へ続いている

「ここか、1階なだけあって近かったな、まぁ、一般人では気付けない仕組みだし当たり前か」

 部屋の中に入ると、途端に強い芳香系の匂いが発生した
 発生源は部屋中に隠されてある睡眠毒を発する魔法具だろう、独特な魔力が香りに混ざっている
 さて、こうも冷静に考察しているが、結構危険な状態である
 そもそも俺は【睡眠無効】をまだ取得していない、精神に影響する効果なので耐えられているが、長時間耐えるのはなかなかに厳しいのだ
 ここで俺には2つ選択肢ができた、いや、別になにも考えなければいくらでもあるのだが、面白そうなのは2つと言うことだ

 まず一つは、
・あえて効果を受け、敵の内から崩壊させること
 続いてもう一つは、
・効果にかかりきる前に部屋から出て、効果が薄まったらもう一度入るを繰り返して、できる限り迅速に全てを回収し、様子を見に来た敵を捕らえ根城に正面突破することだ

 前者はかなりリスクが伴う
 その理由はこの魔道具にある、量が多すぎて、二度と目を覚まさない危険があるのだ、それに、所持品だけ取って、すぐ殺される可能性もある、むしろその方が高い

 後者もまたリスクがある
 こっちの訳は簡単で、回収しきれない可能性と、勘づかれて逃げられる可能性だ

 どちらも面倒で、面白そうだ、俺には楽しいと怒りばかり強いから、こういった面白いことは大歓迎と言える
 さて、どちらを選ぼうか・・・







▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

(●’∇’)ノシ <お疲れ様です!!

ニトロエンジンです
久々の投稿です

次回は2つに分岐します、一方が完成しても、もう一方が完成するまでは、投稿しません
 分岐はしますが、結末は基本同じです
 分岐の前には分かりやすい選択肢が提示されます
ではまた(*・ω・)ノシ
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