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深化3

アンフェールと初めての求め合い3 ※

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 そして抽送が始まった。

 最初は抱き締められたまま腰を動かされていた。
 性器は根本まで入っている。大きなグラインドでなくても揺さぶられれば、当たっている奥に響く。
 番にしか許す事の無い、一番奥だ。与えられる刺激は快感だけでなく多幸感でアンフェールを満たす。意識はぼんやりしてしまう。

「ぐれん……ぐれん……」

 アンフェールはうわ言のようにグレンの名前を呼んだ。

 溺れてしまいそうだ。
 アンフェールはグレンにしがみつき、はふはふと必死で息を吸いながら理性に踏みとどまろうとする。
 アンフェールは正気を失っていた間、グレンに強姦を働いてしまった。挽回しなくてはいけない。グレンを優しく包み、気持ちよくしてあげないといけない。
 それなのに気を抜くと飛んでしまいそうな程気持ちいい。

 アンフェールは眦に浮かぶ涙を止める様にギュッと目をつぶる。そして、歯を食いしばった。
 そんなアンフェールの様子を見たグレンは眉を寄せ、困った様な顔になってしまった。

「アンフェール、気持ちいいの我慢している?」
「わ、たし……、さきほどは、しょうきを、うしなって……ぐれんのこと、ひどくして、しまったでしょう? ですから……」
「酷い事なんてしてないよ。アンフェールは何も悪くないんだ」

 グレンはアンフェールを安心させるために、優しく微笑んでくれた。そして身体を起してから、両手でアンフェールの足首を掴み、持ち上げた。

「あっ……」
「気持ちよくなろう、アンフェール。気をやってしまってもいいから」

 それからグレンの攻めが激しくなった。
 アンフェールの我慢なんて吹き飛ばすつもりの猛襲。
 アンフェールの高く抱えられた脚は、掴まれた足首が支点となって、振り子のように揺さぶられている。
 陰部に彼の腰がぶつかる衝撃でさえも、重く響いて気持ちいい。

 華奢とはいえ背も伸びたのに、力持ちのグレンは楽々とアンフェールの身体を取り回してしまう。
 強さを至上とする竜種は力強さに惹かれる。アンフェールは番の力強さにキュンとして身体中が戦慄いてしまった。

「あっ、っ、ああ……!」
「気持ちいい? すごい、ナカが、締まる」
「ん、きもちい……もっと、もっと」

 アンフェールは『もっと』という意思表示で、グレンに両腕を伸ばした。
 グレンの目が獰猛に光る。

「ひゃ……!」

 持たれていたアンフェールの足首が、グレンの肩に置かれる。彼はアンフェールの両脇にドンと手を突き、そのまま覆い被さってきた。
 アンフェールの脚は彼の動きのまま持ち上げられる。ぐっと折りたたまれた状態になった。腰は少し浮き、顔は丁度見つめ合える位置になる。

 そして激しい腰使いで中を責め立てられた。
 このポーズだとグレンのペニスはより深くに入り込んでくる。孔も胎も締まる。アンフェールは番のペニスを余すところなく感じてしまう。
 ぐちゃぐちゃとした粘液質の水音が室内に響いている。余程、蜜を垂らしているのだ。お互いのフェロモンが混ざり合った交接の匂いは、甘い。

「あ! んぅ、なんでっ! こんな……!」

 アンフェールが口にした疑問は、グレンの攻めがビックリするほど的確だからだ。彼は中の善い部分を慣れた風に擦り、突いてくる。
 あの正気を失った半日の間に覚えたんだろうか。分からない。でも気持ちいい。

「ここ、善くない?」
「いい、すごい、いっ……でも、なんで、しって」
「アンフェールの、好い所なら、全部、知ってるから」

 そんなに知られちゃったのか、と記憶の無い半日を想う。
 グレンに己の敏感な、恥ずかしい部分を知られちゃったと思っただけで、じゅんと濡れてしまう。

「アンフェール、私を、感じて」

 そう言ってグレンは本能を剥き出しにしてアンフェールの中を貪り始めた。
 激しい快感による責め苦。
 アンフェールの頭の中はドロドロに溶け、気持ちいい、気持ちいいと、ただそれだけで埋められていく。

 アンフェールもきっと、理性を脱ぎ去った獣のような顔をしている。だって口から洩れる声はいつもよりずっと甘い。番を発情させ、誘い込む声を出している。
 誘いたい。求められたい。

 涙が浮いて視界は滲み、呼吸は浅くなっていく。身体は緊張し、絶頂にピンと伸びあがる。


「~~~~ッ!!!」


 アンフェールは軽く達した。
 ぶるりと全身が震える。


 それでもグレンは止まってくれない。快感が処理しきれないまま、さらなる刺激を重ねられてしまう。
 アンフェールはグレングリーズとの交接を思い出してしまった。
 竜種の求め方はこうなのだ。
 限界なく、深く深く相手を貪っていく。グレンは竜人なのに。とても不思議だ。

 交接中、アンフェールは数度意識を飛ばした。それ程にグレンの激情は凄かった。
 アンフェールの孔を、官能を、全て己に染め上げる――そんな思いが伝わってくる。


「アンフェール……! アンフェール……!」


 グレンはアンフェールに腰をピッタリと押し付けて、ぶるりと身体を振るわせた。
 彼は、はぁはぁと呼吸を荒くしながら、アンフェールの胎の中に射精している。
 アンフェールはグレンの精が濃く、射精も長い事を知っている。
 彼は精に関して竜種に近いのだ。

 グレンは何度か腰を浅く揺らしては止めながら、アンフェールの中に射していっている。本当に竜種のようなやり方だ。
 それが懐かしくて、気持ち良くて、アンフェールはまたふるふると震えて達してしまった。



◇◇◇



「グレン、身体を綺麗にしてくれてありがとうございます」

 抱き潰され、グッタリとしたアンフェールをグレンはいつも通り綺麗にし、寝間着を着せてくれた。
 壊れそうな激しい交接であっても、竜種であるアンフェールは壊れる事は無い。基本、頑丈に出来ている。

 とはいえ疲れてはいるのだ。

 なので、アンフェールはベッドに横になり休んでいる。
 グレンはベッドに腰かけ、そんなアンフェールの髪を優しく撫でてくれている。

「大丈夫? 痛い所とかない?」

 グレンは眉を下げ、気遣うように声を掛けてくれた。
 彼はアンフェールが竜種だと知らない。初めての性交でこんな長時間いたしたのだ、と思ったらそれは心配にもなるだろう。

 ――グレンが全て知っている事をアンフェールは知らない。アンフェールは未だに竜バレしていないと思っているのだ。

「はい。大丈夫です。グレンは疲れていませんか?」
「大丈夫だよ。鍛えているからね」

 グレンは腕を曲げて、力自慢のジェスチャーをする。
 鍛えているとはいっても、一度きちんと休んだ方がいいだろう。もう夜も明け、外は明るくなっている。
 だというのに、グレンはまだアンフェールの世話を焼きたいようだ。

「アンフェール、喉が渇いただろう? 水を……」

 そう言いながら、グレンはベッドから立ち上がる。
 数歩歩いたところで、彼の身体は前触れなくふらりと傾いた。そのままパタンと床に倒れてしまう。


 アンフェールは何が起こったのか分からなかった。さっきまで元気すぎる程元気だった番が倒れてしまった。
 起き上がらない。
 ピクリとも動かない。


「グレン……? グレン!!!」


 アンフェールは慌てて身体を起こし、素早くベッドから降りた。彼の傍らに跪いて身体に触れ、『回復ヒール』を掛ける。
 でも何の反応もない。

 グレンは仰向けに倒れている。頭を打っていたらどうしよう。
 いや、頭を打って外部なり内部なりに傷が出来ても『回復ヒール』を掛ければ大丈夫なはずだ。だから怪我が原因じゃないのだ。
 病気か何かだろうか。

 アンフェールの顔はスッと青くなった。


「大変……誰か! 誰か!」


 アンフェールは駆けだし、扉を開けて人を呼んだ。
 アンフェールの只ならぬ様子に、隣室からロビンとエドワードが飛び出してくる。

 二人に手伝って貰って、グレンをベッドに寝かせた。
 ロビンの知る限り、グレンは病気知らずなんだそうだ。それを聞いてアンフェールは増々顔が青くなってしまう。
 エドワードは気遣って、べそをかくアンフェールの背中に、ずっと手を当ててくれていた。


 医者を呼ぶも「原因は分からない。ただ、眠っている」と言われただけだ。
 精霊に聞いても『ねてるよー』としか言われない。
 アンフェールは心配で、心配で、ずっとグレンの側で過ごした。確かに眠っているように見える。呼吸もしっかりしていて病気には見えない。


 それから休暇中、グレンの目が覚める事は無かったのだ。


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